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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

大きな 船は、どうやって とまるの?

大きな船は、どうやって止まっているのか ── ブレーキが無い船の止まり方

船にブレーキが無いのに、なぜ止まれるのか ── 後進・惰性・錨の限界

分野:海・釣り

大きな コンテナせんや タンカーが、みなとに ちかづいて きます。とても ゆっくり うごくので、とおくから 見ると、もう とまって いるように 見える ことが あります。でも、ほんとうに とまって いるのでしょうか。

じどう車には、ブレーキが あります。ペダルを ふめば、タイヤと 道が こすれて、すぐに とまれます。では、大きな 船には、車と おなじような ブレーキが あるのでしょうか。もし ないなら、船は ふだん どうやって とまって いるのでしょう。

この メモは、船会社の あつまりの しりょうや、船の うごきを しらべた ろんぶん、じっさいに おきた できごとを てがかりに、この ぎもんを たどって いきます。

大きなコンテナ船やタンカーが、港に近づいてきます。あまりにゆっくり動くので、遠くから見ると、もう止まっているように見えることがあります。でも、本当に止まっているのでしょうか。

車にはブレーキがあります。ペダルを踏めば、タイヤと道路がこすれて、数秒で止まれます。では、大きな船には、車と同じようなブレーキがあるのでしょうか。もし無いなら、船はふだんどうやって止まっているのでしょう。

このメモは、日本船主協会の資料や、船の操縦性を研究した論文、実際に起きた出来事をたよりに、この疑問をたどります。

大きなコンテナ船やタンカーが、港に近づいてくる。近づくにつれて速さを落としていくので、遠目には、もう止まっているように見える瞬間がある。だが、数万トンの船体せんたいは、見た目より長く動きつづけていることが多い。

自動車には、タイヤと路面をこすり合わせるブレーキがある。踏めば数秒で止まる。船には、これに当たる装置があるのだろうか。日本船主協会の「海と船のQ&A」は、この問いにひとことで答えている。「船にはブレーキが無いことです」[1]。

ブレーキが無い船は、ふだんどうやって止まり、いざというとき何を頼りにするのか。このメモは、日本船主協会の資料、船の操縦性能を研究した論文、そして実際に起きた出来事をたよりに、この疑問をたどる。

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1. 船には ブレーキが ない って ほんとう?

1. 船にはブレーキが無い ── 止まる力は、どこから生まれるのか

1. 船にブレーキという装置は存在しない

車には ブレーキが あります。じてん車にも あります。にぎったり ふんだり すると、タイヤと 地めんが こすれて、車は とまります。

船には、この ブレーキが ありません。船会社の 人たちが つくった クイズの ページにも、「船には ブレーキが ない」と はっきり 書いて あります。

では、船は どうやって スピードを おとすのでしょう。ヒントは、船の うしろに ついて いる、くるくる まわる はねの ような 「スクリュー」に あります。

自転車も車も、ブレーキを握ったり踏んだりすると、タイヤと地面がこすれ合い、その摩擦の力で止まります。

船には、この意味でのブレーキがありません。日本船主協会の「海と船のQ&A」も「船にはブレーキが無いことです」と、はっきり書いています[1]。

理由は、船が地面の上ではなく、水の上にいるからです。水はやわらかく、押しても押し返してくる力は、車のタイヤと道路の摩擦よりずっと弱いのです。船を止める力は、水をうまく使うか、船自身のエンジンの力を逆向きに使うしかありません。そのカギをにぎるのが、船の後ろで回る「スクリュー(プロペラ)」です。

エンジンとスクリューは、もともと前に進むために作られています。それを、止まるためにも使わなければならないところに、船ならではのむずかしさがあります。

自転車や自動車のブレーキは、タイヤと路面をこすり合わせ、その摩擦力で運動エネルギーを消費して止まる。船には、この意味でのブレーキが存在しない[1]。

理由は単純で、船が接しているのは固い路面ではなく水だからだ。水の抵抗は、車のタイヤと路面の摩擦よりずっと弱い。質量しつりょうが数万トンにもなる船を止めるには、水そのものの抵抗にゆだねるか、船を進めているのと同じ装置――主機とスクリュー(プロペラ)――の力を、逆向きに使うしかない[4]。

エンジンとプロペラは、もともと前進のために作られている。それを、停止のためにも使わなければならない。ここに、大型船ならではのむずかしさがある。

2. はねを ぎゃくに まわして、とまろうと する

2. プロペラを逆回転させる「後進」── でも舵は使えなくなる

2. 全速後進(クラッシュ・アスターン)と、舵の効かなくなる代償

船は、スクリューを ぎゃくに まわして、水を まえの ほうへ おくります。すると、その 水の いきおいで 船が おされて、スピードが おちます。これを 「こうしん」と いいます。

きけんな ときは、ありったけの ちからで こうしんします。ただし、これを すると、こまった ことも おきます。かじを うごかしても、船が まがらなく なるのです。

とまろうと して いる あいだ、船は まがる じゆうを うしなって しまいます。船を あやつる 人は、この ことを ちゃんと わかって います。

船が前に進むとき、スクリューは水を後ろへ押し流しています。止まりたいときは、このスクリューを逆に回し、水を前へ押し流します。すると水の勢いで船が押し返され、スピードが落ちていきます。これを「後進」といいます。

危険を避けるために全力で後進をかけることを、船の世界では「クラッシュ・アスターン」と呼びます。ただし、これには代償があります。スクリューが逆向きの水流を作っているあいだ、舵かじはほとんど効かなくなるのです[4]。

止まろうとしている間、船は曲がる自由をほぼ失います。だからこそ、船を操る人たちは「早めに減速する」ことを何より大事にしています。

船が前進するとき、スクリューは後方へ水流を作り出している。停止させるには、主機を逆回転させるか、可変ピッチプロペラであれば逆ピッチにして、スクリューの水流を前方向きに変える。生まれた水の反力が船を後ろへ押し、船速が落ちていく。これが「後進」だ[4]。

危険回避などのために全速力で後進をかけることを、「クラッシュ・アスターン」と呼ぶ[4]。ただし、これには代償がある。スクリューが通常と逆方向の水流を作っているあいだ、舵かじはほとんど役目を果たさなくなる[4]。舵は、スクリューが生む水流を受けて向きを変えるしくみなので、その水流の向きが乱れると、効き目が失われてしまうのだ。

止まろうとする操作そのものが、曲がる自由を奪う。この二律背反にりつはいはんこそ、大型船の操縦をむずかしくしている一因だ。

3. とまるまでに、どれくらい すすんじゃうの?

3. 全速後進でも、止まるまでに15分・3km ── 大型タンカーの例

3. 全速後進の停止試験と、「船の長さの15倍」という国際基準

船会社の あつまりが つくった クイズの ページに、こんな 話が のって います。全速力で はしって いる 大きな タンカーが、ぜんりょくで こうしんしても、とまるまでに 15分、きょりに すると 3kmも すすんで しまいます。

3kmは、あるくと 40分くらい かかる きょりです。船は、ブレーキの かわりの そうさを はじめてから、それだけ すすんで、やっと とまります。

大きな 船が とおくで ゆっくり うごいて 見えても、もう すぐには とまれません。だから、船を あやつる 人は、ずっと 手前から すこしずつ スピードを おとして いきます。では、こうしんを しないで、ただ エンジンを けしただけなら、どう なるのでしょうか。

日本船主協会の「海と船のQ&A」には、具体的な数字が載っています。全速力で走っている大型のタンカーが、全速で後進をかけても、止まるまでに15分、距離にすると3kmも進んでしまいます[1]。

3kmは、歩けば40分ほどかかる距離です。全力でブレーキがわりの操作をしても、それだけの距離と時間が必要になります。

国どうしのルールを決める国際海事機関(IMO)は、1993年に船の操縦性についての基準を採択しました。その中で、全速後進で止まる試験では、船が進んでしまう距離を、船の長さの15倍以内におさめることを求めています[2]。全長300メートルの船なら、15倍で4.5kmです。日本の研究者は、この基準が大型タンカーには厳しすぎると指摘したこともあります[2]。それだけ、大きな船を止めるのはむずかしいということでもあります。

大きな船が遠くでゆっくり動いて見えても、もうすぐには止まれません。だからこそ、船を操る人たちは、はるか手前から少しずつ速度を落としていきます。では、後進をかけず、ただエンジンを止めただけなら、どうなるのでしょうか。

日本船主協会の「海と船のQ&A」は、具体的な数字を挙げている。全速力で走行中の大型タンカーが、全速で後進をかけても、停止までに15分、距離にして3kmほど進んでしまう[1]。

国際海事機関(IMO)は1993年、「船舶操縦性に関する暫定基準」(決議A.751)を採択した。この基準は、全速後進による停止試験で船が進んでしまう距離(トラックリーチ)を、船の長さの15倍以内に収めることを求めている[2]。全長300メートルの船なら、15倍で4.5キロメートルにあたる。

この基準を検討した日本の研究者・芳村康男は、1994年の論文で、基準が大型タンカー(VLCC)にとって特に厳しいと指摘し、見直しを求めた[2]。別の研究は、停止性能を正確に予測すること自体が簡単ではないとして、132隻分の実船データを使い、主機とプロペラが完全に止まるまでの空転期間が、予測のずれに大きく関わることを確かめている[3]。停止性能は、今も研究が続くテーマなのだ。

大きな船が遠くでゆっくり動いて見えても、簡単には止まれない。だからこそ、船を操る人たちは、はるか手前から段階的に速度を落としていく。では、後進という能動的な操作を行わず、単に主機を停止しただけの場合はどうなるのか。

4. エンジンを けすだけなら、もっと すすんじゃう

4. 後進をかけずにエンジンを切ると、もっと長く進む

4. 後進をかけない場合の惰性走行 ── 水の抵抗は速さと共に弱まる

もし、こうしんを しないで、ただ エンジンを けすだけだったら、どう なるのでしょう。船の しくみを しらべた 本に よると、大きな 船は、けした あとも 3kmくらい、じぶんの いきおいで すすみつづけます。

水には、船の うごきを とめようと する ちから(ていこう)が あります。でも、その ちからは、スピードが おそく なるほど、ぐっと よわく なります。だから、さいごに のこった すこしの スピードを けすのに、いがいと 長い きょりが かかって しまうのです。

3kmは、こうしんした ときと にた きょりです。ただし これは、べつべつの 船の れいから とった かずなので、おなじ 船で くらべた わけでは ありません。おおきな 船は、それくらい かんたんには とまりません。では、しおの ながれが つよい 日は、この きょりは かわるのでしょうか。

もし後進をかけず、ただエンジンを切っただけならどうなるでしょうか。船のしくみを解説した本によると、大型船はエンジンを切ったあとも、惰性で3kmほど進みつづけるといいます[4]。

水には、動いているものを押しとどめようとする力(抵抗)があります。船が水から受けるこの抵抗は、速さが落ちると弱まる傾向があります。空気の抵抗が速さの2乗に比例して強くなることは、飛行機のブレーキの説明でも使われている性質です[8]。ただし本当は、船が水から受ける抵抗は、船体の形や船が起こす波の大きさにも左右され、空気抵抗のように単純な式では言い表せません。

だから、最後のわずかな速さを消すのに、意外なほど長い距離と時間がかかります。全速後進の約3km(日本船主協会の例)と、後進をかけない場合の約3km(ウィキペディアの記述)は、別々の船の例をもとにした数字で、同じ船を後進あり・なしで比べた結果ではありません。両方が3km前後になる理由まではこの記事では確かめられておらず、たまたま近い値になっている可能性もあります。では、潮の流れが強い日は、この止まる距離は変わるのでしょうか。

後進をかけず、主機を止めただけならどうなるか。船のしくみを解説した書籍によれば、大型船は主機を止めたあとも惰性だせいで3kmほど進みつづける[4]。

船が水から受ける抵抗は、速さが落ちると弱まる傾向がある。空気抵抗が速さの2乗に比例して強くなることが知られている[8]。ただし、船が水から受ける抵抗は、船体の形や、船が水を押しのけて起こす波の大きさにも左右され、空気抵抗のように単純な式では表せない。

結果として、最後に残るわずかな速さを消し去るまでに、不釣り合いに長い距離と時間がかかる。ただし、全速後進の約3km(日本船主協会の例)と、後進をかけない場合の約3km(ウィキペディアの記述)は、別々の船の実例に基づく数字であり、同じ船を後進あり・なしで比較した結果ではない。両者が近い値になる理由をこの記事の出典から特定することはできず、単なる一致である可能性も残る。では、潮の流れが強い日は、この止まる距離は変わるのだろうか。

5. しおの ながれが あると、とまる きょりは かわるの?

5. 潮の流れがあると、止まる距離は変わるのか

5. 対水速力と対地速力 ── 潮流によって変わるのは「地面から見た距離」

ひこうきは、むかい風の 日は、地めんから 見ると すすみかたが おそく なります。おい風の 日は、はやく なります。ひこうき じしんの スピードは かわらないのに、地めんから 見た うごきかたは かわるのです。

船も おなじです。船を すすめる 力は、まわりの 水に たいして はたらきます。でも、その 水じたいが しおの ながれで うごいて いたら、みなとの 岸壁がんぺきや 島から 見た うごきは かわって しまいます。

しおの ながれに のって いる ときは、とまろうと しても、地めんから 見た きょりは 長く なりやすいです。ぎゃくに、しおの ながれに さからって いる ときは、みじかく なりやすいです。

飛行機は、向かい風の日は地面から見た進み方が遅くなり、追い風の日は速くなります。飛行機自体の速さ(対気速度)は変わらないのに、地面から見た速さ(対地速度)が変わるからです[9]。

船にも同じ理屈が当てはまります。船のエンジンとプロペラがおよぼす力は、まわりの水に対して働きます。ところがその水自体が、潮の流れによって動いています。だから、船が水に対してどれだけ進むか(対水速力)と、岸壁や陸地の目印から見てどれだけ進むか(対地速力)は、潮の流れの分だけずれます。

潮の流れに乗って進んでいるときは、後進をかけても、陸地から見た停止までの距離は長くなりやすいです。逆に、流れに逆らって進んでいるときは、短くなりやすいのです。「船を止める力」そのものは変わらなくても、「陸から見てどこで止まるか」は、潮しだいで変わってきます。

飛行機には、機体自身が空気に対してどれだけ進むかを示す対気速度と、地面から見てどれだけ進むかを示す対地速度がある。向かい風なら対地速度は遅くなり、追い風なら速くなる[9]。対気速度が同じでも、風の分だけ対地速度が変わる。

船の場合も同じ関係が成り立つ。エンジンとプロペラが生み出す推進力や、後進による制動せいどう力は、船の周りの水に対して働く(対水速力)。しかし、その水自体が潮流によって動いていれば、岸壁や海図上の目印から見た進み方(対地速力)は、潮流の分だけずれる。

したがって、後進によって水に対する速さを打ち消す能力そのものは、潮流があってもなくても変わらない。変わるのは、陸地や海底の固定点から見た「どこで止まるか」だ。潮流に乗って進んでいれば、対地速力の分だけ停止位置は先に伸び、潮流に逆らっていれば手前に縮む。船を操る人が、潮の流れの向きと速さを常に気にかけているのは、この対水と対地のずれを見越しているからにほかならない。ここまでは、後進やエンジンの停止による止まり方を見てきた。もう一つの道具である錨は、走っている船を止めるのに使えるのだろうか。

6. いかりを おろせば、きゅうに とまれるの?

6. 錨は「止まっている船をつなぐ道具」── 走っている船を止める道具ではない

6. 錨の限界 ── 走錨と、2018年台風21号の実例

いかりは、海の 底そこに つめを ひっかけて、船が うごかないように する どうぐです。とまって いる 船を つなぎとめる ための ものであって、はしって いる 船を きゅうに とめる ブレーキでは ありません。

もし、しおの ながれや かぜが つよいと、いかりを おろしても つめが 海の 底そこに うまく ひっかからず、いかりごと ひきずられて しまう ことが あります。これを 「そうびょう」と いいます。

2018年、大きな 台風が 来た とき、くうこうの ちかくに とまって いた タンカーが そうびょうして、2.2kmも さきに ある くうこうの はしに ぶつかって しまいました。とまって いた はずの 船でさえ、いかりだけでは うごきを ふせぎきれない ことが あるのです。とまって 見える 船も、ほんとうは まだ すこし うごいて いる ことが あります。

錨(いかり)は、海底に爪を引っかけて、船の位置をつなぎとめるための道具です。走っている船を急停止させるブレーキとは、そもそも役目がちがいます。

強い風や潮の流れがあると、錨を下ろしても爪が海底にうまく引っかからず、そのまま引きずられてしまうことがあります。これを「走錨(そうびょう)」といいます[6]。

2018年、台風21号が近畿地方を襲ったとき、関西国際空港の近くに停泊していたタンカーが走錨し、北へ約2.2kmにわたって流され、空港の連絡橋に衝突しました[5]。止まっていたはずの船でさえ、錨だけでは動きを防ぎきれないことがあります。まして、まだ動いている船を、錨だけで急に止めることは考えにくいのです。止まって見える船も、実はまだわずかに動いていることがあります。

錨いかりは、海底に爪を引っかけて船の位置を保持するための道具であり、走行中の船を急停止させる装置ではない。

強風や潮流の力が、錨とくさりが海底で踏みとどまる力や、プロペラが生み出す推進力を上回ると、錨の爪が傾いたり反転したりして引っかかる力が弱まり、船体ごと引きずられていく。これを「走錨そうびょう」と呼ぶ[6]。走錨が起きると操船が困難になり、海難事故につながる危険が高い[6]。

2018年9月4日、台風21号(チェービー)が近畿地方を襲ったとき、関西国際空港の連絡橋の南方約2キロメートルに停泊していたタンカー(総トン数2,591トン)が走錨し、北へ約2.2キロメートル漂流して、午後1時40分ごろ、時速約11.4キロメートルで連絡橋に衝突した[5]。停泊中、つまりほとんど動いていないはずの船でさえ、錨だけでは位置を保ちきれないことがある。走行中の船を、錨を下ろすだけで急停止させることが現実的でない理由は、ここにある。

錨には、もう一つ弱点がある。潮の流れが強い、あるいは船体がまだ動いている状態で投錨とうびょうすると、爪の面積が帆のように働き、海底の上を滑ってしまい、うまく引っかからないことがある[7]。錨は、船をそっと止めてから使う道具であって、走っている船を止めるための道具ではない。停止しているように見える船体も、実際には潮流や風の影響でわずかに位置を変えつづけていることがある。

7. じぶんでも しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。洗面器せんめんきに 水を はって、はっぽうスチロールの きれはしを うかべます。ゆびで かるく おして、手を はなします。とまるまで、なんcmくらい すすむか、じょうぎで はかって みましょう。

  • こんどは、1円玉を 2〜3まい のせて 重く してから、おなじ つよさで おしてみます。とまる ばしょは どう かわるでしょうか。
  • おなじ ちからで おしても、重い ものほど とまりにくいのです。おおきな 船が とまりにくいのも、これと おなじ りゆうです。ただし ほんとうは、船は プロペラを ぎゃくに まわして、じぶんから ブレーキが わりの ちからを 出せます。水に うかべた スチロールには、それが できません。

水を こぼしたら ふきましょう。

こんど 大きな 船を みなとや はしの 上から 見る きかいが あったら、船の うしろの なみが、すぐには きえずに つづいて いるか、見て みましょう。

洗面器に水を張り、発泡スチロールの切れ端や紙皿の切れ端を水に浮かべます。指で軽く押して手を離し、何cm先で止まるかを測ります。次に1円玉を数枚乗せて重くしてから、同じ強さで押してみましょう。止まる位置はどう変わるでしょうか。同じ力で押しても、重いものほど止まりにくいことが分かるはずです。ただし本当は、船はプロペラを逆回転させて自分からブレーキがわりの力を出せます。発泡スチロールの舟には、それができません。水をこぼしたらふきましょう。

資料を読んでみたい。

  • 日本船主協会「海と船のQ&A」Q16[1]。船の動かし方・止め方・着岸の難しさが、まとめて書かれている。
  • ウィキペディアの「操船」の項目[4]。クラッシュ・アスターンや惰性についての説明がある。

考えてみたい問い。港に近づく大きな船を実際に見る機会があったら、船の後ろに残る波(引き波)が、すぐに消えずに続いているかを観察してみよう。波が続いているあいだは、船はまだ水を押しのけながら進んでいる証拠だ。

洗面器に水を張り、発泡スチロールの切れ端を水に浮かべる。指で一定の力で押して手を離し、静止するまでの距離を測る。次に1円玉を数枚乗せて質量を増やし、同じ力で押して比べる。質量が大きいほど、同じ力積では止まりにくいことを確かめられる。ただし本当は、船はプロペラを逆回転させて能動的に制動力を生み出せる点が、この実験とはちがう。水をこぼしたらふく。

資料を読み比べてみたい。

  • 日本船主協会「海と船のQ&A」Q16[1]。船の動かし方・止め方・着岸時の難しさが、まとめて書かれている。
  • 芳村康男「操縦性基準における停止性能の検討」[2]。IMOの基準がVLCCにとってどう厳しいのか、検討の中身を読んでみる。
  • ウィキペディアの「操船」の項目[4]。クラッシュ・アスターンでの舵の効き方について書かれている。

考えてみたい問い。もし港に近づく大きな船を実際に見る機会があったら、船の後方に残る引き波が、いつまで続いているかを観察してみよう。エンジンを止めても波が残っているあいだは、船はまだ水を押しのけながら進んでいる証拠になる。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:日本船主協会のQ&A、船の操縦性能を研究した学会論文(日本造船学会・マリンエンジニアリング)、フリー百科事典ウィキペディア、Weblio辞書、実際に起きた海難事故の記録などを使った。何に使ったかを、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 日本船主協会「海と船のQ&A Q16:船の操縦:船はどうやって動く?止まる?」。 https://www.jsanet.or.jp/qanda/text/q2_16.html (船にブレーキが無いこと、全速力のタンカーが全速後進をかけても停止までに15分・3km進むこと、着岸時の難しさとタグボートの利用)
  2. 芳村康男「操縦性基準における停止性能の検討」(日本造船学会論文集 1994巻176号 259〜265ページ)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasnaoe1968/1994/176/1994_176_259/_article/-char/ja (IMOが1993年に採択した決議A.751が、全速後進停止試験でのトラックリーチを船の長さの15倍以内と定めていること、大型タンカーには基準が厳しすぎるという指摘)
  3. 高木道雄「停止性能推定における主機・プロペラ遊転期間の影響について」(マリンエンジニアリング 2003年38巻10号 688ページ)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime2001/38/10/38_10_688/_article/-char/ja (132隻の実船データを用いた停止性能予測の検討、主機・プロペラが完全に止まるまでの期間が予測精度に影響すること)
  4. フリー百科事典『ウィキペディア』「操船」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/操船 (船にブレーキが無く後進で減速すること、クラッシュ・アスターンでも船の長さの十数倍進んでしまうこと、後進中は舵が効かなくなること、後進をかけない場合の惰性走行が約3kmに及ぶこと)
  5. フリー百科事典『ウィキペディア』「関西国際空港」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/関西国際空港 (2018年台風21号でタンカー「宝運丸」(総トン数2,591トン)が走錨し、関西国際空港連絡橋に衝突した事故の経緯と数値)
  6. Weblio辞書「走錨」。 https://www.weblio.jp/content/走錨 (走錨の定義、風や潮流が錨とくさりの抵抗力・プロペラの推進力を上回ると錨が引きずられること、2018年の関西国際空港連絡橋の事故が実例として挙げられていること)
  7. Wikipedia(英語版)「Anchor」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Anchor (船が動いている、あるいは潮流が強い状態で投錨すると、錨の爪が海底の上を滑ってしまうことがあるという記述)
  8. フリー百科事典『ウィキペディア』「ブレーキ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ブレーキ (空気抵抗が速度の2乗に比例して大きくなるという性質)
  9. フリー百科事典『ウィキペディア』「対地速度」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/対地速度 (航空機の対気速度と対地速度の関係、向かい風・追い風によって対地速度が変わること)

なおした ところ

更新履歴

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