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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

絹きぬの ぬのは、どうして きらきら するの?

絹のつやは、糸の中の三角形と細い束から生まれるのか

絹の光沢と繊維構造 ── フィブロインの三角断面・フィブリル・精練(セリシン除去)

分野:自然

きぬの スカーフを 明かりに かざすと、やわらかい 光が ゆれます。ナイロンの ぬのとは、ちがって 見える ことが あります。

その ひみつは、糸を ものすごく 大きく して 切った ときの、切り口に かくれて いる ようです。いっしょに のぞいて みましょう。

絹の布は、光の当たり方が変わると、白い光と淡い色がゆれるように見えます。手ざわりもさらりとしていて、同じ「白い布」でも綿とは表情がちがいます。

その理由は、糸の太さよりずっと小さな世界、断面の形と内部の構造にあるといわれます。資料をつき合わせて、わかっていることと、まだ説明にとどまることを分けてたどります。

絹の光沢は、カイコの繭糸を構成するフィブロイン繊維の断面形状と、内部のフィブリル構造に由来すると説明される[2][4]。精練でセリシンを除くと光沢と柔軟さが増す[5]。

このメモでは、繭糸の構造、三角形に近い断面、表面反射と内部での屈折・干渉という順に、農研機構や織物工業組合などの資料を突き合わせる。プリズム説や「なめらかさ」の物理的理由のように、資料で確かめきれない点は、その旨を分けて書く。

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1. まゆの 糸は、どれくらい 長いの?

1. 一つの繭から、1キロ前後の糸が取れる

1. 繭糸の長さと二層構造 ── 天然繊維で唯一の長繊維

かいこが つくる まゆから、一本の 糸が とれます。ほどいて つなぐと、1キロメートル ぐらいに なる ことが あります[5]。

しらべた 本に よって、800メートルから 1500メートルまで、かずが ちがいます。だから「1キロ ぐらい」と おぼえて おきましょう。

その 糸は、とちゅうで 切れません。しぜんの 糸の なかでは、めずらしい ことです[5]。

途切れない一本の糸

カイコがつくる繭は、ほどくと1本の長い糸になります。1個の繭から取れる長さは、資料によって約800〜1,200m、別の資料では1,200〜1,500mと数字が分かれます[5]。ここでは「1km前後」と考えておきます。

綿や羊毛のような繊維は、短い繊維をより合わせて糸にします。絹は、天然の繊維のなかで唯一、長く続く「フィラメント」の形で取れます[5]。

繭から取れる1本の繭糸は、資料により約800〜1,200m(ja.wikipedia)〜1,200〜1,500mとされ、数値が割れる。いずれも1km前後で、天然繊維では唯一の長繊維(フィラメント)である[5]。

繭から取れる1本の繭糸は、内部の2本のフィブロインをセリシンという糊がつないだ構造で、この2種類のタンパク質からなる[1]。次章では、この糊を取る工程を見る。

2. まゆの 糸に、のりが ついて いるって ほんとう?

2. 糸の四分の一は「のり」で、煮るとはがれる

2. 繭糸の構造とセリシン ── 精練で光沢と柔軟さが増す

まゆの 糸は、二本の しんと、それを くっつける のりで できて います[1]。しんの ほうが フィブロイン、のりの ほうが セリシンと いいます。

のりは、糸の ぜんぶの 4分の 1 ぐらいです[3]。おゆで にると、のりが とけて、しんが でて きます。

のりを ほとんど とると、糸は つやが でて、やわらかく なる ことが あります[5]。

二本の芯と、それをつなぐ糊

カイコの繭糸は、2種類のタンパク質でできています。絹糸になる細長い2本のフィブロインと、その2本をくっつけるセリシンです[1]。

セリシンは繭糸のおよそ20〜30%、目安としては4分の1ほどを占め、水やアルカリに溶けやすい性質があります[3]。石けんなどを入れたお湯で煮て取り除く作業を「精練」といい、これで2本のフィブロインが現れます[3]。

セリシンが残ると手ざわりは硬く、セリシンをほとんど取り除くと光沢としなやかさが増すことがあると説明されています[5]。「なめらか」の一部は、この糊を取る工程から来ているようです。

セリシンは繭糸の20〜30%(約25%と書く資料もある)を占め、水やアルカリに溶けやすい[3]。石けんやソーダ灰で煮てこれを除く工程が精練で、除くと透明感のある光沢が現れるとされる[3]。ja.wikipediaも、セリシンを取り除いて光沢や柔軟さを持たせると述べる[5]。ただし、どこまで除くかで違いがあり、完全に除くほど光沢が増すとは、ここで挙げた資料から言えない。セリシンが残ると手ざわりは硬い。

「なめらかさ」の物理的な理由(表面の摩擦や内部構造との関係)は、ここで挙げた資料では説明されていない。資料の説明は光沢が中心で、なめらかさは「セリシンを除いて柔らかくなる」程度にとどまる。

3. 糸を きって みたら、かたちは どうなって いる?

3. 断面は、丸ではなく三角に近い

3. 三角形に近い断面 ── 不規則な三角形と、約10μmという太さ

きぬの 糸を、ものすごい けんびきょうで 見ると、切り口は まるでは ありません。かどが まるい、三角に ちかい かたちです[2][4]。

三角は、きれいな 正三角形では なく、すこし ゆがんで います。それが たくさん ならぶと、光が いろいろな ほうへ ちらばります[2]。

糸の 太さは、1ミリの 100分の 1 ぐらいです[2]。糸の 切り口は、むしめがねでは 見えません。

顕微鏡でのぞいた切り口

精練したフィブロインの糸を横に切ると、断面は不規則な三角形をしています。丸みのある角をもった三角形で、細い糸が密に集まると光を細かく散らす、と織物工業組合の資料は説明しています[2]。英語版Wikipediaも、丸みのある角と三角形の断面が絹の光沢に関わるとしています[4]。

研究論文では、電子顕微鏡(TEM)でカイコ絹糸の断面を観察し、ほぼ三角形で、角が丸いと報告されています[6]。太さは、織物工業組合の資料では約10μm(0.01mm)前後とされています[2]。1mmに100本ほどの糸が並ぶ細さで、「1mmの100分の1ほど」と覚えておくのがよさそうです。

断面が丸ではなく三角なら、光はどう返るのでしょうか。次の章で見ていきます。

フィブロインのフィラメントの横断面は不規則な三角形で、これが密集して光を細かく分散させると説明される[2]。英語版Wikipedia「Luster (textiles)」も、丸みのある角と三角形の断面が絹の光沢特性に寄与すると述べる[4]。

Bombyx moriの絹繊維をTEMで観察した論文(Macromolecules)は、ほぼ三角形の断面と丸い角を報告する[6]。太さは丹後織物工業組合の資料が約10μm前後とする[2]。10μmは0.01mmで、1mmの間に約100本が並ぶ計算になる。

この断面形状が光学的にどう働くのかという点は、次章で扱う。

4. 光は、どうして やさしく かえって くるの?

4. 光は、表面と内部の両方で返ってくる

4. 表面反射と内部での屈折・干渉 ── フィブリル構造と真珠のような輝き

フィブロインの 糸は、すこし すきとおって います。光の 一部は、おもての ところで はねかえり、一部は、中に 入って まがります[2]。

ふたつの 光が まざる ことで、きぬの やさしい つやが うまれる、と いわれて います[2]。

しんじゅの つやを 思い出して みて ください。うすい かさなりの 中で 光が はねかえって、いろいろな 色が のぞく ところが、すこし にて います[2]。ただし、しんじゅと きぬは べつの ものです。

はね返る光と、中に入る光

フィブロインの繊維は半透明です。そのため、光の一部は表面ではね返り、一部は内部に入って屈折します。この2つの光が組み合わさって、やさしい光沢になると説明されています[2]。

1本のフィブロインは、約1,000本(資料によっては約2,000本)のさらに細いフィブリルが束になった構造をしているといいます[2]。内部に入った光は、さまざまな深さで反射や屈折をくり返し、干渉によって色づいて見えるそうです。真珠の多層構造に似た輝きだ、という説明もあります[2]。

三角形の断面は、プリズムのように光を分けるためだ、という説明も一般向けの資料に多く見られます[3]。

家蚕のフィブロイン繊維は半透明で、表面で反射した光と、内部に入って屈折した光とが組み合わさることで、やさしい光沢感が得られる[2]。

1本のフィブロインは約1,000本(資料により約2,000本)のフィブリルの束状構造をとり、内部に入った光は様々な深さで反射・屈折を繰り返して干渉色を生じ、真珠の多層構造に似た輝きになるとされる[2]。本数は資料で割れるため、ここでは「千本ほど」と幅をもたせる。

一般向け資料には、三角断面が「プリズムと同じような働き」で光を変えて放出するという説明も多い[3]。

5. きぬみたいな ぬのを、にんげんは つくれる?

5. 合成繊維は、断面の形まで絹をまねてきた

5. 絹の断面を模した合成繊維と、「絹鳴り」の説明

きぬに にた ぬのを、人間も 作ろうと して きました。化学で 作る 糸の なかには、きぬと おなじ 三角に ちかい 切り口に した ものが あります[4]。

きぬを こすると「きゅっ」と 鳴る ことが あります。これも、三角の かたちと かんけい するのかも しれません。でも、げんいんが 三角だと きまった わけでは ありません[5]。

形をまねた化学繊維

英語版Wikipediaによると、光沢のある化学繊維のなかには、絹の三角形(三葉形)の断面をまねて、絹のような見た目を出しているものがあります[4]。人が作った糸も、光の返り方は断面の形から決まる部分がある、という考え方です。

絹は、こすり合わせると「きゅっ」と鳴ることがあり、「絹鳴り」と呼ばれます。ja.wikipediaは、断面が三角形に近いことと関わらせて紹介していますが[5]、これは仮説として紹介されている段階と見るのがよさそうです。

英語版Wikipediaは、絹の三角形の断面が光沢に寄与するだけでなく、一部の合成繊維が三葉形の断面をまねて絹らしい外観を得ていることを述べる[4]。

ja.wikipedia「絹」は、絹をこすり合わせると「きゅっ」と鳴る「絹鳴り」を、断面が三角形に近い点と結びつけて紹介している[5]。ただし、仮説として紹介されている段階で、断定はできない。

ここまでを整理すると、断面が三角形に近いこと、表面と内部で光が返るという説明は丹後織物工業組合の資料に見られ、その先の光学的な働きと肌ざわりの物理は、資料に十分な記述がない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょうの やってみよう:家に きぬの スカーフや ネクタイが あれば、明かりの 下で、かたむけて みます。かたむけ かたで、光が どう かわるか、見て みましょう。

ナイロンや わたの ぬのが あれば、ならべて くらべます。ぬのに ついた ラベルにも、「きぬ」「ナイロン」など、ざいりょうが かいて あります。

今日できること

家に絹のスカーフやネクタイがあれば、明るい窓ぎわで角度を変えながら見てみます。傾けると、明るさや色みが変わって見えるかもしれません。ナイロンや綿の布があれば、並べて同じ角度で見比べてみましょう。

公式情報にあたる

農研機構や、丹後織物工業組合の解説ページは、繭糸の構造や絹の光沢を説明しています。「絹鳴り」や、三角断面がなぜ光沢になるかは、資料により説明が分かれるところです。読み比べてみると、どこまでが確かめられた話か、見えてくるかもしれません。

今日できること

絹の布と合成繊維の布を、同じ光源で角度を変えながら見比べる。布を傾け、見える明るさや色みがどう変わるかを観察する。素材表示のラベルで、絹かどうかを確認するとよい。

資料を読むなら

  • 農研機構「カイコのひみつ」:繭糸の二層構造とセリシン[1]
  • 丹後織物工業組合「THE SILK」:光沢感の解説[2]
  • Macromolecules誌の論文:Bombyx mori絹繊維の顕微鏡観察[6](英語の一次資料)

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

図や写真は載せていません。数値は資料によって幅があるため、幅を示して書いています。

  1. 農研機構「カイコのひみつ 第2弾」 https://www.naro.go.jp/publicity_report/season/166829.html (繭糸の二層構造)
  2. 丹後織物工業組合「THE SILK」2.シルクの光沢感 https://tanko.or.jp/2020/12/01/7496/ (断面・表面と内部の光・フィブリル)
  3. iroai.jp「シルクの特性」 https://iroai.jp/silk-characteristic/ (セリシンの割合・精練・プリズム説の紹介)
  4. Wikipedia「Luster (textiles)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Luster_(textiles) (三角断面と合成繊維)
  5. Wikipedia「絹」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B9 (繭糸の長さ・精練・絹鳴り)
  6. Microstructural Characterization of Bombyx mori Silk Fibers, Macromolecules https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ma980281j (断面の観察と直径)

なおした ところ

更新履歴

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