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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

とおい かざんが ふくと、はんたいがわの 空が まっかに なるのは なぜ?

遠い火山の噴火から数か月後、ノルウェーで赤い薄明が見られた ── 空の色を決める「粒」の話

遠い火山の噴火後にノルウェーの空が赤く染まった理由 ── 粒の大きさと量が決める空の色(散乱・黄砂・成層圏の硫酸粒子・緑の薄明)

分野:自然

1883ねん、とおい しまの かざんが ふんかして、すうか月ご、ノルウェーの 町の 空が まっかに なりました。てんもんだいの 人が、びっくりした と つたえられて います[9]。

空の 色は、なにで かわるのでしょう。じつは、空気の 中の 「つぶ」の 大きさと 多さが かぎです。この きじを 読むと、青い 空、白い 空、まっかな 夕やけ、みどりの 夕やけが、どう ちがうのかが わかります。

1883年にインドネシアのクラカタウ火山が噴火したあと、遠く離れたノルウェーの天文台で、観測者が「非常に強い赤い輝き」に驚いたと伝えられます[9]。地球の反対側のような遠い火山の噴火が、なぜ空の色を変えるのでしょうか。

答えは、空気中に浮かぶ「粒」にあります。同じ粒でも、大きさと量しだいで、空を青くも、白っぽくも、赤くも、まれに緑にもします。この記事を読むと、その使い分けと、火山の粒が高い空で何年も残る理由が分かります。

クラカタウ火山(1883年8月27日噴火)の約1〜3か月後、ノルウェーの首都クリスチャニアの天文台の観測者は「非常に強い赤い輝き」に驚いた。この薄明の異変は、ノルウェーで1883年11月下旬から1884年2月中旬ごろまで見られた[9]。

火山の粒がつくる薄明は、赤とは限らない。条件によっては緑がかった空になることがある。噴火地点から遠く離れた空を、何が、どう染めるのか。この記事を読むと、粒の大きさ・量と空の色の関係、成層圏の硫酸の粒が薄明を何年も変える理由、緑の薄明が起きる条件が分かる。

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1. 空は どうして 青いの?

1. 青空をつくっているのは、どんな粒か

1. 空気の分子が青を散らす ── 波長の4乗に反比例する散乱

空が 青いのは、空気が 青い 光を よく ばらまくからです。空気は、とても 小さな つぶ(ぶんし)が あつまって できて います[1]。

青い 光は、赤い 光より 5ばいほど つよく ばらまかれる と いわれます[1]。だから、空が 青く 見えます。

夕やけが 赤いのは、日の 光が 空気の 中を 長く とおって くる あいだに、青い 光が ばらまかれて へるからです[2]。この はなしは、「夕やけは なぜ 赤いの」の きじで くわしく 書きました。では、つぶが 空気の ぶんしより 大きく なったら どうなるでしょう。

光を散らす粒が、光の波長よりずっと小さいとき、その散らし方には決まりがあります。波長が短い光ほど強く散らされ、強さは波長の4乗に反比例します。青い光(約0.425μm)と赤い光(約0.650μm)を比べると、青は赤より約5.5倍強く散らされます[1]。空気の分子はこの「ずっと小さい粒」にあたるので、昼の空は青く見えます。

夕方や朝は、太陽の光が大気の中を長く通ります。その間に青い光が横へ散らされて減り、赤い光が目に届きます[2]。ここまでは、夕焼けが赤い理由を書いた記事で詳しく扱いました。

では、空気の分子より大きな粒が空に増えたら、色はどう変わるのでしょうか。

空が青い理由は、粒が光の波長よりずっと小さいときのレイリー散乱で説明される。散乱の強さは波長の4乗に反比例し、青(0.425μm)は赤(0.650μm)より約5.5倍強く散らされる[1]。(650/425)の4乗が約5.5になる計算で、波長が2倍ちがうときの16倍とは別の値である。空気の分子はこの条件に当てはまるため、昼の空は青い。

朝夕は、太陽光が大気を斜めに長く通るため、青い成分が途中で散らされて減り、赤い成分が届く[2]。この基本の仕組みは、夕焼けの記事で扱った。以下は、そこで条件にした「粒が小さい」が成り立たない場合の話である。

粒が大きく、あるいは多くなると、色はどう変わるのか。次の章で、白っぽい空から確かめる。

2. 空が 白っぽい 日は、つぶが 大きいの?

2. 空が白っぽくなる日は、何が増えているのか

2. 光の波長と同程度以上の粒 ── 色の差が小さくなり、空が白っぽくなる

空が 白っぽく 見える 日が あります。そんな 日は、光の 色の ながさと おなじくらいか、それより 大きな つぶが、空に 多いのかも しれません。

大きな つぶは、どの 色の 光も おなじように ばらまきます。そのため、色の ちがいが うすく なって、空が 白っぽく、はいいろっぽく 見えると いわれます[3]。

はるに、空が きいろっぽく けむる ことも あります。すなの つぶが、とおくから とんで くる 「こうさ」です[5]。つぶが ふえると、夕やけは どうなるのでしょう。

粒が光の波長と同じくらいか、それより大きくなると、色による散らされ方の差が小さくなります。どの色もほぼ同じように散らされるので、色の対比が弱まり、空は明るく白っぽく、灰色っぽく見えます[3]。

日本で春に多い黄砂は、その身近な例です。東アジアの砂漠や黄土地帯から強い風で巻き上げられた砂が、上空の風で運ばれて降る現象で、空が黄褐色に煙ることがあります。数マイクロメートル以下の細かい粒は遠くまで運ばれ、太平洋を越えた例もあります[5]。

粒が多いと空は白くなる。では、粒が増えると夕焼けはいつも色あせるのでしょうか。

粒が光の波長と同程度かそれより大きい領域(ミー散乱)では、色による散乱の差が小さい。大きな粒が多い空は、すべての色が同程度に散らされて色の対比が弱まり、明るく白っぽい、あるいは灰色がかった空になる[3]。前章の「青が強く散る」性質は、粒がずっと小さいときだけの性質ということになる。

身近な例が黄砂である。東アジアの砂漠域や黄土地帯で強風により巻き上げられた砂じんが、上空の風で運ばれて降下する現象で、日本では春に多く、空が黄褐色に煙ることがある。粒径数μm以下の粒は遠くまで運ばれ、太平洋を越えた例もある[5]。

ここで疑問が出る。粒が増えると、夕焼けは単に色あせるだけなのか。それとも、粒の大きさ次第で逆の効果も出るのか。

3. よごれた 空気では、夕やけは 赤くなるの?

3. 汚れた空気は、夕焼けを赤くするのか

3. 大気汚染と夕焼け ── 小さな粒は赤く、多すぎると色が鈍る

けむりや 車の はいガスなどで、空気が よごれて いる ときの はなしです。気しょうがくしゃの ボーレンさんは、小さな つぶの よごれは、夕やけを もっと 赤く する と 話して います[3]。

でも、よごれが ひどすぎると、太陽さえ はっきり 見えなく なり、色は あざやかでは なく なります。ちょうどよい 多さのときだけ 赤く なり、おおすぎると 白っぽい 明るさに なる のです。

よごれた 空気は、からだに よくありません。夕やけが きれいに 見えても、うれしい ことでは ないのです。つぎは、よごれでは なく、火山の つぶの はなしです。

気象学者のボーレンさんは、小さな粒の汚染物質は、夕焼けをより赤くすると述べています。ただし、汚染がひどすぎると、太陽さえはっきり見えなくなり、色は鮮やかでなくなります[3]。

つまり、粒の「大きさ」だけでなく「量」も効いてきます。適度な量の細かい粒は赤を強め、多すぎる粒は色のない明るさに変えてしまう。汚れた空気ならいつも赤い夕焼けになるわけではありません。

もちろん、汚れた空気は健康によくなく、赤い夕焼けのためにあってよいものではありません。空の色は、そこに浮かぶ粒を知る手がかりとして読むものです。

粒をたくさん、しかも高い所まで運ぶ力が自然にもあります。火山です。

一般向けの解説では、気象学者のボーレンが「汚染は夕焼けをより赤くするのは確かだ」と述べつつ、汚染がひどすぎると太陽さえはっきり見えなくなり、色は鮮やかでなくなる、と説明している[3]。小さな粒は赤を強め、多すぎる粒は色の対比を弱めるという、前章の大きさの話に量の条件が加わった形である。この説明は一般向け記事によるもので、日本の公的資料で汚染の強さと夕焼けの色を結んだ数値は、ここでは使っていない。

汚染を推奨する話ではない。PM2.5は粒径2.5μm以下の粒子の総称で、人の髪の毛(約70μm)の30分の1以下の大きさだが、燃焼で直接出るもののほか、大気中の化学反応でできるものがある[4]。可視光の波長は約0.4〜0.7μmなので、PM2.5にはそれより大きな粒も含まれ、光の色を一律に決める粒ではない。

粒の大きさと量が色を決めるなら、自然がそれを最も大規模に変えるのは火山の噴火だろう。成層圏へ粒を送り込む噴火は、空をどう染めたのか。

4. ノルウェーの 空は、なぜ まっかに なったの?

4. 遠いノルウェーの空は、クラカタウ噴火のあと何を見せたのか

4. クラカタウ噴火後の薄明 ── ノルウェーの観測と「叫び」の赤い空という説

1883ねん8月27日、クラカタウと いう かざんが ふんかしました。その すうか月ご、とおい ノルウェーの 町の てんもんだいで、人びとが 「とても つよい 赤い かがやき」を 見て おどろきました[9]。

この 空の へんかは、ノルウェーで 1883ねんの 11月の おわりごろから、1884ねんの 2月の なかばごろまで 見られた そうです[9]。

ノルウェーの 絵かき、ムンクの 「さけび」には、血のような 赤い 空が えがかれて います。この 空は、クラカタウの あとの 空を 見た けいけんが もとだと いう せつが あります[9]。ほかの せつも あるので、きまった はなしでは ありません。

とおくの かざんの つぶは、どうやって 空を 赤く したのでしょう。

クラカタウは1883年8月27日に噴火しました。それから1〜3か月後、ノルウェーの首都クリスチャニアの天文台で、観測者が「非常に強い赤い輝き」に驚きました。この薄明の異変は、ノルウェーで1883年11月下旬から1884年2月中旬ごろまで見られたといいます[9]。噴火の場所からは、ずいぶん離れた場所です。

この空は、画家ムンクの『叫び』(1893年)にも関わっているのではないか、という説があります。血のように赤い空は、クラカタウ後の薄明の体験が基になったという説で、同じ空を見たとされる場所は南西向きの道だとされます[9]。ただし、確定した事実ではありません。真珠母雲などを推す別の説もあります。

では、噴火の粒が、なぜ遠いノルウェーまで届いて空を染めたのでしょうか。

噴火の約1〜3か月後にあたる1883年11月下旬から1884年2月中旬ごろまで、ノルウェーでは薄明の異変が続いた。首都クリスチャニアの天文台の観測者が「非常に強い赤い輝き」に驚いたと伝えられる[9]。被害の話ではなく、空に残った粒の話として読む価値のある記録である。

この赤い空は、ムンク『叫び』(1893年)の血のような空の背景だという説がある。ノルウェーの美術・天文の研究者らが唱えた説で、南西向きの道から見た空とされる[9]。ただし確定した事実ではなく、真珠母雲などを挙げる別の説もあるため、「説」として扱うのが妥当である。

では、一地点の噴火の粒が、なぜ数か月かけて遠方の空まで染めたのか。鍵は、粒が運ばれる高さにある。

5. かざんの つぶは、どうして 何年も 空に のこるの?

5. 火山の粒は、なぜ高い空で何年も空を染めるのか

5. 成層圏の硫酸の粒 ── ピナトゥボ噴火とビショップ環

かざんは、いおうの ガスを 空の とても 高い ところまで おくります。ガスは、かがくの はんのうで、りゅうさんの つぶに かわります[8]。

1991ねん、フィリピンの ピナトゥボかざんが ふんかしました。やく2000まん トンの いおうの ガスが、そうそうけんまで とどきました。この ガスが せかいに ひろがり、1991ねんから 1993ねんまで、ちきゅうの 気おんを やく0.5どだけ、一じてきに さげました[6]。

ふんかの 2か月いないに、うちゅうひこうしが うつした しゃしんには、ちへいせんに 2だんの うすぐらい つぶの そうが うつって いました。たかさは やく20〜25キロです[7]。

この たかい ところは、日が しずんだ あとも、まだ 日の 光が あたります。そのため、日ぼつの あと しばらくして、にしの 空が そまります[8]。

火山は、二酸化硫黄というガスを成層圏まで送り込みます。成層圏で、このガスは化学反応によって硫酸の粒に変わります[8]。雨が降る低い空とちがい、成層圏では粒がすぐには落ちず、世界に広がります。

1991年のフィリピンのピナトゥボ火山の噴火では、約2000万トンの二酸化硫黄が成層圏に入りました。それが世界に広がり、1991年から1993年にかけて、地球の気温を約0.5℃、一時的に下げました[6]。噴火から2か月以内に宇宙飛行士が撮った写真には、地平線に二層の暗いエアロゾルの層が写っています。高度は約20〜25kmで、このエアロゾルは「見事な夕焼け」から地球の寒冷化まで、いくつもの現象の原因になりました[7]。

成層圏の粒は、日没後もまだ日光を浴びています。日が沈んで地上が暗くなってから、西の空が染まるのはそのためです[8]。1883年9月5日、ハワイのホノルルでは牧師のビショップが、太陽のまわりに光の輪が広がるのを書き留めました。のちに「ビショップ環」と呼ばれる現象の、最初の観察記録だとされます[10]。ピナトゥボのあとの観測では、約0.8μmの粒がこの輪をつくっていました[8]。

クラカタウの噴火後には、この硫酸の粒の霞が、見事な夕焼けやビショップ環の原因だと考えられるようになりました[10]。粒の大きさは、赤い空だけをつくるわけではなさそうです。

成層圏の火山性エアロゾルの正体は、噴火が送り込んだ二酸化硫黄から化学反応でできる硫酸の粒である[8]。この粒が高い空にあるため、日没後も高層は日光を受け、地上が暗くなってから西の空が染まる[8]。

規模を示すのがピナトゥボ火山(フィリピン、1991年)である。約2000万トンの二酸化硫黄が成層圏に入り、世界に広がって、1991〜1993年に地球の気温を約0.5℃(約1°F)一時的に下げた[6]。噴火から2か月以内の宇宙飛行士の写真には、高度約20〜25kmの暗いエアロゾルの層が二層、地平線に写る。NASAはこのエアロゾルを、見事な夕焼けから地球規模の寒冷化まで、いくつもの現象の原因と説明する[7]。

観察の側にも歴史がある。1883年9月5日、ホノルルの牧師セレノ・ビショップが太陽のまわりの光の輪を最初に記録したとされ、のちにビショップ環と呼ばれた[10]。ピナトゥボ後のライダー観測では、半径約0.8μmの粒が輪をつくっていた[8]。クラカタウ後に、見事な夕焼けとビショップ環が、高層に広がった火山性の細かい粒の霞による現象だと認識された[10]。

粒の大きさが約0.8μmと、可視光の波長に近い。この大きさになると、第1章の「青が強く散る」は成り立たなくなるはずである。実際、赤ではなく緑になる空が報告されている。

6. 夕やけが みどりに なる ことも ある?

6. 赤ではなく、緑がかった空になることはあるのか

6. 緑の薄明 ── 半径500〜700nmの粒がつくる異常散乱

クラカタウの あとの ほうこくには、あおや みどりの 太陽や、みどりがかった うすあかりの きろくが あります[11]。

2024ねんの けんきゅうでは、りゅうさんの つぶが 光の 色の ながさと おなじくらいの 大きさで、大きさが そろい、りょうも 多い ときに、赤では なく みどりがかった 空が できる と しめされました[11]。ふつうの 小さな つぶは 青を ばらまきますが、この 大きさの つぶは、むしろ 赤を つよく ばらまいて、みどりが のこるそうです[12]。

この ことは、いつも おきる わけでは ありません。おおきな ふんかの あとに、じょうけんが そろった ときの、めずらしい はなしです[11]。

2022ねん1月の フンガ・トンガの ふんかでは、ふんえんが たかさ やく58キロまで とどきました。ひとつきにも ならないうちに ちきゅうを 1しゅうして、ニュージーランドなどでは、あざやかな 夕やけや 朝やけが ほぼ 毎日のように 見られたと つたえられます[13]。

クラカタウ噴火後の英国王立協会の報告書(1888年)には、熱帯での青や緑の太陽、英国での緑がかった薄明の記録があります。2024年の研究は、この謎に答えようとしました。成層圏の硫酸の粒の半径が約500〜700nmで、大きさがそろい、量が十分なときに、赤でなく緑がかった薄明ができることを、モデル計算で示しています。計算では光学的厚さ(粒の量の目安)が約0.2を超える条件で再現されましたが、これは厳密な境界の値ではありません[11]。

小さな粒は、青を多く散らして赤を残します。ところが波長に近い大きさの粒では、青ではなくむしろ赤が強く散らされ、緑が残ります(異常散乱)[12]。同じ硫酸の粒でも、大きさがそろえば色が逆転するのです。ただし、これは条件がそろう大噴火の後にまれに起きる現象で、いつも見られるわけではありません。研究を紹介した大学のニュースでは、約100年に1回ほどの頻度だと説明されています[12]。

2022年1月のフンガ・トンガ噴火では、噴煙が高度約58kmに達し、成層圏エアロゾルの量はピナトゥボ以来最大でした。2週間ほどで、主な物質が高度20〜30kmを地球一周しています[13]。ニュージーランドなど南半球で、ほぼ毎日のように鮮やかな夕焼けや朝焼けが見られたと伝えられます。この鮮やかさの記述は天文雑誌の記事によるもので、論文は粒の量と高度の根拠です。

夕焼けの色を読めば、粒の様子が分かる。それなら、昔の人が描いた空も手がかりになります。

クラカタウ後の英国王立協会の報告(1888年)には、熱帯での青や緑の太陽、英国での緑がかった薄明の観測記録がある。この現象を、2024年の研究(Atmospheric Chemistry and Physics 24, 2415)は、成層圏の硫酸粒子の半径が約500〜700nmで、粒径がそろうという条件を置いたモデルで、光学的厚さが約0.2を超えるとき、赤でなく緑がかった薄明が再現されることを示した。0.2は厳密な境界値ではない[11]。

機構はこうである。通常の小さな粒では、散乱で減るのは太陽光の青い成分で、赤が残る。ところが波長に近い大きさ(半径500〜700nm)の粒では、青ではなく赤い成分が主に散らされ、緑が残る(異常散乱)[12]。第5章の半径約0.8μmの粒も可視光の波長に近い。粒の大きさが波長に近いことと、大きさがそろい量が十分なことが、緑になる条件として別々に挙げられている。ただし、これはモデルによる示唆であり、緑の夕焼けは条件がそろう大噴火の後にまれに起きるもので、毎回起きるものではない。約100年に1回という頻度は、研究を紹介した大学ニュースの説明である[12]。

近年の例が2022年1月のフンガ・トンガ噴火である。噴煙は高度約58kmに達し、成層圏エアロゾルの光学的厚さ(sAOD)はピナトゥボ以来最大となり、2週間ほどで主な物質が高度20〜30kmを一周した[13]。ニュージーランドなどの南半球で、ほぼ毎日のように鮮やかな夕焼け・朝焼けが見られたとされるが、この記述は天文雑誌によるものである。

夕焼けの色の濃さから火山の影響を逆算できるなら、過去の空を描いた絵が記録の代わりになるかもしれない。その試みが実際にある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おひさまが 出ている 日に、空を 見あげて みましょう。青が こい 日と、白っぽい 日を、2、3日 くらべて みます。空の いろの ちがいは、つぶの せいかも しれませんが、くもや 太陽の たかさでも かわるので、きめつけなくて だいじょうぶです。ぜったいに 太陽を 目で 見ては いけません。

出かけてできること

夕がたの にしの 空を 見て みましょう。夕やけの 赤が こい 日と うすい 日が あるか、おとなと いっしょに 見て みます。

こうしきの じょうほう

きしょうちょうの しりょうに、こうさの せつめいが のって います。

今日できること

晴れた日に、空を見上げて、青の濃さを2、3日くらべてみましょう。青が濃い日と白っぽい日の差が、空気中の粒の大きさや量のちがいに関係しているかもしれません。ただし、雲や太陽の高さでも空の色は変わるので、粒のせいと決めつけなくて大丈夫です。太陽を直接見るのは危険なので、太陽から離れた方向を見てください。

出かけてできること

夕方の西の空を、日没のあとも続けて見てみましょう。夕焼けの赤が濃い日と薄い日の差を、天気や空気の様子といっしょにメモすると、あとで見返せます。

公式情報

気象庁の資料に、黄砂の説明が載っています[5]。

今日できること

晴れた日の空の青の濃さを数日くらべ、白っぽい日と青い日の差が、粒の大きさや量とどう結びつくかを考えてみる。太陽は直接見ない。

出かけてできること

夕方の西の空を日没後も観察し、薄明の濃さを記録する。大きな噴火のあとは、その様子が変わることがある。

資料を読むなら

Zerefos らの2014年の研究(Atmos. Chem. Phys. 14, 2987)は、1500〜2000年の絵画に描かれた夕焼けの赤と緑の比から大気の光学的厚さ(550nm)を計算した。噴火の年を含む期間は、他の独立した火山の指標とよく合い、19世紀半ばの約0.15から20世紀末の約0.20へ増えた傾向も示した[14]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

粒の大きさと色の関係は物理の解説と論文に、火山の事実は米国地質調査所(USGS)・NASA・論文に依拠した。一般向けの記事は、汚染と夕焼け、観察の逸話の用途に限った。

  1. Britannica「Rayleigh scattering」 https://britannica.com/print/article/492483 (波長の4乗に反比例する散乱の強さ)
  2. 裳華房「空の色」解説ページ https://shokabo.co.jp/sp_e/radio/familiar/sky/sky.htm (夕方に青い光が散らされて赤が届く説明)
  3. Scientific American「Fact or Fiction? Smog Creates Beautiful Sunsets」 https://www.scientificamerican.com/article/fact-or-fiction-smog-creates-beautiful-sunsets (大きな粒と白っぽい空、汚染と夕焼けの色)
  4. 青森県「PM2.5について」 https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kankyo/hozen/pm25.html (PM2.5の大きさ)
  5. 気象庁 数値予報解説資料(黄砂) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/R6/1_7_17.pdf (黄砂と空の色)
  6. USGS Fact Sheet 113-97 https://pubs.usgs.gov/fs/1997/fs113-97 (ピナトゥボ噴火の二酸化硫黄と気温低下)
  7. NASA Earth Observatory「Astronauts Photograph Mount Pinatubo」 https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/astronauts-photograph-mount-pinatubo/ (成層圏のエアロゾルの層)
  8. Astronomy.com「Volcanic twilights」 https://www.astronomy.com/observing/volcanic-twilights/ (硫酸の粒と薄明、ビショップ環)
  9. APS News「The Back Page」(2004年) https://www.aps.org/apsnews/2004/05/the-back-page (ノルウェーの薄明と『叫び』の説)
  10. The Conversation「How a volcano and flaming red sunsets led an amateur scientist in Hawaii to discover jet streams」 https://theconversation.com/how-a-volcano-and-flaming-red-sunsets-led-an-amateur-scientist-in-hawaii-to-discover-jet-streams-164299 (ビショップの観察)
  11. Atmospheric Chemistry and Physics 24, 2415 (2024) https://acp.copernicus.org/articles/24/2415/2024/ (緑がかった薄明のモデル)
  12. グライフスヴァルト大学ニュース(上記研究の解説) https://www.uni-greifswald.de/en/forschung/nachrichten-aus-der-forschung/details/n/red-sky-or-green-sky-at-night-volcanic-eruptions-can-have-extraordinary-optical-effects-188093/ (異常散乱の説明)
  13. PMC「Tracking the 2022 Hunga Tonga aerosol cloud」 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9786872/ (フンガ・トンガ噴火の粒の量と高度)
  14. Zerefos et al. 2014, Atmos. Chem. Phys. 14, 2987 https://acp.copernicus.org/articles/14/2987/2014/ (絵画から大気の光学的厚さを推定)

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