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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ナマケモノは、なまけて いるの?

ナマケモノがゆっくり動くのは、なまけているからではない

ナマケモノの省エネ戦略 ── 低い野外代謝・遅い消化・少ない筋肉・変動する体温(Pauli et al. 2016ほか)

分野:生きもの

木の えだに ぶらさがって、なん時間も ほとんど 動かない ナマケモノ。名前の とおり、なまけものなのでしょうか。

どうやら、そうでは ないようです。しらべて みると、「使える エネルギーが すくない」という わけが 見えて きました。

木の枝にぶら下がったまま、何時間もほとんど動かないナマケモノ。名前は「怠け者」ですが、本人にその気があるわけではなさそうです。

ゆっくりの理由は、食べているものと体のつくり全体にあると考えられています。消化、筋肉、体温という三つの面から、その仕組みを見ていきます。

ナマケモノの緩慢さは、怠惰ではなく、低エネルギーの葉を主食とする暮らしに対する節約戦略として説明される。ミユビナマケモノの野外でのエネルギー消費は、記録された哺乳類で最も低いと報告されている[1]。

このメモでは、代謝・消化・筋肉・体温という複数の面から、その節約の仕組みを論文や解説をつき合わせて整理する。数値は研究や基準によって幅があるため、その違いも併せて示す。

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1. どれくらい エネルギーを つかうの?

1. 一日に使うエネルギーが、とても少ない

1. 野外代謝率 ── 記録された哺乳類で最低

生きものは、食べものから エネルギーを 作って、体を 動かします。ナマケモノは、この 使う りょうが、とても すくない どうぶつです。

けんきゅうでは、ミユビナマケモノが、しらべられた ほにゅうるいの 中で いちばん すくない、と 発表されて います[1]。

スマホで いえば、いつも 「しょうでんりょく モード」で 動いて いる ような ものです。ただし ナマケモノは、じぶんで えらんで いるのでは ありません。体の つくりが、そう なって います。

野外で測ると

研究者は、野外で暮らすナマケモノが一日にどれだけエネルギーを使うかを測りました。その結果、ミユビナマケモノは、冬眠していない哺乳類で記録されたなかで最も低い値だったと報告されています[1]。「すべての動物で最低」ではなく、「記録された哺乳類で」という点に注意が必要です。

フタユビナマケモノも少なめですが、ミユビはさらに約31%低いと紹介されています[2]。ミユビのほうが体温の変わり方が大きく、動くことも少なかったそうです[1]。

節約のモード

スマホの省電力モードにたとえると、画面を暗くして、使わないアプリを止めるようなものです。ただし、ナマケモノは自分で切り替えているのではありません。体のつくりが、はじめからそうなっています。

ミユビナマケモノ(Bradypus variegatus)の野外代謝率(FMR)は162 kJ/日×kg0.734で、冬眠していない哺乳類で記録されたなかで最も低い。ミユビは、フタユビより体温の変動が大きく、動きも少なかったという[1]。FMRの差は約31%とする報道もある[2]が、これは要約であり、数値は「約」を付けて扱う。

比べる基準によって印象は変わる。1980年のパナマでの測定では、野外代謝は平均約147 kJ/(kg・日)で、哺乳類の予測基礎代謝の約74%だった。一方で、このナマケモノ自身の実測の基礎代謝の約1.8倍でもある[3]。低さの報告値は研究ごとに約40〜74%と幅がある[4]。

2. なにを 食べて いるの?

2. 栄養の少ない葉が主食

2. 低エネルギーの食事 ── 葉と、ほとんど飲まない水

ナマケモノの おもな ごはんは、木の 葉です。葉は、エネルギーが あまり 多くない 食べものです[4]。

体重 四キロの ナマケモノが 一日に 食べる 葉は、かわかして 六十グラムほどだと 見つもられました[3]。水は 葉から とれて、ほとんど のみません。

すこしの 葉で、すこしの エネルギー。ここが、ゆっくりの はじまりだと 考えられます。

葉だけの暮らし

ナマケモノは主に葉を食べて暮らします。葉は、食事としてのエネルギーが少ないものだと説明されています[4]。

1980年の野外調査では、体重4kgのナマケモノが一日に食べる葉は、乾燥した重さで約60gと見つもられました。水もほとんど飲まず、葉から足りているようです[3]。この60gは乾燥後の重さで、生の葉の重さではありません。

少ない収入でやりくり

入ってくるエネルギーが少なければ、使う量も少なくしないと、体がもちません。ゆっくりした動きは、その「やりくり」の一部だと考えられています。ただし、どちらが先かを一つに決めることは、今の資料ではできません。

主食は、エネルギー量の少ない葉であり、ナマケモノは哺乳類で最も低い部類の体重あたり代謝率をもつとされる[4]。

Nagy & Montgomery(1980)の推定では、体重4kgの個体が1日に食べる葉は乾燥重量で約60g。水は葉から得られ、飲水はほとんどない(水の出入りは約38 mL/kg/日)[3]。なお60gは乾燥重量であって、生葉の重さではない。

低栄養の食物 → 少ないエネルギー収支 → 低い代謝・遅い動き・少ない筋肉、という一連の適応として説明されることが多い。ただし、因果の向きを一つに断定できる資料はなく、「代謝が低いから動けない」とは書けない。

3. たべものは、どのくらい 体に いるの?

3. 葉が体を通り抜けるまでに、数週間

3. 消化管通過時間 ── 150〜1,200時間、胃は体重の20〜30%

ナマケモノは、たべた ものが ながい あいだ、体の 中に います。うんちに なって 出て くるまで、六日から 五十日ほど かかる、という けんきゅうが あります[5]。

ウシと くらべると、十ばいほど ながい、という 野外の じっけんも あります[6]。しゅるいや じょうけんで、大きく かわります。

おなかの 中の 大きな い(い)は、中みも ふくめて、体重の 二わりから 三わりに なる、と いわれます[6]。

ゆっくり進む葉

食べたものが体を通り抜ける時間は、150〜1,200時間、つまり約6日から50日と、幅をもって報告されています[5]。「葉1枚に30日」というような話は目安で、種類や条件によって大きく変わります。

野外の実験では、ウシに比べて約10倍長くかかったという紹介もあります[6]。

おなかの大部分が胃

胃は腹の中の大きな場所を占め、中身を含めると体重の20〜30%になるとされています[6]。時間をかけて少しずつ栄養を取り出す作りだと読めますが、これは資料の書き方に沿った理解で、仕組みの全部が分かっているわけではありません。

消化管内容物の通過時間は150〜1,200時間(約6〜50日)と幅がある[5]。野外実験では、ウシの約10倍長いとする引用もある(Montgomery & Sunquist 1978を引く解説[6])。この点は二次的な資料の引用であり、種や条件で値が変わることに注意したい。

胃は腹腔の大部分を占め、内容物を含めて体重の20〜30%に達するとされる[6]。測定した個体数や時期などの条件で値は変わりうるため、目安として読みたい。

低い安静時代謝の原因としては、甲状腺活動の低下と、少ないカロリー摂取に長い消化時間が組み合わさることが挙げられている[5]。

4. きんにくが すくないのに、ぶらさがれる?

4. 筋肉は少なめなのに、ぶら下がり続けられる

4. 骨格筋 ── 少ない筋肉量と、遅筋型の前脚

ふつうの ほにゅうるいは、体重の 四わりから 四わり五ぶが きんにくです。ナマケモノは、二わり五ぶから 三わりと いわれます[6]。

それでも、木の えだに 長く ぶらさがれます。まえあしの きんにくには、ゆっくり ちぢむ タイプが 多いと つたえられて います[7]。ぶらさがり つづけられるのは、きんにくだけでなく、うでや ほねの つくりも かんけい します。

すこしの きんにくで、うまく ぶらさがる。ここも、エネルギーの せつやくと つながって いる ようです。

筋肉の割合

筋肉が体重に占める割合は、多くの哺乳類で40〜45%、ナマケモノでは25〜30%だと紹介されています[6]。ただし、これは古い研究を引いた資料の数字なので、「〜とされる」くらいに受け取るのが安全です。

疲れにくい筋肉

研究によると、ナマケモノの前脚の筋肉は、ゆっくり縮むタイプが中心で、速いタイプも少し混じっています[7]。速いタイプが全くないわけではありません。ゆっくり縮む筋肉は疲れにくいとされ、ぶら下がり続けるのに向くと考えられますが、それは筋肉だけでなく、体の骨組みなども関係します。

筋肉の作りやてこの使い方の工夫で、少ない筋肉でも大きな力を出せると説明されています[7]。低い代謝や遅い動きとともに、体全体の省エネに役立つよう進化した可能性が述べられています。

筋肉が体重に占める割合は、多くの哺乳類で40〜45%、ナマケモノで25〜30%とされる(Goffart 1971を引く解説[6])。原典は未確認で、他のナマケモノ属でも同じかどうかは不明である。

骨格筋量が少ない一方、前脚の筋肉は主にゆっくり縮むMHC-1型で、速いMHC-2A型も中程度に発現すると報告されている。作りとてこの利用によって大きな力を出し、疲れにくく、ぶら下がりに向くとされるが、ぶら下がり続けられるのは筋肉だけでなく肢の構造なども関わる。低い代謝・遅い動きとともに全身のエネルギー節約に進化した可能性が述べられている[7]。

5. 体の あたたかさも かわるの?

5. 体温を大きく変えて、日なたで温まる

5. 体温調節 ── 日内変動は最大約10℃、気温と摂食量

人の 体温は、いつも 三十六どくらいです。ナマケモノは、一日の うちに 体温が 大きく かわります。深い ところの 体温が、多い ときで 十ど かわる、という けんきゅうが あります[4]。

あたたかく なりたい ときは、日なたに 出るなど、行動で ちょうせつします。ミユビナマケモノは とくに 体温が ひくく、かわりやすいそうです[4]。

また、気温が 高い 日ほど、ミユビナマケモノは たくさん 食べる ことが おおかった そうです[4]。

一日で最大10℃

多くの哺乳類は、体温を36℃前後に保ちます。ナマケモノは、深い部分の体温が一日のうちに最大で約10℃変わることがあると報告されています[4]。これは最大値で、ふだんの変動ではありません。

体温は、日なたに出るなどの行動で調節します。ミユビは特に体温が低く、変動が大きいとされています[4]。

暖かい日によく食べる

ミユビナマケモノは、気温が高い日ほど食べる量が増えました。ふつうの哺乳類は寒い日ほどよく食べるので、反対です。暖かい日ほど発酵が進むのではないか、という説明が研究者から出ていますが、これは仮説です[4]。

深部体温は日内で最大約10℃変動し、恒温的な哺乳類とは異なり、行動(日なたに出るなど)で体温を調節する。ミユビは体温が特に低く、変動も大きい[4]。「最大10℃」は最大値で、通常の変動幅ではない。

ミユビでは、気温と摂食量に有意な関係があり、暖かい日ほど多く食べる。一般の哺乳類は寒い日に多く食べる傾向があるのと対照的である。理由として、暖かいほど前胃での発酵が速まるとする仮説が提示されているが、検証されたものではない[4]。

Pauli et al.(2016)は、野外でのエネルギー消費の低さは、基礎代謝を単純に下げた結果ではなく、体温調節と行動の工夫によるものと結論している[1]。

6. 動いても、あまり エネルギーは ふえないの?

6. 動く分も少ない ── 一つひとつの節約がつながる

6. 活動コストの小ささと、研究間の数値の幅

ふつうの ほにゅうるいは、動くと、じっと して いる ときの 三ばいほどの エネルギーを 使います。ナマケモノは、一・三ばいほどだった、という けんきゅうが あります[5]。

動いても、あまり ふえない。それほど、いつも 動きが すくない、と いうことです。

葉を ゆっくり 消化して、きんにくも すくなく、体温も かえて、動きも ゆっくり。ぜんぶが つながって、ナマケモノの くらしが できて いる ようです。

動いてもあまり増えない

ナマケモノの野外でのエネルギー消費は、じっとしているときの約1.3倍にすぎません。この資料が比べている一般的な哺乳類の目安は約3倍です[5]。3を1.3で割ると、おおよそ2.3倍の開きです。動いても使う量があまり増えないほど、いつも活動が少ないということです。

数字に幅があるわけ

代謝の低さは、1980年の測定では予測の約74%、2024年の研究では、じっとしているときの代謝が予測より39%低いと報告されています[3][5]。数字が違うのは、比べる基準や条件が違うからで、一つに統一はできません。

低い代謝の原因として、甲状腺の活動が低いことや、消化に時間がかかることが挙げられています[5]。

野外代謝率(FMR)は安静時代謝率(RMR)の約1.3倍にすぎず、資料が比較対象とする一般的な哺乳類の目安(約3倍)と対照的である。計算すると約2.3倍の差になる。活動によるエネルギー増加が小さいことを示す[5]。ただし、この1.3倍は、1980年研究の「実測の基礎代謝の約1.8倍」[3]とは基準・研究が異なり、混ぜて解釈できない。

低さの程度は、予測値の約74%[3]、40〜74%[4]、RMRが予測より39%低い[5]など、予測式や個体群により幅がある。

これらの資料を突き合わせると、低栄養の葉という条件のもと、消化・筋肉・体温・行動が一体となった節約として説明されている。ただし各要素の因果の順序は断定できず、なお研究途上と考えるのが妥当である。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

どうぶつえんで ナマケモノに あえたら、一分間 見て、なんど 動いたかを かぞえて みましょう。ほかの どうぶつと くらべて、ちがいを さがして みます。人や 生きものを 近づけすぎず、はなれて 見ます。

ずかんや 図書館の 本で、ナマケモノが なにを 食べるかを しらべると、この 話が つながります。

出かけてできること:動物園でナマケモノを見られたら、1分間に何回動くかを数えてみましょう。同じ時間に、ほかの動物はどうか比べると、「ゆっくり」の意味が具体的に分かります。動物には近づきすぎず、決まりを守って見学してください。

調べるなら:動物学の解説や、動物園の公式サイトの日本語の説明が読みやすいです。この記事の数字は研究によって違うので、別の資料で確かめてみるのもよい方法です。

動物園で観察する場合は、時間を決めて行動の回数を数えると、遅さが具体的に分かる。ただし飼育下の行動は野外と同じとは限らない。

資料としては、Pauli et al.(2016)[1]、Nagy & Montgomery(1980)[3]、PeerJ 2024の論文[5]があり、要旨や本文が読める。日本語の図鑑や動物園の解説を読み比べて、遅さの理由の説明や数値の書き方がどう違うかを見るのもよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:野外エネルギー消費の論文、動物学の研究、解説記事を突き合わせた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Pauli et al. (2016) "Arboreal folivores limit their energetic output, all the way to slothfulness", American Naturalist 188:196(要旨)。Europe PMC(検索結果) (野外エネルギー消費が哺乳類で最低、体温調節と行動の工夫について)
  2. Science News Explores「Mammal has world's slowest metabolism」。https://www.snexplores.org/article/mammal-has-worlds-slowest-metabolism (ミユビとフタユビの差の約31%について)
  3. Nagy & Montgomery (1980) Journal of Mammalogy 61:465(要旨)。https://academic.oup.com/jmammal/article-abstract/61/3/465/867178 (野外代謝と基礎代謝の比、一日に食べる葉の量について)
  4. "Sloths like it hot"(PMC4389270)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4389270/ (低エネルギーの食事、体温の変動、気温と食べる量について)
  5. ナマケモノの代謝と気候に関する研究(PeerJ 2024、PMC11441404)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11441404/ (安静時代謝、野外代謝との比、消化時間、甲状腺について)
  6. Craig Holdrege「What Does It Mean to Be a Sloth?」(The Nature Institute)。https://www.natureinstitute.org/article/craig-holdrege/what-does-it-mean-to-be-a-sloth (胃の大きさ、筋肉の割合、消化の遅さについて。古い研究の引用)
  7. "Cheap labor" Journal of Applied Physiology 2018(要旨)。Europe PMC(検索結果) (筋肉量と筋線維の型について)

なおした ところ

更新履歴

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