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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ゆきが つもると、どうして しずかに なるの?

雪の朝はなぜ静かなのか ── 音が吸い込まれる雪のすき間

新雪はなぜ音を吸うのか ── すき間・高い音・固まった雪

分野:自然

あめが ふると ザーザーと おとが します。ゆきは ふっても ほとんど おとが しません。

ゆきが つもった あさは、まちが しんと します。ゆきは、おとを どうして しまうのでしょうか。

雨は屋根や地面に当たって音を立てるのに、雪は降っているあいだ、ほとんど音がしません。積もった翌朝の静けさも、気のせいではなさそうです。

雪の中には、音を迎え入れる小さなすき間が、ぎっしり詰まっています。そのすき間で音がどうなるのか、なぜ固まった雪ではその力が弱まるのかを、複数の資料からたどります。

アルプスの観測では、新雪の平均密度は1立方メートルあたり68 kgで、氷の約7%ほどにすぎない[3]。体積の9割以上が空気ということになる(氷の密度を約917 kg/m³とした筆者の計算)。

この軽さが、雪の朝の静けさにどう関わるのか。多孔質の吸音、周波数による違い、固まった雪との差を、音響の解説と論文から整理する。

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1. ゆきは おとを たてずに おちる

1. 雨と雪、落ちるときの音のちがい

1. 降るとき ── 低密度の雪片は音を立てずに降りる

あめつぶは おもくて はやく おちます。じめんに あたる とき、ぱちぱちと おとが します。

ゆきの ひとひらは かるくて、ふわふわと ゆっくり おちて きます[2]。あたっても、おとは ほとんど しません。

でも、つもった あとの しずけさは、おちる ときの おとだけでは せつめいが つきません。つもった ゆきの 中が どう なって いるのか、のぞいて みましょう。

軽くて、ゆっくり

雪片は密度が低く、ふわふわと漂うように地面へ降りてきます[2]。雨粒のように勢いよく当たらないので、着地の音がほとんどしません。

静けさは、積もってから深まる

ただ、雪の朝の静けさは、降っている最中の話だけではありません。音を出さずに降ることと、積もった雪が周りの音を減らすことは、別の話です。次の章から、積もった雪のほうを見ていきます。

雪片は低密度で、ゆっくりと地面に降りるため、雨粒のような着地の衝突音を立てない[2]。

ただし、積雪後に周囲が静かになる現象は、降雪時に無音であることとは区別して考える必要がある。以下では積雪層そのものの音響特性を扱う。なお、雪の朝の静けさには人出の減少など音源側の要因も加わりうるが、本稿では扱った資料に根拠がないため、吸音の仕組みに限って述べる。

2. ゆきの 中は ほとんど くうき

2. 新雪の中身は、ほとんどが空気

2. 新雪の密度 ── 体積の約9割が空気

ふったばかりの ゆきは、ふわっと かるい ゆきです。ゆきの ひとつぶ ひとつぶの あいだに、くうきが たくさん はいって います。

アルプスの 山の 4つの ばしょで ふったばかりの ゆきの おもさを しらべた ところ、しらべた ゆきの へいきんでは、おなじ 大きさの こおりの 7パーセントほどでした[3]。のこりの 9わりほどは、くうきなどの すきまです。

1立方メートルで68kg

アルプスの4つの観測点で、1987年から2015年までの新雪を調べた論文があります。1時間ごとの新雪の密度は、平均すると1立方メートルあたり68kgでした[3]。

氷の密度を約917kg/m³とすると、68を917で割って約7.4%です。調べた新雪の平均では、体積の9割ほどが空気などのすき間、という筆者の計算になります。この68は平均で、新雪の密度は場所や降り方でかなり幅があるとも報告されています。

アルプスの4観測点(1987〜2015年)で、1時間ごとの新雪密度は平均68 kg/m³(標準偏差9)と報告されている[3]。氷の密度を約917 kg/m³とすると、その比は約7.4%、空隙は体積の約92%になる(筆者計算)。ただし新雪密度は事例により10〜350 kg/m³と幅が広く、68は平均値にすぎない[3]。

3. すきまに はいった おとは どう なる?

3. すき間に入った音は、熱に変わる

3. 多孔質の吸音 ── 音のエネルギーの熱への変換

おとは、くうきの ふるえです。ゆきの すきまに はいった おとは、ほそい みちで ゆれながら、すこしずつ ちからを なくします。

ためしに、スポンジを おもいうかべて ください。小さな あなが たくさん あいた かたちです。ゆきの すきまも にて いて、おとを すい こむ ざいりょうと おなじ なかまの つくりだと いわれます[2]。

すい こまれた おとは、ほんの すこしの ねつに かわります[1]。ただし、おとは みずのように たまって いくわけでは ありません。ゆきが あたたかく なる ほどでも ありません。

雪は吸音フォームの仲間に近い

雪は、細かいすき間だらけの「多孔質」の物質です。音響を専門にするケンタッキー大学の研究者は、雪を商用の吸音フォームに似た構造だと説明しています[2]。

音のエネルギーが熱に

雪片どうしのすき間に音が入ると、音のエネルギーの一部が熱に変わります[1]。私たちの耳には、その分だけ音が小さくなって届きます。

軽い雪ほど強い

多孔質の中を波が進むときの理論(ビオ理論)で計算した研究では、空隙率が0.8ほど以上の軽い雪で、音の弱まり方が密な雪より桁違いに大きくなりました[4]。軽い雪ほど音の波の弱まり方が大きくなる、という計算結果です。ただしこれは計算の結果で、実測した吸音率ではありません。

新雪は多孔質で、雪片間の空隙に入った音のエネルギーの一部が熱に変わる[1]。音響の専門家は雪を、商用の吸音フォームに似た低密度の多孔質と説明している[2]。

Biot型の多孔質モデルによる計算では、空隙率φが約0.8以上の軽い雪で、第1種縦波の減衰が密な雪より桁違いに大きい[4]。これは理論計算で、実測の吸音率ではない。損失の内訳(粘性・熱伝導など)は、確かめた資料の範囲では「熱に変わる」以上に書けない。

4. どれくらい おとを すうの?

4. どのくらい吸うのか ── 数字は条件しだい

4. 吸音率の値 ── 0.6〜0.89と、反射の小ささ

ある かがくしゃは、「ゆき 数センチから 10センチほどで、ひとの きこえる おとを 6わりほど すう」と せつめい しています[2]。

むかし、イギリスの かがくしゃが 10センチほどの ゆきで しらべた ところ、もっと たかい ねうちが でたと つたえられて います[1]。ただし、いそいで はかった ので おおよその 数字だと、ほんにんたちも かいたそうです。

6わりか、それ いじょうか。ゆきの かたさや あつさで かわるので、ひとつの 数には きめられません。

平均でおよそ60%

ケンタッキー大学の研究者は、数インチ(数cmから10cmほど)の雪は、耳に聞こえる音を平均でおよそ0.6、つまり6割ほど吸収すると述べています[2]。

もっと高い測定も

1930年代後半の英国の科学者が、厚さ4インチ(約10cm)の雪で騒音低減係数(NRC)0.89を報告したと紹介されています。高性能な吸音パネルなみの値です。ただし、この話は解説記事からの伝聞で、原論文までは確かめられていません。測定も急いで行ったので近似値だと、書き手自身が断っているそうです[1]。

数字が割れる理由

0.6と0.89は、測った雪の状態や音の高さがちがうのかもしれませんが、資料からは理由まで分かりません。数字を1つに決めず、「かなり吸う」と幅で受け取るのが安全です。

ケンタッキー大学の音響研究者は、数インチの雪は可聴域で平均およそ0.6の吸音率を持つと述べる[2]。一方、1930年代後半の英国の科学者が残響室で厚さ4インチ(約10cm)の雪を測り、NRC 0.89(高性能な吸音パネルなみ)と報告したとする紹介がある。ただし原論文は特定できず、測定は急いで行われ近似値だと本人たちが書いているとされる[1]。

値の差が厚さ・雪質・周波数の違いによるのかは、確かめた資料の範囲では不明であり、単一の値に絞らず幅で扱う。

反射の側からも裏づけがある。新雪表面での超音波(90 kHz)の反射係数は、垂直入射で0.1未満と低い[5]。ただし、これは実験室での超音波の測定で、耳に聞こえる音の値ではない。

5. たかい おとから きえて いく

5. 高い音から消えていく

5. 周波数依存 ── 高音は削られ、低音は残る

ゆきの うえで、おおきな おとを だして ろくおん した かがくしゃが います[6]。

ろくおん した おとの なみを みると、たかい ところが けずられて、ひくい おとが のこって いました。ゆきの ほそい すきまの くうきが ゆれて、たかい おとの ちからを うばうのです[6]。

この なみの かたちから、ゆきが どれくらい ぶあつい かも わかるそうです。おとが、ゆきの 中を のぞく めがねに なるのですね。

ゆきの上で録音した研究

アメリカ陸軍の寒冷地研究所の研究者らは、雪の上で大きな破裂音を出して録音しました。音の波は雪の細かなすき間の空気を揺らし、その揺れで音の高い成分が削られて、低い成分が残ります[6]。

雪の深さを音で測る

録音した波形から、雪の厚さと、空気の通りにくさ(流れ抵抗)を求められると紹介されています[6]。音が雪の中を探る道具になる、というわけです。

低い音は残りやすい

固まった雪で測った別の実験では、100〜20000Hzの音が急速に弱まる中で、最も残りやすいのは100〜200Hzの低い音でした[7]。雪の朝が「こもって聞こえる」のは、高い音から先に消えるからかもしれません。ただしこれは私の推測で、資料にそう書かれているわけではありません。

米陸軍寒冷地研究所の研究者は、雪上で大きな音を出して録音した。雪の細孔内の空気が振動して音の高周波成分が削られ、低周波成分が残る。波形から積雪の厚さと流れ抵抗を推定できるとされる[6]。

固まった雪(hard-pack snow)での実験でも、100〜20000 Hzの信号は急速に減衰し、残りやすさは100〜200 Hzで最大だった[7]。したがって雪は全音域を等しく吸うのではなく、高音側を優先的に削る。ただし後者は固い雪での結果で、新雪にそのまま当てはまるかは、扱った資料では確かめられていない。

6. かたまった ゆきや こおりでは?

6. 固まった雪や氷では、音が返ってくる

6. 固化した雪・氷 ── 吸音力の低下

ふりたての ゆきは、おとを よく すいます。でも、アスファルトや、かたく なった ゆき、こおりは、そんなに すいません[1]。こおった しばふも おなじです。

つまり、しずかなのは ふわふわの あいだ です。ひが たって かたまると、すきまが へって、おとが はねかえりやすく なるのでしょう。

ふった つぎの ひと、そのつぎの ひで、まちの ひびきが かわるか、きいて みたく なりますね。

新雪は圧倒的に吸う

新雪は、アスファルトや、固まった雪、氷、凍った草地より、はるかに音を吸うと説明されています[1]。

1日たつと変わる

超音波の実験室での測定では、新雪の表面はとても反射しにくく、垂直に当てた場合の反射係数は0.1未満でした。1日たつと空隙率がわずかに下がり、音の反応も変わったと報告されています[5]。

雪がとけて再び固まると音が遠くまで届く、という解説もありますが、私が確認できたのは要約までで、原文は確かめられていません。ふわふわが少しずつ固くなるほど、雪の静けさが弱まる、と考えるのが今の資料から言える範囲です。

新雪は、アスファルト・固まった雪・氷・凍った草地よりはるかに吸音力が高い[1]。超音波(90 kHz)の実験室測定では、新雪の反射係数は垂直入射で0.1未満と最も低く、1日後には空隙率がわずかに下がり音への応答も変わった[5]。

雪面が融解・再凍結すると音を反射しやすくなる、とする解説も見られるが、原文を確認できておらず、ここでは根拠としない。新雪では空隙が保たれ、吸音しやすいと考えられる。

じぶんでも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いえで できること

おふろばや ろうかで、こえを だして みましょう。つぎに、もうふや ふとんが たくさん ある へやで おなじ こえを だします。ひびきかたが ちがうか、きいて みてください。かたい かべは おとが はねかえり、やわらかい ものは おとを すいやすい、と いわれます。ゆきの ふわふわと おなじ しくみだと かんがえられます。ただし ほんとうの ゆきとは かんたんに くらべられません。

ゆきが ふったら

ゆきが ふった あさと、ふって 2、3にち たった あさで、そとの おとが ちがうか、きいて みましょう。まどから きくだけで だいじょうぶです。

音の響きを比べる

お風呂場のようなタイル張りの場所と、毛布やカーテンが多い部屋で、同じように声を出したり手を叩いたりして、響き方を比べます。硬くて平らなものは音をはね返し、ふわふわしたものは音を吸いやすい、という多孔質の考え方を体で確かめられます。雪そのものの実験ではない点に注意してください。

雪の日に耳を澄ます

雪が降った翌朝と、数日たって固まったころで、外の音の聞こえ方を比べます。窓を開けて聞くだけにして、凍った道や屋根の雪には近づかないようにしましょう。

もっと知りたいとき

Acentechの解説「The quiet snow」は、雪の吸音を建築音響の目で紹介しています[1]。Science Newsの記事「Muffled shots tell lot about snow」は、雪の上で録音した音から雪の厚さを求める話です[6]。どちらも英語です。

確かめる方法

室内で、タイルの浴室と毛布類の多い部屋を比べ、同じ音の響きの長さを録音や体感で比べる。多孔質と硬い面の違いを体験できるが、雪の吸音そのものを測る実験ではない。雪では、降った翌朝と数日後の外の音を窓越しに聞き比べる。

資料を読むなら

  • Acentech「The quiet snow」(新雪と固まった雪の吸音の違い、英国の測定の紹介)[1]
  • Lab Manager「The Science Behind Snow's Serenity」(多孔質・軽い雪片)[2]
  • Helfricht et al. 2018, HESS 22(新雪密度)[3]
  • Sidler 2015(多孔質モデルによる減衰の計算)[4]
  • Lieblappen et al. 2020(新雪の反射係数)[5]
  • Science News「Muffled shots tell lot about snow」(音の高い成分の減衰)[6]
  • Lang 1976, Journal of Glaciology 17(76)(固い雪での減衰)[7]

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で実際に使った資料だけを載せています。用途は各項目の末尾に記しました。

  1. Acentech「The quiet snow」 https://www.acentech.com/resources/the-quiet-snow/ (多孔質で音が熱に変わること、新雪と固まった雪・氷の比較、英国の測定の紹介)
  2. Lab Manager「The Science Behind Snow's Serenity」 https://www.labmanager.com/the-science-behind-snow-s-serenity-10608 (雪片が無音で降ること、吸音率の平均、吸音フォームとの類似)
  3. Helfricht et al. 2018, Hydrology and Earth System Sciences 22, 2655 https://hess.copernicus.org/articles/22/2655/2018/ (新雪の平均密度)
  4. Sidler 2015, A porosity-based Biot model for acoustic waves in snow (arXiv) https://arxiv.org/abs/1502.01284 (軽い雪での音の減衰の理論計算)
  5. Lieblappen et al. 2020, Frontiers in Earth Science 8:34 https://www.frontiersin.org/journals/earth-science/articles/10.3389/feart.2020.00034/pdf (新雪表面の超音波反射係数)
  6. Science News「Muffled shots tell lot about snow」 https://www.sciencenews.org/article/muffled-shots-tell-lot-about-snow (雪の上で録音した音の高い成分の減衰)
  7. Lang 1976, Journal of Glaciology 17(76) https://www.cambridge.org/core/journals/journal-of-glaciology/article/measurements-of-acoustic-properties-of-hardpack-snow/004022445D968A6F4A7A1E06F59204DF (固い雪での音の減衰と低音の残りやすさ)

なおした ところ

更新履歴

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