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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あぶらは ふつう みずに まざらないのに、せっけんだと どうして ながれるの?

混ざらない水と油を、石けんはどうやって仲立ちするのか

石けんの洗浄の仕組み ── 親水基・親油基、ミセル、可溶化と乳化、硬水での低下

分野:技術

あぶらの ついた おさらは、みずだけでは なかなか きれいに なりません。せっけんを つけると、ふしぎと つるっと おちます。

せっけんの つぶは、みずと あぶらの あいだで、どんな はたらきを して いるのでしょうか。いっしょに たどって みましょう。

サラダ油を水に入れて振っても、少しすると油は浮いてきて分かれます。ところが、石けんを一滴たらして振ると、様子ががらりと変わります。

石けんの分子の形から、ミセルという小さな球、透明になる場合と白くにごる場合の違い、そしてカルシウムなどの多い硬水で効き目が落ちる理由までを見ていきます。

石けんは、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)をあわせ持つ分子でできている[1][2]。濃度が上がると分子は球状のミセルをつくり、油を内部に取り込んだり、細かい油滴として水中に分散させたりする[3][4]。

このメモでは、その過程と、可溶化(透明)・乳化(白濁)の区別、固体汚れの分散、硬水での洗浄力の低下を、日本の業界団体・自治体の資料と化学の教科書を突き合わせて整理する。

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1. ふっても また わかれる ふたり

1. 水と油は、振ってもすぐ分かれる

1. 水と油の非相溶 ── 振っても分離する

みずと あぶらを びんに いれて、よく ふります。いっしゅん まざった ように 見えても、すぐに あぶらが うえに わかれて しまいます[4]。

あぶらよごれが みずで おちにくいのは、この ためです。よごれの あぶらは、みずに とけ こまないのです。

ところが、ここに せっけんを すこし 入れて ふると、しろっぽく にごって、まざったままに なります[4]。せっけんは、この ふたりの なかに 入って くれる ようです。

振るとどうなるか

水と油を容器に入れて強く振ると、油が細かい粒になって一時的に混ざったように見えます。けれども、しばらく置くと再び二層に分かれます[4]。

石けんを入れると

ここに石けんなどの界面活性剤を入れて振ると、白く濁ったまま混ざった状態が続きます[4]。油汚れが水で流れるのは、この「混ざった状態」を作れるからです。では石けんの分子は、どんな形をしているのでしょうか。

水と油を振ると、一時的に油滴が分散するが、静置すれば分離する。界面活性剤を加えて振ると、白濁して混合状態が保たれる[4]。

この資料は、水と油の間に働く表面張力が界面活性剤によって小さくなるため、油滴が多数できて界面の総面積が大きくなっても安定できる、と説明している[4]。洗浄の入口は、この「本来混ざらないものを混ぜた状態に保つ」働きにある。

3. あつまって ボールに なる

3. 集まって球になる ── ミセル

3. ミセル形成と臨界ミセル濃度

みずの なかに せっけんが たくさん ふえると、おたまじゃくしたちは あつまります。おを ないがわに、あたまを そとがわに して、まるい ボールに なります[3]。

みずが にがてな おが、みずに ふれないよう かくれる のです。この ボールを、ミセルと いいます。

ボールが できはじめる こさを、りんかいミセルのうどと よぶ ことが あります[3]。ボールは、めに 見えないほど ちいさい ものです。

尾を内側に隠す

水の中の石けんが増えていくと、分子は親油基を内側、親水基を外側(水側)に向けて集まり、球のような粒を作ります[3]。これがミセルです。

親水基を外に向けた球になると、親油基が水に触れにくくなるので、バラバラでいるより安定しやすいといわれます[1]。

ミセルができはじめる濃度

ミセルが作られはじめる濃度を、臨界ミセル濃度と呼びます[3]。この濃度を過ぎると、界面活性剤ならではの働き(乳化・洗浄など)が現れるという説明もあります。ただ、具体的な濃度は石けんの種類や条件で変わるため、数字はここでは挙げません。

界面活性剤の濃度が上がると、疎水基を内側、親水基を外側(水側)に向けた球状の会合体、すなわちミセルが形成される[3]。親水基を外に向けた球になれば、親油基が水に触れにくくなるため、系が安定しやすい[1]。

ミセルが形成されはじめる濃度を臨界ミセル濃度(りんかいミセルのうど、cmc)という[3]。cmc以下でもミセルが皆無というわけではなく、「形成されはじめる」濃度である点には注意が要る[3]。cmc以上で乳化・可溶化・分散・洗浄などの性能が現れると説明されている。

4. あぶらを つつんで はこぶ

4. 油を内側に包み込む ── 可溶化

4. 可溶化 ── ミセル内部への油の取り込み

ボールの なかは、おの ところです。おは あぶらが すきなので、みずに とけにくい あぶらが、ボールの なかに 入りこめます[3]。

あぶらは、せっけんの つぶ(おたまじゃくし)たちに つつまれて、みずの なかを はこばれます。だから みずで ながれるのです[2]。

これは、あぶらを ふろしきで つつんで、みずの ながれに のせる ような ものです。ただし ほんとうは、つつむ ものも つつまれる ものも、めに 見えない ちいささです。

ミセルの中心は油の世界

ミセルの内側には、親油基が集まっています。そこは油になじみやすい場所なので、水に溶けにくい油性の物質を内部に取り込めます。この現象を可溶化と呼び、洗浄に大切な働きの一つとされています[3]。

化学の教科書も、グリースや油滴が、ミセルの中心にある石けんの疎水性の尾に包まれて水中に溶かし込まれる、と説明しています[2]。水で流せるのは、油そのものが水に溶けたのではなく、尾に囲まれて水になじむ姿になったからです。

ミセルの中心部は疎水性で、水に溶けにくい油性物質を内部に取り込める。この現象が可溶化で、洗浄に寄与する重要な作用とされる[3]。

OpenStax の有機化学の教科書は、グリースや油滴が、ミセル中心の非極性の疎水性の尾に被覆されることで水中に可溶化される、と述べる[2]。ミセルは、油を外側の水から隔離して水中を運ぶ容器の役割を果たす。

5. しろく にごるのは どうして?

5. 透明になる場合と、白くにごる場合

5. 可溶化(透明)と乳化(白濁)、固体汚れの分散、浸透

せんたくや おさらあらいの みずは、しろっぽく にごる ことが あります。あぶらが、ミセルよりも ずっと おおきな つぶに なって うかぶ ときです[4]。

この つぶは、めに 見える ほどなので、ひかりが はねかえって しろく 見えます[4]。ミセルの なかに おさまった あぶらだけなら、すきとおって 見えます。

すすの ような かたい よごれも、せっけんの つぶが まわりに くっついて、みずの なかに ちらばります[4]。

透明と白濁の違い

油がミセルの中に入った可溶化の液は透明に見えます。一方、乳化では油滴がミセルより大きな粒になり、液が白く濁って見えます[4]。洗濯や皿洗いの水が白っぽくなるのは、乳化の側の姿だといわれています。

固体の汚れと、水のしみ込み

すすのような固体の粒子は、周りに界面活性剤の分子がくっついて、水中に散らばって安定します。これを分散といいます[4]。

石けんは表面張力も弱めるので、水が布などにしみ込みやすくなります(浸透)[5]。乳化・分散・浸透が組み合わさって、汚れが落ちるのです。

なお、実際の洗濯や皿洗いで、可溶化と乳化のどちらがどれだけ働いているかの割合は、ここで使った資料からは分かりません。

可溶化した液は、粒がミセルの大きさなので透明に見える。乳化した液は、油滴がミセルより格段に大きく、可視光を散乱するため白濁して見える[4]。洗濯や皿洗いの泡水が白濁するのは乳化側の姿であり、「ミセル=透明」と単純に結びつけることはできない[4]。

固体の汚れ粒子(すす等)は、周囲に界面活性剤分子が吸着して水中に分散し安定する[4]。さらに、表面張力が弱まることで水が繊維に浸透しやすくなる[5]。汚れ落としは、乳化・分散・浸透などが組み合わさって進む[5]。

なお、洗浄の現場でミセルへの可溶化と乳化・分散がそれぞれどの程度寄与するのかは、参照した資料からは定量的に判断できない。

6. かたい みずだと、よわく なる

6. 硬水で効き目が落ちる ── 石けんカスのできかた

6. 硬水中の金属石けん生成と洗浄力の低下

せっけんが うまく はたらかない ことも あります。みずに カルシウムなどが おおく とけた、こうすいの ときです。

せっけんは、みずに とけない かたまりに かわって しまいます[2]。おふろの ふちに つく しろい わも、そのなかまだと いわれます。

この かたまりは、よごれに くっつく まえに できて しまうので、よごれを おとす せっけんが へります[6]。

水に溶けない石けんへ

硬水にはマグネシウムやカルシウムが多く含まれます。石けんは、それらと出会うと、水に溶けない塩に変わります[2]。浴槽にできる輪のような石けんカスは、この変化の結果として説明されます。

汚れにつく前に使われてしまう

この反応は、石けんが汚れにとりつくよりも先に起こります。金属石けんが多くできるほど、汚れ落としに回る石けんが減ります[6]。硬度の高い水では、より多くの石けんが必要になる、と説明されています。

硬水中では、可溶性の石けん(ナトリウム塩)が不溶性のマグネシウム塩・カルシウム塩へ変わる[2]。浴槽の輪状の石けんカスはこの沈殿にあたる。

石けんとカルシウムイオンの反応は、石けんが汚れに吸着するより先に起こる。金属石けんが増えるほど洗浄に使える石けん分が減り、硬度の高い水ではより多くの石けんが要る[6]。ミセルをつくる分子そのものが減ることが、洗浄力低下の背景にある。

7. じぶんで ためして みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

びんで ふって みよう

すきとおった びんに みずと、ほんの すこしの サラダゆを 入れます。ふたを しめて ふり、あぶらの ようすを 見ます。

つぎに、おとなと いっしょに、せっけんの あわ みずを ひとたらし くわえて、また ふります。にごりかたや、わかれる はやさを くらべましょう。

びんの ふたは しっかり しめます。のこった みずは、おとなと いっしょに すてます。

今日できること

透明なペットボトルに水と少量のサラダ油を入れ、ふたをして振ります。油が分かれるまでの時間を測ってから、石けん水を数滴加えてもう一度振り、濁り方と分かれ方を比べます。ふたはしっかり閉め、こぼれた液は拭き取ってください。

もっと調べるなら

「乳化」と「可溶化」の違いを、マヨネーズや牛乳の例で調べると、身近なところでも同じ仕組みが見つかります。

今日できること

透明な容器に水と少量の食用油を入れて振り、静置して分離するまでの時間を測る。次に石けん水を数滴加えて振り、濁りと分離の速さを比較する。ふたを閉め、こぼれた液は拭き取る。

資料を読むなら

日本化粧品工業会の界面活性剤の解説([1])は短く読みやすい。ミセルと可溶化の詳細は[3][4]、硬水との関係は[6]が手がかりになる。cmcの数値と洗浄力の関係は、この記事では扱っていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の説明に使った資料です。石けんの歴史・作り方は既存のメモ「石けんの汚れ落とし」に譲り、ここでは扱いません。

  1. 日本化粧品工業会「水と油が仲良く同居」 https://www.jcia.org/user/public/knowledge/explain/surfactant (親水基・親油基、ミセルが安定な理由)
  2. OpenStax Organic Chemistry 27.2 Soap (LibreTexts) https://chem.libretexts.org/Bookshelves/Organic_Chemistry/Organic_Chemistry_(OpenStax)/27:_Biomolecules_-_Lipids/27.02:_Soap (石けんの構造、油の可溶化、硬水での変化。英語)
  3. 石鹸百科「界面活性剤の作用(2) ミセル形成と可溶化」 https://www.live-science.com/honkan/theory/surfac03.html (ミセル、臨界ミセル濃度、可溶化)
  4. 石鹸百科「界面活性剤の作用(3) 乳化と分散」 https://www.live-science.com/honkan/theory/surfac04.html (乳化と可溶化の見え方、分散)
  5. さいたま市 サイエンスなび「石けんと洗剤の科学」 https://www.city.saitama.lg.jp/sciencenavi/kurashi/004/p039256.html (表面張力と浸透)
  6. 石鹸百科「石鹸と硬水・軟水」 https://www.live-science.com/honkan/soap/soapbasic08.html (硬水で洗浄に使える石けんが減る)

なおした ところ

更新履歴

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