1. どうして ひづけと じこくの、ふたつを あわせるの?
1. 早見盤は、日付と時刻の2つを合わせて使う
1. 外周の日付と内周の時刻 ── 2つの目盛りを合わせる
せいざはやみばんは、まるい ほしの ばんと、たまごがたの まどが かさなって できて います。ばんを まわして、ひづけと じこくを あわせます。すると、まどの なかに、そのときの ほしぞらが あらわれます[2]。
ひづけだけでは ダメなのでしょうか。じこくだけでも ダメなのでしょうか。つぎの しょうで たしかめます。
2. どうして おなじ じかんでも、ほしぞらは まいにち ちがうの?
2. 同じ時刻に見ると、星は毎日約4分ぶん先へ進む
2. 日周運動の周期は太陽日より約4分短い ── 日付の目盛りの正体
ほしは、1にちで ぐるっと 1しゅう まわって 見えます。ところが、とけいは たいようの うごきに あわせて つくられて います。この ふたつの あいだに、まいにち 4ふんほどの ずれが うまれます[3]。
ずれは ちいさく 見えます。でも、30にち たまると 2じかんに なります。1ねんたつと、ほぼ 1しゅうぶん ずれて、もとの ばしょへ もどって きます。
ひづけの めもりは、この 1ねんで 1しゅうする ずれを、まるい わに したものです。だから ふゆの ほしざと なつの ほしざが、いれかわるのです。
星は1日に1周して見えますが、その周期は時計の1日と少し違います。時計は太陽に合わせてあり、星を基準にした時計(恒星時)は、太陽に合わせた1日ごとに約4分進みます[3]。つまり、同じ星が真南にくる時刻は、毎日約4分ずつ早まります。
1か月なら約2時間、365日分をたすと約24時間、つまりちょうど1周ぶんです(この2つは計算値です)。冬の星座と夏の星座が入れかわるのは、このずれが積み重なるからです。
早見盤の日付の目盛りは、1年で1周するこのずれを円の外周に並べたものと読めます。時刻だけを合わせても、どの日付かが決まらなければ、星の円盤をどこまで回せばよいのか決まりません。
恒星時の時計は、平均太陽日1日あたり約4分進む[3]。そのため、同じ星が南中する時刻は毎日約4分早まり、同じ時刻の星空は日ごとに西へずれていく。1か月で約2時間、365日で約24時間(1周)の差になる(後の2つは上の数値からの計算値)。
この解釈に立てば、早見盤の外周の日付は「1年で1周するずれ」、内周の時刻は「1日で1周する星の動き」を表す2つの回転量である。円盤の位置は、この2つの目盛りを合わせて初めて1通りに決まる、と説明できる。
言いかえれば、盤の使い方は、太陽時と恒星時のずれを人が手で補正する操作である。では、この盤はどこへ持っていっても同じように使えるのだろうか。
3. まどの かたちは、どこで きまるの?
3. 窓の形は、星を見る場所の緯度で決まる
3. 窓の形は観察地の緯度で決まる ── 地平線を切り抜く
せいざはやみばんの まどは、ほしを 見る ばしょの、きたから みなみへの いちで かたちが かわります。これを 「いど」と いいます[1]。
ひとつの いどに あわせた ばんは、その いどの ちかくで つかう ための ものです。ばんに よって、つかえる はんいは ちがいます[5]。
すんでいる ばしょが とおく はなれた ときは、いどに あわせた ばんを えらびます。たとえば、きたの いどようの ばんを みなみの くにへ もって いくと、まどが あいません。
窓の縁は、観察する土地の水平線にあたります。北緯35度で見える空の範囲と、赤道近くで見える範囲は違うので、盤は緯度ごとに窓を切りぬいて作ります。1つの緯度用の盤は、その緯度の近くで使うためのもので、使える範囲は製品によって違います[5]。
大阪市立科学館の資料には、日本の盤の改訂が緯度にどう応えてきたかが出ています。1957年の大改訂では、金属の星図板と透明プラスチックの窓になり、緯度による見え方の補正線が描かれて、北緯30〜45度の星空が分かるようになりました[1]。台紙には、5度おきの窓の目盛りがあり、緯度に合わせて切りぬく型の盤もありました[1]。
東西の違いには、経度の補正があります。盤の目盛りは東経135度を基準に作られており、東経136度の地点では南中時刻が4分早くなります[1]。これは、毎日の4分のずれとは別の話です。
窓(地平線)は観察地の緯度に合わせて切り抜かれ、1つの緯度用の盤は、その緯度の近くで使うもので、使える範囲は製品ごとに異なる[5]。したがって、北緯35度用の窓を南半球へ持っていっても、地平線の位置が合わない。
日本の盤は、この緯度の問題に順に対応してきた。1944年に水路部が南緯30度用、1951年に海上保安庁水路部が北緯30度用の盤を作り、1957年の大改訂で金属の星図板と透明プラスチックの窓に替わって、緯度による補正線が入り、北緯30〜45度の星空が分かるようになった[1]。台紙側には北緯30〜45度まで5度おきの窓の目盛りがあり、緯度に合わせて切り抜く型もある(発行年は1960年代ごろと思われる)[1]。
東西方向は経度の補正で扱う。目盛りは東経135度が基準で、東経136度なら南中時刻は4分早い。1951年の改訂版で経度補正の目盛りと窓が加わった[1]。経度1度=4分は、毎日の約4分のずれとは別の関係である。
4. ばんの なかの そらは、ほんとうの そらと おなじ?
4. 平らな盤の中の空は、実際の空とは大きさも形も違う
4. 天球を平面に写すと、星座の形がゆがむ ── 南北を分けた盤
ほしぞらは、まるい ドームのように ひろがって います。それを たいらな ばんに して いるので、せいざの おおきさや かたちは ゆがんで います[2]。ほんとうの そらとは、まったく ちがう ところも あります。
とくに、みなみの ひくい ほうの そらは、ゆがみが おおきく なります。そこで、おもてに きたの そら、うらに みなみの そらを のせた ばんも つくられました[1]。
5. ほしを さがす だけ じゃなく、いちばん よく 見える ときも わかるの?
5. 目当ての星が、いつ一番高くなるかも読み取れる
5. 逆引き ── 星を南北線に合わせ、南中する日時と高さを読む
ばんは、さかさまにも つかえます。見たい ほしを、ばんの みなみと きたを むすぶ せんに あわせます。そのとき さして いる ひづけと じこくが、そのほしが いちばん たかく なる ときです[2]。
そのときの ほしの たかさも わかります。ほしが いちばん たかく なる ときは、見つけやすい じょうけんの ひとつです。だから ばんは、「いつ 見るのが いいか」を おしえて くれる どうぐでも あります[2]。
名古屋市科学館の解説には、盤を回して目的の星を南北線(子午線)に合わせ、そのときの時刻と日付、地平高度を読み取る使い方が出ています。その日時に、南の空をどれくらい見上げればよいかが分かります[2]。
星や星座が南北線にさしかかったときは、いちばん高く、向きも正しくなるので、観察にはよい条件になる、と同じ資料は説明しています[2]。「いま何が見えるか」を知る道具から、「いつ見るのがよいか」を決める道具に変わります。
盤を回して目的の星を南北線(子午線)に合わせ、そのときの時刻・日付・地平高度を読むと、その日時に南の空を何度見上げればよいかが分かる。星が南北線にさしかかったときは最も高く、向きも正しくなるので、観察の条件がよい[2]。
順引き(日時から星空)と逆引き(星から日時)は、同じ2つの目盛りを使う。この対称性は、日付と時刻が1つの円盤の上で結びついているから成り立つ。
6. にほんでは、いつから つかわれて きたの?
6. 日本では、いつごろから、どんな思いで作られてきたのか
6. 1907年の初版から1950年代の普及まで ── 「やさしく」を目指した編者たち
にほんで うられた いちばん ふるい せいざはやみばんと おもわれるのは、1907ねんに でた 「せいざはやみ」です。せつめいがきは、ほんの すうぎょうだったと いわれます[1]。ミヤザワケンジの さくひんに でてくる せいざはやみは、この ばんだと かんがえられて います。
1929ねんの 「ポケットせいざはやみ」を つくった ひとは、「ひとびとに やさしく せいざを しって もらう ために つくった」と かいて います[1]。
ひろく つかわれる ように なったのは、1950ねんだいです。うちゅうへの かんしんが たかまった ころでした[4]。
1907年の『星座早見』は、日本天文学会の編集、東京天文台の平山信の監修で、三省堂が出しました。日本で最も古い市販品と思われます[1]。天文学にくわしかった宮沢賢治が作品に登場させた星座早見は、この製品だったと考えられています[1]。
1929年初版の宮森作造編『ポケット星座早見』には、「かかる人々にやさしく星座を知らしめるために作った」という趣旨の説明があります。編者が気軽に星空を楽しんでほしいと考えていたことがうかがえます[1]。
厚紙製で軽く手軽だったこの道具が広く普及したのは、スプートニク1号などが打ち上げられて宇宙への関心が高まった1950年代に入ってからです[4]。
1907年初版の『星座早見』は、日本で市販された最も古いものと思われ、宮沢賢治が作品に登場させた早見として使っていたと考えられている[1](「考えられている」段階で、断定はできない)。この賢治との結びつきを頼りに、当時の盤を思い浮かべることはできる。
1929年初版の宮森作造編『ポケット星座早見』の説明文は、「かかる人々にやさしく星座を知らしめるために作ったのがこの星座早見である」と述べ、気軽に星空を楽しんでほしいという編者の考えがうかがえる。発行から約半年で増刷を重ねたという[1]。
ただ、一般への普及は、スプートニク1号などが打ち上げられて宇宙への関心が高まった1950年代からである。厚紙製で軽く手軽だったことも、その背景にあった[4]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
まどの ふちなど、うごかない めじるしを きめます。ある ばんの おなじ じかんに、そこから 見える あかるい ほしの いちを おぼえます。1しゅうかん あとの おなじ じかんに、もういちど 見ます。いちが かわって いれば、ほしぞらが ずれた しるしです。よるの かんさつは おうちの ひとと いっしょに します。
出かけてできること
かがくかんや はくぶつかんで、いろいろな せいざはやみばんを 見て みましょう。まどの かたちや、おもてと うらの ちがいを さがせます。
こうしきの じょうほう
かがくかんの かいせつしりょうに、ばんの つかいかたが のって います。
今日できること
「ずれ」を自分の目で確かめる観察ができます。動かない目印(窓の枠や電柱)を決めて、ある夜の同じ時刻に、そこから見える明るい星の位置を覚えます。1週間後の同じ時刻に、もう一度見てください。位置が変わっていれば、それが日付のずれです。夜の観察は、家の人と一緒にしましょう。
出かけてできること
科学館や博物館で、緯度違いの盤や、表と裏に北の空・南の空を載せた盤を見比べられることがあります。窓の形の違いを探してみてください。
公式情報
大阪市立科学館や名古屋市科学館の解説資料に、盤の見方と歴史が載っています。
動かない目印を1つ決め、ある夜の同じ時刻に見える明るい星の位置を記録して、1週間後に同じ時刻で再観察する。星空が約28分ぶん(約4分×7日)先へ進んだと考えて、星の位置がどう変わるかを予想してから比べると、日付の目盛りの意味を実感できる。夜間の観察は、安全に配慮して行う。
出かけてできること
科学館・博物館で、緯度別の窓や、表裏で南北を分けた盤を見比べる。窓の形の違いから、どの緯度に合わせた盤かを読みとってみるとよい。
公式情報
大阪市立科学館の『星座早見盤あれこれ』と名古屋市科学館の展示解説A535を原典で読み、恒星時のずれの説明と本記事の理解を照らしてみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
盤の歴史と改訂は大阪市立科学館の資料、使い方は名古屋市科学館の解説、恒星時のずれは辞典系サイト、緯度のしくみの一部は英語版Wikipediaによる。細部は原典で確かめてほしい。
- 大阪市立科学館『星座早見盤あれこれ』(嘉数次人)https://www.sci-museum.jp/wp-content/uploads/2024/03/universe202403_4-9.pdf (初版・緯度と経度の補正・改訂・宮沢賢治・宮森作造)
- 名古屋市科学館 展示解説A535「星座早見盤」 https://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibit_files/pdf/A535.pdf (使い方・ゆがみ・逆引き)
- コトバンク「恒星時」 https://kotobank.jp/word/恒星時 (1日約4分のずれ)
- 茨城県自然博物館 星座早見盤セット解説 https://www.nat.museum.ibk.ed.jp/wp-content/uploads/2024/08/34.pdf (普及の時期)
- Planisphere(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Planisphere (緯度ごとの窓・ルーツ)
なおした ところ
更新履歴
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