1. ニュートンは、なにに こまったの?
1. ニュートンが困った相手は、空気だった
1. ニュートンの嘆き ── 星を見る空気は「絶えず震えている」
ニュートンは、300ねん ほど まえの 学者です。どんなに よい 望遠鏡を つくっても、星が ゆらゆら して、思う ほど はっきり 見えませんでした。
ニュートンは『光学』と いう 本に、星を 見る ときに 通る 空気は、いつも ふるえて いる と 書きました。高い たてものから 地面に おちる かげが ゆれるのも、星が またたくのも、その しょうこだと いいます。ただし、口径の 大きい 望遠鏡で 見ると、星は またたかない とも 書いて います[1]。
そして、この ふるえを さける には、いちばん しずかで すんだ 空気の ところへ 行く しか ない、と 考えました。それは、とても 高い 山の 上かも しれない、と いうのです[1]。
星の ひかりに、空気は なにを して いるのでしょう。
ニュートンは『光学』という本の中で、星を見るときに通る空気は「絶えず震えている」と述べました。高い塔から落ちる影のゆれや、星のまたたきが、その証拠だというのです。ただし、口径の大きい望遠鏡で見ると、星はまたたかない、とも書いています[1]。
望遠鏡をどれだけ磨いても、性能には限りがありました。その限界に対して、ニュートンが唯一の手立てとして挙げたのは、最も静かで澄んだ空気を探すことです。そんな空気は、最も高い山の頂の、厚い雲より上にあるかもしれない、と書いています[1]。
星をきらめかせているのは、星ではなく、私たちと星の間の空気。300年前の物理学者は、すでにそこに目をつけていました。では、空気は星の光に何をしているのでしょうか。
ニュートンは『光学』(Opticks)で、星を見るときに通る空気は「絶えず震えている」と述べた。高い塔から落ちる影の揺れと、恒星のまたたきが、その証拠だという。ただし、口径の大きい望遠鏡で見ると恒星はまたたかない、という説明も併せて述べている[1]。
望遠鏡の性能には限界があり、その唯一の対策は「最も静かで澄んだ空気」を探すことで、それは「最も高い山の頂の、厚い雲より上」にあるかもしれない、と書いている[1]。この記事では、ニュートンの文をリチャード・グレゴリーの論文が引いた形で読んでいる。原典の版までは確かめていない。
星をまたたかせているのは星自身ではなく、光の通り道の空気だ。その空気の中で光に何が起きているのかを、次の章で見る。
2. 空気の 中で、光は どう なるの?
2. 空気のかたまりが、見えないレンズになる
2. 密度の差と屈折 ── 気団が凸レンズ・凹レンズのように働く
星の ひかりは、さいごに 地球の 空気の 中を 通って、わたしたちの 目に とどきます。空気は、場所に よって あたたかかったり、つめたかったり します。風も ふきます。すると、空気が ぎゅっと つまった ところと、すかすかの ところが できます[3]。
ひかりは、こさの ちがう 空気に 入ると、少し まがります。これを 屈折と いいます。空気の かたまりは、見えない レンズの ように はたらきます。ひかりが あつまる ところでは 星が 明るく、ひろがる ところでは 暗く 見えます。これが チカチカに 見える わけです[4]。
夏の 道ばたで、とおくの けしきが ゆらゆら して 見えた ことは ありませんか。あれも、あつい 空気が ゆれて、光の 道すじが かわる ためです。星の ひかりも、ゆれる 空気の かたまりを たくさん 通って きます。ただし、これは たとえです。星の ひかりは 地球の 空気を ぜんぶ 通って くるので、ゆれ方は もっと ふくざつです。
夜の まちの あかりも、とおくから 見ると きらきら します。風や、たてものの ねつで 空気が ゆれる ため、同じ しくみだと いわれて います[4]。
星のまたたきは、専門の言葉で「シンチレーション」といいます。主に、下層大気の密度の変化で光が屈折して起きるものです[2]。
空気は温度の違いや風で、場所ごとにわずかな密度の差ができます。その影響で星の光が少し曲がり、曲がり方の小さなゆらぎが積み重なると、星がまたたいて見えます。近くに並んだ2つの星が1つに重なって見えることもあるそうです[3]。
大阪大学の解説は、空気のかたまりを、凸レンズや凹レンズにたとえています。密度の高い空気のかたまりと低いかたまりが、光を集めたり広げたりします。地上では、星の光が強くなる場所と弱くなる場所ができます。この明るさの入れ替わりが、チカチカに見えるのです[4]。
夏の道路の先が、ゆらゆらして見えることがあります。熱い空気が揺れて光の道すじが変わるためで、星のまたたきに似た現象です。ただしこれはたとえで、星の光は大気全体を通ってくるので、実際はもっと複雑です。
同じ解説は、夜景の街灯のきらめきも、風やビルの熱気でできる上昇気流によるもので、原理は同じだと述べています[4]。
星のまたたきはシンチレーションと呼ばれ、主として下層大気の密度変化による光の屈折で生じる[2]。空気は温度差や風によって密度にわずかな差ができ、星の光がその影響でわずかに屈折する。ゆらぎが積み重なると星が瞬いて見え、近接する2つの星が1つに重なって見えることもある[3]。
大阪大学の解説は、大気の屈折率が圧力・温度・湿度で変わり、密度の高い気団と低い気団が凸レンズ・凹レンズのように働くと述べる。地上では、星の光が集まって強くなる所と、広がって弱くなる所が生じ、それが点滅に見える。夜景の街灯も、風やビルの熱気による上昇気流で、同じようにきらきらして見えるという[4]。
望遠鏡の観測では、光の明るさの瞬間ごとの変化をシンチレーション、光が来る方向(位置)の変化をシーイングと使い分ける[2]。
どの高さの空気の影響がいちばん大きいかは、資料によって数字が割れている。大阪大の解説は上空11km付近、1957年の論文は神戸の観測で約3kmを挙げる[4][9]。ここでは高さを断定しない。
3. またたく 星と、またたきにくい 星は?
3. 恒星は点、惑星は小さな丸 ── 空の低さでも変わる
3. 点光源と面光源、そして高度 ── またたきの強さを決める条件
星の ひかりは、とても とおくから 来ます。星は、点のように 小さく 見えます。点の ひかりは、空気の ゆれの えいきょうを うけやすく、明るさが ちらちら かわります[4]。
金星の ような 惑星は ちがいます。大きさの ある 小さな 丸に 見えます。丸は、点が たくさん あつまった ものと 考えられます。それぞれの ゆれが 重なって、ならされるので、明るさの かわり方は あまり 目立ちません[4]。
空の ひくい ところの 星は、もっと よく またたきます。光が 空気の 中を 通る 道のりが、長く なるからです[3]。さらに ひくいと、色まで ちらちら かわって 見える ことも あると いわれます[5]。
なお、星その ものの 明るさが かわる 星も あります。それは「変光星」と いって、空気の せいで ちらつく またたきとは べつの ものです[4]。
星がまたたきやすい理由は、光の出どころの大きさにもあります。恒星は非常に遠くにあり、点の光源とみなせます。そのため、空気のわずかなゆらぎで明るさが変わって見えます[4]。
金星などの惑星は、地球から見ると像に大きさがあります。たくさんの点光源が集まったものとみなせるので、それぞれのゆらぎが重なって平均化され、全体の明るさの変化はあまり目立ちません[4]。「まったくまたたかない」のではなく、「目立ちにくい」という説明です。
高さでも違いが出ます。星が地平線に近いほど、光が空気の中を通る距離が長くなり、よりまたたきやすくなります[3]。天頂付近より地平線近くのほうがよくまたたき、高度50度以下では星の色もまたたく(色が変わって見える)とされます[5]。色がまたたく仕組みは、今回の資料では分かりませんでした。
また、星そのものの明るさが実際に変わる「変光星」も、空気のせいで変わって見えるまたたきとは別のものです[4]。
恒星は非常に遠く、点光源とみなせるので、大気のわずかなゆらぎで明るさが変わる。金星のような惑星は像が大きく、多数の点光源の集まりとみなせる。それぞれのゆらぎが重なって平均化されるため、全体の明るさの変化は目立ちにくい[4]。「まったくまたたかない」ではなく「目立ちにくい」という説明である。
高度の影響もある。地平線に近いほど光が大気中を通る距離が長く、またたきやすい[3]。天頂付近より地平線近くでよくまたたき、高度50°以下では星の「色」もまたたく(色が変わって見える)とされる[5]。色がまたたく理由は、今回の資料では確かめられなかった。
星自体の明るさが実際に変わる変光星(例:中性子星の自転で周期的に明るさが変わるパルサー)は、大気のために明るさが変わって見えるシンチレーションとは別物である[4]。
4. 大きな 望遠鏡は、どこに あるの?
4. 望遠鏡は、空気から逃げていった
4. 山頂と宇宙 ── 空気の影響を減らす工夫
星の かたちが ゆれると、大きな 望遠鏡でも、力を 出しきれません。ゆれの 大きさが 1秒角ぐらいでも、こまるのです[3]。
そこで、大きな 望遠鏡の 多くは、ハワイの マウナケア山など、空気の うすい 高い 山に 作られて います[3]。ニュートンが 書いた「高い 山の 上」は、いま、本当に 望遠鏡の おきばに なって います。
天文台は、地面の ねつの えいきょうを へらす ために、山の 上に 作ります。さむくても、ストーブは つかわない ように します[4]。ストーブの ねつで 空気が うごくと、ゆれが ふえるから だと 考えられます。
もっと 思いきった やり方も あります。空気の 外に 出て しまう ことです。1990ねんに 打ち上げられた ハッブル宇宙望遠鏡などは、宇宙に おかれて います[3]。空気が ない ので、とても くっきりした 写真が とれます[4]。
大気のゆらぎで星の像が1秒角ほど揺れると、望遠鏡の性能を十分に生かせないといいます。1秒角は1度の3600分の1で、計算すると、1キロ先にある約5ミリのものの見かけの大きさです。これは式から出した計算値で、資料に載っている数字ではありません[3]。
そこで、大型望遠鏡の多くは、ハワイのマウナケア山をはじめ、空気の薄い高山に建てられています[3]。天文台は山頂に置き、地表の熱の影響を少なくします。寒くてもストーブを使わないようにする、という工夫も紹介されています[4]。ストーブの熱でも空気は動くので、そのためだと考えられます。
300年前にニュートンが書いた「最も高い山の頂」は、こうして、実際に望遠鏡の置き場所になりました。
さらに徹底した方法が、空気の外に出ることです。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、宇宙望遠鏡はシンチレーションの影響を受けないように宇宙空間に置かれました[3]。真空の中なので、大気の影響を受けず、非常に鮮明な天体写真が撮れます[4]。
大気のゆらぎで星の像が1秒角(1度の3600分の1)程度揺らぐと、望遠鏡の性能を生かしきれない。1秒角は、計算すると1km先の約4.8mmの見かけの大きさにあたる(この換算は書き手の計算である)[3]。
対策の一つが場所である。大型望遠鏡の多くは、ハワイのマウナケア山をはじめとする、空気の薄い高山に建設されている[3]。天文台は山頂に置いて地表の熱の影響を減らし、寒くてもストーブを使わないようにするという運用上の工夫も紹介されている[4]。ニュートンが予想した「高い山の頂」は、結果として実際の観測地になったことになる。
もう一つは、大気の外に出ることだ。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、宇宙望遠鏡はシンチレーションの影響を避けるために宇宙空間に置かれた[3]。真空中にあるので、大気の影響をまったく受けず、非常に鮮明な天体写真が撮れる[4]。ただし、この解説にあるハッブルの軌道高度は、他の資料と数字が合わないため、ここでは書かない。
5. 空の 上に、人工の 星を 作る?
5. 空気のゆれを測って打ち消す ── 補償光学とレーザーの人工星
5. 補償光学 ── ゆらぎを測って補正し、レーザーで人工の星を作る
山の 上でも、空気は すこし ゆれます。日本の すばる望遠鏡が ある マウナケア山でも、ものの 見える 細かさは、ふつうは 0.6秒角ほどです。空気が なければ 出せる はずの 細かさより、10ばいぐらい 悪く なります[6]。
そこで、すばる望遠鏡は、空気の ゆれを はかって、その ゆれを うちけす しくみを つかって います。いくつもの 鏡の うち、形を すばやく かえる 鏡を つかって、ゆれで みだれた 光を もとに もどします。この しくみで、見える 細かさは、10ばいぐらい よく なりました[6]。
ゆれを はかるには、目じるしの 明るい 星が いります。近くに 明るい 星が ない ときは、レーザーの 光を 空に むけて、高い ところに ある ナトリウムと いう ものの 原子を 光らせます。つまり、人工の 星を 作って、目じるしに するのです[7]。
山の上でも、空気のゆれはなくなりません。すばる望遠鏡があるマウナケア山頂でも、実際の解像力は平均で0.6秒角ほど。理論上の限界より約10倍悪くなります[6]。
そこで生まれたのが補償光学です。大気のゆらぎによる光の乱れを測り、リアルタイムで補正して、本来の解像力を引き出します。すばる望遠鏡のレーザーガイド補償光学は、2006年の発表で、解像力を理論限界まで約10倍に高めたと報告されています[6]。
仕組みは、明るい星の揺らぎを手がかりに、形の変わる鏡(可変形鏡)で、見たい天体の揺らぎを瞬時に除くというものです[7]。
では、近くに手がかりになる明るい星がなかったら? すばる望遠鏡は、レーザーを打ち上げ、地上90キロメートルほどにあるナトリウム原子の層を光らせます。空に人工の「星」を作れば、近くに明るい星がない方向でも、補正ができるようになります[7]。
マウナケア山頂でも、実際の解像力は平均で約0.6秒角と、理論限界より約10倍悪くなる[6]。この差を埋めるのが補償光学で、大気のゆらぎによる光の乱れを測り、リアルタイムで補正して、本来の空間分解能を達成する技術である[6]。すばる望遠鏡のレーザーガイド補償光学は、2006年の発表で、解像力を理論限界まで約10倍に高めたとされる[6]。
手法は、明るい星の揺らぎを手がかりに、形を変えられる可変形鏡で、対象天体の揺らぎを瞬時に除くというもの[7]。手がかりの明るい星が近くにない場合は、レーザーで高度90km付近のナトリウム原子を光らせて人工の「星」を作り、近くに明るい星がない天域でも補償光学を使えるようにしている[7]。
ニュートンは、空気の震えを避けるために山を挙げた。300年後の望遠鏡は、山に登ったうえで、なお残る震えを測って打ち消すところまで進んだことになる。なお、補正の頻度(毎秒何回か)は、今回確かめた原文からは分からなかった。
6. またたきは、風の たより?
6. 「星が瞬くと風強し」── 言い伝えは、あたるのか
6. 観天望気「星が瞬くと風強し」── 空気のゆれと上空の風
むかしから「星が またたくと 風が つよい」と いう いいつたえが あります。空を 見て 天気を あてる、昔からの ちえの ひとつで、観天望気と いいます[8]。
高い 空で、あたたかい 空気と つめたい 空気が まざると、光が みだれて、星が またたきます。それで、風と むすびつけて 考えられた のでしょう[8]。
ただし、空の 高い ところの 風が つよくても、地面の ちかくの 風が つよいとは かぎりません。あてに できるかは、あまり はっきり しない と いわれます[8]。
1957ねんの 論文にも、風の 速さが 大きく なる ほど、星の 見え方が わるく なる、と 書かれて います。ただし「ある 大きさまで」と、かぎりが ついて います[9]。
「星が瞬くと風強し」。観天望気、つまり空を見て天気を占う言い伝えのひとつです[8]。
上空で温度の違う空気が混ざると、光が乱れて星が瞬きます。その空気の動きから、風が強くなる前ぶれと考えられたのでしょう。ただし、上空の強風が必ず地上の強風につながるわけではなく、信頼度は微妙とされています[8]。天気予報の代わりにはなりません。
日本気象学会の1957年の論文は、星像の安定度(シーイング)が、風速が大きくなるにつれてある程度まで悪くなると述べています。論文のPDFは文字化けが多く、読み取れた部分だけを根拠にしています[9]。
言い伝えは、空気のゆれと風が関係しそうだという、昔の人の感覚を残しているのかもしれません。
観天望気(天気を空の様子から占う言い伝え)に「星が瞬くと風強し」がある。上空で温度差のある空気が混ざると光が乱れて星が瞬く。ただし、上空の強風が必ずしも地上の強風につながるわけではなく、信頼度は微妙とされる[8]。
科学の側でも、風とのつながりは調べられている。日本気象学会の論文(1957)は、シーイング(星像の安定度)が、ある程度まで風速が大きくなるほど悪化すると述べる。「ある程度まで」の条件が付いている点に注意したい。PDFはOCRの文字化けが多く、読み取れた序文を根拠にしている[9]。
言い伝えを、天気予報の根拠にはできない。空気のゆれの強さと風に関係がありそう、という手がかりを残したものとして読むのがよさそうだ。
7. またたきを、数字に できるの?
7. 目で見ていたまたたきを、高校生が数字にした
7. 目視から光電管、そして高校生のCCD ── またたきを定量する
むかしの 人は、またたきを 目で 見て しらべて いました。1951ねんごろ からは、光を 電気に かえる 道具で、はやい 明るさの かわり方を 記録 できるように なりました[9]。
それから 60ねんほど あと、ある 高校の 生徒 3人が、北極星を 60びょうの あいだ 写真に とりました。明るさの ゆれ方の 大きさを 数字に して、風や しつ度と くらべて みたのです。2014ねんの ことです[10]。
この しらべでは、冬に 風が つよいと、またたきが 大きく なりました。また、夏から 冬にかけての データで、しつ度が 高い ほど、またたきは 小さく なる ようでした[10]。
899メートル はなれた 電球の またたきと、北極星の またたきにも、にた 動きが 見られました。地面の ちかくの 空気も、かかわって いるのかも しれません[10]。
ただし、これは 1つの 場所で、かぎられた 日に しらべた 結果です。風が つよい 夜は かならず またたく、と いう 意味では ありません。
星のまたたきには、位置の変化・色の変化・明るさの変化の3つがあり、大気の乱流によることは古くから知られていて、アラゴやレイリーらが目で調べてきました。1951年ごろから、光電管で速い明るさの変化を記録できるようになり、量を測る研究が始まった、と1957年の論文は述べます[9]。
それから60年ほどのち、2014年に、栃木県の高校の生徒3人が、北極星のまたたきを数字にしました。15センチの屈折望遠鏡に冷却CCDカメラをつけ、北極星を60秒間撮り、明るさのばらつきを表す標準偏差を、またたきの指標にしました[10]。
冬に風が強いとまたたきが大きく、夏から冬にかけては湿度が高いほど星はまたたかない、という関係が見えました。さらに、899メートル離れた電球のまたたきと北極星のまたたきの間に、相関係数0.64の関係が出ました。地上近くの空気もまたたきに関わっている可能性を示す結果です[10]。
これは1地点・限られた日のデータをまとめた予稿です。一般の法則としては言い切れず、天気予報の根拠にもなりません。
日本気象学会の論文(1957)によれば、星のシンチレーションは位置変化・色彩変化・光度変化の3要素から成り、大気の乱流に起因することは古くから知られ、アラゴやレイリーらが目視で調べていた。1951年ごろから光電管で速い光度変化を記録できるようになり、量的な研究が始まった[9]。
2014年には、國學院大學栃木高校の生徒3人が、15cm屈折望遠鏡と冷却CCDカメラで北極星を60秒間撮影し、光度変化の標準偏差をまたたきの指標にした[10]。目視から光電管へ、そして高校生が扱える機材へと、またたきを数値にする手段が広がってきたことになる。
結果は、冬に風が強いとまたたきが大きく、湿度とは夏から冬にかけて負の相関がある(湿度が高いほどまたたかない)というものだった。さらに、899m先の電球のまたたきと北極星のまたたきに相関係数0.64が見られ、地上近くの空気も関わっている可能性を示した[10]。
この資料は1地点・限られた日のデータの予稿であり、一般の法則として断定できない。また、相関は原因を示すものではなく、湿度や風以外の条件が絡む可能性は残る。
8. じぶんでも たしかめて みたく なったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
夜に、おうちの 人と いっしょに、ベランダや にわから、とおくの あかりを 見て みましょう。夜道や くらい ところでは、かならず 大人と いっしょに いて ください。
とおくの あかりが きらきら して 見える 夜と、あまり ゆれない 夜が あるか、たしかめます。見たら、日づけと、風が つよいか よわいかを、ひとこと メモに のこします。風は、天気よほうや、ほおに 当たる かんじで かまいません。
メモが たまっても、天気を あてる ための ものでは ありません。「ゆれ方が ちがう 夜が ある」と 気づけたら、それで じゅうぶんです。
もっと 知りたく なったら、大きな 望遠鏡の ある 科学館や 天文台で、「どうして 高い 山に あるの?」と、たずねて みて ください。
夜に、家の人と一緒に、ベランダや庭などの安全な場所から、遠くの街灯や窓の明かりを見てみてください。夜道や暗い場所では、必ず大人と一緒にいるようにします。
見るのは、明かりのきらめき方が夜ごとに違うかどうかです。日付と、その夜の風の強さ(天気予報の風速で構いません)を、ひとことメモに残します。何日か続けると、風の強い夜にきらめきが大きくなるのかどうか、自分のデータで考えられます。高校生の研究と同じ傾向が出るとは限りません。1つの場所の記録で、天気予報の代わりにもなりません。
科学館や天文台に出かけたら、「大きな望遠鏡はなぜ山にあるのですか」と、案内の人に聞いてみてください。すばる望遠鏡のレーザーガイド補償光学については、国立天文台のすばる望遠鏡の公式サイト[7]に発表があります。
このメモは、資料をもとにした読み物です。天気の予報や、安全に関する助言ではありません。
手元でできる確かめは、夜景・街灯の観察である。家の人と一緒に、安全な場所から遠くの明かりを見て、そのきらめき方を日付と風速(気象庁の予報値などで足りる)と並べてメモする。高校生の研究[10]の一部を、自分なりに追いかける形になる。1地点・少ない日数の記録で、一般の法則は言えないし、予報にも使えない。夜の外出は保護者と行うこと。
資料は原典に当たりたい。日本気象学会の高校生ポスター予稿[10]は日本語で読め、測定の条件(望遠鏡・カメラ・撮影時間)が載っている。すばる望遠鏡の発表[6][7]は補償光学の考え方を、リチャード・グレゴリーの論文[1]はニュートンの引用の全体を、英語で確かめられる。
残る問いもある。星の色がまたたくのは、なぜか。またたきへの影響が最も大きい空気の高さは、どこか。資料によって数字が割れており、調べる価値がある。
このメモは、資料をもとにした読み物であり、天気の予報や安全の助言ではない。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:天文学の辞典、科学館の展示解説、大学のQ&A、すばる望遠鏡の発表、気象学会の論文と高校生のポスター予稿などを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Richard Gregory "Techniques for minimizing the atmosphere"(ニュートン『光学』の引用を含む論文)。 https://www.richardgregory.org/papers/telescope/technique-minimizing-atmosphere_p1.htm (ニュートンが空気の震えと山の頂について書いた一節について)
- 天文学辞典「シンチレーション」。 https://astro-dic.jp/scintillation/ (シンチレーションの定義と、シーイングとの区別について)
- 名古屋市科学館 展示「星のまたたき」。 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibit_files/pdf/A514.pdf (空気の密度差と屈折、地平線近くのまたたき、高山と宇宙望遠鏡について)
- 大阪大学 理学部Q&A「夜景のキラキラ」。 https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/wp-content/themes/rigaku_r/qa-pdf/qa10.pdf (気団がレンズのように働くこと、恒星と惑星の違い、天文台の工夫、変光星について)
- コトバンク「星のまたたき」。 https://kotobank.jp/word/%E6%98%9F%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%81%9F%E3%81%8D-133012 (地平線近くと高度による、色のまたたきについて)
- すばる望遠鏡 レーザーガイド補償光学のファーストライト(2006)。 https://subarutelescope.org/old/Pressrelease/2006/11/20/j_index.html (補償光学の考え方と、解像力の数字について)
- すばる望遠鏡 トピックス(2022)。 https://subarutelescope.org/jp/news/topics/2022/04/04/3040.html (可変形鏡とレーザーによる人工の星について)
- 家庭画報「星の瞬きは風が強くなる証?」。 https://www.kateigaho.com/culture/hobby/181320 (観天望気「星が瞬くと風強し」とその信頼度について)
- 片山・豊田「星のシンチレーションと上層大気の乱流」『天気』(日本気象学会、1957)。 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1957/1957_sp_0001.pdf (またたきの研究の歴史と、シーイングと風速の関係について。文字化けが多く、序文などを根拠にした)
- 日本気象学会 高校生ポスター予稿 PJ15-09「気象条件による星の瞬き」。 https://www.metsoc.jp/default/wp-content/uploads/2015/04/PJ15-09.pdf (北極星のまたたきを測った高校生の研究について)
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