1. 台風の とき、うみで なにが おきる?
1. 高潮とは何か
1. 高潮の定義 ── 台風で潮位が上がる
うみの 水の 高さは、多くの 場所で、潮の ひきしおで 1日に 2回ほど 上がったり 下がったり します。これとは べつに、台風が くると、いつもより 水が 高く なる ことが あります。
その 水の 高さは、あとで 見る 伊勢湾台風の ときは、3メートルを こえました。
いったい なにが、うみの 水を おしあげるのでしょうか。じつは、おもな はたらきが 2つ あります。
2. そら から すい上げられる?
2. 1つめのはたらき ── 気圧が下がる「吸い上げ」
2. 吸い上げ効果 ── 1hPaの低下で約1cm
空気にも おもさが あります。うみの 水は、上の 空気に おされて います。台風の まんなかは、まわりより 気圧が ひくく、その おす 力が よわく なります。
そうすると、おされて いた 水が、ふわっと 持ち上がります。これを「すい上げ」と よびます。
気圧が 1ヘクトパスカル さがると、水は 1センチほど 上がると いわれて います。まわりより 50ヘクトパスカル ひくければ、50センチほどです。あくまで 目やすの 数です。
たとえば、水の 入った ふくろを 手で 上から おして います。手を すこし ゆるめると、ふくろの 水は 少し もり上がります。ただし、ほんとうの うみでは 手ではなく 空気が おして いるので、ふくろの ようすと 同じでは ありません。
空気にも重さがあり、海面は上から大気に押されています。台風の中心は周りより気圧が低いので、押される力が弱まり、その分だけ海面が持ち上がります。これが「吸い上げ効果」です[1]。
気象庁は、気圧が1hPa下がると潮位は約1cm上がると説明しています[1]。国土交通省の説明も同じ目安です[2]。たとえば、周りより50hPa低い台風の中心では、約50cm。あくまで「約」の目安で、厳密な固定値ではありません。
たとえ話をします。水を入れたビニール袋を手で押さえていて、手の力を少し抜くと、水が少し盛り上がります。ただし、本物の海を押しているのは手ではなく空気です。また、この効果だけなら数十cmで、後の伊勢湾台風の3m台には届きません。
3. 風が うみの 水を 岸に よせる
3. 2つめのはたらき ── 風が海水を岸に寄せる「吹き寄せ」
3. 吹き寄せ効果 ── 風速の2乗に比例
もう 1つは 風です。うみから 岸に むかって 強い 風が ふくと、水が 岸のほうへ おされて、岸の ちかくで 水が 高く なります。これを「ふきよせ」と よびます。
風の 強さと 水の 高さの かんけいは、ふしぎです。風の 速さが 2ばいに なると、水の 上がり方は 4ばいに なると いわれて います。
たとえば、おふろの 水を うちわで あおぐ と、あおいだ ほうから むこうの ふちへ 水が よって、そこだけ 少し 高く なります。ただし、ほんとうの 台風の 風は、もっと 強くて ひろい はんいに ふきます。
4. 湾の 形と、満潮が かさなると?
4. 湾の形と満潮が重なると
4. 地形と満潮の重なり ── 湾奥で増幅される
おなじ 風でも、場所に よって 水の 上がり方は ちがいます。湾は、うみが りくに 入りこんだ 場所です。風が 湾の 入口から おくに むかって ふくと、水が おくに あつまって、行きどまりの ところが 高く なります。
とくに、湾が 長くて、水が 浅い ほど、水は 高く なりやすいと いわれて います。
そこに、満潮が かさなる こと も あります。もともと 水が 高い ときに 高潮が くれば、もっと 高くなります。でも、満潮と かさならなくても、大きな 高潮に なる ことが あります。
5. まんちょうじゃ なくても、3メートルを こえた 伊勢湾台風
5. 1959年の伊勢湾台風 ── 満潮を外れても記録的な高潮
5. 伊勢湾台風(1959)── 湾口2m弱、湾奥3.89m
1959年9月26日、伊勢湾台風が やって きました。伊勢湾は、南に 口を 開けた 湾です。南から 強い 風が ふきこんで、水が おくへ おくへと よせられました。
湾の 入口の あたりでは、水は 2メートルに とどきません。でも、いちばん おくの 名古屋の 港では、3.89メートルの 高さが 記録されました。観測を はじめてから、いちばん 高い 数字です。
しかも、この とき、満潮では ありませんでした。気圧が 下がる ことと、風が 水を よせる ことが 重なって、こんなに 高く なったのです。
この 高潮で、たくさんの 人が なくなりました。全国で、なくなった 人と ゆくえが わからない 人を あわせて、5千人ぐらいです。しらべた ものに よって 少し ちがいます。また、りくの ひくい 土地では、水が ひくまで 長い あいだ かかりました。
1959年9月26日、伊勢湾台風が紀伊半島の潮岬の西に上陸しました。伊勢湾は南に大きく開いた湾で、南からの暴風による吹き寄せと、気圧低下による吸い上げが重なり、記録的な高潮になったと説明されています[3]。
湾口付近の潮位は2m弱でしたが、湾奥の名古屋港では標高3.89mと、観測史上最高を記録しました(21時35分)。しかも、満潮の時刻は外れていました[3]。満潮に重なったから高かった、という話ではない点が、この台風の特徴です。
名古屋の最低海面気圧は958.2hPa、最大風速は南南東37.0m/sでした[3]。前の章の目安で考えると、吸い上げだけでは説明しきれない高さです。湾の奥へ向かう強い風の効果が大きかったと考えられます。
この高潮は、伊勢湾の海面を1時間近く約2m持ち上げたと国土交通省は説明します[4]。人的被害は資料により5千人前後とされ、数字は出典で少し違います[4]。背後の低い土地では、水が引くまで年末近くまでかかりました[4]。
伊勢湾台風は1959年9月26日に潮岬の西に上陸した。南に開いた伊勢湾で、南からの暴風による吹き寄せと気圧低下による吸い上げが重なり、記録的な高潮となった[3]。
名古屋の最低海面気圧は958.2hPa、最大風速は南南東37.0m/s、伊良湖では最大風速45.4m/sだった。湾口付近の潮位は2m弱にとどまったが、満潮時を外れていたにもかかわらず、湾奥の名古屋港で標高3.89mの観測史上最高潮位(21時35分)を記録した[3]。3.89mは標高(T.P.)基準の値で、別の基準面の値とは比べられない。
国土交通省は、この高潮が伊勢湾全体の海面を1時間近くにわたり約2m上昇させたと説明する[4]。人的被害は、資料により全国で死者・行方不明者5千人前後(資料により5,012人、5,098人などの差がある)で、範囲や集計の違いによる[4]。背後の低平地の浸水は、排水が12月下旬までかかった[4]。
湾口2m弱に対し湾奥3.89m、という差は、前章の「湾が長く浅いほど吹き寄せが大きい」という説明に合う。ただし、吸い上げと吹き寄せの寄与の内訳は、この資料だけでは切り分けられない。
6. 2018年の 台風で、高潮の 記録が 新しく なった
6. 2018年の台風21号 ── 大阪・神戸で高潮の記録が更新された
6. 2018年台風21号 ── 最高潮位の更新(大阪329cm・神戸233cm)
それから 60年ほど あとの 2018年にも、大きな 高潮が ありました。9月4日に 台風21ごうが 来て、おおさかの 港で 3メートル 29センチ、こうべで 2メートル 33センチが はかられました。
どちらも、それまでの いちばんを こえる 高さでした。台風の たびに、水の 高さは てんきの ちからで 大きく かわる ことが、これで わかります。
2018年9月4日、非常に強い勢力で徳島県南部に上陸した台風21号では、最高潮位が大阪で329cm、神戸で233cmとなり、それまでの最高を超えた場所がありました[5]。
伊勢湾台風から約60年がたっても、台風の進路や湾の形しだいで、過去の記録を上回る高潮が起こりうるということです。ただし、この台風で満潮とどう重なったかは、今回使った資料では確かめられていません。
2018年台風21号(9月4日、非常に強い勢力で徳島県南部に上陸)では、最高潮位が大阪329cm、神戸233cmと、過去の最高潮位を超える値が観測された[5]。
この例は、地形と風向の組み合わせによって過去の記録が更新されうることを示す。ただし、大阪湾での満潮時刻との関係や、吸い上げと吹き寄せの内訳は、今回参照した気象庁の速報には記載がなく、本稿では扱わない。
7. 天気図と 風を、見くらべて みよう
7. 気圧・風向を見て、水を寄せてみる
7. 出口 ── 吹き寄せを小さく再現する/原典を読む
おうちの 人と、台風の ニュースを 見る とき、天気図の 気圧の 数字と、風の むきに 気を つけて みましょう。「気圧が ひくい」と 「風が 海から 岸に むかって ふく」が そろうと、水は 高く なりやすいのです。
もう 1つ。おふろの 水を うちわで あおいで、はしの 水が 少し 高く なるかを 見て みましょう。あおぐ 強さを 2ばいに したら どう なるかも、ためせます。水を こぼさないよう、ゆかを ふく ぞうきんを よういして ください。
うみに 見に いくのは、あぶないので、やめましょう。
台風が近づくニュースで、天気図の中心気圧と風向きを見てみてください。「気圧が低い」「風が海から陸に向かって吹く」が重なり、そこに湾の形や満潮の時刻が加わる場所ほど、高潮に注意が要ります。
家でも試せます。洗面器やお風呂に水を張り、うちわで一方向にあおいでみてください。風上から反対側のふちへ水が寄り、そこだけ少し高くなります。あおぐ強さを変えると、高さがどう変わるかも見られます。水をこぼしてもいいように、床にぞうきんを敷いておきましょう。台風のときの海岸や河口には、近づかないでください。
原典を読むなら、気象庁の「高潮」のページ[1]と、国土交通省の「高潮はどうして起こるの?」[2]が日本語でまとまっています。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:気象庁の高潮の解説、国土交通省の高潮の解説と伊勢湾台風の解説、名古屋地方気象台の伊勢湾台風の資料、気象庁の台風21号の速報を使った。1hPaで約1cmなどの数は、いずれも目安である。
- 気象庁「潮汐・海面水位の知識 高潮」 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/takashio.html (高潮の定義、吸い上げ・吹き寄せ、満潮との重なり)
- 国土交通省 水管理・国土保全局「高潮はどうして起こるの?」 https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/01/index.html (2つの効果の裏付け、湾の形)
- 名古屋地方気象台「過去事例 伊勢湾台風」 https://www.jma-net.go.jp/nagoya/shosai/info/kakojirei/isewantaihu.pdf (伊勢湾台風の潮位・気圧・風速)
- 国土交通省 水管理・国土保全局「どのような高潮が起こったの?」 https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/03/index.html (伊勢湾台風の被害と浸水の長さ)
- 気象庁「台風第21号による暴風・高潮等(速報)」 https://ds.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/2018/20180911/20180911.html (2018年の最高潮位)
なおした ところ
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