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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

てのひらだけ 汗あせが でるのは どうして? 汗あせの ばしょごとの やくめ

暑くないのに手のひらだけ汗をかくのはなぜか ── 場所ごとにちがう汗の役目

発汗の場所別の役割 ── 温熱性発汗・精神性発汗と、手掌の「すべり止め」・頭部の「脳冷却」

分野:からだ

じゅぎょうで あてられそうな とき、へやは すずしいのに、てのひらだけ 汗あせで しめって きた ことは ありませんか。

その 汗あせには、体を ひやす ほかに、べつの やくめが ありそうです。てのひら、あたま、からだ ぜんたいで、汗あせの やくめが ちがうと いわれます。しらべた ことを、じゅんばんに はなします。

発表の順番を待っているとき、教室は涼しいのに、手のひらだけがじっとりしてきた。そんな経験はないでしょうか。

汗は体を冷やすものだと習いますが、暑くもないのに出る手のひらの汗は、それでは説明がつきません。手のひらの汗はネズミやイヌの肉球の汗と同じ由来で、滑り止めとして調べられてきました[4]。頭の汗、全身の汗、そして人が「走る動物」になったという仮説まで、汗の役目が場所ごとにどうちがうのかを追います。

手のひら・足の裏の発汗は、暑さでは誘発されず、眠ると消える。日本皮膚科学会の診療ガイドラインは、これを別の中枢による支配と考えられるとし、動物の肉球の発汗(滑り止め)と発生学的に同じものと説明している[4]。

1975年の動物実験、1997年のヒトでの実験、2004年の持久走仮説などを手がかりに、汗の役割が部位ごとにどう異なるかを整理する。

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1. 汗あせは どうして 体を ひやすの?

1. 全身の汗は、蒸発して熱を運び出す

1. 全身の温熱性発汗 ── エクリン汗腺と蒸発熱

体が あつく なると、はだから 汗あせが でます。この 汗あせが かわく とき、体の ねつを もって いきます。

プールから 上がると、すこし さむく なりますよね。あれも、水が かわく ときに ねつを うばうからです。

汗あせを だす あなは、人に 200万から 400万こ ほど あると いわれます[1]。ぜんぶの 数は、しりょうに よって すこし ちがいます。

ここまでは、よく きく 話です。でも 汗あせには、ほかにも やくめが ありそうです。

体温が上がると、皮膚の表面に汗が出ます。この汗は、ほとんどが水分で、においはあまりありません。皮膚の上で蒸発するときに体の熱を持ち去るので、体が冷えます[1]。

水が蒸発するときに奪う熱は、皮膚の温度で1グラムあたり約580カロリー(約2.4キロジュール)です[3]。食品のカロリー表示(キロカロリー)でいえば0.58キロカロリーで、汗1グラムぶんの小さな値ですが、汗をたくさんかけばそれだけ多くの熱が運び出されます。

この働きをするのは、全身に広がるエクリン汗腺です。数は資料によって200万〜400万個と幅があります[1]。わきの下などにあるアポクリン汗腺は、濃い汗を出して体臭に関わり、熱を逃がす役は主にエクリン腺だと説明されています[2]。

ここまでは教科書にある話です。ところが、汗の役目はこれだけではないことが、診療ガイドラインにも書かれています。

ヒトのエクリン汗腺は全身に約200万〜400万個あるとされ(資料により幅がある)、水分と電解質を主とする、においの少ない汗を出す。汗が蒸発すると、皮膚表面から熱が奪われて体温が下がる[1]。

蒸発熱は、皮膚温付近で約580cal/g(約2.4kJ/g)と報告されている[3]。これは理科でいう熱量で、食品表示のkcalに直せば0.58kcal/gである。アポクリン腺(わきなど毛の近くに限られる)は濃い汗を出して体臭に関与し、熱放散に寄与するのはエクリン腺だとされる[2]。

ガイドラインは、エクリン汗腺が主に体温調節を担うとしたうえで、皮膚表面に適度な湿度を与える働きや、自然免疫による細菌・ウイルスからの防御作用も注目されていると述べる[4]。体温以外の役割があるという指摘である。

2. てのひらの 汗あせは、ふつうの 汗あせと ちがう?

2. 手のひらの汗は、暑さとは別に出る

2. 精神性発汗 ── 手掌・足底の汗は別の中枢が支配する

汗あせは、出る わけで 3つに わけて 考えられて きました。あつい ときの 汗あせ、どきどきする ときの 汗あせ、からい ものなどを たべた ときの 汗あせです[4]。

てのひらと 足の うらの 汗あせは、どきどきや こわさ、いたみ、あんざんなどで でやすいと いわれます。あつさでは 出にくく、ねると 汗あせが きえます。

そこで、ここは 体を ひやす 汗あせとは ちがう ところが 出す ように きめて いると 考えられて います。

てのひらと 足の うらには、汗あせを だす あなが とくに たくさん あつまって います。1センチ 四方に 250こから 500こ ほどです[1]。

ヒトの発汗は、出るきっかけによって、温熱性(暑さ)・精神性(緊張や不安など)・味覚性(辛いものを食べたときなど)の3つに分けるのが一般的です。ただ、診療ガイドライン自身が、この分け方は病態や生理的な意味を考えると必ずしも適切ではないときがある、とも述べています[4]。

手のひらや足の裏の汗は、暗算・恐怖・痛み・不安、深呼吸、触られる刺激などで出るので、精神性発汗と呼ばれます。一方で、暑さでは出ず、眠ると消えます。このことから、体温を調節する脳の中枢(視床下部)とは別の中枢が支配していると考えられています[4]。精神性発汗には、扁桃体などが関わると指摘されています。

手のひらと足の裏には、エクリン汗腺が特にぎっしり並び、1平方センチあたり約250〜500個です[1]。

ただし「暑いと手のひらは絶対に汗をかかない」とまではいえないようです。2013年の順天堂大学の研究では、暗算をしているとき、28℃の部屋のほうが16℃の部屋より手のひらの汗が増えたと報告されています[7]。安静にしているときは、室温の影響を受けませんでした。

ガイドラインによれば、ヒトの発汗は誘発因子から温熱性・精神性・味覚性に分類されるが、病態や生理的意義を考えると必ずしも適切といえない場合もある[4]。

手掌・足底の発汗は、暗算・恐怖・痛み・不安などの精神的負荷や深呼吸、触刺激で誘発されるため精神性発汗と呼ばれる。温熱刺激では発汗せず、睡眠で消失することから、視床下部の体温調節中枢とは別の中枢支配が想定されている。精神性発汗の中枢には扁桃体などの関与が指摘される[4]。エクリン汗腺は手掌・足底で特に密度が高く、約250〜500個/cm²とされる[1]。

「温度とは無関係」という従来の説明には修正もある。2013年の順天堂大学の研究は、手掌の発汗が安静時には環境温度の影響を受けなかった一方、暗算課題中は28℃のほうが16℃より有意に多かったと報告した[7]。

3. てのひらの 汗あせは、すべりどめ?

3. 動物の肉球と同じ汗 ── すべり止めの実験

3. 手掌の汗の機能 ── 1975年の動物実験と1997年のヒトでの実験

ガイドラインには、てのひらと 足の うらの 汗あせは、イヌや ネコの にくきゅうの 汗あせと おなじ もとから できたもの、と かかれて います。どうぶつでは、にげる ときや とびうつる ときの すべりどめに なると いわれます[4]。

1975年の じっけんが あります。ネズミや イヌなどは、はしる とき 足の うらに 汗あせを かきました。その 汗あせを くすりで とめると、足が すべりやすく なりました。足の うらに 汗あせを だす あなが ないウサギは、同じ くすりでも かわりませんでした[5]。

うんどうぐつの そこには、でこぼこが あります。それと 同じで、ほどよく しめった はだは ひっかかりやすい のかも しれません。ただし 汗あせは、ゴムでは ありません。

人でも、耳の うしろに はる くすりで 手のひらの 汗あせを へらすと、ゆびが すべりやすく なり、ものを にぎる ちからが 強く なったと ほうこくが あります[6]。

ガイドラインによると、手のひら・足の裏の汗は、発生学的にはマウス・イヌ・ネコの足裏(肉球)の発汗と同じものです。動物では、敵から逃げるときや高いところに飛び移るときの「滑り止め」の役割があるとされています[4]。

これを実験で確かめたのが、1975年の研究です。ネズミ、テンレック、ハイラックス、イヌは走るときに足の裏に汗をかきました。この汗を薬(アトロピン)で止めると、足と踏み面の間の静止摩擦係数が大きく下がりました。足裏に汗腺のないウサギでは、同じ薬で変化がありませんでした。研究者は、走ったり登ったりするときの滑りを防ぐ働きが、この汗の重要な役目だと結論しています[5]。

人の手ではどうでしょう。1997年の実験では、耳の後ろに貼るスコポラミンという薬で手のひらの汗を減らすと、滑らかな面などで指の摩擦が有意に下がり、参加者は物を持つ力を強めました[6]。ただし参加者は8人で、3ミリ間隔の凸面では摩擦は変わりませんでした。汗が多いほどよい、という話でもなさそうです。

ガイドラインは、手掌・足底の汗が発生学的にマウス・イヌ・ネコの肉球の発汗と同じで、動物では逃走時や跳躍時の「滑り止め」の役割を持つと述べる[4]。

Adelmanら(1975)は、ネズミ・テンレック・ハイラックス・イヌが走行時に足裏で発汗することを示し、アトロピンで発汗を止めると、傾斜したトレッドミルの踏み面と足との静止摩擦係数が大きく低下したと報告した。足裏に汗腺のないウサギでは薬の影響がなかった。彼らは、この汗の主要な機能は走行・登攀時の滑り防止だと結論した[5]。動物実験であり、そのままヒトに当てはめる根拠にはならない。

ヒトでは、Smithら(1997)が、手掌の発汗を減らすスコポラミンの経皮貼付で、滑らかな面と2mm間隔の凸面で指の摩擦が有意に下がり、被験者が把持力を強めたと報告している[6]。ただし被験者は8人で、3mm間隔の凸面では摩擦は変わらなかった。汗が多いほど摩擦が大きいわけではない点に注意したい。

5. 汗あせが あるから、人は はしれた?

5. 人は「走る動物」だったのか ── 汗と持久走の仮説

5. 持久走仮説(2004)と、汗による放熱

人は、けを ほとんど もたず、汗あせを たくさん かける 動物です。はしる とき、口でも いきが できます。

どうぶつは、ぜんりょくで はしって いる ときは、いきで ねつを すてにくいと せつめい されて います[8]。

人は、汗あせで ねつを すてられるので、ながく はしれた のでは ないか、と 考える けんきゅうしゃが います。

これは、まだ しっかり きまった 話では ありません。いっしょに 考えて みましょう。

ハーバード大学のダニエル・リーバーマン氏らは、人が長く走れる背景に、体毛が少ないこと、汗をかく力があること、口で息をすることなど、熱を逃がす体の特徴があると述べています[8]。走る動物は、全力疾走(ギャロップ)の間は息で熱を捨てにくい、という説明もあります。

2004年には、リーバーマン氏ら(Bramble & Lieberman)が、人は持久走にすぐれ、その能力は約200万年前にホモ属で生まれ、体の形の進化に重要だったかもしれないと論文で述べました[9]。ただしこの論文の要旨は汗に直接ふれていません。汗との結びつきは、上の解説など別の資料で語られている話です。

どちらも、研究者が考えている仮説です。学界で決着した話ではないので、「と考える研究者がいる」と受け取るのがよいでしょう。

Lieberman氏らは、ヒトが長距離を走れる理由として、体毛の少なさ、発汗能力、走るときの口呼吸などの放熱の適応を挙げている。走る四足動物は全力疾走(ギャロップ)中に息で熱を捨てにくい、という説明もある[8]。

Bramble & Lieberman(2004, Nature)は、ヒトが持久走に優れ、その能力がホモ属で約200万年前に生じた派生的な形質であり、ヒトの体形の進化に重要だった可能性があると論じた[9]。ただし、この論文の要旨は発汗そのものに触れていない。汗と持久走の関係は、報道記事などで語られる仮説の側面が強い。

これは1つの研究グループの主張であり、定説とは限らない。

6. しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 出口 ── 手のひらを観察する/原典を読む

かみを 1まい めくって みます。てのひらが かわいて いる ときと、ほんの すこし しめって いる ときで、めくりやすさは かわるでしょうか。むりを せず、ふつうの 手で ためして みます。

もう 1つ。きょう 1日、てのひらが しめった のは どんな ときか、おもい だして みます。あつい ときと、どきどき した ときで、ちがいが あるかも しれません。

紙を1枚めくる動作で、手が乾いているときと、少し湿っているときの違いを見てみましょう。感じ方には個人差があり、これで何かが証明できるわけではありません。

もう1つは、1日の中で手のひらがしめったのがどんな場面だったか、思い出してみることです。暑い教室と、発表前のときで、汗の出方に違いがあるかもしれません。

手のひらの汗の原典を読むなら、日本皮膚科学会の診療ガイドライン[4]が日本語で公開されています。

手掌の汗と摩擦の関係は、家にあるもので試せる。紙を1枚めくる動作で、手が乾いているときと、少し湿っているときの感触を比べる。個人差が大きく、実験としての証明にはならない。

原典に当たるなら、日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版[4]が日本語で公開されている。英語では、Adelmanらの1975年の論文[5]、Smithらの1997年の論文[6]、Bramble & Liebermanの2004年の論文[9]の要旨が無料で読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:Cleveland Clinicの解説、カンゴルー、HyperPhysics、日本皮膚科学会の診療ガイドライン、論文の要旨(Adelmanら、Smithら、Bramble & Lieberman、小川・岡田)、ハーバード大学ガゼット紙の記事を使った。

  1. Cleveland Clinic「Eccrine glands」。https://my.clevelandclinic.org/health/body/eccrine-glands (エクリン汗腺の数・分布・蒸発による冷却について)
  2. カンゴルー「発汗|体温とその調節」。https://www.kango-roo.com/learning/2301/ (エクリン腺とアポクリン腺のちがいについて)
  3. HyperPhysics「Perspiration Cooling of Body」(Georgia State University)。https://hyperphysics.gsu.edu/hbase/thermo/sweat.html (蒸発熱の値について)
  4. 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」。https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/takansho2023.pdf (汗の3分類、手のひら・足の裏・頭の汗の役目について)
  5. Adelman, Taylor, Heglund (1975) "Sweating on paws and palms: what is its function?" Am J Physiol. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1200160/ (動物の足裏の汗とすべり止めの実験について)
  6. Smith, Cadoret, St-Amour (1997) Exp Brain Res. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9187293 (ヒトの手の汗と摩擦の実験について)
  7. 小川・岡田(2013)「精神性発汗に対する温熱刺激の影響」順天堂医学59(2)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmj/59/2/59_178/_article/-char/ja/ (手のひらの汗と室温の関係について。要旨で確認)
  8. Harvard Gazette (2007) "Humans hot, sweaty, natural-born runners". https://news.harvard.edu/gazette/story/2007/04/humans-hot-sweaty-natural-born-runners/ (人が走れる体の特徴についての説明)
  9. Bramble & Lieberman (2004) "Endurance running and the evolution of Homo" Nature. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15549097/ (持久走仮説について)

なおした ところ

更新履歴

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