このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

刀は、刀匠とうしょうだけで できあがるの?

刀は刀匠ひとりでは完成しない ── 研師・鞘師・塗師・柄巻師の分業

刀を支える職人たち ── 研磨・白鞘・刀装の分業と、現代刀職展という技の場

分野:歴史・文化

刀を うち上げるのは、刀匠とうしょうです。でも うち上がった ばかりの 刀は、まだ ぼんやりして います。

そのあと、いろいろな 職人しょくにんが 手を かします。どんな 人が、なにを して いるのか、のぞいて みます。

刀匠が鍛えて形にした刀は、まだ本来の姿を見せていません。刃に沿って走る模様も、鉄の肌の細かさも、そこから先の仕事で見えてくるとされています。

刀を研ぐ人、刀を納める鞘を作る人、漆を塗る人、柄を巻く人。刀を支える分業の中身を、順に見ていきます。

刀匠が鍛造した刀は、研師の研磨を経て初めて、刃文や地鉄が見える美術刀剣になる[1]。その刀を守り、飾る鞘師・塗師・柄巻師なども、室町時代から分業として続いてきた[5]。

研磨・白鞘・刀装の工程と、今も技を競い伝える公募展までを、複数の資料を突き合わせてたどる。

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1. うち上がった 刀は、まだ できあがりでは ないの?

1. 打ち上がった刀は、まだ完成ではない

1. 研磨 ── 刀剣を「完成」させる技法

刀匠とうしょうが うち上げた ばかりの 刀は、刃文はもんが はっきり 見えません。刃文はもんは、刃はの ところに 出る、なみのような ようすです。

これを 石で みがいて、見えるように するのが、研師とぎしです[1]。

研師とぎしは 今も 400人ちかく いると いわれます[11]。いつも 刀の そばで はたらく、大切な 人たちです。

刀匠が鍛えた刀は、姿こそ刀ですが、刃に現れる刃文や鉄の肌である地鉄は、まだ研ぎ出されていません。これを整え、見えるようにして完成させるのが研磨の技法で、現代の刀匠が作った刀を美術刀剣として仕上げるために欠かせないと、日本刀文化振興協会は説明しています[1]。

研磨を仕事にする研師は、今も400名近くいるといわれます[11]。この数は民間の解説サイトのもので、いつの時点かははっきりしません。

刀剣研磨は、刀剣の姿を整形し、地鉄や刃文を研ぎ出して完成させる技法で、現代の刀匠が鍛造した刀剣を美術刀剣として完成させるうえで不可欠とされる[1]。鍛造と研磨は、別の職人が担う別の仕事だ。

研師は現在も400名近くいるとされる[11]。ただしこの数字は民間の解説サイトの記述で、時点は不明なので、目安にとどめる。

2. 研ぐのは、どんな 石で、どんな じゅんばん?

2. 下地研ぎから仕上げ研ぎへ

2. 研磨の二段階 ── 下地研ぎ・仕上げ研ぎと、研ぎ上げ後の手入れ

みがく しごとは、大きく 2つに わかれます[3]。まず、刀の かたちを ととのえる ところ。つぎに、しあげの ところです。

はじめの ほうでは、あらい 石から こまかい 石まで、7しゅるいほどの 石を つかい わけます[3]。

たとえば、でこぼこの 木の板を、あらい かみやすりから、こまかい かみやすりへ じゅんに かけて つるつるに して いく ようすに にて います。ただし 本当は、刀の 形を ととのえる、もっと ずっと むずかしい 手しごとです。

みがきあがった 刀は、小さな きずが つきやすい ものです。はくぶつかんは、あぶらを ふきとって ぬりかえる お手入れを、みがいた 直後の 半年ほどは とくに 気を つけて、1か月に 1回くらい するように すすめて います[4]。

研磨は、大きく下地研ぎと仕上げ研ぎの2段階に分かれます[3]。下地研ぎは刀の姿や形を整える工程で、目の粗さがちがう7種類ほどの砥石を、粗いものから細かいものへと使い分けます[3]。

紙やすりで木の板を整えるとき、粗い番手から細かい番手へ順に替えていくのと、考え方は近いでしょう。ただし刀では、形を整えながら鉄の肌を見えるようにしていくので、板を滑らかにするだけの作業とは別ものです。

研ぎ上がった直後の刀身は、細かい傷が付きやすいそうです。刀剣博物館は、油を拭い取って塗り直す手入れを、研ぎ上げ直後の半年ほどは特に気を付け、月1回ほど行うよう勧めています[4]。

研磨は下地研ぎと仕上げ研ぎの2段階で、下地研ぎは姿形を整える工程だ。ここでは目の粗さが異なる7種類ほどの砥石を使う[3]。この数は下地研ぎの砥石についてのもので、研磨全体で使う数ではない。

刀剣博物館は、研ぎ直後の刀身は微細な傷が付きやすく、拭い紙や油紙に埃やごみが付いていると傷の原因になると説明している。そのため、油を拭い取って塗り直す手入れを、研ぎ上げ直後の半年ほどは特に注意して月1回ほど行うよう勧めている[4]。

なお同じ博物館の解説には、日本刀は十数種類の砥石で微細に研磨されるとの記述もある[4]。こちらは仕上げまで含めた言い方で、下地研ぎの7種類ほどとは数える範囲が違うと考えられるが、その内訳までは資料から読み取れない。

3. 研師とぎしの 中には、どんな 人が いるの?

3. 研磨の人間国宝と、室町時代から続く家

3. 重要無形文化財「刀剣研磨」── 保持者と本阿弥家

研師とぎしの わざは、くにから 大事に されて います。とくに すぐれた 人は「人間国宝にんげんこくほう」と よばれます。

2014年には、本阿弥ほんあみ家の 人が みとめられました[1]。この 人の おとうさんも、まえに みとめられた 人です。本阿弥ほんあみ家は、むかしから 研ぎを しごとに して きた 家です[2]。

刀剣研磨は重要無形文化財に指定され、2014年には本阿彌光洲が保持者、いわゆる人間国宝に認定されました[1]。

刀剣ワールドの解説によると、研磨の人間国宝はこれまでに5名です。光洲は先に認定された本阿弥日洲の子で、室町時代から研磨を家業としてきた本阿弥家の技を継いでいます[2]。

刀剣研磨は重要無形文化財で、2014年に本阿彌光洲が保持者(人間国宝)に認定された[1]。指定・解除の日付など細かい経緯は、ここでは扱わない。

研磨の人間国宝は、これまでに本阿弥日洲・小野光敬(ともに1975年)、藤代松雄(1996年)、永山光幹(1998年)、光洲(2014年)の5名とされる。光洲は日洲の子で、室町時代から研磨を家業としてきた本阿弥家の技を継ぐ[2]。

4. しらさやは、なにで はりあわせるの?

4. 白鞘は、飯粒を練った糊で貼る

4. 白鞘 ── 朴の木と続飯という選び方

研ぎ上がった 刀は、白鞘しらさやという 木の さやに しまいます。白鞘しらさやは 刀を しまって まもる ための さやです[6]。

木は、朴の木ほうのきです。あぶらけが なく、刀が さびにくいと されます[6]。

木を たてに 2つに わって、刀の 形に けずり、あわせます。はりつけるのは 続飯そくいです。ごはんつぶを ねって 作った のりです[6]。

ふつうの せっちゃくざいでは なく、なぜ ごはんの のりなのでしょう。続飯そくいは 刀に わるい えいきょうが なく、そうじや しゅうりの ために また はがせるからです[6]。

研ぎ上がった刀を納めて保管するための鞘が白鞘です。刀装として飾る拵の下地の鞘とは別に作られ、どちらにも朴の木が使われます[6]。

朴には油気がなく、刀が錆びにくいと説明されています[6]。

作り方は、鞘の材を縦に割り、刀身の形に合わせて内側を削り、続飯で貼り合わせるというものです。続飯は飯粒を練った糊で、人工の接着剤と違って刀身に悪い影響を与えず、鞘の中の掃除や修理のために、また剥がせるといいます[6]。貼って終わりではなく、あとで開けられる前提で作る、という考え方が見えてきます。

白鞘は刀身の保管・保護を目的とする鞘で、拵の下地としての鞘とは別に作られ、どちらも朴の木が使われる。朴は油気がなく、固すぎず、あくがないので刀が錆びにくいと説明される[6]。

製作は、鞘材を縦に割って刀身の形に削り、続飯(飯粒を練った糊)で貼り合わせる。続飯は人工接着剤と異なり刀身に悪影響がなく、掃除や修理のために剥がせる[6]。不可逆に固定せず、後から手を入れられることを優先した仕様といえる。

5. 刀と さやを、どうやって ぴったり あわせるの?

5. 油の跡を見ながら削る、鞘師の合わせ

5. 鞘師の調整 ── 油の跡による微調整と、鞘書

刀は、さやに ふれた ところから さびやすく なります[7]。そこで 鞘師さやしは、刀に あぶらを ぬって さやに いれます。

ぬいて みると、あぶらが ついた ところは、さやに あたって いる ところです。そこを すこしずつ けずり、また いれて たしかめます[7]。これを くり返して、ぴったりに して いきます。

白鞘しらさやには、すみで 字を 書く ことも あります。刀を 作った 人の 名前や 長さ、日づけなどです[8]。中を 見なくても、なんの 刀か わかるように、と 始まった そうです。

刀身は、鞘に触れたところから錆びやすくなります。鞘師は刀身に油を塗って鞘に入れ、抜いたときに油が付いた箇所、つまり刀と鞘が接している箇所を確かめながら、少しずつ削って微調整します[7]。入れて、見て、削るという往復で、内側の形を刀に合わせていきます。

材の朴の木は、最低でも1年、職人によって1〜10年ほど乾燥させると紹介されています。年数は人によってまちまちで、決まった数字はありません[7]。

完成した白鞘の表面には、墨で刀工名や刃長、日付、書いた鑑定家などが記されることがあり、鞘書と呼ばれます。中身を取り出さなくても分かるようにする目的で、江戸時代の中ごろに本阿弥家が始めたといわれ、やがて真物であることを保証する役目も担うようになりました[8]。

鞘師は、刀身が鞘に触れた所から錆びやすいことを踏まえ、刀身に油を塗り、油が付いた(=鞘と接触する)箇所を確認しながら削って微調整する[7]。朴材の乾燥は最低1年、職人により1〜10年ほどとされ、期間は一定しない[7]。

白鞘の表面に墨で書く情報を鞘書といい、刀工名・刃長・日付・書いた鑑定家などが記される。江戸中期に本阿弥家が始めたとされ、当初は中身を取り出さずに分かるようにする管理が目的だったが、やがて「正真保証」の役割も担った[8]。

6. かざりの ぶぶんは、だれが 作るの?

6. 鞘・柄・漆を分担する、刀装の職人たち

6. 刀装の分業 ── 塗師・柄巻師・白銀師など

お出かけ用の 刀には、かざりの ついた 外がわが あります。それを 作るにも、いろいろな 職人しょくにんが います。

室町時代むろまちじだいから、作る 人が 分かれて きました[5]。鞘師さやし、塗師ぬし、柄巻師つかまきしなどです。

塗師ぬしは、漆うるしを うすく 何回も ぬりかさねます。2、3か月 かかる ことも あると いわれます[5]。柄巻師つかまきしは、柄つかという にぎる ところに、ひもを ひし形もように まきます[5]。

室町時代から、刀装の製作は分業化・専業化が進み、鞘師・塗師・柄巻師・白銀師・金工師などが受け持ったとされます[5]。

塗師は、鞘を丈夫で美しく仕上げるために、漆を薄く何層にも塗り重ねます。2〜3か月かかるともいわれますが、仕様によって変わる目安です[5]。柄巻師は、柄を鮫皮で包み、その上に柄糸を巻いて菱形の模様を作ります。柄の中には和紙が詰められ、緩衝材の役目と握りやすさを兼ねます[9]。

鮫皮は、日本の近海では採れず輸入品だと説明する資料もあります。ただしこれは一つの解説の記述なので、すべてがそうだとは言い切れません。

室町時代から刀装の製作は分業化・専業化され、鞘師・塗師・柄巻師・白銀師・金工師などが担当した[5]。塗師は漆を薄く何層にも塗り重ね、2〜3か月かかるとされるが、工程や仕様で変わる目安だ[5]。

柄巻師は柄を鮫皮で包み、その上に柄糸を巻く。柄の内部には和紙が詰められ、緩衝と握りの向上を兼ねる[9]。鮫皮は日本近海では採れず輸入品とする解説もあるが、単一の記述なので断定は避ける。

白銀師(鎺などを作る)や鍔師の詳細は、今回確認できた資料が刀剣ワールド1件のため、ここでは名を挙げるにとどめる。

7. 職人しょくにんの わざは、今、どこで きそわれて いるの?

7. 技を競い、伝える場 ── 現代刀職展

7. 現代刀職展 ── 研磨から白銀までを扱う公募展

こうした わざを のこして いく ために、日本美術刀剣保存協会にほんびじゅつとうけんほぞんきょうかいは「現代刀職展げんだいとうしょくてん」を ひらいて います[10]。

研ぎ、白鞘しらさや、柄つか、白銀など、いろいろな 職人しょくにんが 作品を 出します。むかしの やり方と ざいりょうで 作った ものだけが、しんさを うけます[10]。

刀に きょうみを もつ 人が ふえる ことも、ねらいの ひとつだと あります。

日本美術刀剣保存協会の現代刀職展は、研磨・刀身彫・彫金・白鞘・刀装・柄前・白銀の伝統技術の保存と向上を図り、文化財としての刀剣への関心を高めることを目的にした公募展です[10]。

伝統的な技術・材料で作られていない作品は、審査の対象外になります[10]。刀匠が作刀の部で競う場としても知られますが、ここでは、刀を支える職人の技が同じ場で並ぶ点に注目しました。

現代刀職展は、日本美術刀剣保存協会が実施する公募展で、研磨・刀身彫・彫金・白鞘・刀装・柄前・白銀の伝統技術の保存と向上、および文化財としての刀剣への関心を高めることを目的とする。伝統的な技術・材料で作られていない作品は審査対象外とされる[10]。

作刀の部については別の記事「今の刀匠は、どうやって一人前になるのか」で扱ったので、ここでは繰り返さない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

ごはんつぶを 指で よく つぶして、のりを 作ります。その のりで、かみ2まいを はりあわせて みましょう。かわいた あと、ぬれた ふきんで しめらせて、はがれるか どうか 見て みます。これは、のりの ようすを 考える きっかけです。本当の 刀の さやとは、ようすが ちがいます。

出かけて できること

はくぶつかんや 刀の てんじかいで、さやや つばを 見て みましょう。だれが どこを 作ったのか、さがして みると おもしろいです。

もっと しりたい とき

日本美術刀剣保存協会にほんびじゅつとうけんほぞんきょうかいの 現代刀職展げんだいとうしょくてんの ページを 見て みましょう。

今日できること

ご飯粒を指でよくつぶして糊を作り、その糊で紙2枚を貼り合わせてみましょう。乾いたあとで、湿らせた布を当てたらどうなるかも見てください。続飯が「あとから剥がせる」といわれる理由を考えるきっかけになりますが、刀の鞘とは条件が違うので、あくまで糊のようすを想像する手がかりです。

出かけてできること

刀の展示を見る機会があれば、刀身だけでなく、鞘や柄、鍔の部分を見てみましょう。どの工程を誰が受け持ったのかを想像しながら見ると、見え方が変わります。

公式情報

日本美術刀剣保存協会の現代刀職展のページで、募集する部門を確かめられます。

資料を読むなら

研磨の分業と現代の状況は、日本刀文化振興協会の認定発表[1]と、日本美術刀剣保存協会の現代刀職展のページ[10]を出発点にするとよい。白鞘と鞘師の仕事は瀬戸内市のページ[6]、手入れの注意は刀剣博物館のページ[4]に、それぞれまとまっている。

確かめられること

続飯(飯粒の糊)で紙を貼り合わせ、乾かしたあとに湿らせて剥がれ具合を見る、という簡単な観察ができる。ただし刀の鞘での使い方とは条件が違うので、あくまで感触をつかむ程度にとどめること。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料。分業の全体像と数字は複数の資料を突き合わせ、民間の解説サイトの数字は目安として扱った。

  1. 日本刀文化振興協会「本阿彌光洲氏の認定について」 nbsk-jp.org (研磨の役割と2014年の認定)
  2. 刀剣ワールド「人間国宝」 https://www.touken-world.jp/tips/17614/ (研磨の人間国宝と本阿弥家)
  3. 刀剣ワールド「日本刀の研磨」 https://www.touken-world.jp/tips/10020/ (研磨の二段階と砥石の数)
  4. 刀剣博物館「取り扱いと保存方法」 https://www.touken.or.jp/museum/sword/preservation.html (研ぎ直後の手入れ)
  5. 刀剣ワールド「刀装具の名工」 https://www.touken-world.jp/tips/14761/ (刀装の分業と塗師の仕事)
  6. 瀬戸内市「鞘師」 https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/3920.html (白鞘の材と続飯)
  7. 刀剣ワールド「鞘師の仕事」 https://www.meihaku.jp/sword-basic/sayashi-jobs/ (油による合わせと乾燥期間)
  8. 刀剣ワールド「鞘書の解説」 https://www.meihaku.jp/sword-basic/sayagaki/ (鞘書)
  9. EDUPEDIA「伝統技術日本刀編 柄巻師」 https://edupedia.jp/archives/16414 (柄巻)
  10. 日本美術刀剣保存協会「現代刀職展」 https://www.touken.or.jp/employment/tabid292.html (現代刀職展の目的と審査)
  11. 刀剣ワールド「研師の無鑑査・人間国宝」 https://www.touken-world.jp/tips/95429/ (研師の人数)

なおした ところ

更新履歴

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