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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あかちゃんの 口は、手が つく まえに あいている

赤ちゃんの口は、指が着く前に開いている ── 指しゃぶりは何のためで、いつまで続くのか

指が口に着く前に開く口 ── 乳児の指しゃぶりの役割と、減っていく道すじ、歯との関係

分野:からだ

おなかが すいた あかちゃんは、手が 口に つく まえに、もう 口を あけて いることが あると いわれます[2]。

あかちゃんは、なぜ 指を 口に もって いくのでしょう。いつごろ しなく なるのでしょう。日本の 学会の 見かたと、けんきゅうを 見ると、その ようすが わかります。

生まれて間もない赤ちゃんは、おなかがすいているとき、手が口に届く前に口を開けることが多いと報告されています[2]。空腹の新生児では、指が口に着く前に、口を開ける動きも見られたそうです。

赤ちゃんはなぜ指を口に運ぶのでしょうか。いつごろ減り、歯にはどんな関わりがあるのでしょうか。日本小児歯科学会の見解や、新生児の研究から、その理由と目安が分かります。

空腹の新生児は、手が口に着く前に口を開ける頻度が、顔のほかの部位に手が着く前より高く、食後にはその差が見られなかったと報告されている[2]。指しゃぶりは、指を口に入れてから始まる反応というより、手の動きを先取りした口の準備を伴う行動らしい。

では、その行動は何の役に立ち、なぜ多くの子で自然に減るのか。日本小児歯科学会の見解と新生児の研究から、役割の候補、減る時期の目安、歯との関係の条件が分かる。

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1. 口は、手が くる のを しって いるの?

1. 手が着く前に、口はもう開いている

1. 空腹の新生児は、手が着く前に口を開ける

おいしい ものが 目の まえに くると、口が さきに あいて しまう ことが あります。

生まれたばかりの あかちゃんも、おなかが すいて いる ときは、手が 口に つく まえに 口を あける ことが 多かったそうです。ごはんの あとには、そう なりませんでした[2]。

べつの けんきゅうでは、生まれて 2日の あかちゃんが、口を あけてから 親ゆびを 口に いれる どうがを、ほかの どうがより 長く 見たと つたえられて います[3]。

ただし、あかちゃんが 考えて そう して いるのかは、わかって いません。では、口に 入れた 指で、あかちゃんは 何を して いるのでしょう。

おいしそうなものを見ると、口が先に開いてしまう。そんな経験はないでしょうか。1995年に発表されたルー(Lew)とバターワース(Butterworth)の研究では、新生児にも似たことが見られたと報告されています。空腹のとき、手が口に着く前に口を開ける動きは、顔のほかの場所に手が着く前よりも多く、食後にはその差が見られませんでした[2]。

別の研究では、生後2日の新生児に、口を開けたあとに親指を口へ入れる動画と、そうでない動画を見せました。前者を長く見たと報告されています[3]。この別の論文は、胎児期の研究を引き、妊娠24〜36週に手が口のまわりに触れることが増えると述べています。

ただし、これは手の動きに先立って口が準備される様子の観察です。赤ちゃんが「食べたいから」と意図して動かしている、とまでは言えません。それなら、口に届いた指は、そこで何をしているのでしょうか。

新生児の指しゃぶりを、指が口に入ってから起こる吸啜反応の連続として見るなら、手が着く前の口の動きは説明できない。ところが、Lew & Butterworth(1995)は、空腹の新生児では、口に着く手の動きの前に口が開くことが、顔のほかの部位に着く動きの前より有意に多く、食後にはそれが見られなかったと報告した[2]。この結果は、空腹などの状態が、手の着地点に合わせた口の準備を促すという解釈と合う。ただし、観察されたのは予測的な口の動きであり、意図の証明ではない。

この協調は、生まれる前から準備されている可能性がある。日本小児歯科学会の見解は、胎生14週頃から手を口に持っていく動きが見られ、24週頃には指を吸う動き、32週頃には吸いながら羊水を飲み込む動きも出るとする。ただし、週数の数え方は資料により違う[1]。また、別の論文は、胎児期の研究を引き、妊娠24〜36週に手が口の周辺に触れることが増えると述べ、生後2日の新生児が、口を開けたあと親指を口に入れる動画を、そうでない動画より長く見たことも報告している[3]。ここでは胎児期の詳細には立ち入らず、生後の指しゃぶりに話を進める。

2. 5か月ごろ、なんでも 口に もって いくのは どうして?

2. 5か月ごろ、手にふれた物が何でも口へ向かう

2. 生後5か月ごろに増える「何でも口へ」の意味

あかちゃんは 5か月ごろに なると、手に した ものを、なんでも 口に もって いって しゃぶります。おもちゃも、じぶんの 手も おなじです。

日本の 学会は、これは 目と 手を いっしょに うごかす れんしゅうの ため、と 考えられて いると 書いて います。もう ひとつ、形や 味や さわりごこちを しる ため、とも 考えられて います[1]。

口は、あかちゃんが 世界を たしかめる ための、だいじな 場所なのかも しれません。

では、おもちゃが ある のに、どうして じぶんの 指も しゃぶるのでしょう。

日本小児歯科学会の見解によると、生後2〜4か月の赤ちゃんは、口のそばに来た指や物を無意識に吸います。5か月ごろになると、何でも口に持っていってしゃぶるようになります[1]。

見解は、これを目と手の協調運動を学ぶことと、形・味・性状を学ぶためと考えられている、と説明しています[1]。口は食べる場所であり、手先の動きがまだ未熟な時期には、物の形や味、さわり心地を知る手がかりにもなります。

指はいつでも口に届くので、赤ちゃんが吸うことがあります。ただ、その理由まで資料が書いているわけではありません。指は、なぜ落ち着くときにも見られるのでしょうか。

生後2〜4か月は、口のそばに来た指や物を捉えて無意識に吸う。5か月ごろには、何でも口に持っていってしゃぶるようになる。同見解は、この行動を、目と手の協調運動の学習とともに、形・味・性状の学習のためと考えられている、と説明する[1]。

口を使って形・味・性状を学ぶためと考えられている、というのが学会の説明である。ただし、これは「と考えられている」理由であり、実験で因果を示したものではない。

次の章では、指しゃぶりが眠いときや退屈なときにも見られることを読む。

3. ねむい とき、たいくつな ときに 出る のは なぜ?

3. 眠いとき、退屈なときに出るのは、なぜか

3. 探索から安心へ ── 専門ごとに割れる見方

あかちゃんは、たいくつな ときや ねむい ときに、指を しゃぶる ことが あります。1〜2さいで つみ木や おもちゃの 車で あそぶ ように なると、ひるまの 指しゃぶりは へって いき、たいくつな ときと、ねむい ときだけに なって いきます[1]。

お医者さんの なかにも、見かたが ちがう 人が います。子どもの 病気を みる 小児科しょうにかの 先生には、指しゃぶりを 心配や きんちょうを ほぐす はたらきが ある、と 考える 人が 多いそうです[1]。

あかちゃんに とって、指は、いつでも そばに ある おまもりの ような ものかも しれません。ただし、なぜ 落ち着くのかまでは、学会の 見かたには 書かれて いません。

では、あそびが ふえると、しゃぶる ことは どう なるのでしょう。

1〜2歳になり、積み木を積んだり、おもちゃの車を押したり、人形を抱っこしたりする遊びが出てくると、昼間の指しゃぶりは減っていきます。退屈なときや眠いときにだけ見られる程度になる、と日本小児歯科学会の見解は述べています[1]。

同じ見解によれば、小児科医は指しゃぶりを生理的な行為とみて、特に幼児期は不安や緊張を解消する効果を重視し、無理にやめさせない意見が多いとされます[1]。指を吸うことは、遊びで手が使えないときのすき間を埋め、気持ちを鎮める役目もしていると読めます。

ただし、なぜ指を吸うと落ち着くのかは、この見解には書かれていません。見方は、専門によっても分かれています。では、そのちがいは、どこから来るのでしょうか。

1〜2歳で積み木・おもちゃの車・人形の遊びが出ると、昼間の指しゃぶりは減り、退屈なときや眠いときに見られる程度になる[1]。遊びの種類が増えるにつれて、口で物を確かめることは減り、眠いときや退屈なときに指をしゃぶることが残っていく。

同見解は、専門ごとの見方の違いも記している。小児科医は、指しゃぶりを生理的な行為とみて、不安や緊張を解消する効果を重視し、口や歯への影響をあまり心配しない意見が多い。小児歯科医は、4〜5歳を過ぎた指しゃぶりは指導したほうがよいという意見が多い。臨床心理士は、4〜5歳で続くなら退屈など生活環境も背景と見る[1]。

この見解では、専門ごとの意見が分けて紹介されている。なお、指を吸うと落ち着く仕組み自体は、見解に書かれていない。

4. しゃぶる ことは、いつごろ なくなる?

4. 指をしゃぶらなくなるのは、いつごろか

4. 自然に減る道すじと、1地域の調査が示す頻度

つかまり立ちや、あるきはじめの ころは、指を しゃぶって いると 手が つかえません。だから、しゃぶる ことは へる ことが 多いそうです[1]。

3さいから 小学校に 入る まえには、おかあさんと はなれて、ともだちと あそぶ ように なります。すると、指しゃぶりは しぜんに へって いきます。5さいを すぎると、ほとんど しなく なる と 書かれて います[1]。

ただ、6さいでも よく しゃぶる 子が まれに いる とも 書かれて います。人に よって ちがう のです。

では、しゃぶって いる ことが 長く つづくと、歯には どう なるのでしょう。

つかまり立ち、伝い歩き、ひとり立ちのころは、指をしゃぶっているとその動作ができないので、指しゃぶりは減る傾向があります[1]。

3歳から就学前になると、母子分離ができ、友達と遊ぶようになって、自然に減っていくそうです。5歳を過ぎると、ほとんどしなくなります。ただし、6歳でも昼夜頻繁にする子がまれにいて、特別な対応をしないと消えることは少ないとされています[1]。

どのくらいの子がしているのかについては、東京都K区の調査(平成14年、2002年)があります。1歳2か月児で28.5%、1歳6か月児で28.9%、2歳0か月児で21.6%、3歳0か月児で20.9%でした。これは1つの区の約20年前の調査で、全国の数字ではありません[1]。

手を使う遊びが増えても、少数の子では続くことがあるようです。それが歯にどう関わるのか、見てみましょう。

つかまり立ち、伝い歩き、ひとり立ち、歩き始めの時期は、指をしゃぶるとその動作ができないため、指しゃぶりは減りやすい。3歳から就学前は、母子分離が進み、友達と遊ぶようになると自然に減り、5歳を過ぎるとほとんど見られなくなる。ただし、6歳でも昼夜頻繁にする子がまれにいて、特別な対応がないと消えることは少ないとされる[1]。

頻度は、見解が引く調査で確かめられる。東京都K区の調査(平成14年)では、1歳2か月児が28.5%、1歳6か月児が28.9%、2歳0か月児が21.6%、3歳0か月児が20.9%で、2歳以降にやや減っても20%台だった。山形県T市周辺の3歳児健診(平成8年、7,900名)では、居住地により12.9〜19.4%だった[1]。

ただしこれらは、限られた地域の約20〜30年前の調査であり、全国値として読むことはできない。では、少数の子で長く続いた場合、歯や口にはどんな条件で影響が出るのか。

5. 歯には どう かかわる? 心配な ときは?

5. 歯並びとの関わりと、迷ったときの目安

5. 歯並びへの影響の条件と、年齢の目安

指しゃぶりが 長く つづくと、歯ならびや かみあわせに えいきょうが 出る ことが あると されます。しゃぶる 指の しゅるいや、しゃぶり方にも よります[1]。

たとえば、上の 前歯が 前に 出たり、上と 下の 前歯の あいだが あいたり します。すきまに した が 入って、さ行や た行が 言いにくく なる 子も います。

でも、赤ちゃんの ころの 指しゃぶりは、しぜんな ことと 書かれて います。生まれてから 1さいごろまでは、そのまま 見て いて よいそうです。1〜2さいは、しんけいしつに ならず、あたたかく 見まもる ことが 大切と されて います[1]。

3さいを すぎても よく つづく ときは、お医者さんに そうだんする ことが すすめられて います。せめる ことでは ありません。

指しゃぶりが長く続くと、歯並びや噛み合わせに影響が出ることがあると、日本小児歯科学会の見解は述べています。挙げられているのは、上の前歯が前に出る上顎前突、上下の前歯の間が開く開咬、片側性交叉咬合などです。すき間に舌を押し込む癖から、サ行・タ行などの発音が舌足らずになることもあります。影響の出方は、しゃぶる指の種類やしゃぶり方によります[1]。

対応の目安も示されています。生後12か月ごろまでは発達過程の生理的な行為なので、そのまま経過をみてよい。1〜2歳は神経質にならず、生活全体を温かく見守る。3歳ごろまでは特に禁止する必要がないことを、保護者に伝えることが大切とされます。頻繁な指しゃぶりが3歳以降も続くなら、小児科医・小児歯科医・臨床心理士による対応が必要とされています[1]。

親を責めるための目安ではありません。子どもの様子を見ながら、必要なら専門家に相談するための目安です。

指しゃぶりが長く続くと、歯並びや噛み合わせに影響が出ることがあると、同見解は述べる。挙げられるのは、上顎前突(上の前歯が前に出る)、開咬(上下の前歯の間が開く)、片側性交叉咬合である。すき間に舌を押し込む舌癖から、サ行・タ行などが舌足らずな発音になることもある。ただし影響の出方は、しゃぶる指の種類やしゃぶり方に左右される[1]。したがって、乳児期の指しゃぶりそのものを害とみなす資料ではなく、期間と条件がある。

対応は年齢で分けられている。生後12か月ごろまでは発達過程の生理的な行為で、そのまま経過をみてよい。1〜2歳は神経質にならず、生活全体を温かく見守る。3歳ごろまでは特に禁止する必要がないことを、保護者に話すことが大切とされる。頻繁な指しゃぶりが3歳以降も続く場合は、小児科医・小児歯科医・臨床心理士による対応が必要とされる[1]。

この見解は2006年のもので、その後の改訂の有無は確かめていない。ここまでの共通点は、時期と続き方が判断の軸であり、特定の子や家庭を責める材料ではないことだ。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

【今日 できる こと】 あかちゃんに あう ときが あれば、大人と いっしょに、少し はなれて 見て みましょう。手を 口に もって いく とき、口が さきに あくか、見て みて ください。あかちゃんの ようすは その ときの ぐあいで かわるので、1回だけで きめつけないで ください。さわったり、おこしたり しては いけません。

【もっと 知る】 日本しょうにしか学会の 「指しゃぶりについての 考え方」は、日本語で 読めます。

【今日できること】 赤ちゃんに会う機会があれば、保護者の許可を得て、少し離れたところから、手が口へ向かう様子を見てみましょう。口が先に開くのか、手が動いてから開くのかを、ぜひ見比べてください。赤ちゃんの様子はそのときの状態で変わるので、1回だけで決めつけないでください。赤ちゃんには触れず、様子を見るだけにします。

【資料を読むなら】 日本小児歯科学会の「指しゃぶりについての考え方」は、日本語のPDFで読めます。専門ごとに見方が違うところは、原文の該当部分で確かめられます。

【今日できること】 赤ちゃんに会う機会があれば、保護者の許可を得て、少し離れたところから、手が口へ向かう様子を見る。手が着く前に口が開くかどうかは、空腹などの状態でも変わりうるので、1回の様子で決めつけず、何度か見て比べる。

【資料を読むなら】 日本小児歯科学会の見解(日本語のPDF)は、年齢ごとの対応と専門ごとの意見の違いを、原文で確かめられる。新生児の研究は、Lew & Butterworth(1995)と、PMCに公開されている論文が英語で読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

書名・論文名・URLは、使った資料だけを挙げています。

  1. 日本小児歯科学会「指しゃぶりについての考え方」(小児科と小児歯科の保健検討委員会、平成18年1月13日) https://www.jspd.or.jp/common/pdf/06_03.pdf (月齢・年齢ごとの変化、対応の目安、頻度、歯への影響、専門ごとの見方)
  2. Lew, A. R. & Butterworth, G. (1995). Developmental Psychology, 31(3), 456-463. https://eprints.lancs.ac.uk/id/eprint/64822/ (新生児が手が口に着く前に口を開ける観察)
  3. Newborns' early attuning to hand-to-mouth coordinated actions (PMC). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9286559/ (生後2日の新生児の動画を見る時間、胎児期の先行研究の紹介)

なおした ところ

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