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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ベルトが なかった むかし、ズボンは どうやって とまって いたの?

「ベルトのない時代」はどこにある? ── ズボンを留めるひもと結び方の歴史

ズボンの留め方の歴史 ── 5200年前のベルトから、ポイント・袴の紐・サスペンダーまで

分野:歴史・文化

ズボンが すとんと おちないのは、ベルトが あるから。では、ベルトが なかった むかしの ひとは、どうして いたのでしょう。

しらべてみると、ふしぎな ことが わかりました。「ベルトの ない じだい」を さがす ほうが、むずかしいのです。

ズボンが落ちないのは、ベルトを締めているから。では、ベルトがなかった時代の人は、ズボンをどうやって留めていたのでしょうか。

調べはじめると、問いのほうが探しにくいことに気づきます。ベルトのない時代が、なかなか見つからないのです。腰のひも、ベルトへの結びつけ、上着への結びつけ、と、留め方の工夫を順に見ていきます。

「ベルトがない時代、ズボンはどう留めたのか」という問いは、前提から見直す必要がある。約5200年前のアイスマンはすでにベルトを着けており[1]、脚のおおいはそのベルトに結んで留めていた[2]。

そこから、最古級のズボンの発掘、中世ヨーロッパのひもと「ポイント」、日本の袴の紐、サスペンダーからベルトへの流れを、複数の資料を突き合わせて整理する。

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1. ベルトは いつ ごろから あったの?

1. 5200年前の人は、すでにベルトをしていた

1. 約5200年前のベルト ── アイスマンの持ち物

アルプスの ゆきと こおりの 中から、5200ねんくらい まえに なくなった ひとが みつかりました。「アイスマン」と よばれて います[1]。

この ひとは、こしに ぬのの ような かわを まき、ベルトを して いました。ベルトには、ちいさな ふくろが ぬいつけて ありました[1]。

ベルトは、ずいぶん むかしから あったのです。ただし、ズボンを とめる ためだけの ものだったかは、この ひとの ばあいでも、よく わかりません。

アルプスの氷の中から、紀元前3230年ごろ(約5200年前)に亡くなった男性が見つかりました。「アイスマン」や「エッツィ」と呼ばれる人です。腰布とベルトを身につけていて、ベルトには小物を入れる袋が縫いつけられていたと、博物館の展示などを紹介した資料に書かれています[1]。

日本語の解説でも、ベルトの使い道は「衣服を留めること」と「物を携えること」の2つに整理され、使われはじめたのは青銅器時代までさかのぼれるといいます[3]。アイスマンはそれより古い時代の人(銅石器時代)です。ベルトの歴史は、この説明よりも古いことになります。

ベルトのない時代を探すつもりが、いきなり約5200年前にベルトが出てきました。

アイスマン(エッツィ、Ötzi)は紀元前3230年ごろ(約5200年前)に亡くなった。腰布とベルトを身につけ、ベルトには小物入れの袋が縫いつけられていた[1]。

日本語版ウィキペディアの「ベルト(服飾)」は、ベルトの使用を青銅器時代まで遡れるとし、用途を衣服を留めることと物を携えることの2つとする[3]。アイスマンは銅石器時代の人で、この記述の時代より古い。ベルトの歴史は、この説明よりも古いことになる。

いずれもウィキペディアの記述で、二次資料である。ここでは、ベルトが「ズボンのための発明」ではなく、腰布や携行品の袋とともにあった腰の道具だった、という点を押さえる。

2. ズボンは ベルトに どう つながって いたの?

2. 脚のおおいを、ベルトに結びつけた

2. アイスマンのレギンス ── ベルトに革紐で結ぶ二つ組

アイスマンは、あしの ぶぶんに、ながい ぬのの ような ものを 1本ずつ つけて いました。ヤギの かわで できて います[2]。

これは、あしを おおう ものです。うえの ほうは、かわの ひもで ベルトに むすんで ありました。したの ほうは、くつに とめて いました[2]。

ふたつの ふうせんを ひもで つるして おくように、あしの ぶぶんを ベルトから ぶらさげて いたのです。ただし ほんとうは、ふうせんの ように かるい ものでは ありません。

アイスマンは、ズボンのように一続きの服ではなく、左右別々の脚のおおい(レギンス)をはいていました。ヤギの革でできています。

南チロル考古学博物館の解説によると、上の端は革のひもで補強され、別の革ひもでベルトに結びつけられていました。下の端は靴に留められていました[2]。

つまりベルトは、腰布を留めるだけでなく、脚のおおいを吊る役目もしていたことになります。今のズボンとベルトは「ズボンにベルト」ですが、この時代は「ベルトに脚のおおいを結ぶ」という順番でした。

南チロル考古学博物館の解説では、アイスマンのレギンスはヤギ革製で、左右別々の脚のおおいである。上端は革の細い帯で補強され、別の革紐でベルトに結びつけられ、下端は靴に留められていた[2]。

つまり、ズボン(脚を分けた衣)を体に留めるのに、ベルトが「土台」になっていた。ベルトに結ぶ二つ組の構造である。

これは一例であり、当時の人々がみなこうしていたと言えるわけではない。ただ、「ベルトがあとから、ズボンを留めるために生まれた」という順序で考えると、この例とは合わなくなる。

3. いちばん ふるい ズボンは、なんの ために?

3. 最古級のズボンは、馬に乗る人の服だった?

3. 洋海のズボン ── 紀元前13〜10世紀の羊毛製

いま みつかって いる いちばん ふるい ほうの ズボンは、ちゅうごくの さばくの ちかくの おはかから でて きました。ひつじの けで できて います[4]。

まっすぐな ズボンの あしと、ひろい またの ぬのが あります。うまに のるのに むいた かたち、と けんきゅうした ひとは かんがえて います[4]。

こしを どう とめたかは、しらべた しりょうでは わかりません。わからないことは、わからないままにしておきます。

世界でも最古級とされるズボンは、中国のトルファン近くにある洋海(ヤンハイ)の墓地から出た、羊毛の布でできたものです。放射性炭素による年代測定で、紀元前13〜10世紀ごろとされました[4]。

形は、まっすぐな脚の部分と、広い股の当て布をもちます。研究者は、馬に乗るのに向いた形だったとみています。ただし「乗馬のために発明された」と決まったわけではありません[4]。

腰まわりの留め方については、参照した資料には書かれていませんでした[5]。

ちなみに古代のローマでは、ズボンは最初「野蛮な人の印」と見られ、のちに帝国が広がると、暖かいのでとり入れられたといいます[6]。ズボンは、はじめから人気者ではなかったようです。

世界最古級のズボンは、中国・トルファン近郊の洋海墓地の墓M21・M157から出土した羊毛製で、放射性炭素年代は紀元前13〜10世紀とされる。まっすぐな脚と広い股の当て布をもち、乗馬に適した形と論じられている[4]。ただし「乗馬用に発明された」という点は研究者の説であり、断定できない。

腰まわりの留め方(紐やベルトの有無)は、参照した資料に記述がない。ウエストバンドまで織られた2枚の脚部と十字形の股部という三枚構成の記述にとどまる[5]。

ズボンへの評価は地域で異なった。ウィキペディアによると、古代ギリシャ人はズボンを滑稽なものと見なし、共和政ローマも当初は野蛮人の印と軽んじたが、帝国が広がると暖かさから受け入れた[6]。

4. ちゅうせいの ズボンは、どう とめたの?

4. 中世ヨーロッパ ── 通しひもと、上着に結ぶ「ポイント」

4. ブレーの紐とホーズのポイント ── 中世ヨーロッパの留め方

ちゅうせいの ヨーロッパには、したばきの ような ズボンが ありました。11せいきごろには、あしくびまでの ながさに なり、うえの ふちに とおした ひもで とめて いました[7]。

これは、ふくの こしの ぶぶんの ひもを、ぎゅっと ひっぱって むすぶ やり かたです。

もっと あとの じだいには、あしを おおう ぬのを、うわぎに ひもで むすんで いました。この ひもは、「ポイント」と よばれます[8]。

中世ヨーロッパには「ブレー」という、下ばきのようなズボンがありました。11世紀までには足首の長さになり、上の縁に通したひもで留めていたと説明されています[7]。今でいう、ジャージやパジャマの腰ひもに近い方法です。

中世の終わりごろには、脚をおおう布ばき「ホーズ」が使われました。ホーズは伸びないので、ひもで上着(ダブレット)に結びつけて、ぴんと張らせたようです[8][9]。この結びひもを「ポイント」といいます。

ベルトに結ぶ、上着に結ぶ、と、留める場所は変わっても、どれも「ひもで結ぶ」ことが基本でした。

ブレー(braies)は中世ヨーロッパの下ばき状のズボンで、11世紀までに足首丈になり、上端に通したコードで留めた[7]。巾着や現代の腰紐と同じ、通し紐の方式である。

14世紀末ごろになると、脚をおおう布ばきのホーズ(hose)は、腰のロープ状ベルトで吊るズボンに近づいた。また上着(ダブレット)に紐で直接結ぶこともあった[8]。

ホーズが伸びない布だったため、紐(ポイント)で上着に結んで張らせたと説明される。先に金属の先端(エーグレット)をつけた紐も、服の留め具として長く使われた[9]。ただし、このページは店の解説を含む検索結果に近く、年代は博物館の資料で確かめる必要がある。

5. にほんの はかまは、どう とめるの?

5. 日本の袴 ── 4本のひもで腰に結ぶ

5. 袴の紐 ── 「ひもで腰に結び留める」衣

にほんには、袴はかまが あります。きものの うえに つけて、こしから したを おおう ふくです。

はかまは、ひもで こしに むすんで とめます[10]。いまの はかまは、まえと うしろに ひもが 2ほんずつ、ぜんぶで 4ほん あります[11]。

ひもを ぐるりと まわして むすぶと、ベルトが なくても、ずり おちません。

日本の袴は、着物の上からつけて腰から下をおおう、ゆるやかな衣服です。基本は「ひもで腰に結び留める」ものだと辞典に書かれています[10]。

今の袴は、前布と後布の上の端の左右から1本ずつ、合計4本のひもが出ていて、これで腰に固定します[11]。名前は「穿く裳(はくも)」が語源とされます[11]。股のあるものを袴、股のないものを裳と区別する、という説明もあります[10]。

袴は『日本書紀』にすでに見え、奈良時代に制度が整い、平安時代には多様な袴のもとになる形ができたといいます[10]。ただし、古い時代の袴のひもの数や結び方まではわかりませんでした。

『日本大百科全書』などによる袴の解説では、袴は和服の上から着けて腰から下をおおう緩やかな衣服で、紐で腰に結び留めるのが基本である。股のあるものを袴、股のないものを裳(も)と区別する。日本書紀にすでに見え、奈良時代に制度が整い、平安時代に多様な袴の原型ができたとされる[10]。

現在の袴は、前布・後布それぞれの上端の左右から1本ずつ、合計4本の紐を出して腰に固定する[11]。語源は「穿く裳(はくも)」とされる[11]。

この紐の数は現代の袴についての記述であり、古代の袴の紐の詳細は、確認した資料からは分からない。

6. ベルトは、いつ ふつうに なったの?

6. サスペンダーの時代を経て、ベルトへ

6. サスペンダーからベルトへ ── 18世紀〜20世紀

せなかや かたから ズボンを つる「サスペンダー」も あります。18せいきの はじめに、ドイツで あらわれたと する せつが あります[12]。はじまりには いろいろな せつが あります。

むかしの ズボンは、おなかの ずっと うえまで ありました。だから、ベルトは しにくかった そうです[13]。

ズボンの かたちが かわって、ベルトが ふえて いきました。とめ かたは、ひとつでは なかったのです。

サスペンダーは、18世紀の初めにドイツに現れたとする説明があります。ただ、英語版のウィキペディアには、1822年にロンドンで広まったとする説明もあり、起源には諸説があるようです。日本語版によると、はじめは背中でH型にクロスし、18世紀末にX型、19世紀半ばにはY型になりました。ズボンとの留め方も、ボタンのほか、クリップやリングの式があります[12]。

19世紀の中ごろから20世紀の初めのズボンは、股上が高く、ベルトが使いにくかったので、サスペンダーが主流でした。1938年のアメリカの雑誌には、男性の60%がベルトを選ぶと書かれています[13]。ここから、ベルトが広がっていったとみられます。

ベルトのない時代を探してみると、見てきた例では、ひもやベルト、サスペンダーなどで留めていました。

日本語版ウィキペディアは、サスペンダーが18世紀初めにドイツで登場したとし、当初はH型(背中で交差しない)、18世紀末にX型、19世紀半ばにY型になった。留め具はボタン式のほか、クリップ式とリング式がある[12]。なお英語版ウィキペディアは、1822年にアルバート・サーストンが「braces」として広めたとする。起源は資料によって異なり、ここでは一つに決めない。

19世紀中ごろ〜20世紀初めのズボンは股上が高く、ベルトが使いにくかったため、サスペンダーが主流だった。1938年の『ライフ』誌は、アメリカ人男性の60%がベルトを選ぶと述べている[13]。

結論として、「ベルトがない時代」は見つけにくく、腰の紐・ベルトへの結び付け・上着への結び付け・サスペンダーなど、留め方は多様だった。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いえで できる こと

  • ズボンや スカートの こしの まわりを 見て みましょう。ひも、ボタン、ゴム、ベルトの どれで とめて いるでしょうか。
  • うちに はかまや きものの しゃしんが あれば、はかまの ひもが どこから でて いるか 見て みましょう。

でかけて できる こと

  • としょかんで、むかしの ふくの ほんを さがして みましょう。むかしの ひとは、どう とめて いたか、かいて ある ページが あるかも しれません。

家でできること

  • 家にある服を何着か出して、腰まわりの留め方を見比べてみましょう。ひも、ボタン、ゴム、ベルトなど、いくつあるでしょうか。
  • 家に着物や袴の写真があれば、ひもの出ている位置と結び目の場所を観察してみましょう。

出かけてできること

  • 図書館や博物館の服飾の展示で、昔の服の留め具(ひも、ボタン、ベルト)を探してみましょう。

調べる手がかり

  • 南チロル考古学博物館(イタリア)のアイスマンの衣服のページ[2]は、一次資料にあたる。写真つきでベルトとレギンスの関係が見られる。
  • 洋海のズボンについては、原論文(Beck et al. 2014, Quaternary International)の要旨で、年代と形を確かめられる[4]。
  • 袴の紐の数や結び方は、現代の着付けの資料で確かめられる。古い時代の袴の紐については、資料を探してみよう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った事実の出どころです。ウィキペディアは二次資料なので、必要に応じて原典にもあたってください。

  1. Ötzi - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%96tzi (アイスマンの年代・腰布・ベルトと袋)
  2. South Tyrol Museum of Archaeology: Clothing https://www.iceman.it/en/oetzi/clothing (レギンスとベルトの結びつけ)
  3. ベルト (服飾) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルト_(服飾) (ベルトの歴史と用途)
  4. Beck et al. 2014, Quaternary International (abstract) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1040618214002808 (洋海のズボンの年代と形)
  5. Earliest pair of trousers found in China (Archaeology Wiki) https://www.archaeology.wiki/blog/2014/06/02/earliest-pair-of-trousers-found-in-china/ (洋海のズボンの構成)
  6. Trousers - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Trousers (古代ギリシャ・ローマのズボンへの見方)
  7. Braies - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Braies (ブレーの通しひも)
  8. Hose (clothing) - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Hose_(clothing) (ホーズを上着やベルトに結ぶ)
  9. Medieval arming points (Medieval Rats) http://www.medievalrats.co.uk/medieval_arming_points.htm (ポイントで上着に結んで張らせる)
  10. 袴 - コトバンク(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/袴-113519 (袴の紐と歴史)
  11. 袴 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/袴 (現在の袴の4本のひも・語源)
  12. サスペンダー - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/サスペンダー (サスペンダーの形の移り変わり)
  13. Suspenders - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Suspenders (高い股上とベルトの広がり)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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