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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あめつぶは、どうして かさの ぬのを とおれないの?

傘の布はすき間だらけなのに、なぜ雨は入ってこないのか

撥水加工の織物と水の侵入 ── 表面張力・孔の大きさ・傘特有の漏れ道

分野:技術

あめの ひ、かさの ぬのには、あめつぶが たくさん あたります。それなのに、かさの したは ぬれません。

でも ぬのは、いとを あんで つくった ものです。いとと いとの あいだには、すきまが のこって います。すきまが あるのに、みずは なぜ はいって こないのでしょう。この ページでは、みずの ほうの せいしつに ちゅうもくして、かんがえて みます。

雨の日、傘の布にはたくさんの雨粒が当たりますが、傘の下の人はぬれません。ところが、その布は糸を織ったもので、糸と糸のあいだにすき間が残っています。

すき間があるのに、なぜ水は入ってこないのでしょうか。カギは、布の側より、水の側の性質にありそうです。この記事では、撥水加工、すき間の小ささ、傘に特有の漏れ道を順にたどり、最後に、防水の別の解き方も見ます。

傘の布は織物であり、糸と糸のあいだに空隙が残る。にもかかわらず雨は通らない。撥水加工を施した布では、空隙が残るために空気や水蒸気が通れる、と辞典類は説明している[1]。

では、空気の通る隙間を、なぜ水は通れないのか。この記事は、接触角と毛細管圧力という考え方、耐水圧試験、傘固有の漏れ道(縫い目・中棒)を、辞典・業界解説・メーカー記事から突き合わせる。傘の生地そのものの通気度を測った資料は見つけられていないため、通気の話は撥水加工布一般の説明として扱う。

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1. ぬのの すきまと、あめつぶ

1. 布のすき間と雨粒の大きさ

1. 織物の空隙と、雨粒の大きさ

かさの ぬのを ちかくで 見ると、いとが たてと よこに くみあって います。いとと いとの あいだには、ちいさな すきまが あります。

あめつぶは、ちいさな ものから おおきな ものまで、いろいろです。おおあめの おおきな つぶは、6 ミリメートル ほどに なると いいます[9]。ただ、つぶの おおきさだけでは、すきまを とおれない わけは わかりません。

ふしぎなのは、みずが すきまを とおれない わけです。

傘の布は、糸を縦横に組んだ織物です。糸と糸のあいだには、目に見えにくいほどのすき間が残っています。撥水加工をした布では、すき間が残ることが空気の通り道になる、と説明されます[1]。

雨粒の大きさには幅があります。雲の中の小さな水滴は直径0.1mm未満、大雨のときの大きな雨粒は最大で約6mmまで、とNASAの解説にあります[9]。

布のすき間と雨粒を、大きさだけで比べても、答えは出そうにありません。水の粒が「入れない」のは、大きさだけの問題ではないからです。

織物は経糸と緯糸を組んだ構造で、糸の間に空隙が残る。撥水加工では、この空隙を残したまま繊維の表面を疎水化するため、空気や水蒸気が布を透過できる[1]。

雨粒の直径は、雲粒の0.1mm未満から、強い雨に伴う最大約6mmまで幅がある[9]。ただし傘生地の空隙の寸法や、糸の密度(T数)と耐水圧の関係を示す信頼できる実測値は、今回の資料には無く、数値での比較は行わない。大きさの比較ではなく、水の側の性質から考える必要がある。

2. みずは、たまに なりたがる

2. 水は玉になろうとする ── 撥水加工のはたらき

2. 疎水化した繊維表面と接触角

あさ、はっぱに のった つゆを 見た ことは ありますか。はっぱの うえの みずは、まるい たまに なって います。

はっすい加工かこうを した かさの ぬのは、みずを はじきます。この 加工かこうを 撥水はっすい 加工かこうと いいます[1]。いとの ひょうめんを、みずと なじみにくく する ものです。

すると、あめつぶは いとの うえで たまに なり、ころがります。たまの まま、すきまに おしこまれる ことは ありません。ただし ほんとうは、ながい じかん あめに あたると、しみる ことも あります。

水は、表面のところで小さくまとまろうとする性質、つまり表面張力を持っています。葉の上の露が丸くなるのも、この性質のためです。

傘の布に施される撥水加工は、布を撥水加工剤で処理し、繊維の表面を水になじまない状態(疎水化)にする方法です[1]。水が繊維の表面に広がらず、玉になって転がるようになります。

この「水になじまない度合い」を表すのが、繊維の表面と水滴がつくる角度(接触角)です。角度が90度より大きければ撥水性、とされます。さらに、布の組織が密なほど、防水の効果は高くなると説明されています[2]。

撥水加工は、布を撥水加工剤で処理して繊維表面を疎水化する方法である[1]。ブリタニカ国際大百科事典は、織布に防水剤を浸透させて繊維に撥水性を与えるものと説明する[1]。

繊維の接触角θが90°を超えれば繊維は撥水性であり、布の組織が密なほど防水の効果は高くなる[2]。水滴が転がる現象は表面の話であり、水が空隙に入るかどうかは別の問題である(3章・5章)。

メーカー資料には、ハスの葉に似た微細な凹凸が空気の層をつくり水を玉にする、という説明もある。

3. すきまが ちいさいほど、はいりにくい

3. すき間が小さいほど、水は入りにくい

3. 毛細管圧力と孔径 ── すき間が小さいほど、水は入りにくい

ストローを おもい うかべて ください。ふとい ストローより、ほそい ストローの ほうが、みずを なかへ おしこむのに ちからが いりそうです。

みずを はじく ほそい くだでは、くだが ほそいほど、みずは はいりにくく なると いわれます[3]。ぬのの すきまも、ちいさいほど、あめつぶは はいれません。

ただし ほんとうの ぬのの すきまは、ストローの ように まっすぐでは ありません。ですから、この たとえは かんがえる ための ものです。

水をはじく細い管に、水を押し込むために必要な圧力は、管の半径が小さいほど大きくなります。式で書くと、圧力は半径に反比例します。半径が半分になれば、必要な圧力は2倍になる、という関係です[3]。

布のすき間は、丸い管とは違って形が不規則ですから、この式どおりの数値が出るわけではありません。それでも「すき間が小さいほど水は入りにくい」という方向は、同じだと考えられます。

この考え方を、極端に進めた傘もあります。福井の傘メーカーがつくった「ヌレンザ」は、特殊な織り方のポリエステルの超高密度の生地を使っている、と紹介されています[7]。ただしこれは企業の紹介記事にもとづく話なので、傘全般にあてはめることはできません。

撥水性の孔(非濡れ性の細管)に水を侵入させるには、表面張力γ・接触角θ・半径rで決まる圧力を超える外圧が要る。撥水性の孔ではθが90°を超えてcosθが負になるので、その大きさはΔP=−2γcosθ/rと書ける[3]。rが小さいほどΔPは大きい(反比例)。たとえばrが半分ならΔPは2倍になる。これは円管の理想化であり、布の実際の空隙は不規則なので、式の数値をそのまま傘に当てはめることはできない。

この方向を素材で示す例として、福井の傘メーカー製「ヌレンザ」がある。特殊な織り方のポリエステル超高密度生地を使うと紹介されている[7]。ただし企業の紹介的な記述にもとづくため、一般化しない。

4. ぼうすいの しかたは、ふたつ ある

4. 防水には、ふさぐ方法とふさがない方法がある

4. 不通気性防水加工と通気性防水加工

ぬのを みずから まもる やりかたは、ふたつ あります。

ひとつめは、ぬのの うえに うすい まくを はって、すきまを ふさぐ やりかたです。みずは ぜったいに とおりませんが、くうきも とおれません[1]。

ふたつめが、この ページで 見て きた やりかたです。すきまは のこして、いとの ひょうめんを みずに なじみにくく します。だから くうきが とおります[1]。かさの ぬのは、おもに ふたつめの やりかたです。ぬのを まくで おおった ものは、まくの ほうの やりかたです。

布に水を通さない加工には、大きく2種類があります。

ひとつは、布の上に防水フィルムをつくり、すき間そのものをふさぐ方法(不通気性防水加工)です。耐水圧は大きくできますが、空気や水蒸気も通らなくなります[1]。フィルムで覆った布は、この方法にあたります。

もうひとつは、すき間を残し、繊維の表面だけを水になじまなくする撥水加工です(通気性防水加工)。防水の力はフィルムに劣りますが、フィルムの欠点をなくせる、と辞典は説明しています[1]。この記事の主役の傘は、こちらの方法の布です。

第三の解き方として、登山用の衣服に使われるGORE-TEXの膜の話が知られています。1平方センチメートルあたり14億個以上の孔があり、各孔は水滴よりずっと小さく、水蒸気よりは大きいので、水滴は通さず水蒸気は通す、とされます[8]。傘の話ではありませんが、「孔の大きさを水の粒に合わせる」という考え方の例です。

防水加工は、防水フィルムを布上に形成する不通気性防水加工(耐水圧が大きいが空気・水蒸気も通さない)と、撥水加工剤で繊維表面を疎水化する通気性防水加工(空隙が残り、空気・水蒸気が透過できる)に分けられる[1]。ブリタニカは、後者は防水力が前者に劣るが、前者の欠点を解消し外観も良好と述べる[1]。

ここで扱う傘は、後者、撥水加工を施した織物の傘である。フィルムで覆った布は前者にあたり、空気を通さない。

孔の大きさで水と水蒸気を分ける別の解き方として、GORE-TEXのメンブレンがある。公式サイトの説明では、1cm²あたり14億個以上の孔があり、各孔は水滴の約2万分の1、水蒸気の約700倍とされる[8]。公式ページの本文は開けていないので、数値は「とされる」にとどめる。傘の話ではなく、対比のための例である。

5. それでも、しみる ことは あるの?

5. それでも、しみることはある

5. 耐水圧と撥水の限界 ── しみ込みの条件

かさの ぬのは、ぜったいに ぬれない わけでは ありません。

たまに なって ころがるのは、いとの ひょうめんの はなしです。ながい じかん あめに あたると、みずが すきまから しみこむ ことが あると いわれます[4]。

かさの はっすい 加工かこうは、すうねんで おちる ことも あります[5]。おちた ところから、みずが しみて きます。

撥水は、水が玉になって転がる、という布の表面の話です。水がすき間から入るかどうかは別の問題で、撥水だけでは、長い時間の雨でしみ込むことがあると説明されています[4]。

布の防水性を測る試験には、耐水圧試験があります。布の片側から水圧をかけ、裏側に水滴がしみ出すまでの圧力で防水性を見るものです[2]。水圧に耐えるほど防水性が高い、と読みます。アウトドア用では、大雨の目安として耐水圧1万mmという数字が紹介されます[4]。

もうひとつは、時間です。傘の撥水加工は数年で落ちることがあり、雨をはじかず裏側までぬれることもあると、傘メーカーの記事にあります[5]。長年さらされた布は、撥水性も布そのものの強度も落ちます。

耐水圧試験(JIS L 1092の考え方)は、布の片側から水圧をかけ、裏面に水滴がしみ出すまでの圧力で防水性を評価する[2]。撥水(水が玉になり転がる)は表面の現象で、空隙から水が入るかは別であり、撥水のみでは長時間の浸水で染み込む。アウトドア用の目安として、大雨で耐水圧1万mmという数字が挙げられている[4]。

傘については、撥水加工が数年で落ち、雨をはじかず生地の裏側まで濡れることがある。濡れた生地は撥水の落ちた部分から水がしみ、長年さらされた布は撥水性も強度も落ちる、と傘メーカー側の記事にある[5]。

6. かさの もれる みちは、ぬのだけ じゃない

6. 雨が入る道は、布だけではない

6. 傘固有の漏れ道 ── 縫い目・石突き・中棒

かさが もれる とき、げんいんは ぬのだけでは ありません。

ぬのと ぬのを ぬい あわせた ところには、はりの あなが あります。はりの あなの おおきさや、いとの ざいりょう、ぬい目の ならびかたで、みずが とおる ことが あります[5]。

かさの てっぺんから、まんなかの ぼうを つたって みずが おちる ことも あります[6]。

傘の雨漏りは、生地の劣化のほかに、縫い目でも起こります。針穴の大きさ、糸の材質、縫い目の間隔、ほつれなどが関わる、と傘メーカーの記事にあります[5]。針が通った穴は、そのまま水の通り道になりえます。

石突きや中棒にそって水が伝うことも、原因のひとつとされます[5]。ウェザーニュースは、傘専門店の話として、閉じたまま傘を回して水を切ると、上下のろくろに負荷がかかり、天頂から雨水が入って中棒を伝って落ちる症状につながる可能性がある、と伝えています[6]。

布の性質から始まった話が、最後は、傘というつくりものの細かいところに行き着きました。

傘の雨漏りの原因は、生地の劣化のほか、縫い目(針穴の大きさ、糸の材質、縫い目の間隔、ほつれ)や、石突き・中棒に沿って水が伝う経路がある[5]。ウェザーニュースは傘専門店の話として、閉じたまま回して水を切ると上下のろくろに負荷がかかり、天頂から雨水が入り中棒を伝って落ちる症状につながる可能性を伝えている[6]。

これらは布の撥水性とは別の経路であり、傘の防水性は、生地・縫製・骨組みの組み合わせで決まると考えられる。ただし、どの経路がどれほど多いかを示す統計は、今回の資料には無い。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちの ひとと いっしょに、もって いる かさの ひょうめんと、めんの ハンカチに、スプーンで みずを ひとしずく ずつ たらして みます。みずが たまに なるか、しみこむかを くらべて みましょう。ふろ場や、ぬれても いい ところで やります。

出かけてできること

あめの ひに、かさの ぬい目や、まんなかの ぼうの まわりを 見て みましょう。みずが たまって いる ところが あるかも しれません。

今日できること

手元の傘の表面と、綿のハンカチに、スプーンで水を一滴ずつ落として、水が玉になるか、しみ込むかを見比べてみます。ぬれても困らない場所(ふろ場など)で、家の人と一緒に行いましょう。

出かけてできること

雨の日に、傘の縫い目のあたりと、中棒のまわりを観察してみてください。水がたまりやすい場所や、伝ってくる場所が分かるかもしれません。

公式情報

日本語で読める傘メーカーや繊維メーカーのウェブサイトを探すと、撥水加工の解説があります。「耐水圧」「撥水度」という言葉で検索すると、試験の種類まで読めます。

今日できること

同じ量の水を、手元の傘の表面と綿のハンカチに滴下して、玉になるか染みるかを比べ、時間を変えて(数分後に)再度観察する。水は、片付けやすい場所で扱う。

出かけてできること

雨天時に、傘の縫い目・石突き・中棒の周囲を観察し、水の集まりやすい経路を確認する。

公式情報

手元の傘の表面に水滴を落として水滴の形(接触角の大小の目安)を見比べ、数分後に染みたかどうかも確かめる。撥水加工した傘生地の通気度を測定した資料は、今回の調査では見つけられていない。探してみるのもよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

今回は、辞典類・業界解説・メーカー記事を突き合わせた。空気が通る点は撥水加工布一般の説明であり、傘の生地そのものの通気度の数値は確かめていない。

  1. コトバンク「防水加工」(世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典) https://kotobank.jp/word/防水加工 (防水加工の2種類・撥水加工の説明)
  2. Testex「Water resistance test of fabric」 https://www.testextextile.com/water-resistance-test-of-fabric-water-penetration-and-surface-wetting/ (接触角・耐水圧試験)
  3. arXiv 1002.0598「Uptake of water droplets by nonwetting capillaries」 https://arxiv.org/pdf/1002.0598 (細管に水が入る圧力と半径の関係。要旨の確認にとどまる)
  4. BE-PAL「透湿防水とは何?」 https://www.bepal.net/archives/345716 (撥水と防水の違い・耐水圧の目安)
  5. WARGO 傘の雨漏り原因と対策 https://wargo.jp/en/blogs/hokusai-column/leakage-umbrella-causes-countermeasures (撥水加工の劣化・縫い目・中棒)
  6. ウェザーニュース「傘の水の切り方」 https://weathernews.jp/news/202606/070251/ (水の切り方と雨漏りの症状)
  7. Hiragana Times「NURENZA」 https://hiraganatimes.com/highlights/nurenza-umbrella-that-repels-rain-drops-and-stays-dry (超高密度生地の傘の紹介)
  8. GORE-TEX 公式サイト https://www.gore-tex.com/blog/lab (膜の孔の数値。検索抜粋のみ)
  9. NASA GPM「How big can a raindrop get?」 https://gpm.nasa.gov/resources/faq/how-big-can-raindrop-get (雨粒の大きさ)

なおした ところ

更新履歴

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