1. ぬのの すきまと、あめつぶ
1. 布のすき間と雨粒の大きさ
1. 織物の空隙と、雨粒の大きさ
かさの ぬのを ちかくで 見ると、いとが たてと よこに くみあって います。いとと いとの あいだには、ちいさな すきまが あります。
あめつぶは、ちいさな ものから おおきな ものまで、いろいろです。おおあめの おおきな つぶは、6 ミリメートル ほどに なると いいます[9]。ただ、つぶの おおきさだけでは、すきまを とおれない わけは わかりません。
ふしぎなのは、みずが すきまを とおれない わけです。
2. みずは、たまに なりたがる
2. 水は玉になろうとする ── 撥水加工のはたらき
2. 疎水化した繊維表面と接触角
あさ、はっぱに のった つゆを 見た ことは ありますか。はっぱの うえの みずは、まるい たまに なって います。
はっすい加工を した かさの ぬのは、みずを はじきます。この 加工を 撥水 加工と いいます[1]。いとの ひょうめんを、みずと なじみにくく する ものです。
すると、あめつぶは いとの うえで たまに なり、ころがります。たまの まま、すきまに おしこまれる ことは ありません。ただし ほんとうは、ながい じかん あめに あたると、しみる ことも あります。
3. すきまが ちいさいほど、はいりにくい
3. すき間が小さいほど、水は入りにくい
3. 毛細管圧力と孔径 ── すき間が小さいほど、水は入りにくい
ストローを おもい うかべて ください。ふとい ストローより、ほそい ストローの ほうが、みずを なかへ おしこむのに ちからが いりそうです。
みずを はじく ほそい くだでは、くだが ほそいほど、みずは はいりにくく なると いわれます[3]。ぬのの すきまも、ちいさいほど、あめつぶは はいれません。
ただし ほんとうの ぬのの すきまは、ストローの ように まっすぐでは ありません。ですから、この たとえは かんがえる ための ものです。
水をはじく細い管に、水を押し込むために必要な圧力は、管の半径が小さいほど大きくなります。式で書くと、圧力は半径に反比例します。半径が半分になれば、必要な圧力は2倍になる、という関係です[3]。
布のすき間は、丸い管とは違って形が不規則ですから、この式どおりの数値が出るわけではありません。それでも「すき間が小さいほど水は入りにくい」という方向は、同じだと考えられます。
この考え方を、極端に進めた傘もあります。福井の傘メーカーがつくった「ヌレンザ」は、特殊な織り方のポリエステルの超高密度の生地を使っている、と紹介されています[7]。ただしこれは企業の紹介記事にもとづく話なので、傘全般にあてはめることはできません。
4. ぼうすいの しかたは、ふたつ ある
4. 防水には、ふさぐ方法とふさがない方法がある
4. 不通気性防水加工と通気性防水加工
ぬのを みずから まもる やりかたは、ふたつ あります。
ひとつめは、ぬのの うえに うすい まくを はって、すきまを ふさぐ やりかたです。みずは ぜったいに とおりませんが、くうきも とおれません[1]。
ふたつめが、この ページで 見て きた やりかたです。すきまは のこして、いとの ひょうめんを みずに なじみにくく します。だから くうきが とおります[1]。かさの ぬのは、おもに ふたつめの やりかたです。ぬのを まくで おおった ものは、まくの ほうの やりかたです。
布に水を通さない加工には、大きく2種類があります。
ひとつは、布の上に防水フィルムをつくり、すき間そのものをふさぐ方法(不通気性防水加工)です。耐水圧は大きくできますが、空気や水蒸気も通らなくなります[1]。フィルムで覆った布は、この方法にあたります。
もうひとつは、すき間を残し、繊維の表面だけを水になじまなくする撥水加工です(通気性防水加工)。防水の力はフィルムに劣りますが、フィルムの欠点をなくせる、と辞典は説明しています[1]。この記事の主役の傘は、こちらの方法の布です。
第三の解き方として、登山用の衣服に使われるGORE-TEXの膜の話が知られています。1平方センチメートルあたり14億個以上の孔があり、各孔は水滴よりずっと小さく、水蒸気よりは大きいので、水滴は通さず水蒸気は通す、とされます[8]。傘の話ではありませんが、「孔の大きさを水の粒に合わせる」という考え方の例です。
防水加工は、防水フィルムを布上に形成する不通気性防水加工(耐水圧が大きいが空気・水蒸気も通さない)と、撥水加工剤で繊維表面を疎水化する通気性防水加工(空隙が残り、空気・水蒸気が透過できる)に分けられる[1]。ブリタニカは、後者は防水力が前者に劣るが、前者の欠点を解消し外観も良好と述べる[1]。
ここで扱う傘は、後者、撥水加工を施した織物の傘である。フィルムで覆った布は前者にあたり、空気を通さない。
孔の大きさで水と水蒸気を分ける別の解き方として、GORE-TEXのメンブレンがある。公式サイトの説明では、1cm²あたり14億個以上の孔があり、各孔は水滴の約2万分の1、水蒸気の約700倍とされる[8]。公式ページの本文は開けていないので、数値は「とされる」にとどめる。傘の話ではなく、対比のための例である。
5. それでも、しみる ことは あるの?
5. それでも、しみることはある
5. 耐水圧と撥水の限界 ── しみ込みの条件
かさの ぬのは、ぜったいに ぬれない わけでは ありません。
たまに なって ころがるのは、いとの ひょうめんの はなしです。ながい じかん あめに あたると、みずが すきまから しみこむ ことが あると いわれます[4]。
かさの はっすい 加工は、すうねんで おちる ことも あります[5]。おちた ところから、みずが しみて きます。
撥水は、水が玉になって転がる、という布の表面の話です。水がすき間から入るかどうかは別の問題で、撥水だけでは、長い時間の雨でしみ込むことがあると説明されています[4]。
布の防水性を測る試験には、耐水圧試験があります。布の片側から水圧をかけ、裏側に水滴がしみ出すまでの圧力で防水性を見るものです[2]。水圧に耐えるほど防水性が高い、と読みます。アウトドア用では、大雨の目安として耐水圧1万mmという数字が紹介されます[4]。
もうひとつは、時間です。傘の撥水加工は数年で落ちることがあり、雨をはじかず裏側までぬれることもあると、傘メーカーの記事にあります[5]。長年さらされた布は、撥水性も布そのものの強度も落ちます。
6. かさの もれる みちは、ぬのだけ じゃない
6. 雨が入る道は、布だけではない
6. 傘固有の漏れ道 ── 縫い目・石突き・中棒
かさが もれる とき、げんいんは ぬのだけでは ありません。
ぬのと ぬのを ぬい あわせた ところには、はりの あなが あります。はりの あなの おおきさや、いとの ざいりょう、ぬい目の ならびかたで、みずが とおる ことが あります[5]。
かさの てっぺんから、まんなかの ぼうを つたって みずが おちる ことも あります[6]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
おうちの ひとと いっしょに、もって いる かさの ひょうめんと、めんの ハンカチに、スプーンで みずを ひとしずく ずつ たらして みます。みずが たまに なるか、しみこむかを くらべて みましょう。ふろ場や、ぬれても いい ところで やります。
出かけてできること
あめの ひに、かさの ぬい目や、まんなかの ぼうの まわりを 見て みましょう。みずが たまって いる ところが あるかも しれません。
今日できること
手元の傘の表面と、綿のハンカチに、スプーンで水を一滴ずつ落として、水が玉になるか、しみ込むかを見比べてみます。ぬれても困らない場所(ふろ場など)で、家の人と一緒に行いましょう。
出かけてできること
雨の日に、傘の縫い目のあたりと、中棒のまわりを観察してみてください。水がたまりやすい場所や、伝ってくる場所が分かるかもしれません。
公式情報
日本語で読める傘メーカーや繊維メーカーのウェブサイトを探すと、撥水加工の解説があります。「耐水圧」「撥水度」という言葉で検索すると、試験の種類まで読めます。
今日できること
同じ量の水を、手元の傘の表面と綿のハンカチに滴下して、玉になるか染みるかを比べ、時間を変えて(数分後に)再度観察する。水は、片付けやすい場所で扱う。
出かけてできること
雨天時に、傘の縫い目・石突き・中棒の周囲を観察し、水の集まりやすい経路を確認する。
公式情報
手元の傘の表面に水滴を落として水滴の形(接触角の大小の目安)を見比べ、数分後に染みたかどうかも確かめる。撥水加工した傘生地の通気度を測定した資料は、今回の調査では見つけられていない。探してみるのもよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、辞典類・業界解説・メーカー記事を突き合わせた。空気が通る点は撥水加工布一般の説明であり、傘の生地そのものの通気度の数値は確かめていない。
- コトバンク「防水加工」(世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典) https://kotobank.jp/word/防水加工 (防水加工の2種類・撥水加工の説明)
- Testex「Water resistance test of fabric」 https://www.testextextile.com/water-resistance-test-of-fabric-water-penetration-and-surface-wetting/ (接触角・耐水圧試験)
- arXiv 1002.0598「Uptake of water droplets by nonwetting capillaries」 https://arxiv.org/pdf/1002.0598 (細管に水が入る圧力と半径の関係。要旨の確認にとどまる)
- BE-PAL「透湿防水とは何?」 https://www.bepal.net/archives/345716 (撥水と防水の違い・耐水圧の目安)
- WARGO 傘の雨漏り原因と対策 https://wargo.jp/en/blogs/hokusai-column/leakage-umbrella-causes-countermeasures (撥水加工の劣化・縫い目・中棒)
- ウェザーニュース「傘の水の切り方」 https://weathernews.jp/news/202606/070251/ (水の切り方と雨漏りの症状)
- Hiragana Times「NURENZA」 https://hiraganatimes.com/highlights/nurenza-umbrella-that-repels-rain-drops-and-stays-dry (超高密度生地の傘の紹介)
- GORE-TEX 公式サイト https://www.gore-tex.com/blog/lab (膜の孔の数値。検索抜粋のみ)
- NASA GPM「How big can a raindrop get?」 https://gpm.nasa.gov/resources/faq/how-big-can-raindrop-get (雨粒の大きさ)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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