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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

むかしの おもちゃは、なぜ きいろく なったり べたべた したり するの?

昔のおもちゃは、なぜ黄ばむものとべたつくものに分かれるのか

昔のおもちゃは、なぜ黄ばむものとべたつくものがあるのか ──光と酸素による樹脂の変化と、可塑剤のにじみ

分野:技術

ふるい おもちゃの はこを あけると、しろかった ロボットが きいろく なって いる ことが あります。べつの にんぎょうは、さわると べたべたします。

どちらも「ふるく なった」だけに 見えます。でも じつは、おこって いる ことが ちがう ようです。ふたつの わけが 分かります。

押し入れの箱から出てきた昔のおもちゃが、白かったはずなのに黄色くなっている。別のおもちゃは、手に取るとべたべたする。同じ「古くなった」に見えて、実は起きていることが別らしい、という話があります。

黄ばむのは、光と酸素で樹脂そのものが変わる場合が多いとされます。べたつくのは、柔らかさを出すために入れた成分がしみ出す場合です。この2つの原因と、博物館が進みをおそくする方法が分かります。

おもちゃの樹脂の劣化には、黄ばむタイプとべたつくタイプがある。見た目は同じ「古びた」でも、前者は光と酸素による樹脂の化学変化、後者は添加剤(可塑剤)の表面への移動が中心と整理されている[1]。

ABSの黄ばみの主因は、臭素系難燃剤か、ゴム成分の酸化かで、資料の説明が分かれる。この記事では、2つの劣化の原因、説が割れている点、保存科学が進行を遅らせる考え方が分かる。

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1. しろい ロボットは きいろく、にんぎょうは べたべた。おなじ「ふるく なった」?

1. 黄ばむおもちゃと、べたつくおもちゃは同じ劣化か

1. 「古びる」にも違いがある ── 博物館が保存するプラスチックのおもちゃ

むかしの おもちゃを たくさん もって いる 人の はなしを かんがえて みます。おもちゃの はこの 中に、かたい ロボットと、やわらかい にんぎょうが はいって います。

ロボットは きいろく、にんぎょうは べたべた。おなじ プラスチックなのに、どうして ちがう ことが おこるのでしょう。

カナダの 博物館はくぶつかんを ささえる 研究所は、モデルカーや でんしゃ、ひこうきの おもちゃを、まもるべき ざいりょうの れいに あげて います[1]。うちの おもちゃにも、博物館はくぶつかんで まもる ものと おなじ ざいりょうが つかわれて いる ことが あります。

その 研究所に よると、プラスチックは、空気の 中の 酸素さんそや、ふくまれて いる 水との はんのうで いたみます[1]。光も いたみを すすめます。ここでは 光と 酸素さんその はなしから はじめます。

おもちゃを大量に持っている人の箱を想像してみます。中には、かたい組み立てロボットと、やわらかい人形が入っています。ロボットは黄ばみ、人形はべたつく。同じプラスチックなのに、なぜ違うことが起こるのでしょうか。

カナダ保存研究所(CCI)は、博物館などで守る対象のプラスチックとして、おもちゃ、模型の車、電車、飛行機を挙げています[1]。家のおもちゃ箱にある材料は、博物館の保存対象の材料と重なっているわけです。

CCIによると、プラスチックの化学的な劣化は、主に酸化(空気中の酸素との反応)と加水分解(含まれる水との反応)で進みます。光や紫外線は、樹脂だけでなく、着色剤やコーティング、安定剤といった添加成分も傷めるとされています[1]。まず、黄ばむほうから見ていきます。

おもちゃは、博物館の保存対象の材料と重なる。カナダ保存研究所(CCI)は、ポリスチレン製品としておもちゃ・模型の車・電車・飛行機を挙げ、ポリエチレンなどの透明なおもちゃも例示している[1]。家庭にあるおもちゃにも、保存科学の題材になる材料が使われている。

では、なぜ同じ「劣化」が黄ばみとべたつきに分かれるのか。CCIによれば、プラスチックの化学的劣化は主に酸化(大気中の酸素との反応)と加水分解(樹脂に含まれる水との反応)で起こる。光・紫外線は、樹脂の構造だけでなく、着色剤・コーティング・安定剤などの添加成分にも影響する[1]。

この整理に当てはめると、ABSに多い黄ばみは光と酸素による樹脂側の変化、軟質塩ビに多いべたつきは、樹脂に混ぜた添加剤の挙動として説明できる。まず黄ばみから確かめる。

2. きいろくなる のは、光と 空気の せい?

2. 白いプラスチックが黄ばむのは、光と酸素のせい

2. ABSの黄変 ── 光酸化と、条件を限った換算

まどぎわに おいた ロボットの ほうが、きいろく なりやすいと 思った ことは ありませんか。日光は、プラスチックを いためる ものの ひとつと されて います[1]。

かたい おもちゃに よく つかわれる ABSと いう 樹脂じゅしは、日光に たいして ちゅうくらいの よわさと されます。すこし 色が かわり、すこし もろく なると まとめられて います[1]。

べつの 研究では、光と ねつに よって、樹脂じゅしの ながい つながりが きれて、きいろく もろく なると せつめいされて います[6]。

たとえば、ながい ひもが ぷつぷつと きれて みじかく なる ところを おもって ください。ただし ほんとうは、目に 見えない ちいさな つぶの はなしです。

では、きいろくなるのは、どんな はたらきが かかわって いるのでしょう。

窓際に置いていたロボットのほうが黄色くなりやすい、と感じたことはないでしょうか。CCIの整理では、ABS樹脂は日光への感度が中程度で、わずかな変色とわずかなもろさが起こるとされています[1]。

別の資料は、ABSの黄ばみを、紫外線や熱による光酸化として説明しています。高分子の鎖が切れ、黄ばんでもろくなるという説明です[6]。長い鎖が途中で切れると、短い断片ばかりになって弱くなる、と考えると分かりやすいでしょう。もっとも、実際は目に見えない大きさの分子の話です。

では、その光酸化の中で、黄色い色にはどんな働きが関わっているのでしょう。実は、この点では資料の説明が割れています。

ABSの黄変は、紫外線や過度の熱による光酸化で、高分子鎖が切断されて黄変・脆化すると説明される[6]。CCIの表では、ABSは日光への感度が中程度、変色・脆化はいずれも「わずか」とされている。表の評価と、実物が黄ばむ現象をどう結びつけるかは、条件(光の量・時間・安定剤の有無)に左右される。

その条件の効き方を示す例がある。Santosら(2013)のABSの研究は、安定剤入りABSの力学特性の変化から、キセノン試験の約1260時間がリスボンの屋外1年に相当すると見積もった[6]。この換算はリスボンの、安定剤入りのABSでの値で、他の場所や配合に当てはめられない。

では、光酸化のどの反応が、あの黄色をつくるのか。ここで資料は割れる。

3. きいろの 正体は、だれが つくるの?

3. 黄ばみに臭素は関わるのか、ゴム成分か ── 説が分かれる

3. 黄変の主因をめぐる2つの説と、まだ決まっていない点

おもちゃの 中には、火が つきにくく なる くすりが はいって いる ものが あります。その ひとつに 「しゅうそ」を ふくむ ものが あります[5]。

ある 研究けんきゅうでは、この くすりを ふくむ ABSに 光を あてる 実験じっけんを しました。220 じかん あてると、くすりが 半分ほど、しゅうそが 2わりほど へって、ひびわれと きいろ が 出ました[5]。

いっぽう、高校生の 論文ろんぶんを しょうかいした きじには、ちがう 見方が あります。ゴムの ぶぶんが 酸素さんそと ふれて こわれ、青い 光を すう ものが できる ことが 中心だと。しゅうそは 小さな はたらきだと されて います[4]。

どちらが おおきいのかは、まだ はっきり 言えないようです。ここは 分かって いない ことが のこって いる ところです。

つぎは、きいろく ならない のに べたべたする おもちゃの はなしです。

ABSには、燃えにくくするために臭素系の難燃剤が使われることがあります。TBBPAはその代表です。TBBPAを含むABSに光を当てた研究では、220時間後にTBBPAが約50%、臭素が約20%減り、表面にひび割れと黄ばみが出ました。臭素のラジカル(反応しやすい粒子)がABSの酸化を早めた、と説明されています[5]。この研究によれば、黄ばみができると光や酸素が中に入りにくくなり、その後の酸化がおそくなったそうです。

これに対し、高校生の論文「The Retrobright Mystery」を紹介した記事は、別の説明をしています。ゴム成分(ブタジエン)が酸素とエネルギーで分解してラジカルが出て、連鎖反応が起こり、スチレンの部分から青い光を吸う化合物ができるというものです。青い光が吸われると、残った光は黄色っぽく見えます。この説明では臭素系難燃剤は小さな寄与にとどまります[4]。ただし、この論文は査読を受けたかどうか確かめられていません。

臭素が関係するという説明も、ゴム成分が中心だという説明もあります。どちらがどれほど関わるかは、まだ決められません。今の段階で言えるのは、ここまでです。

ここまでは、黄ばむおもちゃの話でした。一方、黄ばまずにべたつくおもちゃでは、まったく別のことが起きています。

黄変の主因は、資料によって説明が異なる。TBBPA(テトラブロモビスフェノールA)はABSに使われる主な臭素系難燃剤で、TBBPA/ABSの光劣化の研究では、臭素ラジカルがABSの酸化を早め、光照射220時間後にTBBPAが約50%、臭素が約20%失われ、表面にひび割れと黄変が生じた。さらに、黄変が光と酸素の侵入を妨げ、その後の酸化を遅らせた[5]。

これに対し、高校生の論文「The Retrobright Mystery」を紹介したHackadayの記事(2021年)は、黄ばみの大部分を、ブタジエン共重合体から酸素とエネルギーを介して生じるラジカルの連鎖反応に帰し、スチレン部分に青い光を吸収する化合物(2-ヒドロキシムコン酸)ができるとする。臭素系は小さな寄与という位置づけだ[4]。ただし、この論文の査読は確認できておらず、二次的な紹介に頼っている。

2つの説は排他的とは限らない。「臭素が原因」とも「ゴム成分だけが原因」とも断定できない、というのが現状の整理になる。

ところが、べたつくタイプでは、黄ばみとは別の仕組みが働く。次はそちらを見る。

4. べたべたは、とけたのでは なかった

4. べたつきは、柔らかさのための成分がしみ出す

4. 可塑剤の移動 ── べたつきは「溶けた」のではない

1959ねんから うられた、はじめの ころの バービー人形は、やわらかい えんびと いう プラスチックで できて いました。ある 論文ろんぶんでは、その ひょうめんに あぶらのような ものが にじんで、べたべたする れいが 出て います[3]。

やわらかい プラスチックは、やわらかさを あたえる 「かそざい」と いう ものを まぜて います[1]。この かそざいが、ひょうめんに 出て くる と 考えられて います。

だから べたべたは、プラスチックが とけたのでは ありません。まぜた ものが にじんで きたのです[1]。

たとえば、水を すった スポンジを ぎゅっと おすと、水が にじみ出ます。ただし ほんとうは、プラスチックの 中で おこる ゆっくりした ことです。

べたべたの ひょうめんには、ほこりも つきます。ほこりが つくと いたみが すすみ、かんたんには もとに もどりません[1]。

1959年に発売され始めた初期のバービー人形は、可塑塩ビ(柔らかいポリ塩化ビニル)でできていました。添加物が安定しないために、表面に油のようなしみ出しが出てべたつく例が、保存科学の論文で報告されています[3]。

柔らかいプラスチックには、柔らかさを与える添加剤「可塑剤」が混ぜてあります。この可塑剤が表面へ移動する(マイグレーション)ことが、べたつきの原因です。CCIは、PVCのほか、セルロース系、ポリウレタン、ゴムをこの例に挙げています[1]。

大切なのは、樹脂が溶けたのではなく、添加剤がにじんだということです。可塑剤が揮発すれば失われますし、高分子どうしが結びつくにつれて外へ押し出されることもあります。PVCとセルロース系の樹脂は、この性質を特に持つとされます[2]。

べたつく表面にはほこりが付き、化学的な傷みと見た目の損傷が進んで、簡単には元に戻らないとされています[1]。ここまでで、黄ばみとべたつきの仕組みは別だと分かりました。では、博物館はこの2つの進みをどう遅らせるのでしょう。

初期のバービー人形(1959年〜)は可塑塩ビ製で、添加物が不安定なため、表面に油状のしみ出しが出てべたつく例が報告されている[3]。特定の商品の例だが、可塑塩ビの問題として一般に語られる劣化と重なる。

ポリ塩化ビニル(PVC)は、可塑剤を加えて柔らかくして使う(軟質PVC)。可塑塩ビの劣化は脱塩化水素を伴い、可塑剤が樹脂中を拡散して表面にたまり、環境へ出ていく。その結果が、表面のべたつき・硬化・裂け・脆化・変色だ。文化財で主に問題になるのは、フタル酸エステル系の可塑剤がにじんで表面に光沢のある油状の膜をつくり、柔軟性が下がることだ[7]。

可塑剤が表面へ移動する現象(マイグレーション)は、CCIがセルロース系(CA・CN)、PVC、ポリウレタン、ゴムの例として挙げる[1]。揮発しやすい可塑剤は失われ、高分子どうしが結びつく過程で外へ押し出されることがある。PVCとセルロース系はこの性質を特に持つという[2]。ここで押し出されるという説明は、CCIの要約経由で確かめた範囲の記述だ。

つまり、べたつきは樹脂が融けたのではなく、添加剤が移動した結果だ。ただしべたつく表面にはほこりが付き、化学的な傷みと見た目の損傷が進み、簡単には元へ戻らない[1]。では、進行を遅らせる方法はあるのか。

5. はくぶつかんは、どうやって ゆっくりに するの?

5. 博物館が目指す、冷たく暗く乾いた保存環境

5. 保存の理想条件 ── 進行を遅らせる考え方

カナダの 研究所が すすめる ほぞんの ときの りそうは、「つめたく、くらく、かわいて、酸素さんそが ない」場所です[2]。

ガラスの びんや、空気を とおしにくい プラスチックの いれものに、シリカゲルと いっしょに いれます。日光は さけます[2]。

これは 博物館はくぶつかんの やり方です。おうちで まねを するための ほうほうでは ありません。

なぜ この 4つなのでしょう。光と 酸素さんそは、きいろに なる はたらきを すすめます。水は いたむ すじみちの ひとつなので、かわいた ほうが ゆっくりに なると 考えられます[1]。

もし きいろく なって しまったら、もとに もどせる のでしょうか。

CCIは、ゴムやプラスチックの理想的な保存の条件を、冷たく、暗く、乾いて、酸素のない状態としています。密閉したガラスか蒸気を通さないプラスチックの容器に、乾燥剤のシリカゲルと一緒に入れ、紫外線や日光を避けるのが理想です[2]。

この4つは、ここまでの原因と対応しています。光と酸素は、酸化や光酸化を進める材料でした。水は加水分解の材料です。冷たくするのは、化学反応をゆっくりにする考え方だと読めます。

ただし、これは博物館の条件で、家庭で真似をするための手順ではありません。ゆっくりにできても、止めるわけではないのです。

それなら、すでに黄ばんでしまったものは、元に戻せるのでしょうか。

CCIの保存の理想条件は「冷たく・暗く・乾いて・酸素のない」状態で、密閉したガラスか蒸気を通さないプラスチック容器に、乾燥剤(シリカゲル)とともに入れ、紫外線・日光を避ける[2]。

4条件は、ここまでの劣化機構にそのまま対応する。光と酸素は光酸化・酸化の要因、水は加水分解の要因であり、冷たさは反応を遅らせる考え方と読める。温度と可塑剤のにじみの関係には、ここでは踏みこまない。

これは博物館の条件であり、家庭向けの指示ではない。進行を遅らせるのが目的で、劣化を止めたり、進んだ黄ばみを消したりするものではない。では、その黄ばみを消す試みはあるのか。

6. きいろいのを しろく もどす こころみ

6. ドイツの博物館が始めた、黄ばみを戻す試み

6. レトロブライト(2008年〜)── 黄ばみの漂白と、効果の持続という残った問い

2008ねん3がつ、ドイツの コンピュータの 博物館はくぶつかんが、きいろく なった ほんたいの ぶひんを、くすりの 水に 5にちかん つけたら うまく いった と、ネットで しらせました[6]。

その なつには、かがくに くわしい 人たちが、べつの くすりと 光を たして、やり方を よく しました[6]。

「レトロブライト」と よばれる この やり方が、ずっと つづくかどうかは、博物館はくぶつかんで ほぞんを する 人たちの 研究の テーマです[8]。

くすりを つかうので、ここでは やり方は かきません。なぜ きいろく なるのかを 知ると、ものの 見方が かわります。

2008年3月、ドイツ・ヴッパータールのCBMコンピュータ博物館が、黄ばんだコンピュータ本体の部品を過酸化水素に5日間つけて成功した、とインターネット上で公表しました。同じ年の夏、化学に詳しい利用者たちがTAEDという物質と紫外線を足して、方法を改良しました[6]。これが「レトロブライト」の始まりとして、Wikipediaに紹介されています。

この方法の効果が長持ちするかどうかは、保存科学の研究の対象です。2017年のICOM-CC(コペンハーゲン)には、光酸化したABSの保存処理の効果と耐久性を扱ったポスター発表がありました[8]。愛好家の間では、処理のあとに黄ばみが戻る例も語られます。

薬品を使う方法なので、ここでは手順は載せません。黄ばみは戻せるのか、戻したあとはどうなるのか。答えがまだ研究の途中だという点が、おもちゃの劣化の面白いところでもあります。

レトロブライトは、過酸化水素で黄ばみを漂白する方法だ。始まりは2008年3月で、ドイツ・ヴッパータールのCBMコンピュータ博物館が、黄ばんだ本体の部品を過酸化水素に5日間つけて成功した、とオンラインで公表した。同年夏、化学に詳しい利用者(Dave Stevensonら)がTAED(ターエド)と紫外線を足して改良した[6]。

この経緯は、Wikipediaの記述に基づく。博物館の元ページは取得できておらず、日付などは二次資料の記載だ。

効果の持続は、保存科学の研究対象になっている。ICOM-CC 2017(コペンハーゲン)に、光酸化したABSの保存処理の効果と耐久性を扱うポスター発表(Sampaioら)がある[8]。処理後に黄ばみが戻るという話は愛好家の間で言われる。

過酸化水素などを使うため、家庭での手順は扱わない。黄ばみの仕組み(3章)で見たとおり、原因が決まっていない以上、「なぜ戻るのか、戻らないのか」も、これから確かめられていく問いだ。

7. おうちで 見つけて みよう

7. 家にあるプラスチックを、見て比べてみる

7. 出口 ── 観察の切り口と、原典の読み方

おうちの プラスチックの おもちゃや ぶひんを、ちょっと 見て みましょう。ただし、さわって べたべたする ものを、むりに いじる ひつようは ありません。

ひとつめは 色です。日が よく あたる めんと、あたらない うらがわを、くらべて みます。ちがいが あるでしょうか。

ふたつめは、かたい ものと やわらかい ものの ちがいです。どちらが きいろく なって いますか。どちらが べたべた しますか。

気が ついた ことは、どんな ものだったか 書いて おくと、あとで 自分の 目で 分かります。

家にあるプラスチックを、見るだけで比べてみてください。無理に触ったり、強くこすったりする必要はありません。

1つめの切り口は、色です。日が当たる面と当たらない裏側で、色に違いがあるでしょうか。窓際に置いていたものと、引き出しの奥にあったものでも比べられます。

2つめは、材料です。かたいものと柔らかいものとで、変わり方が違うか。黄ばんでいるのは、どちらのグループに多いでしょうか。

気づいたことは、どんな品だったか書いておくと、あとで自分の目で比べられます。

身の回りのプラスチックで、次の2点を見比べてみる。無理に触ったり、こすったりしない。

第1に、光の当たる面と当たらない面の色の差を見る。窓際と引き出しの奥のように、置き場所ちがいの同種の品を比べてもよい。第2に、かたい品と柔らかい品のどちらが黄ばみ、どちらがべたつくかを記録する。材料ごとの違いが見えることがある。ただし置き場所や年数も混ざるので、見えた差は原因の判定ではなく、記録として残す。

家で見つけた差を写真とメモに残しておくと、あとで資料と見比べる手がかりになる。資料は末尾の出典欄にまとめてある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:カナダ保存研究所(CCI)の2つの資料、保存科学の論文とデータベース、ABSの光劣化の研究、Hackadayの解説記事、Wikipedia、ICOM-CCの発表題名を使った。説が分かれる点は本文に書いた。

  1. Canadian Conservation Institute「Caring for plastics and rubbers」。 https://www.canada.ca/en/conservation-institute/services/preventive-conservation/guidelines-collections/caring-plastics-rubbers.html (劣化の主な原因、おもちゃの例、べたつき、光への感度について)
  2. Canadian Conservation Institute「CCI Notes 15/1 Care of Objects Made from Rubber and Plastic」(1997年)。 https://www.canada.ca/en/conservation-institute/services/conservation-preservation-publications/canadian-conservation-institute-notes/care-rubber-plastic.html (可塑剤の失われ方と、保存の理想条件について)
  3. 「Mattel's Barbie: Preventing Plasticizers Leakage in PVC Artworks」PubMed Central。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11244241/ (初期の着せ替え人形の劣化例について)
  4. Hackaday「A Deep Dive Into The Chemistry Of Retrobright」(2021年)。 https://hackaday.com/2021/01/23/a-deep-dive-into-the-chemistry-of-retrobright/ (ABSの黄ばみについての、別の説の紹介について)
  5. 「Photodegradation of TBBPA/ABS materials and exposure to brominated ...」PubMed 42208099。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42208099/ (臭素系難燃剤を含むABSの光劣化実験について)
  6. 「Retrobright」Wikipedia(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Retrobright (ABSの光酸化、屋外との換算、2008年の経緯について)
  7. 「Polymers」16巻(2024年)、可塑塩ビの文化財保存についての論文(Venice大学リポジトリ版)。 https://iris.unive.it/retrieve/e322b743-a897-4036-9e12-3dc62b6b232a/polymers-16-01888-v2%20%281%29.pdf (可塑塩ビのべたつきと油状の膜について)
  8. ICOM-CC 2017 Copenhagen「Effectiveness and durability of conservation treatments for photo-oxidized acrylonitrile-butadiene-styrene (ABS)」。 https://www.icom-cc-publications-online.org/1608/Effectiveness-and-durability-of-conservation-treatments-for-photo-oxidized-acrylonitrile-butadiene-styrene-ABS (黄ばみを戻す処理の効果と耐久性を扱った発表の題名について)

なおした ところ

更新履歴

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