1. 耳たぶで 見わけると、セイウチは どっち?
1. 耳たぶの有無で分けると、セイウチはどちらか
1. 鰭脚類3科を分ける外耳の有無
うみで くらす、ひれの ある どうぶつは、3つの グループに わかれます。アシカの グループ、アザラシの グループ、そして セイウチの グループです[1]。
アシカには、外に 出た 小さな 耳たぶが あります。アザラシにも、外に 出た 耳たぶは ありません[1]。
では、セイウチは。耳たぶは ありません[1]。しかも セイウチの グループは、いま 生きて いるのが セイウチ 1しゅだけです。
ここまでは、「セイウチは アザラシの なかまみたい」と 思えます。ところが、話は ここから ややこしく なります。
2. すがたは アザラシ、歩き方は アシカ?
2. 体つきは、アシカとアザラシのまざりもの
2. 形質のモザイク ── 後肢の向き、泳ぎ方、外耳
セイウチは、りくの 上で、うしろの ひれを 前に むけて、4ほんの あしのように 歩けます。これは アシカと おなじです[2]。
いっぽう、およぐ ときは、からだ ぜんたいを くねらせる アザラシの ほうに 近い、と いわれます。耳たぶが ないのも、アザラシと おなじです[2]。
つまり セイウチは、アシカの ところと アザラシの ところを、どちらも もって います。
ふたつの 学校の ふくを、上と 下で 1まいずつ 着て いる ような ものです。ただし ほんとうは、セイウチは セイウチで、だれかの まねを して いる わけでは ありません。
セイウチは、アシカと同じように、後ろのひれを前に向けて、4本足で動くことができます[2]。ここはアシカ型です。
一方で、泳ぐときは体全体をくねらせる、アザラシに近い泳ぎ方だとされます。耳たぶがないのも、アザラシと同じです[2]。
アシカ型とアザラシ型のところが、1匹の体に混ざっているのです。では、セイウチは血縁のうえで、どちらの仲間なのでしょうか。
セイウチは、アシカ科と同様に後肢を前方へ向けて四足で動ける。一方、遊泳は全身をくねらせるアザラシ科型に近く、外耳を欠く点もアザラシ科と共通する[2]。形質ごとに、近い相手が入れ替わっている。
どの形質を重く見るかで系統の推定は変わりうる。ここが、次章で見る分類の議論の出発点になる。
3. DNAと 化石を あわせて しらべると、アシカに 近かった
3. 分子データと化石を合わせると、アシカのほうが近い
3. 形態説と分子説 ── 約2010万年前の分岐と、残る議論
むかしは、すがたを くらべて、なかまわけを して いました。すると、セイウチは アザラシに 近い、と する 考えが ありました[4]。
いまは、DNAなどの データと 化石を 使います。129の なかま(ぶんるい)を、からだの かたちの データも ふくめて あわせて しらべた 研究では、セイウチは アシカの ほうに 近い、と なりました。アザラシとは、およそ 2010万年前に わかれたと 考えられて います[3]。
ただし、この 年は くわしい 見つもりで、かわる ことも あります。「アザラシが わかれたのは、セイウチより 前か あとか」は、まだ 話し合いが つづいて います[4]。
4. 耳たぶは、なぜ なくなったの?
4. 耳たぶをなくしたのは、別々だったのか
4. 耳介の独立した喪失という解釈と、流線形仮説
セイウチが アシカに 近いなら、アシカの ほうは、耳たぶを のこして きた ことに なります。すると、アザラシと セイウチは、べつべつに 耳たぶを なくした のかも しれません[1]。
では、なぜ なくなったのでしょう。よく 言われるのは、水の 中で およぐ とき、耳たぶが でっぱって いると、水の ていこう(水に おされる 力)が 大きく なるから、という 考えです[1]。
ただし、これは「ありそうな 考え」で、セイウチで ちゃんと たしかめられた 話では ありません。
5. 耳たぶが なくても、聞こえるの?
5. 耳たぶがなくても、水の中で聞こえる
5. 無耳の聴覚 ── 水中聴力の測定と両生的聴覚の起源
耳たぶが なくても、セイウチは ちゃんと 聞こえます。水の 中で、ある セイウチ 1とうの 聞こえ方を はかった 研究が あります[5]。
その セイウチが いちばん 聞こえやすかった 音の 高さは、12キロヘルツの あたりでした[5]。
ただし これは、1とうだけの しらべです。セイウチ みんなが そうだとは、いえません。
また、2026ねんには、ひれの ある どうぶつが、水の 中でも りくの 上でも 聞ける ように なった みちすじを しらべた、せんもんかが たしかめずみの 研究が 発表されました[6]。まだ 新しい 研究です。
6. 写真で 見くらべて みよう
6. 3つの動物を、写真で見比べる
6. 出口 ── 頭部の見比べと、原典の読みどころ
ずかんや しゃしんで、アシカ、アザラシ、セイウチの 頭を 見くらべて みましょう。見る ところは、3つです。
ひとつめは、頭の よこに 耳たぶが あるか。ふたつめは、うしろの ひれが、前に むいて いるか。みっつめは、水に もぐる すがたを、おもに どんな ふうに 泳いで いるか。
水族館や どうぶつ園で 会えたら、そっと 見て みても いいですね。おうちの 人と いっしょに 行きましょう。
図鑑や写真で、アシカ、アザラシ、セイウチの頭と後ろのひれを比べてみましょう。「耳たぶ」「後ろのひれの向き」「泳ぎ方」の3つを、3種それぞれについて表にすると、どこが同じでどこが違うかが見えてきます。
水族館や動物園で会える場合は、ガラス越しや柵の外から、動物を驚かせないよう静かに見てください。
比べたあとで、「セイウチはどちらに近いのか」を自分で予想し、この記事の出典欄にある資料で確かめてみるのもよい方法です。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料は、出典欄の番号と対応している。年代や結論は推定・解釈を含むため、原典で確かめてほしい。
- 「Pinniped」Wikipedia。https://en.wikipedia.org/wiki/Pinniped (鰭脚類3科と外耳の有無、耳介喪失と流線形の説明)
- 「Walrus」Wikipedia。https://en.wikipedia.org/wiki/Walrus (セイウチの後肢の向き・泳ぎ方・外耳がないこと)
- 「Charting the course of pinniped evolution」Evolution 78(7) (2024)。https://academic.oup.com/evolut/article/78/7/1212/7655703 (アシカ上科と、アザラシ科との分岐年代の推定)
- 「Eared seal」Wikipedia。https://en.wikipedia.org/wiki/Eared_seal (分類をめぐる議論が残ること)
- Kastelein ほか (2002) J. Acoust. Soc. Am.。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12430829/ (太平洋セイウチ1頭の水中聴力の測定)
- 「The origin and evolution of amphibious hearing in pinnipeds」Proc. R. Soc. B (2026)。https://doi.org/10.1098/rspb.2026.0178 (両生的聴覚の進化についての査読済み論文)
- 「アシカとアザラシの見分け方」Marine Diving web。https://marinediving.com/marine_life/serial_marine_life/sealion_and_seal/ (日本語での、耳たぶの有無の説明)
なおした ところ
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