1. にごった みずは、おいておけば すきとおる?
1. 置いておいても澄まない水
1. 静置しても沈まない ── コロイド粒子
かわの みずを びんに いれて、しばらく おいて みましょう。すなや こいし は そこに しずみますが、にごりは のこりやすいと いわれます。
この にごりは、とても ちいさな つぶです。ちいさすぎて、そのまま では なかなか しずみません[1]。
じょうすいじょうの しごとは、この しずまない つぶを、しずむ ものに かえる ことから はじまります。
川の水を瓶に入れてしばらく置くと、大きな砂や小石は底にたまります。けれども、水はまだ濁ったままになりやすいものです。
この濁りの主役は、粒の大きさがおよそ1nm〜1μmのコロイド粒子です。1μmは1mmの千分の1、1nmはさらにその千分の1で、ふつうの砂粒とはくらべものにならないほど小さな粒です。そのため、放っておいても沈みにくいと説明されています[1]。
では、沈まない粒を、どうやって沈めるのでしょうか。
川の水の濁りには、砂や泥のような比較的大きな粒のほかに、粒径がおよそ1nm〜1μmのコロイド粒子が含まれる。1μmは1mmの千分の1、1nmはその千分の1であり、これほど小さいと、重力による沈降がきわめて遅く、そのままでは沈降しない、と水道技術研究センターは説明している[1]。
したがって、沈殿池でただ待つだけでは濁りは取れない。粒のほうを、沈める性質のものに変える操作が要る。それが次の凝集である。
2. しずまない つぶを、どうやって しずめるの?
2. 薬でわざと固まりにする
2. 凝集剤による荷電中和とフロック形成
じょうすいじょうでは、みずに くすりを いれます。この くすりは、ちいさな つぶを くっつけて、かたまりに します[1]。この かたまりを、フロックと よびます。
さっぽろ市の せつめいでは、くすりを いれた あとに、みずを かきまぜながら、かたまりを つくります[2]。そのあと、かたまりを しずめて、うわずみの みずだけを、すなで こす ところに おくります[2]。
わたあめの ふくろの なかで、ちいさな つぶが くっついて おおきく なるのを、そうぞうして みてください。ただし、これは たとえです。ほんとうの しくみは、つぶの ひょうめんの ちがいが かかわっています。
そこで使うのが凝集剤です。凝集剤には、粒の表面の電気的な性質を打ち消して、粒同士をくっつける働きがあります。くっついた粒は大きな固まり(フロック)になり、今度は沈めることができます[1]。
札幌市水道局の説明では、薬を入れる場所は「にごりを早く沈めるために、にごりを固まりにする」工程です。その次に、水をかき混ぜながらフロックを育てる池があり、そのあとの沈殿池でフロックを沈めて、上澄みの水をろ過池に送ります[2]。
凝集剤にはアルミニウム系と鉄系があります。水道技術研究センターの2012年の記事によると、使用実績のうちアルミニウム系が99%以上を占め、中でもポリ塩化アルミニウム(PAC)が87%で最も多いとされています。PACは水温が10℃以下の冷たい水でも固まりやすいといわれます[1]。99%以上・87%という割合は当時の数字で、今の値ではありません。
沈んだあとの上澄みは、かなりきれいです。それでも、水はまだ砂の層に向かいます。なぜでしょうか。
凝集剤は、コロイド粒子の表面電荷を中和して粒子同士を結合させ、沈降可能なフロックを作る[1]。札幌市水道局の説明に沿うと、薬品を注入する工程は「にごりを早く沈めるために固まりにする」段階、続くフロック形成池は水をかき混ぜながら固まりを育てる段階、沈殿池はフロックを沈めて上澄みをろ過池へ送る段階に当たる[2]。急速ろ過の流れは、凝集・沈殿・砂ろ過を経て、最後に塩素消毒を行うものだ[3]。
薬品としては、アルミニウム系が使用実績の99%以上を占め、ポリ塩化アルミニウム(PAC)が87%で最多だという。PACは水温10℃以下、低アルカリ度でも凝集が良好とされる[1]。ただし、この割合は2012年時点の集計であり、現在の値と断定はできない。
凝集剤の注入は、濁度やpHなどを見ながら制御される[3]。ここまでの操作で濁りの大部分は沈むが、上澄みにはなおフロックの小さなものが残る。それを取るのが砂層である。
3. すきまより ちいさいのに、どうして とれるの?
3. すき間を通れるのに、砂で取れる理由
3. 急速ろ過では、砂の表面にも小さなフロックがつく
すなの つぶは、あみのように すきまが あります。ふつうは、「すきまより おおきい ものが とまる」と おもいます。
ところが、よこはま市の せつめいでは、はいってくる かたまりの ほとんどが、すきまの 25ぶんの 1から 10ぶんの 1ぐらいの おおきさで、すきまを とおりぬけられる、とあります[4]。
それでも きれいに なるのは、かたまりが すなの つぶに くっつくからです[4]。ぬれた ぞうきんに ほこりが つくのに にています。ただし、これは たとえです。
横浜市水道局の説明では、ろ過池に入るフロックの大半は、ろ過砂のすき間の25分の1〜10分の1ほどの大きさで、すき間を通り抜けられる大きさです[4]。砂粒の直径は約500μm、フロックは数μm〜数十μmという数字も示されています[4]。
それでも取れるのは、急速ろ過が「大きな粒を狭いすき間でこしとる」だけではないからです。小さなフロックが砂粒の表面にくっつく吸着で、除去されています[4]。つまり砂は、ふるいというより、水の中の小さな固まりを表面につかまえる面として働きます。
この考え方を、ぬれた雑巾にほこりがつく様子にたとえることはできますが、あくまでたとえです。砂の層の中で何が起きているかの細かい仕組みは、この記事では扱いません。
もし、前の段階で薬を入れ忘れたら、どうなるのでしょうか。
4. くすりを つかわない すなも あるの?
4. 薬を入れなければ、どうなる?
4. 急速ろ過で凝集する理由と、緩速ろ過という別の道
くすりで かたまりに して いない にごりは、ほとんどが すなを すりぬけて しまうと いわれます[4]。だから、まず かたまりに する ことが だいじです。
じつは、くすりを つかわない やりかたも あります。すなの おもての ほうに いる びせいぶつが つくる ぬるぬるした まくの はたらきで、にごりを とるのです[5]。ゆっくり こす ので、「かんそく ろか」と よばれます。
さいごに、みずの にごりの きまりを 1つ。みずの きまりでは、にごりは 2どいかと きめられています[6]。
横浜市水道局の説明では、濁りがフロックになっていなければ、ほとんどがろ過池から流れ出てしまいます。だから、ろ過の前の段階で、凝集剤を入れて濁りをフロックにすることが重要です[4]。
薬を使わない砂ろ過もあります。緩速ろ過です。砂の層の表面に育つ藻類や微生物などのぬるぬるした膜(生物膜)が、にごりやアンモニア、かび臭などを取り除くとされ、原則として凝集の前処理は要りません。これに対して急速ろ過は、にごりの多い川の水にも向いていて、ろ過の速度が速く、広い土地が要らない、という特長が挙げられています。どちらも研究報告の検索抜粋にもとづく説明です[5]。
こうして砂を通った水の濁りは、水質基準で濁度2度以下と定められています。ただし、この数字を紹介した資料は県の転載で、条文そのものではありません[6]。
さて、これだけきれいになった水に、最後に薬を足すのはなぜでしょうか。
凝集が必要な理由は、フロックにならなかった濁り成分がほとんどろ過池から流れ出るからで、急速ろ過では、ろ過前の沈殿池で凝集剤によりフロック化させることが重要とされる[4]。
これに対して緩速ろ過は、砂層表層の藻類や微生物などの粘質膜(生物膜)による生物学的作用で、濁り・アンモニア・マンガン・かび臭を除き、原則として凝集の前処理を必要としない。急速ろ過は濁度の高い原水にも適し、ろ過速度が速く用地が小さく済む[5]。なお、これは報告書の検索抜粋にもとづく説明である。
仕上がりの目安として、水質基準(水質基準に関する省令)には濁度2度以下、色度5度以下がある。この値は県の資料に転載されたもので、条文は e-Gov 法令検索の「水質基準に関する省令」で読める[6]。
5. きれいな みずに、どうして えんそを のこすの?
5. 蛇口まで届けるために、塩素を少し残す
5. 給水栓での残留塩素0.1mg/L以上という義務
すなで こした あとは、塩素で 消毒を します[3]。
水道の きまりでは、蛇口の みずにも、塩素が すこし のこって いなければ なりません[3]。その りょうは、1リットルに 0.1ミリグラム いじょうです。0.1ミリグラムは、0.0001グラム のことです。
だから、じょうすいじょうの でぐちでも、きかいで 塩素の のうどを みはって います[3]。
砂ろ過を終えた水には、塩素消毒が行われます[3]。水道法の決まり(施行規則第17条)では、蛇口(給水栓)の水で、遊離残留塩素を0.1mg/L以上保つ義務があります。0.1mgは0.0001gです。そのため浄水場の出口でも、自動水質計器で塩素の濃度を見張っています[3]。
浄水場でだけ消毒しても、水は長い管を通って家に届きます。蛇口でも塩素が残るように求められているのは、届くまでの間も水を守るためだと考えられます。ただし、この理由づけは資料の言葉そのものではありません。
結合残留塩素の場合は0.4mg/L以上とされます(同じ施行規則第17条)が、この記事では細かい条件までは扱いません。
急速ろ過方式は、凝集・沈殿・砂ろ過のあとに塩素消毒を行う[3]。水道法施行規則第17条は、給水栓で遊離残留塩素を0.1mg/L以上保つことを義務づけている(結合残留塩素は0.4mg/L以上)。0.1mg/Lは、1Lあたり0.0001gにあたる。この義務を満たすため、浄水場出口の残留塩素濃度は自動水質計器で監視されている[3]。
浄水場で一度消毒しただけでは、水が管を通って蛇口に着くまでの安全が保証できない。蛇口の水にも一定の塩素を残す規定は、その間の水を守る趣旨と読めるが、これは資料の文言そのものではなく筆者の解釈である。病原生物による汚染のおそれがあるときの基準値は別に定められているが、ここでは扱わない。
6. じぶんでも たしかめて みたい ときは?
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 資料案内と、確かめられること
きょう できること:ペットボトルに みずを いれ、そこに にわの つちを ほんの すこし まぜます。ふたを しめて ふって から、じっと おいて、10ぷんごと、1じかんごとに、みずの ようすを ノートに かいて みましょう。この みずは のみません。すてる ときは、そとの つちに かえしてください。
でかけて できること:おうちの ちかくの じょうすいじょうが けんがくを うけつけて いるか、しの すいどうきょくの ホームページで しらべて みましょう。
今日できること:透明なペットボトルに水を入れ、庭や公園の土をほんの少し混ぜて、振ってから静かに置きます。10分後、1時間後、半日後で水の濁り方を見くらべてみましょう。粒の大きさによって、沈む速さがちがうか観察できます。この水は飲まず、外の土に返します。
出かけてできること:住んでいる市や県の水道局が、浄水場の見学を受け付けているか調べます。凝集の池や沈殿池を見られるところがあるかもしれません。
公式情報:札幌市水道局「浄水場のしくみ」や横浜市水道局の砂ろ過の説明は、写真つきで流れが分かります。
確かめられること:透明な容器に水と少量の土を入れ、静置して濁りの変化を時間ごとに記録する。大きな粒と細かい粒で沈み方が異なるかを観察できる。飲用せず、土は屋外に戻す。
資料:水道技術研究センターのQ&Aは、凝集剤の種類(10-65)と自動水質計器(06-51)を扱う。ろ過の吸着は横浜市水道局、工程の順序は札幌市水道局の解説がある。水質基準は e-Gov 法令検索の「水質基準に関する省令」で確認できる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数字や工程は、次の資料と突き合わせて書いています。
- 水道技術研究センター Q&A「水道用凝集剤の種類と特徴」 https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/10-65.pdf (コロイド粒子、凝集剤、PACの使用割合)
- 札幌市水道局「浄水場のしくみ」 https://www.city.sapporo.jp/suido/overview/shisetu/josuijo/system.html (凝集・フロック形成・沈殿の順序)
- 水道技術研究センター Q&A「浄水処理で使用する自動水質計器」 https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/06-51.pdf (急速ろ過の流れ、残留塩素の義務と監視)
- 横浜市水道局「砂ろ過のしくみ」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/suido-gesui/suido/suishitsu/dekirumade/jyosuijyo/roka.html (フロックの大きさ、吸着、フロック化の必要性)
- 国立保健医療科学院 厚生労働科学研究報告(緩速ろ過) https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/193061/201927002A_upload/201927002A202005082249519210006.pdf (緩速ろ過と急速ろ過のちがい。検索抜粋にもとづく)
- 香川県「水道水質基準」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/kankyokanri/mizudojou/taisaku/suidousuishitsukijun.html (濁度の基準値)
なおした ところ
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