蛇口じゃぐちの 水は どこから 来るの?

水道の水はどこから来るのか

水道の水はどこから来るのか ── 水源から蛇口まで、そして高層階へ

分野:技術

蛇口じゃぐちを ひねると、水が 出ます。 夜中でも 出ます。そのまま 飲めます。

しかも、マンションの 10かいでも 20かいでも、同じように 出て きます。

よく 考えると、これは とても ふしぎな ことです。 水は 上から 下へ 流れる ものなのに、 どうして 高い ところまで 来るのでしょう。

その 水は どこから 来て、だれが きれいに して いるのでしょう。 蛇口じゃぐちの むこうがわを たどって みました。

蛇口をひねると、水が出ます。夜中でも出ます。そのまま飲めます。 しかも、マンションの10階でも20階でも、同じように出てきます。

考えてみると、これはかなり変なことです。 水は上から下へ流れるものなのに、なぜ高いところまで来るのでしょう。 そもそも、その水はどこから来て、誰がきれいにしているのでしょう。 蛇口の向こう側をたどってみました。

蛇口をひねれば水が出ます。夜中でも出ます。そのまま飲めます。 しかもマンションの10階でも20階でも、同じように出てきます。

落ち着いて考えると、これはかなり奇妙なことです。 水は高いところから低いところへ流れるものなのに、なぜ高層階まで届くのか。 そもそもその水はどこから来て、誰が、どうやって飲める状態にしているのか。

この記事では、山に降った雨が蛇口から出るまでの道のりを、順にたどります。

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1. ひねれば 出る。それって すごい こと?

1. 「ひねれば出る」は、当たり前ではない

1. 常時供給・飲用可能・全国98% ── 当たり前の中身

蛇口じゃぐちを ひねると、水が 出ます。

あさでも、よるでも、出ます。 日よう日でも 出ます。 そして、その まま 飲めます。

「あたりまえ」だと 思いますよね。

でも、これは あたりまえでは ありません。

世界には、水を もらいに 遠くまで 歩く 人が います。 出て きた 水を、その まま 飲めない 国も たくさん あります。

日本では、ほとんど どこでも 水道が つかえます。 100人の うち 98人 くらいが つかえる、と いう ことです。

では、その 水は どこから 来て、 どうやって きれいに なって、 どうやって あなたの 家まで 来たのでしょう。

蛇口をひねると水が出ます。朝でも夜でも、日曜でも。 そして、そのまま飲めます。

これを「当たり前」だと思っているうちは、 水道というものの面白さは見えてきません。少し数字を出します。

数字で見る

  • 日本の水道普及率は、2021年時点で約98%。東京や大阪では100%です[1]
  • 水は24時間、いつひねっても出てくる
  • そして、そのまま飲める品質で届いている

この3つを同時に満たすのは、じつはかなり難しいことです。 止めずに流し続けるには、水を作る・ためる・送るという一連のはたらきを、 どこかで途切れさせないようにしておかなければなりません。 飲める品質を保つには、送っている途中でも汚れないようにしなければなりません。

昔からそうだったわけではない

日本でも、明治時代の終わりごろの普及率は8.4%でした[2]。 100人のうち8人です。残りの人は井戸を使い、川から汲んでいました。

いまの状態は、100年以上かけて作られたものです。 この記事では、その水が どこから来て、どうきれいになり、どうやって家まで届くのかをたどります。 高いマンションの上まで上がるしくみも、あとで出てきます。

水道の何がすごいのか。3つの条件を同時に満たしている点にあります。

水道が満たしている条件
条件意味難しさ
常時供給24時間365日、いつでも使える需要が変動しても、途切れさせない
飲用可能蛇口から出た水をそのまま飲める配る途中でも汚染されない状態を保つ
普及2021年時点で全国約98%[1]人口の少ない地域まで管を引く

どれか1つなら実現できます。難しいのは同時に成立させることです。

歴史から見ると異常な状態

明治末期の日本の水道普及率は8.4%でした[2]。 1925年(大正14年)でも20.7%です。大多数は井戸や川に頼っていました。

水を運ぶ労働は、歴史的には生活時間の大きな部分を占めてきました。 蛇口をひねれば出る、という状態は、人類史のなかではごく最近の、 しかも一部の地域だけの現象です。

この記事では、水源から蛇口までの経路を順にたどります。 途中で、「なぜ高層階でも水が出るのか」という問いにも答えます。

2. もとは、山に ふった 雨

2. たどっていくと、山に降った雨だった

2. 水源 ── 降水、森林、河川、ダム、地下水

水道の 水を たどって いくと、 さいごに たどりつくのは です。

山に 雨が ふります。

その 雨は、いきなり 川に 流れこむのでは ありません。 もりの 土に しみこんで、 ゆっくり ゆっくり 出て きます。

森の 土は、大きな スポンジの ような ものです。 雨を ためて、少しずつ 出す。

だから、雨が ふらない 日が つづいても、 川の 水は なくなりません。

その 川の 水を、水道は すこし かりて いるのです。

水は もどって きます。 つかった 水は 川や 海へ 行き、 いつか また 雨に なります。

ぐるぐる まわって いるのですね。

蛇口の水をさかのぼっていくと、どこにたどりつくでしょう。

答えは です。山に降った雨。

森がためている

降った雨がすぐ川に流れこんでしまったら、 雨の日は洪水、晴れの日は水不足、となってしまいます。

そうなりにくいのは、降った雨の一部が森の土にしみこみ、 流れ出すのを遅らせているからです。 落ち葉が積もった土は、すきまだらけのスポンジのようになっていて、 水を吸いこみ、時間をかけて少しずつ出していきます。

森が「緑のダム」と呼ばれることがあるのは、この働きからです。 (ただし、森があればどんな洪水も防げる、という意味ではありません。 大雨のときの効果には限りがあります。)

そして川、ダム、地下水

森から出た水は川になります。水道の水源は、おもに次の3つです。

  • 川の水:いちばん多い。取水口から取り入れる
  • ダムの水:雨の多い時期にためて、少ない時期に出す
  • 地下水:井戸から汲み上げる。地域によってはこちらが中心

どれも、もとは雨です。 そして使われた水は、川や海へ戻り、蒸発して、また雨になります。 水道は、この循環から少し借りているだけだとも言えます。

水道の水源をさかのぼると、最終的には降水に行き着きます。 日本の水道は、大きく分けて次の水源を使います。

おもな水源
水源特徴課題
河川表流水取水量を大きく取れる。日本の水道の中心濁りや水質が天候に左右される
ダム(貯水池)降水の季節変動を平準化できる建設の影響、堆砂、渇水時の制約
地下水水温・水質が安定している汲みすぎると地盤沈下や枯渇を招く

森林の保水機能

森林の土壌は、落葉層と孔隙(すきま)に富む構造を持ち、 降水を一時的に貯留してゆっくり流出させます。 これが河川の流量を平準化し、渇水期にも流れを保ちます。

「緑のダム」という表現が使われますが、扱いには注意が必要です。

  • 平常時から中規模の降雨に対しては、明確な保水・平準化の効果がある
  • ただし極端な豪雨では、土壌が飽和して効果が限定的になる
  • 森林があればダムが不要になる、という主張は単純化しすぎ

水源林の保全に水道事業者が関わることがあるのは、 上流の土地の状態が、下流の水質と水量を左右する 重要な要因のひとつだからです。 水道は浄水場だけで成り立つ仕組みではありません。

3. 水を きれいに する 工場

3. どうやって、飲める水にするのか

3. 浄水処理 ── 凝集・沈殿・ろ過・消毒

川の 水は、その まま 飲めません。 どろや ごみや、目に 見えない 小さな ものが 入って います。

そこで、浄水場じょうすいじょうと いう 工場に 運びます。

ここで やる ことは、じつは かんたんな じゅんばんです。

  1. くっつける……くすりを 入れて、小さな ごみを 大きな かたまりに します。
  2. しずめる……大きく なった かたまりは、下に しずみます。
  3. こす……すなの そうを 通して、のこった ものを とります。
  4. ばいきんを やっつける……さいごに くすりを 入れます。

いちばん さいごの くすりが 塩素えんそです。

プールの においを かいだ ことが ありますか。 あれと 同じ なかまです。

じつは この くすりは、 水道かんの 中を 通って いる あいだも はたらきつづけて います。 とちゅうで ばいきんが 入っても、 やっつけて くれる ことが あります。

ただし、この くすりが きかない ものも います。 なんでも ふせげる わけでは ありません。

川から取った水は、そのままでは飲めません。 濁りも、目に見えない微生物も入っています。

そこで 浄水場 に運んで、飲める水にします。 工程は、おおまかに4段階です[3]

浄水場の工程
段階やることねらい
① 凝集薬品を入れて、細かい濁りをくっつける小さすぎて沈まないものを、沈む大きさにする
② 沈殿ゆっくり流して、かたまりを底に沈める大部分の濁りをここで落とす
③ ろ過砂の層を通す沈まなかった細かいものを取る
④ 消毒塩素剤を加える細菌を殺す。そのあとも効き続ける

いちばん賢いのは、最後の塩素

①〜③は「取り除く」働きです。けれど④だけは性質がちがいます。

塩素は、浄水場を出たあとも水の中に残り続けます。 そして、配る途中で管に問題があっても、 あとから入りこんだ細菌に、ある程度そなえることができます。 ただし万能ではありません。塩素が効きにくい微生物もいます。

日本では、蛇口から出る時点でも、塩素が一定量以上残っていることが 法律で決められています[3]。 「浄水場できれいにした」で終わりにせず、 最後の一滴まで守るという考え方です。

水道水のにおいが気になることがありますが、それはこの塩素です。 においの正体は、最後まで消毒の力を残しておく、という設計のあらわれです。

河川水などの原水は、浄水場で処理されて飲用可能になります。 代表的な急速ろ過方式では、凝集・沈殿・ろ過を経て、 最後に塩素剤で消毒し、配水池を経由して給水されます[3]

浄水処理の工程
工程内容使う薬品の例
凝集コロイド状の微粒子を凝集させ、沈降可能なフロックにするPAC(ポリ塩化アルミニウム)など[3]
沈殿沈殿池で流速を落とし、フロックを沈降分離する
ろ過砂層を通し、残った懸濁物を除去する
消毒塩素剤を注入し、病原微生物を不活化する次亜塩素酸ナトリウムなど[3]

なぜ塩素なのか

消毒手段は塩素だけではありません。オゾンや紫外線もあります。 それでも塩素が基幹に据えられているのは、残留性があるからです。

水道法施行規則により、給水栓(蛇口)における水が、 遊離残留塩素0.1mg/L以上を保持するように 塩素消毒することが義務づけられています[3]

ここが設計思想の核心です。

  • 浄水場を出た時点で水質基準を満たしていても、配水管は数十kmに及ぶ
  • 管の破損、断水後の復旧、受水槽など、汚染の機会はゼロにできない
  • そこで「途中で汚染されうる」前提で、消毒能力を持たせたまま配る

水道水のにおいや味が気になる原因は主にこの残留塩素ですが、 それは安全側に振った設計の副作用だと言えます。 残留塩素を無くせばにおいは減りますが、末端での安全は保証しにくくなります。

4. 高い ところに ためて、下に 流す

4. 家まで、どうやって運んでいるのか

4. 配水 ── 位置エネルギーで送るという設計

きれいに なった 水は、 どうやって 家まで 来るのでしょう。

ポンプで ずっと おして いる、と 思いますか。

じつは、ちがう ところが 多いのです。

水は まず、高い ところに ある 大きな タンクに ためられます。山の 上や、おかの 上です。

そこから、下に むかって 流れて いきます。

水は 高い ところから ひくい ところへ 流れますね。 その 力を つかって いるのです。

だから、電気が 止まっても、 しばらくは 水が 出つづける ことが あります。

高い ところに ためて おく。 それだけの ことですが、 とても かしこい やり方です。

きれいになった水は、どうやって家まで届くのでしょう。 「ポンプでずっと押している」と思うかもしれませんが、多くの場所ではちがいます。

高いところにためる

浄水場を出た水は、まず 配水池 という大きなタンクに入ります。 このタンクは、たいてい丘の上や高台に作られています。

そして、そこから下に向かって流れていきます。 水が高いところから低いところへ流れる力を、そのまま使うのです。

この方式には、いいことがいくつもあります。

  • 配るときの動力を減らせるので、費用が安くなる
  • 停電しても、ためてある分はしばらく流れ続ける
  • ポンプにたよる部分が少なくてすむ

ためておくと、波を吸収できる

もうひとつ大事な役割があります。

水を使う量は、時間によって大きく変わります。 朝と夜は多く、真夜中は少ない。 でも浄水場は、水を作る量を急には変えられません。

そこで配水池が、あいだでクッションになります。 使う量が少ないときにためて、多いときに出す。 こうして、作る側と使う側の波を吸収しています。

浄水場から利用者までの経路は、代表的には 浄水場 → 送水管 → 配水池 → 配水管 → 給水管 という流れになります。

設計の要は 配水池を高所に置くことです。 高低差による位置エネルギーを利用して、動力を使わずに水を送ります(自然流下)。

配水池が担う3つの役割

配水池の役割
役割内容
水圧の確保高低差がそのまま配水管の圧力になる
需要変動の吸収浄水量はほぼ一定、使用量は時間帯で大きく変動する。その差を貯留で埋める
非常時の備え停電や事故が起きても、貯留分でしばらく供給を続けられる

なぜ位置エネルギーなのか

ポンプで加圧し続ける方式でも配水はできます。それでも高所貯留が基本なのは、

  • 配水時の加圧コストを抑えやすい:一度上げてしまえば、あとは重力が運ぶ
  • 単一障害点を減らせる:ポンプが止まっても即座に供給が途絶えない
  • 圧力が安定する:水面の高さで決まるので、変動が小さい

インターネットの記事で見た 「壊れても止まらないようにする」という考え方と、発想は共通しています。 動き続けるものを減らし、止まっても持ちこたえる余裕を持たせる。

ただし、平地の都市では十分な高低差を取れないこともあります。 その場合はポンプで加圧して配水します。地形によって設計は変わります。

5. 高い マンションの 上は どうするの?

5. 高いマンションの上まで、どうやって上げるのか

5. 高層階への給水 ── 3つの方式と、ゾーニング

ここで、この きじの いちばん 大きな ぎもんです。

高い マンションの 上でも、 どうして 水が 出るの?

道の 下を 通って いる 水は、 じつは そんなに 強く おされて いません。

その 力だけだと、 3かい か 4かい くらいまでしか 上がりません。

では、10かいや 20かいの 人は どうして いるのでしょう。

やり方は、大きく 2つ あります。

ひとつめは、ポンプで おしあげる。 たてものの 下に ポンプを おいて、 上まで 力を たして あげます。

ふたつめは、いちど 屋上に 上げて、 そこから 落とす

屋上に 大きな タンクを おいて、 そこに ためて おく。あとは 上から 下へ 流すだけです。

さっき 出て きた「高い ところに ためる」を、 たてもの 1つで やって いるのですね。

さて、この記事のいちばんの疑問です。 高いマンションの上でも、なぜ水が出るのでしょう。

道路の下を通っている配水管の水圧は、それほど高くありません。 その圧力だけで届くのは、おおむね3〜4階までとされます[4]。 地域の水圧によって変わるので、目安として読んでください。

では、それより上はどうしているのか。方法は3つあります。

建物への給水方式
方式やり方向いている建物
直結直圧配水管の圧力だけで、そのまま各戸へ3〜4階くらいまで[4]
直結増圧建物の下にポンプを置き、圧力を足して押し上げる中高層。いまの新築で主流[4]
受水槽+高置水槽いったんタンクにため、屋上へ上げて、そこから落とす大きな建物、断水に備えたい建物

屋上に上げてから落とす

3つめの方式が面白いところです。

水をいったん建物の下のタンク(受水槽)にため、 ポンプで屋上のタンク(高置水槽)まで持ち上げます。 あとは、そこから各階へ落とすだけ

これは、前の章に出てきた「高台の配水池」と同じ考え方を、 建物ひとつの中でやっているということです。

屋上にタンクがあると、こういう利点があります。

  • 停電しても、タンクにたまっている分は出る
  • 断水しても、しばらくは使える
  • 朝や夜に使用が集中しても、タンクが吸収してくれる

いっぽう、タンクの掃除や点検が必要になります。 管理が悪ければ、水がタンクの中で汚れることもあります。 どの方式にも、いいところと手間があるわけです。

もっと高い建物では

30階を超えるような超高層になると、また別の工夫が要ります。 いちばん下から上まで一気に押し上げると、 下の階の水圧が強くなりすぎてしまうからです。

そこで建物をいくつかの区画に分け、区画ごとにポンプやタンクを置きます[5]。 高い建物ほど、中で水道が何段にも分かれているのです。

配水管の水圧だけで供給できる高さには限りがあります。 直結直圧方式で届くのは、おおむね3〜4階程度です[4]。 それを超える建物では、別の方式が必要になります。

給水方式の比較
方式しくみ利点注意点
直結直圧配水管の圧力をそのまま利用設備が少なく、水が新鮮高さに限界がある
直結増圧増圧ポンプで加圧し、直接各戸へ[4]受水槽が不要。水質を保ちやすい停電時は供給が止まる
受水槽+高置水槽受水槽に貯留 → 揚水ポンプで屋上へ → 重力で各階へ停電・断水時に貯留分が使える。需要変動に強い槽の清掃・点検が必要。滞留による水質劣化のリスク

東京都では原則として、4階以上に給水栓がある建物について、 直結増圧方式か受水槽方式のいずれかを用いることとされています[6]

超高層建築のゾーニング

30階を超えるような建物では、単純に下から加圧するだけでは成立しません。 下層階に過大な水圧がかかるからです。

水圧が高すぎると、次の問題が起きます。

  • 蛇口を開けたときの勢いが強すぎる
  • 器具や配管、パッキンの寿命が縮む
  • ウォーターハンマー(急に止めたときの衝撃)が起きやすい

そのため建物を複数のゾーンに分け、ゾーンごとに 増圧ポンプや中継ポンプを設け、各ゾーンで適正な水圧 (おおよそ0.1〜0.3MPa程度)を保つ設計にします[5]

つまり超高層ビルの中では、水道が縦方向に何系統にも分割されていることになります。 外から見ると1棟の建物でも、水の側から見れば、 いくつもの独立した給水系が積み重なっている状態です。

6. 日本の 水道は いつ できた?

6. 日本の近代水道は、横浜から始まった

6. 1887年、横浜 ── 近代水道の始まりと、その動機

いまの ような 水道は、いつ できたのでしょう。

1887年、いまから 140年 ほど 前です。 ばしょは 横浜よこはま

イギリスから 来た 技師ぎしの 人が、 作り方を おしえて くれました。 パーマーさんと いう 人です。

どうして 水道が いるように なったと 思いますか。

じつは、びょうきの ためです。

そのころ、きたない 水を 飲んで おなかの びょうきに なる 人が たくさん いました。 町じゅうに 広がって、多くの 人が なく なりました。

きれいな 水を くばれば、 びょうきを ふせげる。 そう 考えて、水道が 作られたのです。

水道は、のどが かわくから だけでは なく、 いのちを まもる ために できました。

いまのような水道は、いつできたのでしょう。

日本の近代水道は、1887年(明治20年)10月17日、 横浜に作られたものが最初です[7]

設計を指導したのは、イギリス人技師の ヘンリー・スペンサー・パーマー。 1883年から調査を始め、鋳鉄の管、ポンプ、ろ過池といった当時の新しい技術を使って、 止まらずに、圧力をかけて水を送るしくみを作りました[2]

なぜ港町から始まったのか

その後、函館、長崎、大阪、東京、広島、神戸などに広がっていきます[2]。 気づくことがあります。どれも港のある町です。

理由のひとつは、伝染病でした。 船が行き来する港町では、外から病気が入ってきやすい。 そして当時、汚れた水を飲むことで広がる病気が、大きな脅威でした。

水道が広まった大きな理由のひとつは、病気を防ぐことだったのです。 のちに消毒が重視されるようになった背景にも、この出発点があります。 (日本で塩素消毒が広まるのは、1920年代以降のことです。)

そこからの100年

  • 明治の終わり:全国で23の水道、普及率 8.4%[2]
  • 1925年(大正14年):106の水道、普及率 20.7%[2]
  • 2021年:普及率 約98%[1]

100年以上かけて、少しずつ管を伸ばしてきた結果が、いまの蛇口です。

日本の近代水道は、1887年(明治20年)10月17日に 横浜で通水したものを最初とします[7]。 横浜市はこの日を「近代水道創設記念日」としています。

設計を指導したのは英国人技師 ヘンリー・スペンサー・パーマー。 1883年から調査が始まり、鋳鉄管・ポンプ・ろ過池といった技術を用いた、 連続給水の有圧水道として日本初のものでした[2]

「近代水道」とは何を指すか

日本には江戸時代にも上水(神田上水、玉川上水など)がありました。 それでも1887年が「近代水道の始まり」とされるのは、次の点が違うためです。

  • 有圧:圧力をかけて送るので、蛇口まで届き、逆流や汚染を受けにくい
  • 連続給水:時間を区切らず、常時供給する
  • ろ過:水質を処理する工程を持つ
  • 閉じた管路:外気や汚水に触れずに運ぶ

江戸の上水は開渠(ふたのない水路)を含み、圧力もかかっていませんでした。 水を引いて都市に配るという目的は同じでも、 有圧の鉄管・ろ過・閉じた管路が加わったことで、技術の体系が大きく変わった ということです。

公衆衛生としての水道

近代水道が開港都市を中心に整備された背景には、 水系感染症の流行があります。 汚染された水を介して広がる病気は、当時の都市にとって深刻な脅威でした。

つまり水道は、利便性のためではなく 公衆衛生の施策という性格が強かったと理解するのが正確です。 もちろん、人口の増加や水不足といった事情も背景にありました。 日本の水道が消毒を重視し、 末端の蛇口まで残留塩素を保つことを法律で定めているのは、 この出自と一貫しています。

水道普及率の推移
時期水道の数普及率
明治末期238.4%[2]
1925年(大正14年)10620.7%[2]
2021年約98%[1]

7. ほかの 国では どうなの?

7. 世界とくらべると、どうなのか

7. 国際比較 ── 飲用可否、水質、そして前提のちがい

外国へ 行くと、 「水道の 水は 飲まないで」と 言われる ことが あります。

日本では ふつうに 飲めるのに、 どうして でしょう。

国に よって、水道の つくり方が ちがうからです。

きれいに する ちからが 足りない ところも あれば、 きれいに しても、 はこぶ とちゅうで よごれて しまう ところも あります。

それから、水の あじも ちがいます。

日本の 水は、口あたりが やわらかい ものが 多いです。 ヨーロッパには、かたく 感じる 水が 多い ばしょが あります。

水に とけて いる ものの りょうが ちがうからです。

同じ「水」でも、ばしょが かわると ぜんぜん ちがう ものに なるのですね。

外国へ行くと「水道の水は飲まないほうがいい」と言われることがあります。 日本ではふつうに飲めるのに、なぜでしょう。

飲めるかどうかを決めるもの

「そのまま飲める水道」を成り立たせるには、いくつもの条件がそろう必要があります。

  • 浄水場で十分に処理できていること
  • 配る途中で汚れが入らないこと(管が古すぎない、圧力が保たれている)
  • 途中で汚れが入っても、対処できること(消毒の効果が残っている)
  • それを続けるお金と人がいること

どれか1つでも欠けると、「飲める」とは言えなくなります。 日本の水道が飲めるのは、この全部をずっと維持してきた結果です。

味がちがう理由

水の味は、溶けているミネラルの量で変わります。 量が多い水を 硬水、少ない水を 軟水 といいます。

日本の水は軟水が多く、口当たりがやわらかく感じます。 ヨーロッパには硬水の地域が多くあります。 これは水が通ってきた地層のちがいによるもので、 どちらが良い悪いではありません

日本の水が軟水寄りなのは、国土が狭くて川が短く急なため、 水が地下にとどまる時間が短いからだと説明されます。 地形が味を決めているわけです。

日本の水道の特徴を理解するには、比較の視点が要ります。 ただし国際比較には注意も必要です。

「そのまま飲める国は少ない」という話

水道水をそのまま飲める国は多くない、とよく言われます。 方向としてはそのとおりですが、 正確な国数として語られる数字には、出典がはっきりしないものが多いのが実情です。

また「飲める/飲めない」は国単位で割り切れるものでもありません。

  • 同じ国でも、都市部と農村部で状況が大きく違う
  • 水質基準は満たしていても、古い建物内の配管が原因で飲用を避ける場合がある
  • 安全でも、味やにおいの好みからボトル水を使う文化がある

この記事では、国数のような数字は挙げません。 条件がそろって初めて成立するという理解のほうが実態に近いからです。

硬度のちがい

水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を硬度といい、 多いものを硬水、少ないものを軟水と呼びます。

日本の水は軟水が多く、ヨーロッパには硬水の地域が多く見られます。 この違いは、

  • 地質(石灰岩が多いかどうか)
  • 水が地層にとどまる時間(日本は川が短く急で、滞留時間が短い)

によって生じます。硬度は料理や飲み物の味に影響し、 だしを取る、紅茶を淹れるといった場面で違いが出ます。 その土地の水が、その土地の食文化に影響した面もあると言われます。 もちろん、食文化を決めるのは水だけではありません。

8. これから こまる こと

8. これから困りそうなこと

8. 老朽化・人口減・災害 ── 維持する側の課題

さいごに、これから こまりそうな ことを 書きます。

水道の かんは、土の 中に うまって います。 目に 見えません。

でも、ずっと 前に うめた ものは、 だんだん 古く なって いきます。

古い かんは、水が もれたり、 こわれたり する ことが あります。

日本の 水道かんには、 もう 50年 くらい つかって いる ものも たくさん あります。

直すには、たくさんの お金と 時間が かかります。

それに、じしんが おきると、 かんが こわれて 水が 出なく なる ことも あります。

蛇口じゃぐちを ひねれば 出る。 それを つづける ために、 いつも だれかが なおして いるのです。

最後に、これから困りそうなことを書いておきます。

管が古くなっている

水道管は地面の下にあります。目に見えません。 そして、日本の水道管の多くは、高度経済成長期に一気に埋められたものです。

つまり、いっせいに古くなる時期が来ているということです。 古い管は漏水や破損の原因になりますが、 交換するには掘り返さなければならず、費用も時間もかかります。

使う人が減っていく

もうひとつが人口の問題です。

水道は、管を引いた長さぶんだけ維持費がかかります。 使う人が減っても、管の長さは減りません。 少ない人数で、同じ長さの管を支えることになります。

とくに人口の少ない地域では、この負担が重くなります。

災害のとき

地震で管が壊れると、水が止まります。 そして大きな地震では、水道の復旧が長引くことがあります。 地面を掘って、1か所ずつ直していくしかないからです。

蛇口をひねれば出る、という状態は、 誰かが直し続けているから続いているものです。 止まってはじめて、それが見えます。

水道が直面している課題は、技術というより維持の問題です。

水道が抱える課題
課題内容難しさ
施設の老朽化高度経済成長期に整備された管が、更新時期を迎えている掘削を伴うため費用と時間がかかる。地下なので状態が見えにくい
人口減少給水人口が減っても、管路の総延長は減らない1人あたりの維持費が上がる
技術者の減少事業者の職員数が減っている知識と経験の継承が難しい
災害地震などで管路が広範囲に損傷する復旧に時間がかかり、断水が長期化しうる

「見えないインフラ」の難しさ

水道管は地下にあり、平常時には存在を意識されません。 この見えなさが、意思決定を難しくします。

  • 更新の必要性が有権者に伝わりにくい
  • 料金を上げる合意が得にくい
  • 問題が表面化するのは、壊れたあと

橋やトンネルは劣化が目に見えますが、水道管は掘らなければ分かりません。 予防のための投資が、いちばん支持を得にくい種類の投資だということです。

災害時の断水

大きな地震では、管路の損傷が広い範囲に及び、断水が長期化することがあります。 復旧に時間がかかりやすいのは、

  • 地中を掘って、1か所ずつ直す必要がある
  • 漏水箇所を特定する作業自体に時間がかかる
  • 水が漏れたままでは、圧力をかけられない(部分復旧が難しい)

という理由によります。 「いつでも出る」は、維持され続けているという事実の上に成り立っています。

9. じぶんでも しらべて みる

9. 自分でも調べてみたくなったら

9. 自分で確かめる ── 家の中と、街の中で

水道は、家の 中でも しらべられます。

  • 水道メーターを 見つける。 げんかんの 近くや、そとの ふたの 下に あります。 水を つかうと、数字が 動きます。
  • マンションの 屋上を 見る。 四角い タンクが のって いませんか。 あれが 水を ためる ところです。
  • 水道の りょうきんの かみを 見せて もらう。 1か月に どれくらい つかったかが 書いて あります。

水を 出しっぱなしに しないのは、 お金の ためだけでは ありません。 ここまで 運ぶのに、たくさんの 人と しくみが はたらいて いるからです。

水道は、家の中と街の中で確かめられます。

  • 水道メーターを探す。玄関脇や、外の地面のふたの下にあります。 蛇口を開けると数字が動きます。閉めても動いていたら、どこかで漏れているかもしれません。
  • マンションの屋上を見る。四角いタンクが載っていたら、高置水槽方式です。 載っていなければ、直結増圧かもしれません。
  • 街の高台を見る。大きなタンクや、丸い建物がありませんか。配水池かもしれません。
  • 水道料金の明細を見せてもらう。1か月に何立方メートル使ったかが書いてあります。 1立方メートルは1000リットル。お風呂で言うと何杯ぶんでしょう。

関連する記事

水道は身近なぶん、手を動かして確かめられる部分が多い分野です。

やってみる

  1. メーターで漏水を確かめる:家中の蛇口を閉めた状態でメーターのパイロット(小さな回転部分)を見る。動いていれば漏水の可能性がある
  2. 使用量を記録する:明細から月ごとの使用量を書き出す。季節でどう変わるかが見える
  3. 建物の給水方式を調べる:屋上のタンクの有無、ポンプ室の場所。管理会社に聞けば教えてもらえる
  4. 地形と配水池を重ねる:地図で標高を確認し、配水池がどこにあるかを探す

調べる入口

  • お住まいの自治体の水道局・上下水道局のサイト(水源、浄水場、水質検査の結果が公開されています)
  • 東京都水道局(給水方式や水質の解説が詳しい)
  • 水質検査結果(自治体が毎年公表しています。残留塩素の値も載っています)

考えてみると面白いこと

  • なぜ日本は、末端の蛇口まで塩素を残す設計にしたのか。別の設計はありうるか
  • 見えないインフラへの投資を、どうすれば人は支持するのか
  • 人口が減る地域で、水道をどう維持するか(管を細くする、集約する、別の方式にする)

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。用語の定義など、短く引用した部分は、どこから引いたかを示しています。 制度や数値は地域や時期で変わります。お住まいの地域のことは、 自治体の水道局の情報を確認してください。 リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 関西電力 広報誌「YOU'S」 日本全国に安全でおいしい水を提供する水道インフラの今 (2021年時点の水道普及率 約98%)
  2. 豊橋市上下水道局「水道の歴史」 https://www.city.toyohashi.lg.jp/3984.htm (1883年からのパーマーによる調査、連続給水の有圧水道、明治末期と1925年の普及率)
  3. 三重県企業庁「水質なんでも相談室」 https://www.pref.mie.lg.jp/SUISHITU/HP/15527016719.htm (凝集・沈殿・ろ過・消毒の工程、使用する薬品、水道法施行規則による給水栓での残留塩素0.1mg/L以上)
  4. MIJ「マンションの給水方式徹底解説」 https://mij-c.com/column/equipment/1534 (直結直圧が3〜4階程度まで、直結増圧が新築中高層で主流であること)
  5. 森工業「高層マンション・ビルの給水設計」 https://www.m-kogyo.co.jp/columns/high-rise-building-water-supply-design (超高層建築のゾーニングと、各ゾーンで保つ水圧のめやす)
  6. 東京都水道局「給水方式について」 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/chokketsu/houshiki (貯水槽水道方式と直結給水方式の違い、4階以上の建物の扱い)
  7. 横浜市「近代水道創設記念日」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/suido-gesui/suido/torikumi/PR/sousetsukinennbi.html (1887年10月17日、パーマーの指導による日本初の近代水道)

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