1. キャベツの めが かいた らくがき
1. ダーウィンが見た、芽の円運動
1. 円を描く芽 ── ダーウィンの記録と、太陽を追うヒマワリ
ダーウィンは、キャベツの めの さきに、とても ほそい ガラスの いとを つけた。いとの さきが どこに あるかを、ガラスの いたに てんで うつして いった[1]。
てんを せんで つなぐと、まっすぐでは なかった。ぐるぐると、まるい せんに なった。めは じっと して いたのでは なくて、ゆっくり まるを かきながら うごいて いたんだ。ダーウィンは、そだって いる ところは、たいてい こうして うごいて いる、と かんがえた[1]。
ヒマワリも うごく。わかい ヒマワリは、ひるの あいだ たいようを おいかけて、すこしずつ むきを かえる。よるの あいだに ひがしへ もどって、あさを まつ[2]。
ただし、おおきく なった ヒマワリは、ひがしを むいたまま とまる[2]。うごかない ように みえる しょくぶつは、じつは ゆっくり うごいて いる。でも、きんにくは ない。どうやって うごくのかな。
ダーウィンは、息子のフランシスの助けを借りて、芽や根の先が時間とともにどこへ動くかを調べた。方法は地味だ。馬の毛ほどの細さのガラスの糸を芽に貼りつけ、糸の先の位置を、そばに立てたガラス板に点で写していく。あとで点をつなぐと、芽は円や楕円を重ねるように動いていた[1]。
ダーウィンは、成長している部分は、大きさはちがっても、たいていこうして動き続けていると考えた[1]。この動きを、英語で circumnutation という。
いまの例がヒマワリだ。若いヒマワリは、昼のあいだ東から西へ太陽を追って向きを変え、夜のうちに東へ向き直って夜明けを待つ。成長した株は、花を東に向けたまま動きを止める。2016年の研究は、この動きに体内時計が関わっていると報告した[2]。
植物は止まっているのではなく、ゆっくり動いている。ただ、筋肉のない体で、どうやって動くのだろう。
ダーウィンは息子のフランシスの助けを借りて、芽や根の先が時間とともにどこへ動くかを調べた。馬の毛ほどの細さのガラスの糸を芽の先に貼り、その糸の先の位置を、そばに立てたガラス板に点で写していく。あとで点を線でつなぐと、芽は円や楕円を重ねるように動いていた[1]。ダーウィンは、成長している部分は、大きさはさまざまでも、たいていたえずこうして動いている、と結論した。この動きは、英語で circumnutation と呼ばれる。
現代の例が、ヒマワリの太陽追跡だ。2016年の Science 論文によると、若いヒマワリは、昼のあいだ東から西へ太陽を追って向きを変え、夜のうちに東へ向き直って夜明けを待つ。成熟した株は動きを止め、花を東に向けたままになる。追跡のしくみは、茎の東側と西側が、時間帯をずらして交互に伸びることだった[2]。この調節が、株の成長量と、花を訪れる昆虫の数の増加につながる、と論文は報告している[2]。
夜に東へ戻る動きは、太陽が見えていない時間に起きる。つまり、夜明けを見こした動きで、体内時計(概日リズム)が関わっている。植物は止まっているのではなく、ゆっくり動き、時刻まで測っている。筋肉のない体で、どうやって動くのだろう。
2. きんにくが ないのに、どうやって うごくの?
2. 筋肉のかわりは、成長の差と水の出入り
2. 偏差成長と膨圧 ── 筋肉のない体の動かし方
しょくぶつの うごきかたは、大きく 2つ ある。
1つめは、のびかたに ちがいを つくる やりかただ。ひかりが あたる がわと、かげの がわで、のびる はやさが ちがうと、くきは ひかりの ほうへ まがる[3]。まどぎわの はちうえが、そとを むくのは この せいだ。ただし、ゆっくりで、めには みえない。
2つめは、みずの でいり だ。オジギソウは、さわると、すうびょうで はが とじる[6]。はの つけねの 葉枕という ところの さいぼうから みずが ぬけて、しぼむ ためだ[5]。ふうせんの くうきが ぬけて しぼむのに、すこし にて いる。ただし ほんとうは、ふうせんは ただ しぼむ だけ。はの さいぼうは、さわられると じぶんで みずを ぬく しくみを もって いる。
ハエトリグサの はが とじる はやさは、0.1びょうぐらいだ[7]。
でも、どれも「その ばで」の うごきだ。あるいて どこかへ いく しょくぶつは いない。どうして かな。
植物の動きは、しくみで大きく2つに分けられる。
1つ目は、成長の差による動きだ。光を受けた側と陰の側で、成長の速さがちがうと、茎は光のほうへ曲がる。この成長のちがいを、偏差成長という[3]。成長をうながす植物ホルモンのオーキシンが、光とは反対の側へ移るので、陰の側がよく伸びる[4]。ヒマワリの太陽追跡も、茎の東西が交互に伸びる動きだ[2]。伸びるのに時間がかかるので、ゆっくりした動きになる。
2つ目は、水の出入りによる動きだ。オジギソウの葉のつけ根には、葉枕というふくらみがある。刺激が伝わると、細胞からイオンが出て、あとを追って水も出ていく。多くの細胞が同時にしぼんで、葉が折りたたまれる[5]。触れてから数秒のうちに閉じる[6]。開くときは、出したイオンを細胞に戻すのにエネルギーが必要なので、時間がかかる[5]。
ハエトリグサはもっと速い。葉が閉じるのに約100ミリ秒(0.1秒)しかかからない。曲がっていた葉が、ある一線を越えると一気に反り返る仕組みだと研究されている[7]。
植物には、筋肉ではなく、成長と水圧という別の動かし方がある。ただ、どれも根を張った場所でのその場の動きで、体ごと歩き出す植物はいない。その理由を、食べ物の取り方から考えてみる。
植物の動きは、しくみで大きく2つに分けられる。
1つ目は、成長の差による動きだ。光屈性では、光を受けた側と陰側で成長の速さがちがう。この成長差を偏差成長という[3]。茎では、成長を促す植物ホルモンのオーキシンが光とは反対の側へ移動して、陰側の成長が促され、茎が光のほうへ曲がる[4]。ヒマワリの太陽追跡も、茎の東西の伸びの交替でできている[2]。細胞が伸びる動きなので、時間がかかる。
2つ目は、細胞の水の出入りによる動きだ。オジギソウの葉のつけ根には葉枕があり、刺激を受けると、まずイオンが細胞から出て、水がそれを追って出ていく。多くの細胞が同時にしぼんで、葉が折りたたまれる[5]。触れてから数秒のうちに閉じる[6]。開くときは、出たイオンを細胞に戻すのにエネルギーが必要で、時間がかかる[5]。
もっと速い例が、ハエトリグサだ。Forterre らの2005年の論文は、葉が約100ミリ秒で閉じることを示し、その原因を「snap-buckling(ぱちんと反る不安定)」とした。曲がった葉が、ある点を越えて一気に反り返るしくみで、その引き金は植物が能動的に調節している[7]。
成長と水圧で、植物は筋肉なしに動く。ただ、どれも根を張った場所でのその場の動きで、体ごと歩く植物はいない。その理由を、食べ物の取り方から考えてみる。
3. どうして あるいて いかないの?
3. 歩かない理由は、食べ物の取り方にある
3. 独立栄養と、動かない暮らし ── 移動が有利でなくなった、という説明
どうぶつは、たべものを さがして あるく。えものや くだものは、あちこちに ぽつん、ぽつんと ある からだ。
しょくぶつの たべものは、ひかりと みずと くうきの 中の にさんかたんそ。ひかりや くうきは、どこにでも ある。ただし、うすい。くうきの 中の にさんかたんそは、2400この つぶに 1こぐらいだ[8]。だから はを ひろげて、たくさん あつめる。あるきまわる より、ひろげる ほうが とくを する。そういう かんがえかたが ある。
がくしゃの ろんぶんには、しょくぶつは じぶんで たべものを つくる から、えものを おいかける うごきは いらなく なった、と かいて ある[9]。ただし ほんとうは、むかしの ことなので、じっけんで たしかめた はなしでは ない。
ひかりで くらす どうぶつも いる。イソギンチャクの なかまの 中に、からだの 中に 藻という ちいさな くさの なかまを すまわせて、ひかりで つくった えいようを もらう ものが いる。この イソギンチャクは、たいようを おうように てあしの ような しょくしゅの むきを かえた。もを なくすと、この うごきは なくなった[10]。
フジツボは いわに くっついたまま、あしを てまねきの ように うごかして、ながれて くる プランクトンを つかまえて たべる[11]。うごかない いきものは、しょくぶつだけでは ない。
動物は、食べ物を探して歩く。獲物や果実は、あちこちに点のように散らばっているからだ。
植物の材料は、光、水、空気中の二酸化炭素、土の中の養分だ。光や空気はどこにでもあるが、うすい。空気中の二酸化炭素は、2024年の世界平均で約424ppm、分子2400個に1個ほどしかない[8]。うすいものを集めるなら、歩き回るより、葉を広げて面積をかせぐほうが得だ。そういう考え方ができる。
植物学の総説(2009年)は、植物は自分で栄養を作る独立栄養なので、獲物を追う必要がなく、動くしくみを進化させなかった、と説明する。移動が有利でなくなった時点で、動く能力は失われたのだろう、という書き方だ[9]。ただ、これは進化のあとから理由を考える説明で、実験で確かめられる種類の話ではない。
これを裏返す例がある。共生する藻を体に持つイソギンチャクの一種(Anemonia viridis)は、藻の光合成に頼っていて、太陽を追うように触手の向きを変える。藻を失った個体では、この動きが見られなかった[10]。光で暮らすこの動物は、植物のように体を光に向ける。
動かないのは植物だけでもない。フジツボの成体は岩に固着したまま、蔓脚(まんきゃく)という脚を手招きするように動かして、流れてくるプランクトンを捕まえる[11]。動かない生き物が、体の一部だけを動かして食べ物を取る、という形はほかにもある。
歩かないかわりに、植物は何で食べ物を探しているのだろう。
動物が動くのは、食べ物が点のように散らばっているからだ、と考えると筋が通る。獲物も果実も、探しに行かなければ手に入らない。植物の材料は、光、水、二酸化炭素、土の中の養分で、どれも広く薄くある。空気中の二酸化炭素は、2024年の世界平均で423.9ppm(分子約2400個に1個)[8]。薄いものを集めるなら、歩き回るより、体を広げて面積をかせぐほうが有利になる、という見方ができる。
植物学の総説は、植物は自分で栄養を作る独立栄養で、捕食に頼らないので、移動のしくみは進化しなかった、と説明する。移動が有利でなくなった時点で、その能力は失われたのだろう、という書き方だ。同じ総説は、細胞を包む固い細胞壁が、体を支える強さを与える面を持つとも述べる[9]。ただ、これは進化の理由をあとから考える説明で、実験で確かめられる話とは種類がちがう。
これを裏返す例が、動物で見つかっている。体内に共生する藻を持つイソギンチャクの一種 Anemonia viridis は、太陽を追うように触手の向きを変えた。この動きは、藻が光合成をしているときに見られ、藻を失った(白化した)個体や、光合成を薬で止めた個体では見られなかった[10]。光で暮らす動物のなかには、植物のように体を光に向けるものがいる。
固着して暮らす動物もいる。フジツボの成体は、蔓脚と呼ばれる脚を手招きするように動かし、流れてくるプランクトンを捕らえる[11]。動かないことは植物だけの性質ではなく、「食べ物を探しに行かなくてよい暮らし方」とつながっているらしい。
歩かないかわりに、植物は何で食べ物を探しているのか。
4. あるかない かわりに、なにを のばす?
4. 歩くかわりに、根と葉をのばす
4. 根と葉の役割 ── ライ麦1株の根は約600km
ねは、みずと、つちの 中の えいようを すい上げる。からだを じめんに とめる やくめも ある[12]。
はは、ひかりを うけて、たべものを つくる ところだ。はの うらの ちいさな あなから、くうきの 中の にさんかたんそを とりこむ。この あなの かずは しょくぶつに よって ちがうが、1へいほうミリメートルに 100こ いじょう ある ことも ある[13]。
ライむぎ という くさを 1本 そだてて、ね ぜんぶの ながさを はかった 人が いる。1937ねんの ほうこくで、4か月 そだてた 1本の ね ぜんぶで、やく 600キロメートル。とうきょうから おおさかまでの きょり(400キロ)より ながい[14]。ただし ほんとうは、1本を はかった むかしの けっかだ。どの くさも こうとは かぎらない。
ねは、みずを さがして のびる。うちゅうステーションで そだてた キュウリの ねは、しめった ほうへ まがった[15]。うごかなくても、のびながら さがして いる。
根の主な役目は、水と養分を吸うことだ。吸収のほとんどは、根の先に生える根毛で行われる。ほかに、地上の体を固定する、栄養をためる、運ぶ、という役目もある[12]。
葉は、光を受けて光合成をする場所だ。葉の裏の小さな穴(気孔)から二酸化炭素を取りこむ。このとき水蒸気も出ていくので、植物は、うすい二酸化炭素を集める代わりに水を失う。気孔の数は植物によってちがうが、1平方ミリメートルに100個以上ある例もある[13]。
根の長さを測った研究がある。1937年、ライ麦を約4か月育てた1株の根を洗い出して数えたところ、根は1300万本を超え、全部つなぐと約600キロメートル(東京から大阪の直線距離のおよそ1.5倍)になったと報告された[14]。ただし、これは1株を測った昔の報告だ。どの植物でも同じとは限らない。
根は、探しながら伸びる。宇宙ステーションでキュウリを育てた実験では、根は重力の影響の小さい環境で、湿った側へ曲がった。地上では、重力の引く向きにまっすぐ伸びた[15]。根は、水のあるほうへ曲がる性質(水分屈性)を持つ。
歩かない植物は、根と葉の先を伸ばしながら探している。伸びた先にしか届かない代わりに、食べにくる動物からは逃げられない。
根の主な働きは、水と養分の吸収だ。吸収は、新しい根の先に生える根毛で主に行われる。古い根は、表面が硬くなって吸収の力を失う。ほかに、地上部の固定、貯蔵、通導(水や養分を運ぶこと)も根の役目だ[12]。
葉は光合成の場で、光のエネルギーで二酸化炭素と水から糖などを作る。二酸化炭素は気孔から入るが、同じ穴から水蒸気も出ていく。木下俊則(名古屋大学)は、この非効率を補うために、植物は1平方ミリメートルあたり100個以上(数は種や葉によってちがう)の気孔を持ち、内部の空間で表面積を増やしていると説明している[13]。
探す範囲の広さを示したのが、1937年の Dittmer の報告だ。冬ライ麦1株を約4か月育て、根を洗い出して数えた。根は約1380万本、全部つなぐと約600km(東京〜大阪の直線距離の約1.5倍)。根毛は約140億本と見積もられた[14]。1株だけの、昔の測定値だ。現在の品種・土にそのまま当てはまるかは分からない。
根は、広げるだけでなく、探して曲がる。Morohashi ら(2017)は、宇宙ステーションのキュウリの根で、水分屈性(湿った側へ曲がる性質)を調べた。微小重力の条件では、根は湿った側へ曲がった。遠心機で1Gの重力をかけた条件や地上では、根は重力の向きにまっすぐ伸びた。水分屈性と重力屈性が、オーキシンの動きで競い合っているらしい[15]。
歩かない植物は、体を伸ばして探す。ただ、伸びた先にしか届かない。食べに来る動物からは、逃げられない。
5. たべられたら、どうなるの?
5. 食べられる前提の体
5. 葉の再生と、食害で出るにおい ── 食べられても生きる体
しょくぶつは にげられない。だから、たべられる ことを ぜんぶは ふせがない ものが いる。たべられても だいじょうぶな からだに なって いるんだ。
たとえば しばふや くさは、そだつ ところ(せいちょうてん)が、じめんの ちかくに ある。くさかりで うえが なくなっても、また のびる[16]。
むしに たべられた はっぱが、においを 出す ことも ある。やせいの タバコの なかまで、そのにおいが、むしの たまごを たべる むしを よぶ という けっかが でた[17]。「はなして いる」と よぶ 人も いる。でも、においを 出した くさが、だれかに つたえる つもりなのかは、この じっけんでは わからない。
植物は逃げられない。だから、食べられるのを全部ふせぐのではなく、食べられても平気な体になっているものがいる。
たとえばイネ科の草は、成長のもとになる部分(成長点)が地面のすぐ近くにある。草刈りや草食動物の歯が届いても、この部分が残っていれば、葉はまた伸びる[16]。芝生が刈っても伸びるのは、このためだ。
においを使う植物もいる。野生のタバコの仲間で、虫に食べられた株が出すにおいの成分は、その虫の卵を食べる虫を呼び、蛾の産卵を減らした。野外実験の結果から、においを出せば、食べる虫の数を9割以上へらせる可能性がある、という見積もりも出た[17]。
これを「植物が助けを呼んでいる」「話している」と言う人もいる。ただこの実験からは、においを出した株が、だれかに伝えるつもりで出しているのかは分からない。分かるのは、出た結果として、食べられにくくなった、というところまでだ。
逃げられない植物は、食べられるのを全部ふせぐのではなく、食べられても平気な体を持つものがいる。
イネ科の草の成長点(成長のもとになる部分)は、生育の初期には地表近くにあり、草刈り機の刃や草食動物の歯が届かない。この部分が残っていれば、失った葉は再生する[16]。オレゴン州立大学の牧草の資料は、この位置のおかげで、牧草は季節中に何度も再生できると説明している。
化学的な手段もある。Kessler と Baldwin(2001)は、野外の野生タバコの仲間(Nicotiana attenuata)で、食害を受けた株が出す揮発性成分を調べた。成分のうち3種は、昆虫の卵を食べる捕食者に食べられる率を上げ、うち1種と混合物は蛾の産卵を減らした。においを出す株は、食害する虫の数を90%以上へらせる、と見積もられた[17]。
この結果は、しばしば「植物が助けを呼んでいる」「植物どうしが話している」と言い換えられる。ただ、この実験が示したのは、食害で出るにおいが、捕食者を呼び、産卵を減らして、結果として食害が減る、ということだ。においを出す株が、だれかに何かを伝える「つもり」があるのかは、実験からは決まらない。
6. うごけない しょくぶつは、こどもを たびに 出す
6. 動けない植物は、タネを旅に出す
6. 種子散布 ── 動けない親のかわりに、タネが動く
あきの さんぽで、ようふくに ちいさな たねが いっぱい ついて きた ことは ないかな。「ひっつきむし」と よばれる、どうぶつの けや ふくに くっついて はこばれる たねだ。
しょくぶつは、一どね を はると、そこから うごけない。だから、たねを とおくへ はこぶ くふうを して いる[18]。はこびかたは、5つに わけられる。
- かぜに のる(タンポポ)
- どうぶつの けに つく(ひっつきむし)
- みずに ながれる
- じぶんで はじけて とばす
- おちる(ドングリ)[18]
スイスの ジョルジュ・デ・メストラルは、いぬの けに くっついた ごぼうの みを 見て、めんファスナー(マジックテープ)を おもいついた、と つたえられて いる[20]。
フジツボも、こどもの ときだけ うみを ただよって、おとなに なると うごかない[21]。うごかない いきものは、こどもの じきに たびを する ことが あるようだ。リスが うめた クルミも、クルミの 木から 見れば、たねの たびだ。
秋の散歩で、服にたくさんの小さなタネがついてきたことはないだろうか。ひっつきむしと呼ばれる、動物の毛や服にくっついて運ばれるタネだ。
千葉県立中央博物館のページは、「植物は一度根を張った場所から動けない」ので、タネを遠くに散らす工夫をする、と紹介する。散らし方は、風、動物、水、自動(自分ではじく)、重力(落ちる)の5つだ。動物のなかには、ひっつきむしのようにくっつく型と、果実を食べて運ぶ型がある[18][19]。
ひっつきむしには、有名な話がある。スイスの技術者ジョルジュ・デ・メストラルが、犬の毛と自分の服にくっついた野生のゴボウの実を顕微鏡で見て、面ファスナー(マジックテープ)のヒントにした、と伝えられる。1955年に特許を取った[20]。
動かない暮らしと、旅をする子ども。この組み合わせは、植物だけではない。フジツボは、幼生のあいだはプランクトンとして海を漂い、成体になると固着して動かない[21]。リスが埋めたクルミも、クルミの木から見れば、タネの旅になる。
秋の散歩で、服にタネがつくことがある。いわゆる「ひっつきむし」で、動物の体にくっついて運ばれるタネだ。
千葉県立中央博物館のデジタル展示は、「植物は一度根を張った場所から動くことができない」ので、タネを遠くへ散らす工夫がある、と説明し、散布のしかたを5つに分けている。風、動物、水、自動(果実が自らはじける)、重力(ドングリのように下へ落ちる)だ[18]。東北大学植物園の解説も、動物散布に、体や毛に付着するものと、食べられて運ばれるものを含めている[19]。
ひっつきむしから生まれた製品が面ファスナーだ。スイスのジョルジュ・デ・メストラルが、犬の毛と自分の服についた野生ゴボウの実を顕微鏡で観察し、ヒントにしたとされる。1955年に特許を取った[20]。年や場面については資料によって書き方が分かれるので、ここでは「そのように伝えられている」までにとどめる。
動かない暮らしと、旅をする子ども、という組み合わせは、植物だけの話でもない。フジツボの幼生はプランクトンとして海を漂い、やがて岩や漂流物に付着して、以後は動かない[21]。リスが埋めたクルミのように、動物がタネを運ぶ例も、植物側から見れば散布のしくみになる。
7. おもさで くらべると、うごかない ほうが おおい?
7. 重さで見ると、「動かない側」が多数派
7. 生物量の8割は植物 ── 動かない生き方は弱いのか
ちきゅうの いきものを、おもさで くらべた けんきゅうが ある。からだを つくる もとの「たんそ」の おもさに して、ぜんぶで 5500おくトン ぐらい。そのうち、しょくぶつは 4500おくトン。どうぶつは 20おくトンぐらいだ[22]。
おもさで くらべると、あるかない ほうが ずっと おおいんだ。「うごかない」は、よわい からでは なくて、ひとつの つよい くらしかた なのかも しれない。
では、しょくぶつは かんがえて いるのかな。これは、けんきゅうする 人の あいだでも いけんが わかれて いる。しょくぶつには、のうの ような ところは ない、と いう 人が いる[23]。
この もんだいを、たのしく かいた ほんも ある。いなが えいよう さんの『しょくぶつは なぜ うごかないのか』だ[25]。
地球の生き物を、炭素の重さにして数えた研究がある。全部で約5500億トンのうち、植物が約4500億トン、動物は約20億トン。植物が全体の8割ほどを占め、動物は0.4%ほどだ[22]。
重さで見れば、動かない側のほうが圧倒的に多い。「動かない」は弱さというより、ひとつの成功した暮らし方だと見ることもできる。
では、動かない植物は考えるのか。この問いは、研究者の間でも見方が分かれる。「植物には脳も神経もなく、意識はない」と主張する論文がある[23]。日本植物生理学会のアドバイザーは、経験によって反応が長く変わることを「学習」と呼ぶなら植物にも学習はあるが、犬のような条件反射は、脳のような高次中枢がないのでできないと答えている[24]。
この問いに興味がわいたら、稲垣栄洋『植物はなぜ動かないのか』(ちくまプリマー新書)が、「弱くて強い」という言い方で、植物の暮らしを読みやすく書いている[25]。
Bar-On らの2018年の推計は、地球の生物量を炭素換算で約5500億トンとし、そのうち植物が約4500億トン(約8割)、動物は約20億トン(約0.4%)と見積もった[22]。動かない側が、生物量では圧倒的に多い。歩かないことは、少なくとも「不利で滅びやすい生き方」とは言えない。
では、動かない植物は「考える」のか。ここは見方が割れている。Taiz らは2019年の意見論文で、植物には神経も脳もなく、意識を持つ可能性は実質的にないと主張した。ただし、これは一方の立場の論文で、反対の立場の研究者もいる[23]。日本植物生理学会のサイエンスアドバイザーは、経験によって反応が長く変わることを「学習」と定義すれば植物にも学習能力はあるが、条件づけのような反応は、高次中枢がないのでできない、と答えている[24]。
「動かない生き方は弱いのか」を、一般向けにたどった本もある。稲垣栄洋『植物はなぜ動かないのか ── 弱くて強い植物のはなし』(ちくまプリマー新書、2016年)は、第1章がこの問いで、防御や雑草の話へと続く[25]。
8. じぶんでも たしかめて みよう
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
スーパーで うって いる かいわれだいこんを、いれものごと まどぎわに おく。おうちの 人と いっしょに、あさと ゆうがたに しゃしんを とろう。
つぎに、いれものを ぐるっと はんたいに まわす。なん じかんで、また ひかりの ほうへ むきなおるかな。ダーウィンも、ゆっくりした うごきを、てんで つないで しらべた。
「これ、どうして?」を、しょくぶつの けんきゅうを して いる 人に きく ことも できる。日本植物生理学会の「みんなのひろば」だ[26]。
かいわれ大根を、容器ごと窓ぎわに置く。朝と夕方に写真を撮り、向きの変化を比べる。次に、容器を180度回して、また光のほうへ向き直るまでの時間を測る。ダーウィンがガラス板に点を打ったように、ゆっくりした動きを、記録にして見えるようにする。
疑問が残ったら、日本植物生理学会の「みんなのひろば」に質問できる[26]。過去の回答も読める。宿題やレポートの答えを求める質問は受け付けていないので、自分の疑問として書く。
ダーウィンの本は、英語だが、Project Gutenberg で全文が無料で読める。図(線の絵)は、見るだけでも楽しい[1]。
かいわれ大根を、容器ごと窓ぎわに置き、朝と夕方に同じ位置から写真を撮る。茎が光のほうへ傾く様子を、角度で比べられる。次に、容器を180度回して、光のほうへ向き直るまでの時間を測る。時間は、材料や明るさで変わる。何度か測って、ばらつきも見てみるとよい。これは、偏差成長の速さを自分の手で測る、ダーウィン流の記録になる。
疑問が残ったら、日本植物生理学会の「みんなのひろば」に質問できる[26]。過去のQ&Aは、この記事の出典にもなった。宿題・レポートや、栽培技術・植物の名前調べは対象外なので、自分の観察をもとにした疑問にする。
読み比べるなら、Darwin の原著(Project Gutenberg で全文が読める)[1]と、Atamian ら(2016)の Science 論文[2]を並べてみる。140年以上の時間をおいて、同じ「植物の動き」を、片方は糸と点で、もう片方は遺伝子と体内時計で調べている。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本植物生理学会・気象庁・JAXA・千葉県立中央博物館・東北大学植物園・東京大学大気海洋研究所・海洋研究開発機構・筑摩書房は公的機関・学会・出版社の資料、Darwin・Atamianら・Forterreら・Sarkarら・Lintnerovaら・Dittmer・Morohashiら・Kesslerら・Bar-Onら・Taizらは著作・学術論文、オレゴン州立大学は大学の教育資料、swissinfo・つくばサイエンスニュースは報道記事です。
- Darwin, C. (1880) “The Power of Movement in Plants.” London: John Murray(息子 Francis の助力による)。 https://www.gutenberg.org/ebooks/5605 (ガラス糸と点で芽の動きを写す方法、円や楕円を描く動き)
- Atamian, H.S. ほか (2016) “Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits.” Science 353(6299): 587–590. https://doi.org/10.1126/science.aaf9793 (若いヒマワリの太陽追跡と夜の戻り、成熟株の東向き、茎の東西の交互の伸び)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「植物の屈性」(酒井達也、新潟大学、2022年7月29日回答)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5416 (光屈性は光側と陰側の成長差=偏差成長で起こる)
- JAXA 有人宇宙技術部門 FAQ「無重力で、勝手な方向に伸びようとする茎や根を、決まった方向に伸ばすには、どうすればよいのでしょうか」。 https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000744.html (オーキシンが光と反対側へ移り、茎は光のほうへ曲がる)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「閉じたオジギソウがゆっくり開く理由+明るさの見分け方」。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3136 (葉枕の細胞から先にイオン、続いて水が出る。開くにはイオンを戻すエネルギーが要る)
- つくばサイエンスニュース「オジギソウの葉を開閉させる細胞のしくみを発見!!」(2023)。 つくばサイエンスニュース(オジギソウの記事) (触れてから数秒のうちに葉が折りたたまれる)
- Forterre, Y. ほか (2005) “How the Venus flytrap snaps.” Nature 433: 421–425. https://doi.org/10.1038/nature03185 (ハエトリグサの葉は約100ミリ秒で閉じる。snap-buckling の不安定)
- 気象庁「温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)温室効果ガス年報 第21号」(2025年10月16日発表)。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2510/16a/GHG_Bulletin_20251016.html (2024年の二酸化炭素の世界平均濃度 423.9ppm)
- Sarkar, P., Bosneaga, E., Auer, M. (2009) “Plant cell walls throughout evolution: towards a molecular understanding of their design principles.” Journal of Experimental Botany 60(13): 3615–3635. https://academic.oup.com/jxb/article/60/13/3615/533649 (独立栄養の植物は移動のしくみを進化させなかったという説明、細胞壁の役割)
- Lintnerova, E. ほか (2025) “Plant-like heliotropism in a photosymbiotic animal.” Journal of Experimental Biology 228(3): JEB247651. https://journals.biologists.com/jeb/article/228/3/JEB247651/365634/Plant-like-heliotropism-in-a-photosymbiotic-animal (共生藻を持つイソギンチャクが太陽を追う。藻を失うと見られない)
- 東京大学大気海洋研究所 国際沿岸海洋研究センター「カメフジツボ」。 https://www.icrc.aori.u-tokyo.ac.jp/archipelago_Kamefuzitsubo.html (蔓脚を手招きするように動かしてプランクトンを捕らえる)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「根の働きについて」(今関英雅、2007年12月17日回答)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1485 (根毛での吸収、地上部の固定・貯蔵・通導)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「気孔での二酸化炭素吸収・酸素の吸収と水蒸気の蒸散について」(木下俊則、2014年12月9日回答)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3188 (気孔でのガス交換は拡散。回答は、気孔が1平方ミリメートルあたり100個以上ある例を挙げている)
- Dittmer, H.J. (1937) “A quantitative study of the roots and root hairs of a winter rye plant (Secale cereale).” American Journal of Botany 24(7): 417–420. https://doi.org/10.1002/j.1537-2197.1937.tb09121.x (冬ライ麦1株の根の本数・全長・根毛の見積もり。数値は本論文を紹介した Frontiers in Plant Science 2019 の総説などによる)
- Morohashi, K. ほか (2017) “Gravitropism interferes with hydrotropism via counteracting auxin dynamics in cucumber roots: clinorotation and spaceflight experiments.” New Phytologist 215: 1476–1489. https://doi.org/10.1111/nph.14689 (宇宙ステーションでのキュウリの根の水分屈性)
- Oregon State University, Forage Information System「Leaf Formation」。 https://forages.oregonstate.edu/regrowth/developmental-phases/vegetative-phase/leaf-formation (牧草の成長点が地表近くにあり、何度も再生できる)
- Kessler, A., Baldwin, I.T. (2001) “Defensive function of herbivore-induced plant volatile emissions in nature.” Science 291(5511): 2141–2144. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11251117/ (野生タバコの仲間で、食害で出る揮発性成分が捕食者を呼び、産卵を減らす)
- 千葉県立中央博物館 デジタルミュージアム「タネの大冒険」。 https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/seedsquest/index.htm (タネの散布の5つの方法)
- 東北大学植物園(青葉山)「種子散布型」。 https://web.tohoku.ac.jp/garden/aobayama/23-seed-dispersal.html (風・水・動物・自動・重力の散布型)
- swissinfo.ch「面ファスナーはスイスメイド」。 swissinfo.ch(面ファスナーの記事) (デ・メストラルの観察と1955年の特許。年や場面は資料により書き方が分かれる)
- 海洋研究開発機構(JAMSTEC)BASE「福徳岡ノ場の噴火 ── 付着生物から漂流経路の逆追跡の可能性」。 https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20211202/ (フジツボは幼生期にプランクトンとして漂い、付着後はその場にとどまる)
- Bar-On, Y.M., Phillips, R., Milo, R. (2018) “The biomass distribution on Earth.” PNAS 115(25): 6506–6511. https://doi.org/10.1073/pnas.1711842115 (地球の生物量は炭素換算で約5500億トン。植物約4500億トン、動物約20億トン)
- Taiz, L. ほか (2019) “Plants neither possess nor require consciousness.” Trends in Plant Science 24(8): 677–687. https://doi.org/10.1016/j.tplants.2019.05.008 (植物に意識はないとする意見論文。これに反対する立場もある)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「植物は学習するのか」(佐藤公行、2023年2月15日回答)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5566 (植物の「学習」の定義、条件づけができない理由)
- 稲垣栄洋『植物はなぜ動かないのか ── 弱くて強い植物のはなし』ちくまプリマー新書、筑摩書房 (2016)。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480689573/ (この問いを扱った一般向けの本。目次の確認のみ)
- 日本植物生理学会 みんなのひろば「質問する(申請フォーム)」。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/question.html (一般の人の質問を受け付ける窓口。宿題・栽培技術などは対象外)
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