1. ふうりんの おとを すずしい と かんじる ひとは、どれくらい いるの?
1. 「涼しい」と感じる人は、10人に4人ほど
1. 風鈴の音への反応 ── 7618人のアンケート(2019年)
ふうりんの おとを きいて、「すずしい」と おもう ひとは、どれくらい いるのでしょうか。
2019ねんの なつに、7618にんに きいた アンケートが あります[1]。「すずしい」と こたえた ひとは、10にんの うち 4にん ぐらいでした。
「きれいな おと」と こたえた ひとは、もっと おおくて、10にんの うち 5にん ぐらいです。
おとしよりの ひとほど、「すずしい」と こたえる ひとが おおい かたむきも ありました。みんなが おなじ ように かんじる わけでは なさそうです。
ウェザーニュースは2019年8月2日と3日に、風鈴の音の感じ方をたずねるアンケートを行い、7618人が答えました[1]。
「涼しい」と感じる人は約42%、「キレイ」と感じる人は49%でした。涼しさより、きれいな音として聞く人のほうが少し多かったことになります。年代が高いほど「涼しい」と答える割合が増える傾向も出ています。
これは実験ではなく、答えた人の感想の集計です。それでも、涼しさの感じ方には個人差があり、年齢や経験が関わっているかもしれない、というヒントになります。
ウェザーニュースが2019年8月2〜3日に実施した調査(回答7618人)では、風鈴の音を「涼しい」と感じる人が約42%、「キレイ」と感じる人が49%だった。年代が高いほど「涼しい」と答える割合が増える傾向もあった[1]。
これは質問への自己申告であり、気温や体感を測った実験ではない。回答者の集まり方にも偏りがありうる。それでも、風鈴に涼しさを結びつける感覚が全員にあるわけではなく、年代差があるという点は、以降の章の「経験が関わるのか」という問いの入口になる。
2. ふうりんは、どうやって なるの?
2. 風鈴が鳴るしくみ ── 短冊は弱い風のための工夫
2. 風鈴の構造 ── 舌と短冊、弱い風でも鳴らす仕組み
ふうりんを よく 見ると、かねのような かたちの ほんたいの なかに、ちいさな 舌が ぶらさがって います。
その 舌に、短冊という ほそい かみが むすんで あります[3]。かぜが ふくと、短冊が ゆれます。舌が ほんたいに あたって、ちりん、と なります。
かぜが よわくても なるように、かみを つけて あるのです。ふうりんの おとは、かぜが ふいて いる、という おしらせです。
たとえば、ふうりんは かぜの おてがみの ようです。ただし ほんとうは、おてがみが とどいても、きおんが さがる わけでは ありません。
風鈴は、釣り鐘のような形の本体の内側に「舌」がぶら下がり、舌に結んだ「短冊」が風を受けて揺れることで、舌が本体に当たって鳴ります。短冊は、弱い風でも音が出るようにするための部品だと説明されています[3]。
つまり風鈴の音は、「いま風が吹いている」という合図です。風が吹くと、涼しく感じることがあります。風鈴の音と涼しさが頭の中で結びつくのは、自然な流れかもしれません。
手紙にたとえるなら、風鈴は風からの知らせです。ただし、知らせが届いても、気温そのものが下がるわけではありません。
風鈴は、鐘状の本体、内側の舌、舌に結んだ短冊から成る。短冊が風を受けて揺れ、舌が本体に当たって鳴る。短冊は、微風でも鳴るようにするための構造とされる[3]。
音は風の存在を知らせる信号として働くため、風による体感温度の低下と経験的に結びつきやすい、と考えられる(この点を直接検証した資料は今回の調べでは扱っていない)。音が気温そのものを変えるわけではない点は、後の章の実験でも前提になる。
3. むかしの ひとは、ふうりんを なにに つかったの?
3. 占いの道具から、夏の涼しさの飾りへ
3. 風鈴の由来 ── 占風鐸から江戸のガラス風鈴まで
ふうりんの ごせんぞは、いまから 2000ねんぐらい まえの ちゅうごくに あった、「せんふうたく」と いわれます[2]。
たけばやしに つるして、かぜの むきや おとの ひびきかたで、いい ことが おこるか どうかを うらなったと いいます。
その あと、おてらの のきに かざられ、わるい ものを ふせぐ おまもりに なったと いわれます。
いまの ように、なつの すずしさと むすびついたのは、えどじだいの ことだと される せつが あります[3]。ガラスの ふうりんは、ながさきから えどに つたわったと いわれます[2]。
風鈴の原型は、約2000年前の中国で竹林に下げられた「占風鐸」だといわれます。風の向きや音の鳴り方から、物事の吉凶を占ったそうです[2]。
仏教とともに日本に伝わり、寺の軒先に魔除けとして下げられたとされます。江戸時代になると、風鈴が夏に涼しさを与えるものとして見られるようになった、という説明もあります。音だけでなく、風に揺れる短冊の見た目も涼しさを感じさせたようです[3]。
ガラスの風鈴は、江戸時代に長崎から江戸に伝わったとされ、町に出回るのは1800年ごろからです。当初は高価だったと伝えられます[2]。これらは業者・自治体の説明や二次資料によるもので、古い文献で確かめられた部分は限られます。
4. おとで、ほんとうに すずしく かんじるか しらべた けんきゅうは あるの?
4. 京都府立大学の実験 ── 風鈴の音と色を組み合わせて
4. 環境音と色の温度感への影響 ── 京都府立大学(2002〜2004年度)
にほんの だいがくで、ふうりんの おとを つかった じっけんが ありました。あつめられた ひとたちに、いろいろな おとや いろを かんじて もらいました[4]。
すこし あつい へやで ふうりんの おとを きくと、すずしく、または、こころよく かんじる ひとが いました。
いろも えいきょうしました。あかい いろは あたたかく、あおい いろは すずしく かんじたそうです。
でも、これは「そう かんじた」と いう こたえです。へやの おんどが さがったのでは ありません。
京都府立大学の松原直樹さんらは、住宅の省エネに役立てる目的の研究(2002〜2004年度)で、音や色が温度の感じ方に与える影響を調べました。協力した人たちに、いろいろな環境音や色の条件で部屋にいてもらい、感じ方を答えてもらう実験です[4]。
報告によると、中立より高めの温度のとき、環境音の「風鈴」は、参加者を涼しく、または快適に感じさせました。この効果は、灰色の条件で大きく出たとされています。
色の影響も確かめられました。暖色は暖かく、寒色は涼しく感じさせ、色と温度の感じ方を結びつける説と合う結果でした。ただし、これは「涼しく感じた」という感想で、実際の温度が下がったという結果ではありません。効果の大きさを示す数字は、参照した要旨には載っていません。
5. ひとは、おとで おんどを ききわけて いるの?
5. 水を注ぐ音で、熱い湯と冷たい水を聞き分ける
5. 音からの温度知覚 ── 注水音の研究(Frontiers in Psychology, 2024)
おとで おんどが わかる、と いう けんきゅうも あります。コップに ゆや みずを そそぐ おとを きいて、あつい ゆか つめたい みずかを あてる ものです[5]。
ひとは、ある ていど あてる ことが できました。でも、じぶんに その ちからが ある ことには、たいてい きづいて いません。
この ちからは、いままで せいかつして きた けいけんで、みについたと かんがえられて います。
ふうりんも、なつに なるたび きいて きた おとです。けいけんが かんけい して いるのかも しれません。ただし、ふうりんの けんきゅうでは ありません。
2024年に、「音から温度を知る力」を調べた論文が発表されました[5]。注がれる水の音だけで、熱い湯と冷たい水をある程度聞き分けられる、という内容です。
面白いのは、多くの人が自分にその力があることに気づいていない点です。研究者たちは、これは長い生活の中の経験で身につくのではないかと考えています。
風鈴の音についても、夏のたびに聞いてきた経験が涼しさの感じ方に関わっているのかもしれません。ただし、この研究は水の音の話で、風鈴を調べたものではありません。風鈴への当てはめは、考え方のヒントにとどまります。
Wengerらの論文(Frontiers in Psychology, 2024)は、注がれる水の音だけで熱い湯と冷たい水をある程度聞き分けられること、ただし多くの人はその能力に気づいていないことを報告している。この能力は生涯の経験を通じて獲得される、と考えられている[5]。
この研究は水の音を扱い、風鈴は対象外である。ただ、1章の年代差(高い年代ほど涼しいと答える割合が増える傾向)と合わせて、「音と温度の連想は学習される部分がある」という仮説の材料にはなる。因果を示した資料は、今回の調べには含まれない。
6. おとで かんじる すずしさは、どれくらい おおきいの?
6. 「感じ方」は大きく変わっても、体感温度は約0.5℃
6. 音による温度錯覚の大きさ ── VR実験の結果(2025年)
2025ねんの けんきゅうでは、VRと いう そうちを つかって、おとや いろが おんどの かんじかたに どれくらい えいきょうするかを しらべました[6]。
おとや いろで、「あつい」「すずしい」と いう はんだんは、おおきく かわりました。
でも、じっさいに からだで かんじた おんどの ちがいは、0.5ど ぐらいと ちいさかったそうです。
この じっけんは、ふうりんを つかった ものでは ありません。ふうりんで おなじ ことが おきるかは、まだ わかって いません。けれども、おとや いろで かんじかたが かわる ことは たしかめられて いて、きもちを ほっと させて くれる かもしれません。
2025年に公開されたVRの実験(20人と24人の2つの実験)では、音や色の手がかりが、温度についての主観的な判断を大きく変えました[6]。
一方、VRの実験では、音や色による錯覚の効果は、実際に感じられた温度で約±0.5℃と小さく、「暑い・寒い」の評価と一致しないこともありました。音の手がかりは、見た目の情報の代わりや補助になりうる、とも書かれています。
この論文は査読前のプレプリントで、風鈴の実験でもありません。風鈴で同じ効果があるかは分かっていません。それでも、「音で涼しく感じる」ことと「実際に涼しくなる」ことは分けて考える必要がある、という参考になります。0.5℃は、風鈴で気温が0.5℃下がるという意味ではありません。
Weissらの実験(arXiv, 2025、プレプリント。N=20とN=24)は、VR内で音や色の手がかりを与え、温度の感じ方を測った。抽象的な評価は手がかりで大きく動いたが、音や色による錯覚の、実際に感じた温度への効果は約±0.5℃と小さかった。温度の評価と、感じた温度の変化は一貫して一致しなかった。音の手がかりは視覚の代替・補助になりうるとされる[6]。
風鈴を扱った実験ではなく、風鈴で同じ効果があるかは分かっていない。査読も経ていない点にも注意が要る。それでも、「涼しいと判断する」ことと「体が涼しく感じる」ことが同じではない、という区別を与える。ここまでの資料から、風鈴の音が室温を下げるという根拠は見つからず、確かなのは、涼しさの感じ方が音や色、経験の影響を受けうるという範囲にとどまる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること:いえの なかで、「すずしい」と おもう おとを、3つ さがして みましょう。たとえば、コップを スプーンで ちいさく たたく おとや、みずを ながす おとです。
ききながら、「すずしさ」を 0から 5の てんすうで きめて、メモに かきます。おんどけいが あれば、おんども 見て、かわって いないか たしかめましょう。
おゆを つかう ときは、やけどに ちゅういして、おうちの ひとと いっしょに しましょう。
今日できること:家の中で、「涼しい」と思う音を3つ探し、聞いたときの涼しさを0〜5の点数でメモしてみましょう。温度計があれば、聞く前と後の温度も見ます。音で感じ方が変わっても、温度は変わっていないことが確かめられます。
家族に頼んで、別の部屋で水を注いでもらい、音だけで「冷たい水」か「ぬるい水」かを当てるのも面白い遊びです。熱いお湯は使わないでください。
資料を読むなら:ウェザーニュースの記事と、江戸川区の江戸風鈴のページが、日本語で読めます。
今日できること:家の中で「涼しい」と感じる音を3つ選び、同じ時刻・同じ部屋で0〜5点の主観評価を数日つける。温度計があれば室温も記録し、評価と室温が連動しているかを見る。音以外の条件(窓の開け閉め、時間帯)をそろえるほど、比較しやすくなる。
資料を読むなら:京都府立大学の課題(KAKEN 14580123)の要旨、Frontiers in Psychology 2024の論文(Wengerら)、arXivのVR実験(Weissら)。前の2つは要旨の範囲で確認した資料である。
まだ分からないこと:風鈴の音で皮膚温が下がるという話も見かけるが、実験者と出典を確認できなかった。日本人に特有の反応かどうかも、資料から言えない。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料と、その用途です。
- ウェザーニュース「風鈴と涼しさ」の記事(2019年) https://weathernews.jp/s/topics/201908/200085/ (アンケート結果)
- 江戸川区「江戸風鈴(篠原風鈴本舗)」 https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e032/shigotosangyo/jigyosha_oen/dento/kougeisya/shinohara/edofurin.html (由来・ガラス風鈴)
- Wikipedia「Fūrin」 https://en.wikipedia.org/wiki/F%C5%ABrin (しくみ・涼感の歴史。二次資料)
- KAKEN 研究課題14580123(松原直樹) https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-14580123 (風鈴の音と色の実験)
- Wenger et al. "Hearing temperatures", Frontiers in Psychology (2024) https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2024.1353490/full (水の音と温度)
- Weiss et al. "Quantifying the Effect of Thermal Illusions in VR" (arXiv, 2025) https://arxiv.org/abs/2509.01609 (VR実験。プレプリント)
なおした ところ
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