1. けむりを つかった しけんでは、どれくらい へるの?
1. たばこの煙を使った試験では、どれくらい減るのか
1. JEMAの試験例 ── 運転時と自然減衰の差
くうき せいじょうきの しけんでは、へやに たばこの けむりを まんべんなく ひろげます。けむりの つぶは、0.1〜2.5マイクロメートルほどの いろいろな おおきさです[4]。
そして、きかいを うごかした ばあいと、なにも しない ばあいで、つぶの へりかたを くらべます。
あるしけんの れいでは、うごかした ほうが、ずっと はやく へりました。けいさんすると、10ぷんで、もとの 1わ ちょっとまで さがる ぐらいです。なにも しないと、10ぷんたっても、ほんの すこししか へりません。ただし これは 1つの きかいの、1かいの れいです。
フィルターを くうきが とおるのは いっしゅんです。それなのに、どうして こんなに へるのでしょう。
空気清浄機の試験では、部屋にたばこの煙を広げ、機械を動かしたときと、動かさないときの粒の減り方を比べます。煙の粒は、直径0.1〜2.5マイクロメートルの範囲です[4]。1マイクロメートルは0.001ミリで、PM2.5は、髪の毛の太さの30分の1ほどの粒をさします[7]。
JEMAの資料にある試験例は、室内31.5m³です。グラフの近似式から計算すると、運転したときは10分で濃度が約12%まで下がります。何もしない場合は、10分で3%ほど減るだけです。自然減衰側の近似はあまり精度がよくない粗い式で、1機種の1回の例にすぎません[4]。
それでも、動かすと減り方が大きく変わることは分かります。では、一瞬で通りぬけるフィルターが、どうやって部屋全体の粒を減らしているのでしょうか。
試験は、部屋にたばこの煙を広げ、粒子濃度の時間変化を、運転時と自然減衰で比べるものだ。JEMAは煙の粒子径を0.1〜2.5μmとし、PM2.5の指標にしている[4]。PM2.5は粒径2.5μm以下の粒子で、髪の毛の太さの約30分の1とされる[7]。
近似式は、運転時 y=97.561e^(−0.214x)、自然減衰 y=98.498e^(−0.003x)(x:分)である[4]。計算すると、運転時は10分で約12%(e^(−2.14)≒0.12)、自然減衰は10分で約97%(e^(−0.03)≒0.97)が残る。自然減衰側の当てはまりは粗い(R²=0.69)ため、「約70倍」は概算にとどまる。
差ははっきりしているが、フィルターの通過は一瞬である。1回で全部を捕集していないのに、なぜ部屋の濃度が下がるのかが次の問いになる。
2. いちどで ぜんぶ とれないのに、どうして へるの?
2. 何度も吸いこむから、部屋の粒が減っていく
2. 集じん能力は、集じん効率と処理風量の掛け算で決まる
おふろの みずを、ざるで すくって きれいに する ところを おもいうかべて ください。いちどで ぜんぶは のぞけません。でも、なんども すくえば、だんだん きれいに なります。
くうき せいじょうきも おなじです。へやの くうきを すいこんで、つぶを とって、また へやに もどします。これを なんども くりかえして、へやの つぶを へらします。ただし、ほんとうの きかいの なかは ざるでは ありません。
だから、つぶを つかまえる ちからと、くうきを たくさん すいこむ ちからの りょうほうが たいせつです[4]。
お風呂のお湯から、ごみを網ですくう場面を思い浮かべてください。1回ですくえる量は限られていても、何度もすくえば、だんだんきれいになります。空気清浄機も、部屋の空気を何度も吸いこんで、そのたびに粒を少しずつ取ることで、部屋全体の濃度を下げます。ただし、本物の機械の中は網ではなく、繊維のフィルターです。
JEMAの資料は、この力を「集じん能力=集じん効率×処理風量」と示しています[4]。効率が高くても風量が小さければ、空気が機械を通る回数が少なく、部屋の濃度はゆっくりしか下がりません。反対に、風量が大きくても、効率が低ければ、通っても粒が残ります。
アメリカ環境保護庁(EPA)が紹介するCADRという数値も、高いほど多くの粒を取り、広い場所に対応できるとされています。EPAの目安では、100平方フィート(約9.3m²)の部屋に最低CADR 65cfmです[6]。
では、「集じん効率」は、そもそもどうやって決まるのでしょうか。
JEMAは、集じん能力を「集じん効率×処理風量」の積で示す[4]。1回の通過で取れる割合(効率)と、単位時間に機械を通る空気の量(風量)が両方効くので、どちらか一方だけを見ても、部屋の濃度の下がり方は分からない。
フィルター方式は、風量を上げるほど目づまりしやすく、騒音・消費電力も増える。一方、電気集じん方式は目づまりしにくく大風量で運転しやすいが、オゾンなどの副生成物が出ることがある、という比較表がある[4]。
EPAのCADRも、同じ発想の数値である。CADRが高いほど多くの粒子を取り、広い場所に対応できるとされ、EPAの目安では、100平方フィート(約9.3m²)の部屋に最低CADR 65cfmである[6]。「空気を部屋で循環させて減らす」という説明は、この考え方から導いたもので、EPAの文章そのままではない。
そこで、効率の中身、つまり繊維が1回の通過でどう粒を捕まえるかを見る。
3. フィルターの あなより ちいさい つぶは、どう つかまえるの?
3. フィルターは「ふるい」ではなく、繊維に粒をくっつける
3. 捕集は穴の大小でなく、繊維への衝突・付着で決まる
フィルターは、ざるのように、あなの おおきさで えらんでいるのでは ありません。ほそい せんいが、あみのように からみ あって います。ここを くうきが とおる とき、つぶが せんいに ぶつかって くっつきます[2]。
たばこの けむりの ちいさな つぶは、くうきの ぶんしに ぶつかられて、ふらふらと ふるえるように うごきます。だから、せんいに ぶつかりやすく なります[2]。
フィルターの中では、細い繊維が何重にも重なっています。空気が通るときに、粒が繊維にぶつかって、くっつきます。穴より大きい粒だけを止める「ふるい」とは、しくみがちがいます[2]。
どうぶつかるかは、粒の大きさや空気の速さ、繊維の太さで変わります。大きい粒は、空気の流れに乗りきれずに繊維へ突っこむ(慣性)、または繊維のすぐそばを通ってふれる(さえぎり)ことで、つかまります。とても小さい粒は、空気の分子にぶつかられて不規則に動く(拡散)ので、繊維に当たりやすくなります。たばこの煙の0.1マイクロメートルほどの粒が、その例です[2]。
静電気を帯びた繊維を使うフィルターも広く使われます。静電気の力を借りると、空気が通りやすい(吸気抵抗の低い)ろ過材を作れます[3]。
すると、粒が小さいほど、フィルターを通りぬけやすくなるのでしょうか。
エアフィルターは、穴の大きさで選り分ける「ふるい」ではない。粒子は繊維に衝突すると付着して捕集される(内部ろ過)[2]。
捕集機構には、慣性・さえぎり・拡散(ブラウン運動による)があり、どれが支配的かは粒径・気流速度・繊維の太さで変わる[2]。たばこの煙のような粒径0.1μm程度の粒子は質量が小さく、ガス分子の衝突で不規則に動くので、拡散で繊維に当たりやすい[2]。
静電気を付加した繊維のフィルターも広く使われる。静電気力のおかげで吸気抵抗の低いろ過材を作れ、粒子が電荷を持たなくても影像力で捕集できる[3]。
捕集が機構の組み合わせで決まるなら、粒が小さいほど漏れやすいとは限らない。そこで、通りぬけやすい粒径を確かめる。
4. いちばん ちいさい つぶが、いちばん とおりやすいの?
4. いちばん通りぬけやすいのは、いちばん小さい粒ではない
4. 最も通過しやすい粒径(MPPS)とHEPAの0.3μm
じつは、いちばん ちいさい つぶが いちばん とおりやすい わけでは ありません。ふるえて せんいに ぶつかる ちいさい つぶも、いきおいで ぶつかる おおきい つぶも、つかまります。
すり ぬけやすいのは、そのまんなか あたりの おおきさです。あるしけんでは、およそ 0.22マイクロメートルでした[3]。
HEPAフィルターの きじゅんが 0.3マイクロメートルなのは、この とおりやすい おおきさの ちかくで しらべるからだと かんがえられます[1]。
大きい粒は慣性とさえぎりで、小さい粒は拡散で、それぞれ捕まります。粒が小さくなるほど漏れてくるわけではなく、両方の効果が弱くなる中間の大きさで、いちばん通りぬけやすくなります[3]。
ガラス繊維のろ過材の実測では、最も通りやすい粒径は約220ナノメートル(0.22マイクロメートル)でした。静電気を使ったフィルターの実測例では、約50ナノメートルでした[3]。この大きさは、フィルターの種類や空気の速さで変わります。0.2〜0.3マイクロメートルのあたりが、目安です[5]。
HEPAフィルターは、日本のJISで、定格流量で粒径0.3マイクロメートルの粒子に99.97%以上の捕集率をもち、初期圧力損失が245Pa以下のフィルターと定義されます[1]。0.3マイクロメートルは、この試験で使う粒の大きさです。粒の大きさごとの捕集率は、フィルターの種類や条件で変わります。
この99.97%は、フィルター1枚の値です。部屋全体で99.97%の粒が消える、という意味ではありません。
慣性は粒径・流速が大きいほど、拡散は粒径・流速が小さいほど効く。そのため、粒径が小さくなるほどフィルターを漏れる、という単純な関係にはならず、両方が弱まる中間の粒径で通過率が最大になる[3]。
実測では、ガラス繊維ろ過材の最も通過しやすい粒径は約220nm、静電フィルターでは約50nmだった[3]。0.3μmという値は固定の物理定数ではなく、素材や流速で動く。英語版Wikipediaも、MPPSより小さい側では拡散、大きい側では慣性衝突とさえぎりが支配的になるとまとめる[5]。
JISのHEPAは、定格流量で0.3μmの粒子に99.97%以上の捕集率をもち、初期圧力損失が245Pa以下と定義される[1]。0.3μmは試験に使う粒径であり、粒径ごとの捕集率はフィルターの種類や条件で変わる。
ただし99.97%はフィルター単体の値で、部屋全体の除去率ではない。部屋の濃度が下がる速さは、第2章の風量との積で決まる。
5. 「8じょうよう」は、どうやって きめて いるの?
5. 「適用床面積」は、30分で汚れを減らせる部屋の広さ
5. 適用床面積の決め方 ── JEM1467と自主基準の条件
くうき せいじょうきの はこに、「てきよう ゆかめんせき 8じょう」のように かいて あります。これは、きめられた しけんで、30ぷんで きれいに できる へやの ひろさの めやすです[4]。
てんじょうの たかさは 2.4メートルで けいさんします。ただし、しけんを した へやと、おうちの へやは ちがいます。めやすとして みて ください。
箱に書かれた「適用床面積」は、決められた粉じん濃度の汚れを30分できれいにできる、部屋の広さの目安です。天井の高さ2.4mで計算されます[4]。
規格(JEM1467)では、1時間に1回の自然換気を想定した条件で、粉じん濃度を建築物衛生法の基準まで30分で下げられる広さが基準です。数値の一例は、1.25mg/m³から0.15mg/m³への低下で、約12%まで減らすことになります。規格の細かい数値は「規格では」というくらいの強さで受けとってください[4]。
PM2.5については、JEMAの自主基準(2013年制定)があります。試験は、たばこの煙を使い、32m³(約8畳)の試験室に換算して、自然減衰に対して99%除去する時間が90分以内、という条件です[4]。90分は、この基準の条件で、製品の実際の時間ではありません。
試験室で測った値は、家の部屋でそのまま当てはまるとは限りません。JEMAの表示例にも、実使用空間の結果ではないと書かれています。では、機械の中には何が入っているのでしょう。
適用床面積は、規定の粉じん濃度の汚れを30分で清浄できる部屋の広さで、天井高2.4mで算出する[4]。JEM1467の条件は、自然換気回数1回/時で、粉じん濃度1.25mg/m³をビル衛生管理法の基準0.15mg/m³まで30分で下げられる広さとされる(約12%まで低下)[4]。
PM2.5については、JEMA自主基準HD-128(2013年制定)が、たばこの煙(粒子径0.1〜2.5μm)を指標に、JEM1467の集じん試験(試験室20〜32m³)と同じ条件で試験する。自然減衰に対して99%除去する時間を32m³(約8畳)に換算し、90分以内を条件とする[4]。90分は製品の実測時間ではなく、基準に合格する条件である。
0.1μm未満の粒子は除去の確認ができていない、と同資料に明記される[4]。試験は室内条件の再現であり、実際の部屋の結果とは限らない。この限界も含めて、機械の構成を見る。
6. きかいの なかには、なにが はいって いるの?
6. 機械の中は、ホコリ用・粒用・においの3段になっている
6. 代表的な構成 ── プレフィルター、静電フィルター、吸着剤
くうき せいじょうきの なかは、いくつもの そうに なって いる ものが おおいです。
はじめに、おおきな ホコリを とる フィルターが あります。つぎに、ちいさな かふんや カビの つぶを とる フィルターが ある ものも あります。さいごに、においを すいつける すみの ような ざいりょうが あります[4]。
ぜんぶの きかいが おなじ つくりでは ありません。ほかに、でんきを つかって ちりを あつめる ものも あります。
7. くうき せいじょうきに できない ことは?
7. 空気清浄機にできないこともある
7. 表示に書かれた限界
くうき せいじょうきの ひょうじには、できない ことも かいて あります。32りっぽうメートルの しめきった へやでの けっかで、ふつうの おうちの けっかでは ない こと。くうきの なかの ぜんぶの わるい ものを とれる わけでは ない ことです[4]。
アメリカの やくしょも、どんな きかいでも すべては とれないと いって います[6]。
だから、きかいだけに たよらず、まどを あけて くうきを いれかえる ことも たいせつです。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
おうちに くうき せいじょうきが あれば、はこや ほんたいの ひょうじを 見て みましょう。「てきよう ゆかめんせき」と「ふうりょう」が かいて あります。フィルターの せつめいも よんで みましょう。
出かけてできること
せつめいしょや カタログで、きしゅごとの ひょうじを くらべて みましょう。おなじ ひろさでも、ふうりょうが ちがうか どうか、さがして みてください。
こうしきの 情報
にほん でんき こうぎょうかいの ホームページに、くうき せいじょうきの せつめいが あります。
今日できること
家の空気清浄機の本体や説明書にある「適用床面積」「風量」の表示を見て、自分の部屋の広さと比べてみましょう。フィルターの説明書きに、プレフィルター・静電フィルター・脱臭フィルターの区別が書いてあるかも探してみてください。
出かけてできること
各社の取扱説明書やカタログで、機種ごとの適用床面積と風量を見比べると、面積の大きい機種ほど風量が大きいかどうかが確かめられます。
公式情報
日本電機工業会(JEMA)や、各機種の取扱説明書に、試験の条件や表示の注意が書かれています。
今日できること
家の空気清浄機の適用床面積・風量・脱臭方式の表示と、自分の部屋の広さ(畳数×天井高)を比べ、「適用床面積は天井高2.4mでの目安」という条件を、実際の部屋に当てはめて考える。
出かけてできること
各社の取扱説明書やカタログで、複数機種の風量と適用床面積の関係を見る。フィルター方式と電気集じん方式のような、方式の違いも表示から拾える。
公式情報
JEMA「空気清浄機によるPM2.5対策」や、環境省・厚生労働省の検討会資料(出典[2][3])を、日本語で読み、さらに読み、粒径ごとの実測値を探してみるのもよい(EPAは英語の資料)。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、JIS・粒径ごとの捕集の仕組みは公的機関の検討会資料、試験・構成・表示はJEMAの資料、CADRはEPAの資料を突き合わせた。通りやすい粒径の考え方はWikipediaを補助に使った。
- 家電Watch 用語解説「HEPAフィルター」 https://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word/2008/10/16/3037.html (HEPAの定義)
- 大谷吉生「粒子のろ過のメカニズムについて」環境省検討会資料5 https://www.env.go.jp/content/900484669.pdf (捕集の仕組み・ブラウン運動)
- 明星敏彦「エアフィルタによるナノ粒子の除去について」厚生労働省検討会資料3(2008年) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/05/dl/s0530-7d.pdf (最も通りやすい粒径・静電フィルター)
- 日本電機工業会「空気清浄機によるPM2.5対策」(在上海日本国総領事館掲載) 在上海日本国総領事館の掲載ページ (集じん能力・適用床面積・試験例・構成・表示の注記)
- HEPA(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/HEPA (MPPSの目安)
- U.S. EPA「Guide to Air Cleaners in the Home」 https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/guide-air-cleaners-home (CADR・限界)
- 宮城県「PM2.5情報」 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kankyo-t/pm2-5jouhou.html (PM2.5の大きさ)
なおした ところ
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