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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ビールの あわは、どうして すぐに きえないの?

炭酸水の泡はすぐ消えるのに、ビールの泡はなぜ残るのか

ビールの泡の仕組み ── 過飽和と気泡の膜、たんぱく質とイソフムロン、脂質による消泡

分野:技術

たんさんすいを コップに つぐと、あわは すぐに きえて しまいます。ところが ビールは、あわが しばらく のこって、うえに ふたを した ように なります。

この ちがいは、どこから くるのでしょうか。ビールの なかみを のぞく つもりで、いっしょに たどって みましょう。

炭酸水を注ぐと、細かい泡が立ちのぼり、しばらくするとしぼんでいきます。ビールも同じ炭酸ガスを含んでいるのに、泡がこんもり残り、ときには数分も居座ります。

泡の出はじめから、泡を長もちさせる麦芽とホップの働き、産総研とキリンの測定、泡が果たすふたの役目、油で泡が消える理由までを、資料をつき合わせて見ていきます。

ビールの泡は、炭酸ガスの気泡にたんぱく質・炭水化物・ホップ樹脂などがくっついてできている[1]。泡の膜には、麦芽由来のたんぱく質とホップ由来の苦味成分(イソフムロン)が並び、壊れにくくすると説明される[3][4]。

このメモでは、過飽和という不安定な状態から泡が生まれる過程、2018年の産総研とキリンによる表面測定[5]、泡のふたとしての役目、脂質が泡を壊す理由を、醸造団体・企業・公的機関・専門誌の資料を突き合わせて整理する。

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1. あわは どこから でて くるの?

1. 泡の正体は、閉じこめられた炭酸ガス

1. 過飽和状態 ── 泡ができる前提と、泡の核

ビールには、たんさんガスが ぎゅっと つめこまれて います。ふつうの みずに とける りょうよりも、ずっと おおく はいって いる、ふあんていな ようすだと いわれます[2]。

ふたを あけて コップに つぐと、そこから ガスが でたがって、あわに なります。グラスの ちいさな きずや、ういている ちいさな ごみが、あわの できはじめに なる ようです[2]。

あわの ほとんどは、この たんさんガスの つぶです[1]。では、おなじ ガスの はいった たんさんすいは、なぜ すぐに きえるのでしょうか。

水に溶ける量より多い

ビールには、ふつうの環境(大気圧)で水に溶かせる量よりも多い炭酸ガスが押しこめられています。日本ビアジャーナリスト協会の解説は、これをとても不安定な状態と表現しています[2]。これを過飽和といいます。

泡のはじまりの場所

栓を抜いて注ぐと、ガスは外へ出ようとします。泡ができはじめる場所には、グラスの傷や不純物、すでにできている微小な泡、ビールの中の不溶性の粒子などがあるとされます[2]。

泡を作るのは炭酸ガスの粒で、そこにビールの成分がくっついて泡になります[1]。ここまでは炭酸水と同じです。違いは、その泡が消えるかどうかにあります。

ビールには、大気圧下で水に含ませられる量を超える炭酸ガスが溶けており、過飽和の不安定な状態にあると説明される[2]。注ぐと、グラスの傷や不純物、あらかじめできた微小な気泡、不溶性粒子などを起点に気泡ができはじめる[2]。

キリンのFAQは、ビールの泡を、炭酸ガスの気泡にビール中のたんぱく質・炭水化物・ホップ樹脂などが付着したものと説明する[1]。気泡の発生そのものは炭酸水と共通で、差は気泡の寿命、つまり膜の側にある。溶存量の具体的な数値(ガスボリュームなど)は、参照した資料からは得ていない。

2. ガスの つぶを つつむ「まく」

2. 泡の一つ一つは、薄い液体の膜に包まれている

2. 気泡を囲む液膜と、界面活性剤としての働き

ビールの あわを、ひとつぶ ずつ おおきく してみたと します。ガスの つぶの まわりを、うすい えきたいの まくが ぐるりと つつんで います[2]。

この まくには、むぎの たんぱくしつと、ホップという くさの じゅしが ふくまれて います[2]。これらが はたらいて、ガスが ぬけるのを ふせぐと いわれます。

ホップは、ビールの にがみの もとに なる くさです。たんさんすいには、この まくを かためる ものが ほとんど ありません。

ガスの粒を囲む液体の膜

泡が長もちするのは、炭酸ガスの粒が、たんぱく質とホップ樹脂を含んだ液体の膜にぐるりと囲まれているからだ、と解説されています。これらが界面活性剤のように働いて、ガスが抜けるのを防ぐとされます[2]。

炭酸水やシャンパンとの違い

炭酸水にはこの膜を支える成分がほとんどなく、泡はすぐにしぼみます。シャンパンなどもたんぱく質が少ないため、ビールのような安定した泡の層はできにくいと説明されています[3]。泡が立たないわけではなく、泡の「層」が続きにくいという意味です。

日本ビアジャーナリスト協会は、泡を、たんぱく質とホップ樹脂を含む液体の膜に囲まれた炭酸ガスの粒の集まりとし、これらが界面活性剤のように働いてガスの散逸を防ぐと述べる[2]。

太陽化学の解説は、泡を包む物質は麦芽由来のたんぱく質とホップ由来の苦味成分イソフムロンだとする。シャンパンなどはたんぱく質が少なく、ビールのように安定な泡の層はできにくい[3]。これは泡が立たないという意味ではなく、層の持続の差を指している。

3. むぎと ホップが てを むすぶ

3. 麦芽のたんぱく質と、ホップの苦味成分の組み合わせ

3. たんぱく質とイソフムロンの複合体、IBUと泡持ち

むぎから できる たんぱくしつと、ホップの にがみの もとが、あわの まくの ひょうめんに ならんで、まくを じょうぶに します[3]。

ふくろに テープを ところどころ はると、やぶれにくく なります。あわの まくで おこるのは、それに すこし にて います。ただし ほんとうは、テープの ような ものが みえるのでは なく、めに 見えない ぶんしの はなしです。

にがみの つよい ビールほど、あわが もちやすいと いう せつめいも あります[4]。

二つの成分が組み合わさる

麦芽由来のたんぱく質と、ホップ由来の苦味成分イソフムロンは、複合体をつくって泡の膜の表面近くに並ぶとされています[3]。醸造の解説では、ホップ由来のイソα酸(イソフムロンのなかま)が、たんぱく質どうしを水素結合などで橋渡しして、膜を強くする、と説明されています[4]。

苦さと泡持ち

苦味の強さの指標(IBU)が高いほど、泡の安定は増すとされます[4]。苦味と泡の長持ちが、同じ成分の働きでつながっているのは、意外な組み合わせです。

なお、麦芽のたんぱく質は一種類ではなく、煮る温度などによっても性質が変わるといわれます。ここでは詳しい種類には立ち入りません。

太陽化学の解説では、麦芽由来のたんぱく質とホップ由来のイソフムロン(ホップのフムロンが麦汁の煮沸で変化した苦味成分)が複合体をつくり、泡膜の表層付近に並んで安定化に関わる[3]。

Brew Your Own の解説は、イソα酸(イソフムロン類)が麦芽たんぱく質を水素結合などで橋渡しして泡を強くするとし、IBUが高いほど泡の安定が増すと述べる[4]。ただし、これは醸造の実務家向け専門誌の解説であり、機構の細部は研究段階の説明を含む。

麦芽のたんぱく質の種類(プロテインZ、ホルデイン類、脂質輸送タンパク質1など)や、その加熱による変性の効果は、参照した資料の抜粋にとどまり、本文の主張には使っていない。

4. ひょうめんを じかに はかった けんきゅう

4. ビールの表面を直接測った、産総研とキリンの研究

4. 和周波発生(SFG)分光法による表面測定(2018年)

2018ねんに、けんきゅうしゃたちが、ビールの ひょうめんを じかに しらべる ほうほうで しらべました。ホップの ぶんしと たんぱくしつが、どちらも ひょうめんに いる ことが わかりました[5]。

ホップの ぶんしが ふえると、あわが のこる じかんも ながく なる、という きまりが 見つかりました[5]。ただし、これは いっしょに ふえた という はなしで、それだけが げんいんと きまった わけでは ありません。

表面を光で測る

産業技術総合研究所(産総研)とキリンは、和周波発生(SFG)分光法という方法で、ビールの表面を直接測りました。その結果、ホップ由来の分子とたんぱく質の両方が表面に存在することが確かめられました[5]。

ホップが増えると泡も長もち

ホップの添加量を増やすと、表面のホップ由来分子の信号も、泡の続く時間も増え、強い相関が見られたと報告されています[5]。相関であって、原因と結果まで証明したものではありません。

たんぱく質はゆるく結ぶ

同じ研究では、ホップ成分だけだと泡は壊れやすく、たんぱく質がホップ成分をゆるく結びつけることで、壊れにくい泡ができると説明されました。市販ビールに近いアルコール約5%の条件で、ホップ成分が液面に集まることも報告されています[6]。成果は2018年8月10日に『Chemistry Letters』に載りました[6]。

産総研とキリンは、和周波発生分光法(SFG分光法)で、ビール表面のホップ由来分子とたんぱく質の挙動を直接測定した[5]。表面に両者がともに存在すること、ホップ添加量が増えると表面のホップ由来分子の信号と泡の持続時間がともに増え、強い相関があったことが報告された[5]。相関は因果の証明ではない。

サイエンスポータルの記事は、ホップ成分だけでは泡は壊れやすく、たんぱく質がホップ成分をゆるく結びつけることで壊れにくい泡ができる、と研究の説明を伝える。アルコール約5%(市販ビール相当の条件)で、ホップ成分が液面に集まる。成果は2018年8月10日に『Chemistry Letters』に掲載された[6]。掲載号や著者などの書誌は、参照した資料からは確認していない。

5. あわは ビールの「ふた」

5. 泡はビールを守るふたになる

5. 泡の役割 ── 炭酸ガスの散逸と酸化の抑制

あわは、ただの かざりでは ありません。たんさんガスが にげたり、ビールが くうきに ふれて あじが おちたり するのを、ふせぐ ふたの やくめを して いると いわれます[1]。

ふたが ある ほうが、ビールは なかみを まもれます。あわが すぐに きえない ことには、その ため の いみが あると 考えられます。

ちなみに、ビールを そそぐ いきおいや、むきを かえると、あわの つぶの おおきさが かわる ことも しられて います[2]。

ガスと味を守る

キリンの説明では、泡は炭酸ガスが逃げたり、ビールが空気に触れて味が落ちたりするのを防ぐ、ふたの役割をしているとされます[1]。泡が長もちする意味が、ここにあります。

注ぎ方でも変わる

注ぐ勢いや角度、注ぎ口とグラスの距離によって、泡の粒の大きさ(質感)が変わります。流れが大きいと泡立ちやすい反面、粒は大きくなると解説されています[2]。どう注ぐのが良いかは好みが分かれるようで、ここでは決めません。

キリンのFAQは、泡は炭酸ガスの散逸と、ビールが空気に触れて味が落ちること(酸化などによる劣化)を防ぐ蓋の役割をしていると説明する[1]。

泡の質感は注ぎ方にも左右される。日本ビアジャーナリスト協会は、注ぐ勢い・角度・注ぎ口とグラスの距離で粒の大きさが変わり、流速・流量が大きいと泡立ちやすくなるが粒は大きくなる、と述べる[2]。最適な注ぎ方は好みによるところが大きく、ここでは論じない。

6. あぶらが つくと、あわが きえる

6. 泡の大敵は油

6. 脂質と過酸化物による泡膜の破壊

あわの まくは、あぶらが にがてです。あぶらが つくと、まくが やぶれて、あわが ひとつに くっつき、きえて しまいます[4]。

たとえば、くちべにや ポテトチップスの あぶらが ついた グラスでは、あわが はやく きえる ことが あると いわれます[4]。

これは、むぎと ホップが つくった じょうぶな まくが、あぶらには よわいと いう こと です。

膜を破る脂質

脂質(油)と、その過酸化物は水になじみにくい性質が強く、泡の膜を破って泡どうしを合体させ、泡を消してしまうと説明されています[4]。

口紅やポテトチップスの油が付いていると泡が早く消える、という例も挙げられています[4]。

苦味とたんぱく質でも防げない相手

ここまで見た、たんぱく質とホップの成分が作る丈夫な膜も、油には弱いようです。泡が長もちする条件は、泡の中身だけでなく、グラスの状態にもかかっているといえます。

Brew Your Own の解説は、脂質とその過酸化物は疎水性が強く、泡の膜を破裂させて気泡の急速な合体と泡の崩壊を招くと述べる[4]。口紅やポテトチップスの油で泡が早く消える例も、同じ文脈で挙げられている[4]。

膜を作るたんぱく質・イソフムロンの複合体[3]が、疎水性の強い成分に弱いという整理になる。家庭での油の量や洗い残しの条件と、泡の消え方の関係を定量的に扱った資料は、今回は参照していない。

7. じぶんで しらべて みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

たんさんすいの あわを 見て みよう

おとなと いっしょに、たんさんすいを ふたつの コップに つぎます。ひとつは ゆっくり かべづたいに、もうひとつは いきおいよく そそぎます。

あわの つぶの おおきさと、きえるまでの じかんを くらべます。ビールの あわは、おとなの のみものなので、ここでは たんさんすいで ためします。

のみ おえた コップは、おとなと いっしょに あらいます。

今日できること

炭酸水を、同じ大きさのコップ二つに注ぎます。一つはコップの内側の壁を伝わせて静かに、もう一つは勢いよく注ぎます。泡の量、粒の大きさ、消えるまでの時間を比べて、気づいたことを書き留めます。ビールの泡の実験ではないので、結果をそのままビールにあてはめず、「炭酸水ではこうだった」と考えておくのがよいでしょう。

もっと調べるなら

「界面活性剤」「シャボン玉の膜」といった言葉で調べると、膜の仕組みが、泡や石けんと共通していることが見えてきます。

今日できること

炭酸水を同じコップ二つに、壁を伝わせる方法と勢いよく注ぐ方法で注ぎ分け、泡の量・粒の大きさ・消えるまでの時間を記録する。ビールの泡とは条件が異なるため、結果は炭酸水の観察として扱う。

資料を読むなら

泡の成分は[1]、泡膜と界面活性剤の働きは[2][3]、イソα酸とIBUの関係と脂質の影響は[4](英語の専門誌)、表面測定の研究は[5][6]に出ている。産総研の発表([5])は日本語で短く、原典として読みやすい。炭酸ガスの溶存量と泡の量の関係は、この記事では扱っていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の説明に使った資料です。

  1. キリン お客様相談室FAQ「ビールの泡は何でできているの?」 https://qa.kirin.co.jp/fa/FAQ/web/knowledge17728.html (泡の成分、泡のふたの役割)
  2. 日本ビアジャーナリスト協会「ビール注ぎは泡作りである」 https://www.jbja.jp/archives/57114 (過飽和、泡の膜、注ぎ方)
  3. 太陽化学 食と健康Lab「界面のおはなし①」 https://www.taiyokagaku.com/lab/emulsion_learning/11/ (たんぱく質とイソフムロンの複合体、シャンパンとの違い)
  4. Brew Your Own「Understanding the Science Behind Beer Foam」 https://byo.com/articles/beer-foam-advanced-brewing/ (イソα酸の橋渡し、IBUと泡持ち、脂質の影響。英語)
  5. 産総研 プレスリリース(2018年8月10日) https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180810_2/pr20180810_2.html (SFG分光法によるビール表面の測定)
  6. サイエンスポータル(JST)ニュース https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20180823_02/index.html (たんぱく質がホップ成分をゆるく結ぶ、掲載誌)

なおした ところ

更新履歴

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