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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

パンは どうして つぎの 日に かたく なるの?

パンがかたくなるのは、かわいたからではない? ── 冷蔵庫・冷凍庫・トースターで変わるでんぷん

パンのデンプン老化 ── 温度で変わる速さと、再加熱で戻る理由

分野:自然

パンは ふくろに 入れて おいても、つぎの 日には かたく なります。しかも、冷蔵庫れいぞうこに 入れると、へやに おくより はやく かたく なる といいます[5]。

ふくろの 中で、水が にげた わけでは ないのに、なぜでしょう。パンの 中で おきて いる ことと、かたく なった パンが すこし もどる ふしぎを、おはなしします。

焼きたてのパンは、次の日にはもうかたくなっています。袋に入れて水分を逃がさなくても、かたくなります。さらに、冷蔵庫に入れると、常温に置くより早くかたくなるという説明があります[5]。

かわいたからではないなら、パンの中で何が起きているのでしょうか。でんぷんの並び方の変化、冷蔵庫と冷凍庫の差、そしてトーストするとやわらかさが戻る理由がわかります。

パンがかたくなる原因は水分の蒸発だけではない。水分の移動と、糊化したデンプンが冷めて再び密な構造に戻る老化のどちらが主因かは、研究上なお議論がある[2][1]。パン内部のかたさは数日かけて進み、低温のほうが速い[3]。

ならば冷蔵庫は最悪の保存場所なのか。なぜ冷凍は有効なのか。トースターで戻るのはなぜか。農業・食品の解説と1972年の実験報告、パンの老化を扱う論文の導入部を照らし合わせ、この3点を整理する。水分移動が主因かデンプンの結晶化が主因かは、研究上なお議論がある点も併記する。

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1. パンの 水は、にげて いるの?

1. かたくなるのは「かわいたから」だけではない

1. 水分の蒸発だけでは説明できない

パンが かたく なるのは、かわいたから。そう おもいますよね。

たしかに、パンの 中から 外がわの 皮へ 水が うつる ことも、かたく なる ことと かんけいが あると いわれます[3]。

でも、水を にがさない ように して おいても、パンは かたく なると いう せつめいが あります[3]。水の ばしょが かわる だけでも、かたさは かわるようです。

ほかにも かたく なる わけが ある ようです。それが、でんぷんの へんか です。

パンの中身のかたさが増す理由として、中身から外側の皮への水分の移動が関わるとされています[3]。

ただ、水分を外に逃がさなくても、パンの中で水分の位置がずれることで、かたくなるという説明があります[3]。水が減るだけでは、パンの老化は説明しきれないようです。

そこで注目されるのが、パンの主成分の一つ、でんぷんの変化です。水分移動が主因なのか、でんぷんの変化が主因なのかは、研究の中でも議論があります。この記事では、どちらか一方に決めず、複数の要因があるとして進めます。

パン内部(クラム)のかたさの増加は、クラムから外皮への水分移動が主因とされてきた[3]。一方、水分を逃がさない条件でも、水分の再配分を伴ってかたさが進むとの記述がある。

水分移動が主因か、デンプンの結晶化が主因かは、研究上なお議論がある。本稿は単一の原因に絞らず、以降ではデンプンの老化を中心に整理する。中身と耳の水分差そのものは別の記事(パンの耳と中身の食感)で扱った。

2. やく ときに、でんぷんは どう なる?

2. 焼くとき、でんぷんは水を吸ってふくらむ

2. 糊化(α化)── 加熱でデンプンが水を抱える

パンの もとに なる 小麦には、でんぷんが ふくまれて います。

でんぷんは、水と いっしょに あたためると、水を すって ふくらみ、ねばりが 出ます[1]。ごはんを たくと、かたい 米が ふっくら やわらかく なるのも、おなじ しくみです。

パンを やく ときも、生地の 中で、でんぷんが 水を すって やわらかく なります。やきたての パンの ふわふわは、ここから 生まれて います。

でんぷんは、アミロースとアミロペクチンという2種類の成分でできています[1]。生のままではかたい粒ですが、水と一緒に加熱すると、水を吸ってふくらみ、粘りが出ます。この変化を糊化(こか)、またはα化(アルファか)と呼びます[1]。

ごはんが炊けてやわらかくなるのも、パンが焼けてふわっとするのも、この変化が関わっています。焼きたてのパンのやわらかさは、糊化したでんぷんが水をたっぷり抱えていることと結びついています。

デンプンはアミロースとアミロペクチンからなり、加熱により吸水・膨潤して粘性を生じる。この現象を糊化(α化)と呼ぶ[1]。糊化したデンプンをαデンプン、生の状態をβデンプンと呼び分ける[2]。

焼成後のパンのクラムは、糊化したデンプンが水を保持した構造で、これが焼きたてのやわらかさの土台の一つと考えられる。ただし、パンのやわらかさにはグルテンや気泡構造も関わるため、デンプンだけで決まるわけではない。

3. さめると、でんぷんは どう なる?

3. 冷めると並び直す ── これが「老化」

3. 老化(β化)── 水の分離と再結晶

やきたての パンを そのまま おいて おくと、でんぷんは すこしずつ もとの すがたに もどろうと します[2]。

ひろがって いた でんぷんが、ぎゅっと ならびなおし、まとまって いく ようすです。ばらばらに ひろげた ひもが、ときが たつと、たばに まとまるような ものです。ただし 本当は、ひもでは なく、とても ちいさな つぶの ならびかたの はなしです。

この へんかを、「老化ろうか」と いいます[1]。人が としを とる こと では ありません。

まとまった でんぷんは、水を だして かたく なり、パンも かたく なります[2][1]。これが、つぎの 日の かたい パンの ひとつの りゆうと されて います。

並び直して、水が出ていく

糊化したでんぷんを放っておくと、アミロースとアミロペクチンが再び結晶のように並び直します[1]。このとき、糊化したでんぷんの中から水が分かれ、部分的に生のでんぷんに近い、ぎゅっと詰まった構造に戻ります[2]。

この現象を、でんぷんの老化と呼びます。人が年を取る意味ではありません。パンやごはんなどが、老化によってかたくなり、古くなった食感になることがわかっています[1]。

2つの成分の進み方

アミロースは冷めるときから最初の1日ほどで速く老化し、アミロペクチンは数日かけてゆっくり進んで、長期のかたさに関わるとされます[5]。ただしこれは業界向けの解説にある説明で、時間の数字は目安です。

糊化したデンプンを放置すると、アミロースとアミロペクチンが再結晶する[1]。αデンプンの組織から水が分離し、部分的に生デンプン(βデンプン)に近い密な構造になる現象を老化という[2]。パンや米飯は老化によりかたくなり、古くなった食感を呈する[1]。

アミロースは冷却時から最初の約24時間で速く老化し、アミロペクチンは数日かけて緩やかに老化して長期のかたさを決めるとされる[5]。この数字は解説記事に基づく概数とされる。

4. れいぞうこに 入れると、どう なる?

4. 冷蔵庫は、いちばん進みやすい温度

4. 温度依存性 ── 0〜10℃で速まる

パンを まもる ために、れいぞうこに 入れる 人も いると おもいます。ところが、パンの なかの かたさは、ひくい 温度の ほうが はやく 進む と いう けんきゅうが あります[3]。

冷蔵庫れいぞうこの 中の ような 0どから 10どぐらいの 温度では、へやに おくより、かたく なるのが はやい と いわれます[5]。

でんぷんの ならびなおしは、こおる すこし まえの 温度が、いちばん おきやすい ようです[4]。

ただ、この 実けんは パンではなく、でんぷんを 水に とかした ものでした。パンでも おなじ とは、いいきれません。

パンの中身のかたさは数日かけて進み、その速さは温度に左右されます。低い温度のほうが、早くかたくなると報告されています[3]。

冷蔵庫の温度帯にあたる0〜10℃では、常温より、アミロペクチンの再結晶と中身のかたさが速まると説明されています[5]。パンを守るつもりで冷蔵庫に入れると、かえって、かたくなるのを早めることになるようです。

1972年の実験と温度のずれ

1972年の日本の研究では、5%のでんぷん糊を使って温度を変え、0℃付近がいちばん老化しやすいと報告されました[4]。小麦でんぷんでは、40〜50℃以下で速く進むとされています。

ただし、これはパンそのものではなく、でんぷんを水に溶かした糊での実験です。パンにも同じ数字がそのまま当てはまるとは言い切れません。

パンクラムのかたさは数日かけて進行し、温度依存的で、低温ほど速く進むと報告されている[3]。0〜10℃の冷蔵域では、室温保存に比べアミロペクチンの再結晶とクラムの硬化が速まるとされる[5]。

檜作ほか(1972)は、5%デンプン糊を用いて温度を変え、0℃が最も老化しやすいと報告した。小麦デンプンでは40〜50℃以下で速く進む[4]。ただし対象はパンではなくデンプン糊であり、パンへの直接の当てはめはできない。なお、この実験は0〜70℃を調べたもので、0℃以下では老化しにくいとする解説[1]とは対象の温度範囲が異なる。本稿では、直接確かめられる「冷蔵庫の温度帯で進みやすい」という程度にとどめる。

5. れいとうこなら、どう なる?

5. 冷凍すると、老化は大きく遅れる

5. 老化の抑制 ── 急速冷凍と高温乾燥

こおらせると、でんぷんの ならびなおしは、ぐっと おそく なります[5]。60どより あつい とき、または 0どより ひくい ときも、おこりにくいと いわれます[1]。

ふつうの 家の れいとうこ(マイナス 18ど)でも、へやや れいぞうこより、ずっと ゆっくり です[6]。

すぐに 食べない ときは、パンを ふくろに 入れて、こおらせて おくと いいと いう せつめいを 見ます。

でんぷんの老化は、60℃以上、または0℃以下では起きにくいとされています[1]。老化は、糊化したでんぷんを高温のまま乾燥させるか、急速に冷凍することで防げるとも説明されます[2]。インスタントめんや冷凍ごはんは、この考え方を利用したものです。

家庭用の-18℃の冷凍庫でも、室温や冷蔵庫に比べて、パンの老化は大きく遅くなるとされます[6]。買ってすぐ食べきれないパンを冷凍する、という定番の保存法には、こうした理由があるようです。

老化は60℃以上または0℃以下では起こりにくい[1]。αデンプンを高温のまま乾燥するか急速冷凍することで防止でき、即席めんや冷凍ごはんなどに応用されている[2]。冷凍はパンの老化も大きく遅らせ[5]、家庭用の-18℃の冷凍庫でも室温・冷蔵より大幅に遅くなるとされる[6]。

冷蔵で速く、冷凍で遅いという非単調な温度応答は、「凍る直前の温度帯が最も進みやすく、氷点下では分子の動きが制限されて進みにくい」という解釈で整合する。ただしこの機構の説明は本稿の資料の外にあるため、仮説として示す。

6. かたい パンは、あたためると もどるの?

6. トーストで戻るのは「一時的」

6. 再加熱 ── 老化の部分的な巻き戻し

かたく なった パンを トースターで あたためると、やわらかく もどる ことが あります。

ねつで、まとまって いた でんぷんの 一ぶが、また ほぐれるからだと いわれます[6]。こわれた のでは なく、ならびかたが また かわった のです。

けれども、その やわらかさは 一じてきです。やいた ときの ならびかたまでは、もどりません[5]。さめると、また かたく なります。

かたくなったパンをトーストすると、老化したでんぷんの一部が熱で再び糊化し、老化が一時的に巻き戻されると説明されます[6]。パンはこわれたのではなく、でんぷんの並びが変わっただけです。

ただし、再加熱で中身が一時的にやわらかくなっても、焼き上がり時の分子の並びまでは完全に戻りません[5]。そのため、さめるとまたかたくなります。

ほかの資料には、60℃前後で老化が戻るとの記述もありますが、温度ははっきりしないので、ここでは「温め直すと一時的にやわらかくなる」までにとどめます。

再加熱により、老化したデンプンの一部が再糊化し、老化が一時的に逆転する[6]。結晶構造が乱されてクラムは一時的に軟化するが、焼成時に形成された分子の配置は完全には回復しない[5]。

「60℃で老化が戻る」という記述も見かけるが、温度は資料によって扱いが分かれるため本稿では採らず、「一時的に軟化する」までにとどめる。温度は、食品科学の教科書や論文で確かめる余地がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いま できる こと:おなじ パンを 2まい 用意して、1まいは へやの ふくろの 中、もう 1まいは 冷蔵庫れいぞうこに 入れて、つぎの 日に さわりくらべて みましょう。どちらが かたいか、おうちの 人と いっしょに たしかめます。

ナイフや 火は つかいません。トースターを つかう ときは、おうちの 人と いっしょに して ください。

今日できること:同じ種類のパンを2〜3切れ用意し、常温の袋・冷蔵庫・冷凍庫に分けて入れます。翌日、冷凍のものは常温に戻してから、3つを指で押してかたさを比べてみましょう。冷蔵庫のパンは、常温のものよりかたくなっているでしょうか。

調べるなら:農畜産業振興機構や大学の解説には、でんぷんの糊化と老化の説明があります。「冷凍したパンはなぜおいしく食べられるのか」を調べると、この記事で確かめきれなかった部分に届くかもしれません。

今日できること:同じパンを常温・冷蔵・冷凍で1日保存し、押したときの弾力を比べる。刃物・火は使わない。

資料を読むなら:農畜産業振興機構の解説[1]と東京農業大学のコラム[2]は糊化・老化の基本を、PubMed Centralの論文[3]はパン老化の研究背景を扱う(英語)。水分移動とデンプン結晶化のどちらが主因かは、この論文や関連の総説で確かめられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下の資料の番号に対応しています。

  1. 農畜産業振興機構「調理学から見るでん粉の利用と必要性」 https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_003263.html (糊化と老化、パンや米飯がかたくなること、老化しにくい温度)
  2. 東京農業大学 教員コラム「デンプンも老化する」 https://www.nodai.ac.jp/research/teacher-column/0059/ (老化の仕組み、老化を防ぐ方法)
  3. PubMed Central "PMC4711428"(パンのクラムのかたさに関する論文の導入部) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4711428/ (かたさは数日で進み低温で速い、水分移動)
  4. 檜作ほか「でんぷん糊の老化の温度依存性」澱粉科学 19(2), 1972 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag1972/19/2/19_2_70/_article/-char/ja/ (でんぷん糊で0℃付近が最も老化しやすい)
  5. Milling MEA "Baking Technology: Staling" https://millingmea.com/baking-technology-staling/ (アミロースとアミロペクチンの進み方、冷蔵は速め冷凍は遅らせる、再加熱は一時的)
  6. ScienceInsights "What Is Staling?" https://scienceinsights.org/what-is-staling-the-science-behind-stale-bread/ (家庭用冷凍庫での保存、トーストで一部が再糊化)

なおした ところ

更新履歴

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