1. むかしの えいがは、だれが はやさを きめて いたの?
1. 昔の映画は、上映の速さを誰が決めていたのか
1. サイレント映画の上映速度は、誰がどう決めていたのか
むかしの えいがは、おとが ありませんでした。この じだいの えいがには、「1秒に なんコマ」という きまった はやさは ありませんでした。
カメラは、手で ハンドルを まわして うごかして いました。だから、とる ひとの まわし方で、はやさが かわる ことも ありました。
えいがを うつす ときも おなじです。えいしゃぎしという ひとが、きかいの つまみを うごかして はやさを かえられました。たくさんの おきゃくさんに みせたい えいが館は、はやめに うつす ことも あったと いわれます。
おなじ えいがでも、えいが館しだいで、のんびり みえたり、せかせか みえたり したかも しれません。
サイレント映画の時代には、「1秒に何コマ」という決まりがありませんでした。カメラは手回しで、撮る人のハンドルの回し方しだいで、場面の途中でも速さが変わることがありました。撮影の速さは、おおよそ16〜24コマ/秒の幅があったとされています[1]。これは撮影のときの速さで、映画館での上映の速さとは別の話です。
映画館でも事情は同じでした。映写技師は、映写機を動かすモーターの電圧を変えて、館内で上映の速さを調整できました。映画に合わせて速さを選ぶだけでなく、客席の反応を見て決める役目もあったといわれます[1]。喜劇は速く、ドラマはゆっくり、というように、ジャンルで速さが違うこともありました[2]。
速さを変える理由は、芸術的なものだけではありません。映画史家のケヴィン・ブラウンロウの論文を紹介した記事には、館が速く映せば1回の興行にたくさんのフィルムを詰め込めるため、制作者が意図したより速く映されることがあった、と書かれています[4]。たとえば1914年のD・W・グリフィス監督の作品では、リールごとに16コマ/秒から20コマ/秒以上へと、速さを変えるよう指示した記録が紹介されています。
こうして、同じ映画が館ごとにちがう速さで映る時代が続きました。では、その速さは実際にどのくらいだったのでしょうか。
サイレント映画に、全館共通の上映速度は存在しなかった。カメラは手回しで、撮影者のクランクの回転が場面の途中でも変わりえたため、撮影の速さ自体が約16〜24コマ/秒の範囲に散らばっていた[1]。これは撮影時の速さで、上映時の速さとは別である。ところが上映の側は、さらに自由度が高かった。映写技師は、映写機の送り機構を動かすモーターの電圧を可変抵抗器で調整でき、館内で速度を変えられた[1]。喜劇は速く、ドラマは遅めに映すなど、ジャンルで速度が異なる例もあったという[2]。
では、なぜ制作者の意図より速くなりやすかったのか。映画史家ケヴィン・ブラウンロウが1980年に『サイト・アンド・サウンド』誌に書いた論文を紹介する記事によれば、館が速く映すほど、1回の上映時間に詰め込めるフィルムの量が増えるため、興行側に速める動機があったからである[4]。1914年のD・W・グリフィス作品でも、リールごとに16〜20コマ/秒以上と速度を変えるよう指示した記録が引かれている。
この結果、「サイレント映画は16コマ/秒だった」という単純な説明は成り立たない。1910年代半ばには「サイレント速度」が16〜18コマ/秒あたりとされ、サイレント時代の終わりには、多くの映画館で27コマ/秒前後という典型値が示されている[2]。速度は、時代とともに上がっていったのである。
2. おとが つくと、どうして はやさを そろえないと いけないの?
2. 音が付くと、なぜ速さをそろえる必要が出たのか
2. 音声が付くと、上映速度の「ゆらぎ」はなぜ許されなくなったのか
1927ねんごろ、えいがに おとが つくように なりました。ここで もんだいが おきます。
おんがくや ひとの こえは、はやさが かわると、たかさも かわって しまいます。レコードを はやく まわすと、こえが たかく なるのと おなじです。
みみは、めよりも この ちがいに びんかんだと いわれます。ですから、おとの つく えいがは、はやさを いつも おなじに する ひつようが ありました。
1927年9月、フォックス・ケース社の技術責任者だったアール・スポナブルは、SMPE(映画技術者協会)の会合で、ニューヨークの映画館の様子を話しました。スポナブルがニューヨークで調べた範囲では、毎分105フィート(約28コマ/秒)より遅い映写は見つからず、日曜は追加の回を入れるため、毎分120フィート(約32コマ/秒)になることもある、という内容です[3]。
つまり、サイレント末期の大きな都市の映画館では、のちの標準より速い上映が普通でした。この状態のままでは、音を付けられません。
音声の記録と再生では、速さの変動が許されなくなるからです。耳は目に比べて、周波数(音の高さ)の変化に敏感だと説明されています[1]。映像なら、少し速くても「せかせかした映画」ですみます。ところが音は、速くなると声や楽器の音程がそのままずれて聞こえてしまいます。
音を付けるなら、速さを一つに決める必要がありました。では、その一つをいくつにするのか。ここで「24」が出てきます。
音声が加わると、なぜ速度の変動が許されなくなったのか。人間の耳は、目よりも周波数の変化に敏感だからだと説明される[1]。映像は速度が多少ずれても動きの印象が変わるだけだが、音は再生速度に比例して音程が変わるため、聞く側がすぐに違和感を持つ。
しかも、サイレント末期の実際の上映速度は、のちの標準よりかなり速かった。1927年9月、フォックス・ケース社の技術責任者アール・スポナブルは、SMPEの場で、ニューヨークの映画館に毎分105フィート(約28コマ/秒)より遅い上映は見つからなかったと述べた。さらに質問に答えて、日曜は追加の回を入れるために毎分120フィート(約32コマ/秒)になることもあると話した[3]。ただし、これは一人の技術者の観察であり、全米の平均ではない。
速度がばらばらで、しかも上映側が自由に変えられるという慣行のままでは、音と映像を組み合わせた商品にならない。そのため、一つの速度を決める必要が出た。問題は、その一つをどこに置くかである。
3. 24は、どうやって きまったの?
3. 「24」は、どうやって選ばれたのか
3. 24コマ/秒は、サイレント末期の上映速度の「折衷」としてどう選ばれたか
えらんだのは、アメリカの でんきの かいしゃ、ウェスタン・エレクトリックと いわれます。この かいしゃは、えいが館が ふだん つかって いる はやさの、平均あたりを えらびました。
ある おはなしが つたわって います。おおきな えいが館は ゆっくりめ、おきゃくさんを たくさん いれたい ちいさな 館は はやめ。そこで、そのまん中あたりに しよう、と きめたと いうのです。
これが 24コマです。1コマ ずつ うまく えらんだと いうより、みんなの まん中を とった すうじ、と いえそうです。
トーキー用の速さとして、毎分90フィート(24コマ/秒)を選んだのは、アメリカの電機会社ウェスタン・エレクトリックでした。同社のスタンリー・ワトキンスが1961年に語った回想が、スコット・アイマンの本『The Speed of Sound』に引かれており、その速さは、当時の映画館が実際に使っていた上映の速さの平均あたりとして選ばれた、とされています[3]。
この選び方を伝える逸話があります。ワトキンスがワーナー・ブラザースの映写技師長フランク・リッチに聞くと、大きな封切館は毎分約80フィート(約21.5コマ/秒)、回数を増やしたい小さな館は毎分100フィート(約27コマ/秒)まで、という答えだったそうです。そこでワトキンスが「では90で折衷しよう」と言った、と伝えられています[2]。これは後年の回想に基づく話で、細部は逸話として読んでください。
ウェスタン・エレクトリックは、フィルム式の音を付けたムービートーンのフォックス・ケース社にも、この24コマ/秒を使わせました。ディスク式のヴァイタフォンで決まっていた24コマ/秒にそろえたのです[5]。音の方式は2つあっても、速さは同じになりました。ただ、標準として定着するには時間がかかり、1927〜1930年に各スタジオが設備を更新する中で、24コマ/秒が35mm音声付き映画の標準になりました[1]。
ここで気になるのは、24コマという少なめの数字で、なぜ画面がちらつかなかったのか、という点です。
では、その「一つ」はどう決まったのか。トーキー用に毎分90フィート(24コマ/秒)を選んだのは、アメリカの電機会社ウェスタン・エレクトリックである。同社のスタンリー・ワトキンスが1961年に語った回想が、スコット・アイマンの著書『The Speed of Sound』に引用されており、その説明によれば、この値は当時のアメリカの映画館が実際に使っていた上映速度の平均あたりに置かれた[3]。
この「平均」の感覚をよく伝えるのが、回想に基づく逸話である。ワトキンスがワーナー・ブラザースの映写技師長フランク・リッチに聞くと、大きな封切館は毎分約80フィート(約21.5コマ/秒)、回数を増やしたい小さな館は毎分100フィート(約27コマ/秒)までという答えで、ワトキンスは「では90で折衷しよう」と言ったという[2]。話の出どころは後年の回想であり、細部は逸話として扱うべきである。ただ、上映速度の幅の真ん中に置いた、という点は、先の平均の説明とも矛盾しない。
さらに、24コマ/秒は、速さを固定しながら当時の音声記録で音質を保てる最低ラインに近く、より速い32コマ/秒などはフィルム代がかさむからだ、という解釈も見られる。24コマ/秒が選ばれた理由の一つとして、こうした解釈もある。
決まった速度は、ほかの方式にも広がった。フォックス・ケース社のムービートーン(音をフィルムの端に記録する方式)は、すでにヴァイタフォン(ディスク式)で決まっていた24コマ/秒にそろえた[5]。そのため、音の方式が違っても、速度は同じ24コマ/秒になった。ただし定着は一気には進まず、1927〜1930年に、各スタジオの設備更新が進むなかで、35mm音声付き映画の標準になっていった[1]。
4. 24コマで、どうして ちらちら しないの?
4. 24コマで、なぜちらつかないのか:1コマを2回光らせる工夫
4. 24コマでちらつかない理由:2枚羽根シャッターと「光る回数」
1秒に 24まいは、すこし すくなめです。そのまま うつすと、ちらちらして みえて しまいます。
そこで、1まいの しゃしんを うつす あいだに、えいしゃきの シャッターが ひかりを 2かい とおします。1秒に ひかる かずは 48かいに なって、ちらつきが めだたなく なります。
おなじ しゃしんを 2かい みせて いる だけなので、コマの かずは ふえて いません。それでも、めには ちらちらが ずっと すくなく みえます。
24コマ/秒は、少なめの数字です。そのまま映したのでは、画面がちらちらと光って見えてしまいます。
そこで一般的な映写機は、羽根が2枚あるシャッターを使い、シャッターが1コマを映す間に光を2回通すようにしました。24コマ/秒でも、光は1秒に48回になり、ちらつきが目立たなくなります。羽根を3枚にして、1コマを3回見せ、72回にする方法も使われました[1]。
コマの数が増えたわけではありません。同じ絵を2回見せているだけです。それでも、目は光る回数が多いほどちらつきを感じにくいので、ずっと見やすくなりました。
ちなみに、発明王エジソンは1891年に、1秒に46枚の写真を撮るカメラを構想し、目に「動きの連続」を見せたいと語っています[4]。24コマはそれよりずっと少ない数字ですが、光を2回に分けることで補う形になりました。
つまり24は、「人の目の限界」という数字ではありません。音が付く時代の事情と、映写機の工夫の組み合わせで落ち着いた、一つの折衷だったのです。
5. じぶんでも しらべて みたく なったら
5. 自分でも調べてみたくなったら
5. 自分でも調べてみたくなったら
パラパラまんがで ためして みよう
ノートの すみに、ぼうの ひとが あるく パラパラまんがを 10まい ほど かきます。おなじ 10まいを、ゆっくり めくった ときと、はやく めくった ときで くらべると、うごきの ようすが かわって みえます。はやく めくると、せかせかした かんじに なります。むかしの えいが館の はやさの ちがいも、こんな かんじだったのかも しれません。
しらべる とき
むかしの えいがを みたら、うごきが はやすぎないか、ゆっくりすぎないか、おうちの ひとと はなして みましょう。
めくる速さで動きはどう変わる?
ノートのすみに、棒人間が歩くパラパラ漫画を10枚ほど描いてみましょう。同じ10枚を、ゆっくりめくった場合と、速くめくった場合の2通りで比べると、動きの印象が変わるのが分かります。速くめくると、せかせかした動きに見えます。昔の映画館で、同じ映画が館ごとにちがって見えたかもしれない様子を、少しだけ想像できます。
資料を読むなら
図書館で、映画の歴史やサイレント映画の本を探してみましょう。上映の速さがどう語られているか、見比べると面白いです。
めくる速さと動きの印象を比べる
パラパラ漫画を10枚ほど描き、同じ10枚をゆっくりと速くの2通りでめくって、動きの印象を比べてみるとよい。時計の秒針を見ながら10枚を何秒でめくったかを数えれば、「1秒に何コマ」という考え方を自分の手で体験できる。
資料を読むなら
一次資料としては、SMPEの会報(Transactions)の1927年・1929年号が原典にあたるが、公開場所の確認が要る。入口としては、出典[2][3]のSilent Film Musicの記事(英語)が、原典の引用つきで読める。ケヴィン・ブラウンロウの論文は、出典[4]の記事から探せる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- Wikipedia, Frame rate. https://en.wikipedia.org/wiki/Frame_rate (サイレント時代の幅、映写技師、音と速度、シャッターの枚数)
- Silent Film Music, "Silent" Speed. https://silentfilmmusic.com/lsf55-silent-speed/ (サイレント時代の上映速度の移り変わり)
- Silent Film Music, Faster Than the Speed of Sound(SMPE Transactions 1927 を紹介). https://silentfilmmusic.com/sponable-105/ (1927年の上映速度とウェスタン・エレクトリックの選択)
- The Bioscope, Pure motion(Kevin Brownlow, Sight and Sound 1980 を引用). https://thebioscope.net/2011/04/13/pure-motion/ (興行側が速く映した事情、エジソンの構想)
- Wikipedia, Movietone sound system. https://en.wikipedia.org/wiki/Movietone_sound_system (ムービートーンが24コマにそろえたこと)
なおした ところ
更新履歴
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