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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

コーヒーは どうして 苦いの? カフェインを ぬいても 苦い ふしぎ

カフェインを抜いてもコーヒーが苦いのはなぜか ── 焙煎で生まれる成分と舌の受容体

焙煎で生まれるコーヒーの苦味と、舌の受容体

分野:自然

「カフェインを ぬいた コーヒー」が あります。ねむく なりにくい コーヒーです。ところが、これも ちゃんと 苦いのです。

苦い 味の もとは、カフェインでは ないのでしょうか。それは 豆に はじめから 入って いたのでしょうか。しらべた 人たちの 話を 見て いきます。

カフェインを取りのぞいたコーヒー(デカフェ)を飲んで、それでも苦いと感じた人は多いと思います。苦味のもとがカフェインなら、抜けば苦くなくなるはずです。

2007年の発表では、カフェインが受け持つ苦味は全体の15%ほどと見積もられました。では残りは何なのか。答えは、焙煎という加熱の中と、舌の受容体の側にありました。

コーヒーの苦味は、カフェインだけでは説明できない。2007年の米国化学会での発表では、カフェインの寄与は約15%と推定され[1]、日本の企業解説では約10%とされる[3]。

苦味の主役は生豆になく、焙煎で生じる成分だとされる。その成分と、ヒトの苦味受容体TAS2R43/46の応答を、2007年・2020年・2026年の資料でたどる。

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1. カフェインを ぬいても、苦いの?

1. デカフェも苦い ── カフェインは主役ではない

1. カフェインの寄与は1〜2割 ── 2007年の推定

カフェインは、ねむけを さます はたらきで 知られて います。だから 苦さの もとも カフェインだと 思いがちです。

でも、カフェインを とりのぞいた コーヒーも、ふつうの コーヒーと にた 苦さが あると 発表されました[2]。カフェインで 苦い 味が うまれる 分は、ぜんぶの 1〜2わり ほどだと いわれます[1]。

では、のこりの 苦さは どこから 来るのでしょうか。

カフェインは眠気をさます成分として有名なので、苦味の犯人もカフェインだと考えたくなります。ところが2007年に米国化学会で発表された研究では、カフェインを除いたコーヒーも、カフェイン入りと似た苦味の質をもつと報告されました[2]。

カフェインが占める苦味は15%ほどという見積もりです[1]。日本の企業の解説では約10%とされ[3]、資料によって数字は少しちがいます。どちらにしても「1〜2割ほど」で、主役ではありません。

Thomas Hofmann教授らの2007年の発表は、カフェインが占める苦味を約15%と推定した[1]。カフェインを除いたコーヒーも似た苦味の質をもつという報告もある[2]。

UCCの解説はカフェインの寄与を10%程度とする[3]。推定値は資料により異なるため、本稿では「1〜2割ほど」と幅をもたせて扱う。いずれも二次資料(報道・企業解説)を通した数字で、原著論文は本稿の執筆時に確認できていない。

2. 苦い 味の もとは、いつ できるの?

2. 苦味のもとは、焙煎で生まれる

2. 生豆に乏しく焙煎で生じる ── クロロゲン酸の変化

コーヒーの 豆は、火を とおす 前は 緑色に 近く、「生豆」と よばれます。この ままでは 飲む コーヒーの 味には なりません。

豆を 火で いる ことを、焙煎ばいせんと いいます。生豆には「クロロゲンさん」という ものが たくさん 入って いますが、焙煎ばいせんすると へって いきます[4]。

へった 分は、べつの ものに かわります。その 中に、強い 苦さを もつ ものが あります。おもちが やけると こげて 味が かわるのと、すこし にて います。ただし 豆の 中で 起きる ことは、もちよりずっと ふくざつです。

生豆には、クロロゲン酸類という成分が多く含まれています。焙煎するとこれが減り[4]、減った分は別の物質に変わります。2007年の発表は、焙煎こそが苦味を生む最大の要因で、焙煎を強くするほど刺激が強くなりやすいと述べました[2]。

苦味の主役として挙げられたのは、クロロゲン酸ラクトン類とフェニルインダン類という2つの成分グループです[2]。どちらも焙煎した豆の中にあるもので、生豆にもともとあったものではない、という点がおもしろいところです。

パンを焼くと、焼き色がつく前とは別の香りと味になります。豆の中でも、熱で成分が組み変わる変化が起きます。ただし、パンとコーヒーで起きる反応が同じというわけではありません。

クロロゲン酸類は生豆に多く含まれ、焙煎により減少する[4]。2007年の米国化学会の発表は、焙煎が苦味を生む主要因であり、焙煎が強いほど刺激が強くなる傾向があるとした[2]。

苦味の主役として示されたのは、クロロゲン酸ラクトン類とフェニルインダン類の2群である。いずれも焙煎豆に存在する成分として紹介されている[2]。UCCの解説も、焙煎度が深いほどクロロゲン酸ラクトンやカテコールなどの苦味成分が増えると説明する[3]。

クロロゲン酸は、焙煎の熱で別の物質に変わる。

3. あさい いりかたと ふかい いりかたで、苦さが ちがう?

3. 浅煎りと深煎りでは、苦味の質がちがう

3. 煎り具合と成分の対応 ── ラクトン類とフェニルインダン類

豆の いり方が あさい ものを「あさいり」、ふかい ものを「ふかいり」と よびます。ふかいりは 色が こく、ほとんど 黒に 見えます。

2007年の 発表では、あさいりから 中くらいまでの 苦さは クロロゲンさんラクトンの なかまが 主な もとだと されました[2]。ふかいりでは、あとを ひく 強い 苦さの もとが ふえる と いわれます[2]。

ひとくちに 苦いと いっても、いり方で 苦さの ようすが かわるのです。

2007年の発表によると、クロロゲン酸ラクトン類(コーヒー中に約10種類)は、浅煎りから中煎りの苦味の主な源です。フェニルインダン類はエスプレッソなど深煎りに多く、後を引く強い苦味をもつとされました[2]。

日本の企業の解説も、深煎りほどクロロゲン酸ラクトンやカテコールなどの苦味成分が増えると説明しています[3]。2007年の発表では、そう説明されました。

「苦い」の中にも、種類のちがいがあるということです。

2007年の発表では、クロロゲン酸ラクトン類(コーヒー中に約10種)が浅煎り〜中煎りの苦味の主な源とされた。フェニルインダン類は深煎り(エスプレッソ含む)に多く、後を引く強い苦味をもつという[2]。

UCCの解説は、焙煎度が深いほどクロロゲン酸ラクトンやカテコールなどが増えて苦味が強調されると述べ、日本語資料として2007年の内容と方向が合う[3]。ただし、どちらも二次資料であり、成分の割合は2007年時点の研究者の見解として扱う。

4. カフェインは、いり方で かわるの?

4. カフェインは焙煎してもあまり変わらない

4. 焙煎とカフェイン量 ── 成分ごとに運命が異なる

クロロゲンさんは 焙煎ばいせんで へり、べつの ものに かわりました。では カフェインは どうでしょうか。

UCCの ページでは、カフェインが どれだけ 入って いるかは、いり方に あまり かんけいしない と されて います[3]。あさいりでも ふかいりでも、カフェインの りょうは 大きく かわらないと されて います。

「にがい コーヒーは カフェインが 多い」とは いえません。

クロロゲン酸類が焙煎で減って別の物質に変わる一方、カフェインは焙煎してもあまり変わりません。UCCの解説によると、焙煎度でカフェイン量は大きく変わらないとされています[3]。

だから「深煎りは苦いからカフェインが多い」とも「少ない」とも、この資料からは言えません。苦味の強さとカフェインの量は、別々の話です。

クロロゲン酸類が焙煎で減少するのに対し[4]、カフェインは焙煎による変化が小さい。UCCの解説は、焙煎度はカフェイン量に影響しないと述べる[3]。

苦味の強さ(成分の生成)とカフェイン量(焙煎で変わりにくい)は別の軸にあり、「深煎りほどカフェインが多い/少ない」という主張は、この資料からは導けない。

5. 舌したは、どうやって 苦さを 感じるの?

5. 舌の「苦味受容体」が反応する

5. ヒトの苦味受容体 ── TAS2R43/46と2020年の報告

舌したには、味を 感じとる 小さな しくみが あります。苦さを 感じとる ものは「苦味受容体じゅようたい」と いいます。人には 二十いくつか あります[7]。

2020年、ドイツの 研究チームが、コーヒーの 苦さに 主に はたらく 苦味受容体じゅようたいを しらべました。25この うち、おもに 2つ(TAS2R43と TAS2R46)が 反応はんのうしました[5]。

この 2つは、カフェインよりも、焙煎ばいせんで できる ものに ずっと よく 反応はんのうすると 発表はっぴょうされました[6]。かぎが かぎあなに はまる ように、ものの 形と しくみが 合うと、スイッチが 入ると 考えられて います。

舌の苦味受容体は、苦味成分がくっつくとスイッチが入る、鍵穴のようなしくみです。ヒトには二十数種類あり、TAS2R43はコーヒーの複数の苦味成分を感じ分ける受容体の1つです[7]。

2020年、ライプニッツ食品システム生物学研究所とミュンヘン工科大学の研究が、アラビカ種のモザンビオシドとその焙煎生成物ベンガレンソールが、25種の苦味受容体のうち主にTAS2R43とTAS2R46に反応することを示しました[5]。

同じ論文は、この2つの受容体がカフェインよりもコーヒー特有の成分にずっと敏感だと報告しています[6]。同じ反応を得るのに、カフェインはずっと多く必要だということです。

2020年、ライプニッツ食品システム生物学研究所とミュンヘン工科大学は、アラビカ種のモザンビオシドとその焙煎生成物ベンガレンソールが、ヒトの苦味受容体25種のうち主にTAS2R43とTAS2R46に反応することを報告した[5](J. Agric. Food Chem. 68(24))。

同論文は、これらの受容体がカフェインよりも、モザンビオシド、ベンガレンソール、カフェストール、カフェオールにはるかに敏感に反応するとされる[6]。カフェインで同じ反応を得るのに必要な濃度が桁違いに高いという数字も出回るが、原文の数字は未確認のため、ここでは「ずっと多く必要」にとどめる。

ヒトの苦味受容体の総数は資料により25または26種とされるため、本文では「二十数種」とした[7]。

6. 苦さを 感じる しくみは、見えたの?

6. 2026年、受容体が苦い分子をつかむ姿が見えた

6. TAS2R43の立体構造 ── 2026年、クライオ電子顕微鏡による報告

2026年5月、アメリカの 大学の 研究チームが、TAS2R43が 苦い 分子を つかんで いる ところの 形を、とても 小さな ものを 大きく 見せる きかいで しらべて 発表はっぴょうしました[7]。

つかまれて いたのは、カフェインや、コーヒーの 苦さの もとに なる 分子でした。かぎと かぎあなの 話が、形として 見えた のです。

コーヒーの 苦さの ひみつは、まだ ぜんぶは わかっていません。これからも 新しい 発見が あるかも しれません。

2026年5月、アメリカのノースカロライナ大学(UNC)の研究チームが、クライオ電子顕微鏡という装置で、TAS2R43が苦い分子を結合した状態の構造を明らかにしたと発表しました。論文はNature Structural & Molecular Biologyに掲載されました[7]。

結合していたのは、カフェインやモザンビオシドなどです。鍵と鍵穴にたとえられていた話が、分子の形として観察されたことになります。

2026年5月、UNCの研究チームは、クライオ電子顕微鏡でTAS2R43が苦味分子(カフェイン、モザンビオシドなど)を結合した構造を明らかにし、Nature Structural & Molecular Biologyに発表した[7]。

2020年に受容体の応答が示され[5]、2026年にその結合の様子が構造として示された、という流れになる。UNCの発表は大学の広報記事である。

7. 苦さを もっと 知りたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 出口 ── 豆の色を見る/原典を読む

おうちの 人と いっしょに、コーヒーの おみせや スーパーに 行って みましょう。あさいりと ふかいりの 豆が あったら、色を くらべて みます。ふかいりの ほうが 黒くて、てかてかして いるでしょうか。

もし ふくろに「あさいり」「ふかいり」と 書いて あれば、その ちがいも 見て みます。コーヒーを のむかは おうちの 人と 相談して、見るだけでも だいじょうぶです。

コーヒー豆を売っている店やスーパーで、浅煎りと深煎りの豆を見比べてみてください。色の濃さや、表面のつやのちがいがあるでしょうか。袋に焙煎度が書いてあれば、その言葉と豆の様子を対応させてみます。

飲むかどうかは、家の人と相談して決めてください。見るだけでも、焙煎で豆が変わることが伝わります。

原典を読むなら、米国化学会の2007年の発表[2]や、UCCの解説[3]がおすすめです。

家にあるコーヒー袋の表示や、店頭の写真・商品ページで、浅煎りと深煎りの豆の色・つやと、表示された焙煎度の対応を見比べられる。

原典に当たるなら、2020年のJAFC論文(Lang et al.)[6]、2026年のUNCの発表と原論文[7]、2007年の米国化学会の発表[2]が入口になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:2007年・2020年の発表を紹介した記事、2020年の論文ページ、2026年の大学の発表、日本の企業2社の解説を使った。原著論文は本文の執筆時に確認できておらず、発表・報道・企業解説を通して読んだ内容である。

  1. ScienceDaily「Coffee's bitterness」(米国化学会の発表をもとにした記事, 2007)。https://www.sciencedaily.com/releases/2007/08/070821143629.htm (カフェインが占める苦味の割合について)
  2. EurekAlert!(米国化学会 2007年のニュースリリース)。https://www.eurekalert.org/news-releases/877914 (苦味成分と焙煎の関係について)
  3. UCC上島珈琲「コーヒーはなぜ苦いのか?」。https://www.ucc.co.jp/enjoy/brew/goodcofee_knowledge_12.html (焙煎度と苦味成分、カフェイン量について)
  4. 花王「コーヒー機能性成分の探求」。https://www.kao.com/jp/nutrition/about-cga/cga01/ (クロロゲン酸類が焙煎で減ることについて)
  5. ScienceDaily(2020, Journal of Agricultural and Food Chemistry 68(24) の紹介)。https://www.sciencedaily.com/releases/2020/06/200617121445.htm (苦味受容体TAS2R43/46の応答について)
  6. Lang et al., J. Agric. Food Chem. 2020, 68, 6692–6700。https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jafc.0c01373 (受容体の感度について。要旨は確認、数値の原文は未確認)
  7. UNC Health Newsroom(2026年5月)。https://news.unchealthcare.org/2026/05/unc-scientists-reveal-molecular-details-that-make-coffee-taste-bitter/ (TAS2R43の構造と苦味受容体の数について)

なおした ところ

更新履歴

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