1. 走って いる とちゅうで とまったら どうなるの?
1. もしドラムを止めたら、中の生コンはどうなるのか
1. ドラムを止めると生コンに何が起きるのか:分離と、それを防ぐ内部構造
しんごうで 車が とまると、となりに ミキサー車が ならぶことが あります。ドラムは、とまって いる あいだも ゆっくり まわって います。
ドラムの 中には、生コンが 入って います。生コンは、セメントと、砂と、小さな いしと、水を まぜた、まだ かたまって いない やわらかい コンクリートです。
もし まわさないで おくと、この ざいりょうが ばらばらに 分かれて しまうと いわれます。おもい ものは 下へ、かるい ものは 上へ、行きたがるからです。
たとえば、砂と 水を ペットボトルに 入れて ふると、はじめは まざって いても、おくと 砂が 下に たまります。ただし 本当の 生コンは ざいりょうが もっと 多くて、ねばりも あるので、これと まったく 同じ ことが おきる わけでは ありません。
ドラムの 中には、はねのような ものが ついて いて、まわると 生コンが 中で うごきます。そのため ドラムは、いっぱいには 入れません。うごく ばしょが ひつようだからです。
では、どれくらいの はやさで、どれくらいの あいだ、まわして いるのでしょう。
信号待ちで、隣にミキサー車が並ぶことがあります。ドラムは、止まっている間もゆっくり回っています。中身は混ぜ終わった生コンで、運ぶだけなのに、どうして回すのでしょうか。
生コンとは、セメントや砂、砂利、水などを練り混ぜた、まだ固まっていないやわらかいコンクリートのことです。これを入れたドラムを回し続けないと、材料が分離してしまうと説明されています[1]。
では、回すとなぜ分離を防げるのでしょうか。日本建設機械施工協会の資料によると、ドラム内の二本のらせん状のブレード(羽根)などの働きで、生コンに対流が起きます。生コンの中では、材料どうしがずれながら動きます。この動きも分離を防ぐと説明されています[2]。この資料は、対流が起きるためにドラムの中に空間が必要だとも述べています。
現行の国内メーカーのミキサー車も、ドラムの中にらせん状のブレードを備えています[3]。ドラムいっぱいに積むのではなく、中身が動ける余裕を残して使うわけです。
身近なものでたとえるなら、砂と水を入れたペットボトルを振ってから置くと、砂が底にたまります。ただし本物の生コンは材料がもっと多く、粘りもあるので、これと全く同じ現象が起きるわけではありません。
回し続ける理由が分かると、次の疑問が出てきます。どれくらいの速さで、いつまで回すのでしょうか。
ミキサー車(アジテータ車)の基本的な役目は、プラントで練った生コンをドラムに受け入れ、品質を保つために攪拌しながら運ぶことである[2]。生コンはセメント、砂、砂利、水などを混ぜた、固まる前のやわらかいコンクリートで、ドラムを回し続けなければこれらが分離する[1]。
では、回すことがなぜ分離を防ぐのか。日本建設機械施工協会の資料は、ドラム内の二条のブレードやミキシングブレード、混練孔などによって生コンの対流が起き、生コンどうしのせん断運動も含めて分離を防ぐ、と言われていると記す[2]。「言われている」という書き方は、この仕組みが定説として言い切られているのではなく、現場の経験を踏まえた説明であることを示している。なお、この対流を起こすためにはドラム内に空間容積が必要だとされる。
この点は、現行車の作りにも表れる。国内メーカーの現行のミキサー車は、ドラム内にらせん状のブレードを備えるという[3]。ドラムいっぱいには積まず、混ぜるための空間を残して使う点は、対流に空間が要るという前述の説明と合致する。
ただし、砂と水を瓶に入れて振ると砂が沈む、といった身近な分離の例は、あくまで直観を助けるたとえにすぎない。実際の生コンは粒の大きさもちがう複数の材料からなり、粘りもあるので、同じ経過をたどるとは限らない。
回す理由が分離防止だとして、残る疑問は、どれほどの速さで、どれほどの時間回すのかである。
2. 回す はやさは、いつも 同じ?
2. 毎分1.5回転と毎分13回転:速さを使い分ける理由
2. 通常は毎分1.5回転、最大で毎分13回転:速さと所要時間の制約
走って いる ときの ドラムは、1分間に 1.5回ほど。1回 まわるのに、40びょうくらい かかる 計算です。ほとんど 目に 見えないほど ゆっくりです。
でも、はやく まわせない わけでは ありません。ドラムに ざいりょうを 入れて、中で 生コンを つくる ときには、1分間に 13回ほども まわせる ことが あります。13回なら、5びょうに 1回ほどです。
どうして ゆっくり まわして はこぶのでしょう。生コンには、時間の きまりが あるからです。ざいりょうを まぜてから、ふつうは 90分ぐらいを めやすに、げんばへ とどけると されます。工場から げんばまでは、90分から120分いないと 書いた しりょうも あります。
その 間、ドラムが とまらない ように、ゆっくり まわし つづけて います。1.5回で 90分なら、およそ 135回、まわる 計算です。
運んでいる間のドラムの回転は、通常、毎分1.5回転ほどです[4]。1回転に約40秒かかる計算で、90分走れば約135回転になります。車の横で見ていても、回っているのがやっと分かる程度のゆっくりさです。
ところが同じドラムは、毎分13回転の高速でも回せます。高速回転は、ミキサー車の内部で材料を混ぜてコンクリートを製造する場合に使うと説明されています[4]。13回転なら約4.6秒に1回の速さです。「できる」ことと「いつもそうしている」ことはちがい、運搬中はずっと高速、というわけではありません。メーカーや機種で数字が異なる可能性もあります。
運ぶ間はなぜゆっくりなのでしょうか。生コンには鮮度があり、練り混ぜてから、通常の目安として90分以内に現場へ運ぶとされます[5]。工場から現場までを90〜120分以内で運ぶため、走行中も絶えずかき混ぜる、と説明する資料もあります[4]。
つまりドラムは、時間の制限の中で、中身が分かれないように、静かに回して支える役割を持っています。
では、現場に着いたら、この回転はどうなるのでしょうか。
運搬中のドラムの回転は、通常は毎分1.5回転ほどである[4]。これは1回転に約40秒、90分続ければ約135回転という計算になり、横を走る車から見ても回っていることがやっと分かる程度の速さである。
一方、同じドラムを毎分13回転の高速で回すこともできる。高速回転は、ミキサー車の内部で材料を混ぜてコンクリートを製造する場合に使うと説明されている[4]。13回転は約4.6秒に1回の速さで、運搬時の約9倍にあたる(13÷1.5≒8.7。どちらも資料に示された数値からの単純な割り算)。ただし「できる」ことと「いつも行う」ことは別であり、運搬中に高速で回すとは書かれていない。回転数はメーカーや機種によって異なる可能性がある。
運ぶ間はなぜ低速でよいのか。ここで効いてくるのが時間の制約である。土木学会の学生向けの記事は、生コンを練り混ぜてから、通常の目安として90分以内に現場へ運ぶとする[5]。運搬の説明記事には、工場から現場まで90〜120分以内に輸送する際、走行中に継続的に混合する必要があるとある[4]。資料によって90分、90〜120分と幅がある。ここでは通常の目安として、90分前後と紹介する。規格上の制限時間は外気温などによって異なる。
運搬中の回転は、分離を防ぎつつ、時間内に届けるための「待機」の動きだと整理できる。その回転を、現場でどう排出に切りかえるのかが次の問題になる。
3. 回す 向きを かえるだけで、どうして 出てくるの?
3. 現場に着いたら、ドラムを逆回転させる
3. 逆回転で排出する:二条のブレードが運搬と排出を兼ねる
げんばに ついたら、ドラムの 回す 向きを ぎゃくに します。すると、生コンが ドラムの うしろへ 動いて、うしろの はしから 出てきます。出てきた 生コンは、といのような シュートを 通って、行きたい ところへ 流れて いきます。
走って いる あいだは 一つの 向きで まわし、つくと ぎゃくむきに する。これだけで、「まぜながら はこぶ」ことと、「外へ 出す」ことが かわるのです。
なかには、らせん 形の はねが 二本 つながって ついて います。らせんの みぞを 生コンが すべる、と 考えると わかりやすいでしょう。ねじを まわす 向きで、進む ほうこうが かわるのと にて います。
ただし、はねの 形は メーカーや 車の しゅるいに よって ちがいます。ここで 書いた のは、おおまかな すがたです。
現場に着くと、ドラムの回転の向きを逆にします。走行中は一方向(正回転)に回して生コンをかき混ぜていますが、排出するときに逆回転にすると、ドラム内の連続した二本のブレードに沿って生コンが後方へ運ばれます。そしてドラムの後端から出て、フローガイドやシュート(とい)を流れて、決められた場所に流し込まれます[2]。
ドラムを回す速さを変えるだけでなく、向きを変えるだけで、「混ぜながら保つ」から「外へ出す」へ切りかわる、というのがこの方式の特徴です。同じブレードが、混ぜながら運ぶ役と、中身を押し出す役の両方を受け持っています。
たとえるなら、らせん状の溝がある道具を回すと、回す向きによって、溝の中のものが進む向きも逆になります。ねじに近い働きです。ただし、これは働きを理解するためのたとえで、羽根の形や枚数はメーカーや機種によって異なります。
では、こうした形のミキサー車は、いつ、どのように日本で生まれたのでしょうか。
現場到着後、ドラムを逆回転させると、ドラム内の連続した二条のブレードに沿って生コンが後方に運ばれ、ドラム後端から出てフローガイド・シュートを流れ、所定の場所に排出される[2]。
ここで押さえたいのは、運搬と排出の機能が、同じ二条のブレードで兼ねられている点である。正回転ではブレードが生コンを対流・せん断させて分離を抑え、逆回転ではブレードの螺旋に沿って生コンが後方へ移送される。つまり、回す向きを変えるだけで、「待機」から「排出」へ切りかわる。
ねじを回す向きによって進む方向が変わる、という類推は理解の助けになるが、これは働きの理解のためのたとえであり、ブレードの形や配置はメーカー・機種で異なる。一般則として扱うべきではない。
では、このような方式は、いつ、どのようにして日本に生まれたのか。
4. むかしは、生コンを どうやって はこんで いたの?
4. ミキサー車が生まれる前、生コンはどうやって運ばれたのか
4. 1949年の初出荷から傾胴型の登場まで:ダンプと鉄桶の時代
日本で 生コンが はじめて 出荷されたのは、1949年11月15日です。この日は、「生コンクリートの 日」と して、あとから きめられました。
そのころ、ミキサー車は まだ ありませんでした。1950年ごろから、生コンは トラックで はこばれるように なりました。荷台に そのまま のせたり、大きな 鉄の おけに 入れたり、ダンプで はこんだり しました。
でも、やわらかい 生コンは こぼれ ますし、ざいりょうが 分かれて しまう こともありました。ゆらす はねを つけた 車も ためされましたが、かえって 分かれて しまい、数台 つくって おわった そうです。
1951年ごろ、いぬづかという 会社が、日本で はじめての「かたむいた ドラム」の ミキサー車を つくった と いわれます。このかたちは、いまも 多く つかわれて います。
日本の 道は、山も 多く、急に とまる ことも あります。そこで、うしろの 口に くふうを して、生コンが こぼれにくい かたちも 生まれました。日本だけの 方式と 考えられて います。
日本で生コンが初めて出荷されたのは、1949年11月15日とされています。全国生コンクリート工業組合連合会は、この日を1988年に「生コンクリート記念日」と定めました[6]。
ところが当時、運ぶ専用の車はまだありませんでした。1950年ごろから生コンをトラックで運ぶことが始まりますが、最初は平ボディのトラックにそのまま積んだり、大きな鉄桶に入れたり、ダンプで運んだりしていました。やわらかい生コンはこぼれやすく、揺らす形の攪拌翼をつけた車も試されたものの、かえって分離を進めてしまい、数台の試作で終わったと記録されています[2]。
そして1951年ごろ、犬塚製作所が国産初の傾胴型トラックミキサを開発しました。傾胴型とは、ドラムが傾いた形のことです。上が開いたハイロー型という方式もありましたが、積載量を確保しにくく、1971年ごろに作られなくなりました。傾胴型は、現在まで主役の座を保っています[2]。ただし、「日本初のミキサー車」の表現は資料によってちがうため、ここでは「国産初の傾胴型」としています。
日本ならではの工夫もあります。ドラムの後端にシールパイプを付けて積載容量に余裕を持たせ、山間地の走行や急停車でも生コンがこぼれないようにした「シールホッパ型」は、日本固有の方式と考えられています[2]。
道路事情に合わせて形を変えてきた車だと分かると、街で見かけるミキサー車の見方が少し変わるかもしれません。
日本の生コン産業は、1949年11月15日(昭和24年)の初出荷に始まる。全国生コンクリート工業組合連合会は、1988年(昭和63年)にこの日を「生コンクリート記念日」とした[6]。ただし、出荷が始まったからといって、すぐに専用の運搬車が整ったわけではなかった。
日本建設機械施工協会の資料によれば、1950年ごろから生コンをトラックで運ぶことが始まった。当初は平ボディのトラックにそのまま、あるいは大きな鉄桶に入れて載せ、ダンプも使われた。やわらかい生コンはこぼれ、また揺動式の攪拌翼を付けた車は、かえって分離を進めてしまい、数台の試作で終わった[2]。攪拌翼を付けた車は、かえって分離を進めた。
こうした試行を経て、1951年ごろ、犬塚製作所で国産初の傾胴型トラックミキサが開発された。傾胴とは、ドラムが傾いた形をいう。上が開いたハイロー型は積載量を確保しにくく、1971年ごろ製造されなくなり、傾胴型が現在まで主役になっている[2]。なお「日本初のミキサー車」の表現は資料によって異なるため、「国産初の傾胴型」と限定して述べた。
日本の事情に合わせた改良もあった。ドラム後端のシールパイプで積載容量に余裕を持たせ、山間地の走行や急停車で生コンがこぼれるのを防ぐ「シールホッパ型」は、同資料によれば日本固有の方式と考えられている[2]。「考えられる」という留保が付いているので、固有と断定はしない。
運搬中の分離防止、通常90分前後とされる運搬時間、逆回転による排出という3つの条件に、日本の道路事情が加わって、現在の形が生まれたと整理できる。
5. こんど ミキサー車を 見かけたら
5. こんどミキサー車とすれちがったら、見てみたいこと
5. ミキサー車を見るときの視点と、資料案内
今日 できる ことが あります。ふたの しまる すきとおった ペットボトルに、砂と 水を 少し 入れて、しっかり ふたを しめます。ふってから 台に おいて、砂が どのくらいで 下に たまるか 見て みましょう。ふたは かならず しめて、おうちの 人と やって ください。のこった 砂は、そとの 土に もどします。
そとでは、歩道など 安全な ところから ミキサー車を 見て みましょう。走って いる ときも ドラムが まわって いるか。とまって いる ときは どうか。げんばに ちかづきすぎない ことが たいせつです。
もっと しりたい 人は、「けんせつ きかい せこう」と いう 本の 2014年5月号を さがして みて ください。ミキサー車の れきしが のって います。
今日できることから。ふたのしまる透明なペットボトルに砂と水を少し入れ、ふたをしっかり閉めて振り、台に置いて、砂が何秒ほどで沈むかを見てみましょう。ミキサー車のドラムの中とは条件がちがいますが、「分かれてしまう」感覚がつかめるはずです。使った砂は流しに流さず、外の土に戻してください。
外では、歩道など安全なところから、ミキサー車を見てみましょう。信号待ちでドラムが回っているか、1回転に何秒かかるか、時計で数えてみるのも手です。毎分1.5回転なら約40秒に1回です。工事現場には近づきすぎないでください。
資料を読むなら、日本建設機械施工協会の「建設機械施工」2014年5月号にある連載「コンクリート機械の変遷(3) トラックミキサの変遷」が、この記事の中心になった資料です。全国生コンクリート工業組合連合会のサイトには、生コンクリート記念日の宣言文が載っています。
観察は、運搬中のドラムの回転を見ることから始められる。信号待ちで回っているのは、時間内に届けるあいだ分離を防ぐための動きと考えられる。回転数を時計で数えれば、通常の毎分1.5回転(約40秒に1回)に近いかどうか確かめられる。個々の車で数値が異なる可能性はあるため、一台で結論を出さず、複数台で比べるとよい。安全のため歩道などの離れた場所から見て、工事現場には近づかない。
家でできる実験としては、透明なペットボトルに砂と水を入れて振り、静置してから沈む様子を観察する方法がある。生コンの材料構成とは異なるので、分離の直観を得るためのものと位置づける。ふたをしっかり閉め、使った砂は流しに流さず外の土に戻す。
一次資料としては、日本建設機械施工協会『建設機械施工』Vol.66 No.5(2014年5月号)の「コンクリート機械の変遷(3) トラックミキサの変遷」が、構造・歴史の両面で最も詳しい。全国生コンクリート工業組合連合会の生コンクリート記念日の宣言も、産業の始まりを知る手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
この記事は、次の資料をもとに書いています。ミキサー車の仕組みと歴史は、日本建設機械施工協会の資料を中心に、複数の資料を照らし合わせました。
- 乗りものニュース「ミキサー車のグルグル」 https://trafficnews.jp/post/95202 (ドラムを回し続ける理由)
- 日本建設機械施工協会『建設機械施工』Vol.66 No.5「コンクリート機械の変遷(3) トラックミキサの変遷」 https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2014/05/105.pdf (攪拌・排出の仕組み、国産初の傾胴型、運搬の歴史)
- ベストカーWeb「新明和工業の新型ミキサ車」 https://bestcarweb.jp/fullload/712497 (現行車のブレードの例)
- 乗りものニュース「ミキサー車のタンクはなぜグルグル回っている」 https://trafficnews.jp/post/129628 (回転数、運搬時間)
- 土木学会誌(学生向け)生コン工場見学記事 https://www.jsce.or.jp/journal/student/rc/201606.pdf (生コンの定義と運搬時間の目安)
- 全国生コンクリート工業組合連合会「生コンクリート記念日制定宣言」 https://www.zennama.or.jp/2-soshiki/kouryou/kinenbi.html (初出荷と記念日)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。