1. なんど いかを「れいか」と よぶの?
1. 「冷夏」は何度からそう呼ぶのか
1. 「冷夏」「暖冬」は3階級の名前ではなく、平年との比較で使う通称
気象庁の きせつよほうは、きおんを「ひくい」「へいねんなみ」「たかい」の 3つに わけます[1]。
ものさしは、1991ねんから 2020ねんまでの 30ねんぶんの きおんです。30まいの カードに きおんを かいて、ひくい じゅんに ならべると します。まん中の 10まいが「へいねんなみ」、それより ひくい 10まいが「ひくい」、たかい 10まいが「たかい」です[1]。
だから、この 30ねんの きろくを 3つに わけると、10まいずつに なります。3まいに 1まいの わりあいです[1]。これは むかしの きろくの わりあいで、これから そう なる かくりつでは ありません。
「れいか」と「だんとう」は、この 3つの なまえでは ありません。へいねんと くらべて、ずいぶん すずしい なつ、あたたかい ふゆを いう ふだんの よびかたです[10]。
では、へいねんから はなれた なつには、空の うえで なにが おきて いたのでしょう。
気温を3つに分ける線
気象庁の季節予報は、気温を「低い」「平年並」「高い」の3階級で表します。基準は1991〜2020年の30年間の値です。30個の値を小さい順に並べ、11〜20番目を「平年並」、それより低ければ「低い」、高ければ「高い」と定めています[1]。
この決め方だと、基準にした30個の値は3つの階級に10個ずつ分かれ、出現率は約33%(3回に1回)です。これを気候的出現率といいます[1]。33%は基準の30年の値の割合であり、毎年や各地点でそうなるという意味でも、予報が当たる確率でもありません。
通称としての冷夏・暖冬
「冷夏」「暖冬」は、この3階級の名前ではありません。平年値は天候を評価するものさしで、冷夏・暖冬・少雨・多雨のように、平年と比べて言い表すときの通称です[10]。数字で「何度以下が冷夏」と決まっている言葉として扱わないほうが安全です。
平年値の作り方は、別のメモ「平年値とは何か」にまとめています。ここでは、平年から大きく外れた年に空で何が起きていたのかへ進みます。
気象庁の季節予報は気温などを3階級で表し、1991〜2020年の30年の値のうち11〜20番目を「平年並」、それより低い・高いを「低い」「高い」と定める[1]。したがって階級を決める基準の30個の値は、各階級に10個ずつ、各約33%ずつ分かれる(気候的出現率)[1]。これは基準の30年の値の割合で、毎年・各地点で10回ずつ現れるという意味でも、予報の確率でもない。
「冷夏」「暖冬」は、この階級名ではない。平年値は気象・天候(冷夏・暖冬・少雨・多雨など)を評価する物差しで[10]、2つの語は平年との比較で言う通称として使われる。ここでは数値で定義された用語としては扱わない。平年値の作り方は別のメモ「平年値とは何か」にある。
では、平年から大きく外れた夏には、何が起きていたのか。次は、梅雨が明けなかった1993年を見る。
2. なぜ 1993ねんの つゆは あけなかったの?
2. 太平洋高気圧が出てこなかった1993年の夏
2. 1993年の冷夏 ── 太平洋高気圧の弱さとオホーツク海高気圧
1993ねんは 4がつから 10がつまで、ほぼ ぜんこくで ひくい きおんが つづきました[2]。6がつから 9がつは ながあめと ひざしの たりない 日が かさなり、おきなわと あまみ いがいは、つゆが あけた日が きまりませんでした[2]。
なつの 空は、ふつう 太平洋高気圧が 日本の ほうへ ふくらむ ことで、あつく なります。ふうせんが ふくらんで 日本まで とどく ようすです。ただし ほんとうは ふうせんでは なく、空気の 大きな まとまりです。
1993ねんは、この ふうせんが あまり ふくらみませんでした。梅雨の 前線は 日本の ちかくに いすわりやすく、そこへ オホーツクかいの 高気圧が あらわれ、きたひがしの かぜが つめたい 空気を はこんで きました[3]。
おこめの できぐあいを あらわす すうじ(さっきょうしすう)は、ぜんこくの へいきんで 74。「いちじるしい ふりょう」と ひょうかされました[3]。東北の なつの きおんは、1945ねんいこうで いちばん ひくい きろくです[2]。
なつは、たいようの ねつだけでは きまらないのですね。では、ふゆは どうでしょう。
梅雨前線がいすわった
1993年は、4〜10月にほぼ全国で低温が続きました。6〜9月は長雨と日照不足が重なり、沖縄・奄美を除いて梅雨明けが特定できませんでした[2]。東北地方の夏の気温は、1945年以降で最も低い記録です[2]。
気象庁の資料では、原因として、太平洋高気圧の張り出しが弱く、本州の南岸付近に前線が停滞しやすかったことが挙げられています[3]。夏の暑さは、太平洋高気圧がどれだけ日本へ張り出すかで大きく変わります。その高気圧が弱いと、梅雨前線が日本付近に居座りやすくなります。
北東の風が寒気を運んだ
もう一つは、オホーツク海高気圧の強まりです。この高気圧が現れると、東北の太平洋側へ、やませと呼ばれる冷たい北東風が吹きこみ、寒気が入りこみます[3]。
農作物への影響も大きく、水稲の作況指数は全国平均で74と「著しい不良」でした[3]。
1993年の夏は、太平洋高気圧の張り出しが弱く、梅雨前線が日本付近にとどまりやすかったのです。冬にも同じような「通り道」があるのでしょうか。
1993年は4〜10月にほぼ全国で低温が続き、6〜9月は長雨と日照不足が重なって、沖縄・奄美を除き梅雨明けが特定できなかった。東北地方の夏の気温は1945年以降で最も低い[2]。では、空の上で何が違ったのか。
気象庁の平成5年の記録は、6〜9月に本州南岸付近へ前線が停滞しやすく活動も活発だったこと、オホーツク海高気圧が強まったことを挙げる[3]。太平洋高気圧の張り出しが弱いと梅雨前線が日本付近にとどまりやすく、さらにオホーツク海高気圧から北東風(やませ、山背)が吹くと、東北の太平洋側へ寒気が入りこむ。つまり2つの高気圧の状態などが、この夏の低温に関わった。
その結果、水稲の作況指数は全国平均74の「著しい不良」となった[3]。
1993年の夏は、太平洋高気圧の張り出しが弱く、梅雨前線が日本付近にとどまりやすかった。冬には、どんな「通り道」が関わるのか。
3. ふゆの つめたい 空気は、どこへ いったの?
3. 寒気が日本まで来なかった2019/20年の冬
3. 2019/20年冬の記録的暖冬 ── 冬型の弱さと偏西風の蛇行
2019ねんの 12がつから 2020ねんの 2がつまで、ひがし日本と にし日本は、きろくに のこる あたたかい ふゆでした[4]。1946ねんから 47ねんの ふゆ いこうで、いちばん たかい きおんです[4]。
この ふゆは、ふゆらしい きあつの ならびかた(ふゆがた)が つづかず、つめたい 空気が 日本に ながれこむ ちからが よわかったのです[4]。
りゆうは いくつも ありました。つめたい 空気を つくる シベリアこうきあつが、ふゆの あいだ ずっと へいねんより よわかった。偏西風が 日本の ちかくで 北へ まがり つづけた。いちがつ いこうは、きた(ほっきょく)の まわりの 空気の ようすも かかわって いたと いわれます[5]。
ちきゅうが あたたまっている ことも、はいけいに あると 考えられています[5]。ひとつだけの せいでは なく、いくつもの ことが かさなった ふゆだったのです。
では、あたたかい ふゆや すずしい なつは、うみの ようすで あらかじめ わかるのでしょうか。
冬型が続かなかった
2019/20年冬(2019年12月〜2020年2月)は、東・西日本で記録的な暖冬でした。冬型の気圧配置が続かず、全国的に寒気の流入が弱かったためです[4]。東・西日本の冬の気温は、統計開始の1946/47年冬以降で最も高くなりました[4]。
重なった理由
気象庁の検討会は、要因をいくつも挙げています。シベリア高気圧とアリューシャン低気圧が冬を通して平年より弱かったこと。偏西風が日本付近で北に蛇行し続けたこと。1月以降は北極振動が正の状態になりやすかったこと。そして、地球温暖化に伴う長期的な気温の上昇が背景にあることです[5]。
冷夏が「高気圧の張り出し」で説明できたのに対し、この冬は原因が1つではなく、いくつもの条件が重なっていました。
では、この「重なり」の中に、海の様子はどう関わるのでしょうか。
2019/20年冬(2019年12月〜2020年2月)は、東・西日本で統計開始(1946/47年冬)以降で最も高い記録的な暖冬となった。冬型の気圧配置が続かず、全国的に寒気の流入が弱かったことが要旨だ[4]。
気象庁の検討会は、要因として次を挙げる。(1) シベリア高気圧とアリューシャン低気圧が冬を通して平年より弱かった。(2) 偏西風が日本付近で北に蛇行し続けた。(3) 1月以降、正の北極振動が卓越した。(4) 背景に地球温暖化に伴う長期的な気温上昇がある[5]。
夏の1993年が2つの高気圧の勢力で説明しやすかったのに対し、この冬は複数の要因が重なった例である。この冬は、複数の要因が重なったと説明されている。
では、熱帯の海のエルニーニョは、こうした夏や冬をどこまで決めるのか。
4. エルニーニョの ねんは、れいかか だんとうに なるの?
4. エルニーニョの年は冷夏か暖冬になるのか
4. エルニーニョ現象と日本の天候 ── 傾向であって確定ではない
エルニーニョは、赤道の たいへいようで、ひろい はんいの うみの みずが、まん中ごろから 南アメリカの ちかくまで へいねんより あたたかく なって、1ねんほど つづく ことです[6]。
この ときは、夏に 太平洋高気圧が 本州へ はりだす ちからが よわまり、にし日本で きおんが さがりやすいと いわれます[7]。ふゆは、にし日本で きおんが へいねんなみか たかめに なりやすい、という ようすです[7]。
でも、「なりやすい」は「かならず なる」では ありません。1948ねんから 2021ねんの きろくでは、エルニーニョの なつは にし日本で ひくい けいこう、きた・ひがし日本で へいねんなみか ひくい けいこう。ふゆは にし日本で へいねんなみか たかい けいこうです[8]。まいかい そうなる とは かぎりません[8]。
ラニーニャの ときは、なつに 北日本で きおんが たかい けいこうが あります。ふゆは、きおん・あめの りょう・ひざしの どれにも、はっきりした けいこうが ありません[9]。
うみは、そらの ようすを すこし かたむけるけれど、きめて しまう わけでは ないのです。
エルニーニョとは
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です[6]。
気象庁の解説では、エルニーニョのとき、西太平洋の熱帯域では海面水温が低くなり、インドからフィリピン周辺の積雲対流が不活発になります。その結果、夏は太平洋高気圧の本州への張り出しが弱まり、西日本で気温が下がりやすくなります[7]。冬は、亜熱帯ジェット気流が中国周辺で南へ寄り、寒帯前線ジェット気流が日本の北を流れるため、西日本で平年並か高めになりやすいと説明されています[7]。
あくまで傾向
1948〜2021年の統計では、エルニーニョの夏(6〜8月)の気温は、西日本で低い傾向、北・東日本で平年並か低い傾向でした。冬(12〜2月)は西日本で平年並か高い傾向です[8]。ただし、毎回そうなるわけではありません[8]。「エルニーニョなら冷夏・暖冬になる」とは言えません。
ラニーニャのときは、夏に北日本で気温が高い傾向があります。冬は、平均気温・降水量・日照時間のいずれにも、統計的に有意な傾向がありません[9]。
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象である[6]。
気象庁の解説では、エルニーニョ時は西太平洋熱帯域の海面水温が低く、インド〜フィリピン周辺の積雲対流が不活発になる。夏は亜熱帯ジェット気流が南に偏り、太平洋高気圧の本州への張り出しが弱まって西日本で気温が下がりやすい。冬は亜熱帯ジェット気流が中国周辺で南へ寄り、日本周辺で弱まり、寒帯前線ジェット気流が日本の北を流れるため、西日本で平年並か高めになりやすい[7]。
統計(1948〜2021年)では、エルニーニョの夏(6〜8月)の気温は西日本で低い傾向、北・東日本で平年並か低い傾向。冬(12〜2月)は西日本で平年並か高い傾向だ[8]。しかし「傾向」は、毎回起きるという意味ではない[8]。ラニーニャ時は夏に北日本で高い傾向があるが、冬は平均気温・降水量・日照時間のいずれにも有意な傾向がない[9]。
前節の1993年夏や2019/20年冬を、エルニーニョの結果と言い切ることはできない。海面水温は空の通り道を傾けるが、その年の天気はほかの要因も含めて決まるからだ。
5. じぶんでも しらべて みよう
5. 自分でも調べてみたくなったら
5. 出口 ── 平年値と資料の読みどころ
まいにちの さいこうきおんを、1しゅうかん かいて みましょう。いちばん たかかった 日、いちばん ひくかった 日に じるしを つけて、1しゅうかんの 3つに わけて ならべます。たかい 日、まん中の 日、ひくい 日の 3つです。きせつよほうの 3つの わけかたの まねっこです。
おうちの 人と いっしょに、まいあさ 空を 見て、くもりや はれを かいて おくのも いいですね。あめの 日が つづくと、どんな きおんに なるかが 見えて きます。
1週間、毎日の最高気温を書きとめてみましょう。7日分を高い順に並べ、上の2〜3日を「高い」、真ん中を「平年並」、下の2〜3日を「低い」として分けてみます。季節予報の3階級の考え方を、小さく体験できます。
資料を読み比べるなら、1993年の夏は気象庁「平成5年低温・多雨・日照不足」の「原因」の部分、2019/20年の冬は「2020年冬の天候の特徴とその要因について」の要因の一覧に注目してください。高気圧の張り出しと寒気の流れこみという、空の通り道のちがいが見えてきます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:気象庁の公開資料を使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。
- 気象庁「3つの階級について」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kisetsu_riyou/class/index.html (3階級の分け方と、出現率について)
- 気象庁「東北地方の夏の天候:コラム」。https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/tohoku/sum_column.html (1993年の低温・長雨・梅雨明けについて)
- 気象庁「平成5年低温・多雨・日照不足」。https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/kanman/1993/1993.html (1993年の原因と稲の作況について)
- 気象庁「令和2年冬の天候」(報道発表)。https://www.jma.go.jp/jma/press/2003/02b/tenko201202.html (2019/20年冬の暖冬について)
- 気象庁「2020年冬の天候の特徴とその要因について」。https://www.jma.go.jp/jma/press/2004/14b/kentoukai20200414.html (2019/20年冬の要因について)
- 気象庁「エルニーニョ現象とは」。https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html (エルニーニョ現象の定義について)
- 気象庁「エルニーニョ現象による日本の天候」。https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino3.html (夏と冬の仕組みについて)
- 気象庁「エルニーニョ現象時の日本の天候」。https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/tenkou/nihon1.html (エルニーニョ時の気温の傾向について)
- 気象庁「ラニーニャ現象時の日本の天候」。https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/tenkou/nihon2.html (ラニーニャ時の傾向について)
- 気象庁「平年値(統計期間1991〜2020年)の解説」。https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/normal/2020/doc/kaisetsu.pdf (平年値が天候を評価するものさしであることについて)
なおした ところ
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