1. とげと ぶつぶつは、べつの もの?
1. トゲと、その台のイボ
1. トゲとイボは、多細胞の毛じ
きゅうりの ひょうめんを よく 見ると、ちいさな とげが あり、その 下に ぶつぶつが あります。ある 本には「とげが あり、その 台に ぶつぶつが ある」と かいて ありました[2]。
この とげと ぶつぶつは、はっぱや くきに はえている、ほそい うぶ毛と、おなじ ものだと いわれます[1]。ふつうの 毛と ちがって、ひとつの さいぼうだけで できた 毛では なく、たくさんの さいぼうで できています[1]。
きゅうりの うぶ毛が、ふくらんで ぶつぶつに なった、と おもうと わかりやすいかも しれません。ただし 本当は、ぶつぶつと とげは 毛の なかまで、いつも おなじ かたちに なるわけでは ありません。
2. 白い ぶつぶつと 黒い ぶつぶつ
2. 白いぼと黒いぼは、トゲの先の色のちがい
2. 黒いトゲになるかどうかを決める遺伝
おみせの きゅうりには、「白いぼ」と 「黒いぼ」と いう ものが あります。ちがいは、とげの 先の 色です。白いぼの わかい みでは とげに 色が なく、黒いぼでは とげの 先が 黒く なります[1]。
ぶつぶつそのものが 白いか 黒いかでは なく、とげの 先の 色が ちがうと いう ことです。
3. とげは、なんの ために あるの?
3. トゲは身を守る役に立っているのか
3. 毛じの働きと、果実の毛じについての証拠の少なさ
うぶ毛には、いろいろな はたらきが あると いわれます。虫や どうぶつに たべられにくく する こと、水が にげるのを へらす こと、お日さまの 光から まもる こと、などです[3]。
ちょうの ようちゅうを つかった 研究では、うぶ毛が おおい はっぱと すくない はっぱで、食べはじめるまでの 時間や そだちかたが ちがいました[4]。
ただし この 研究は、おもに はっぱを 見た ものです。きゅうりの みの とげが、たべられるのを ふせいで いるかは、まだ はっきり わかって いません。おなじ やくめが あるのかも しれない、と 考えられて いる ところです。
毛じの役目として言われていること
植物の毛じは、草を食べる動物や昆虫から身を守ること、水分が逃げるのを減らすこと、紫外線から守ることに、重要な役割をもつと最近のレビュー論文は述べています[3]。
キュウリとヒョウタンを比べた研究
2023年に発表された研究は、キュウリとヒョウタンの仲間を比べました。毛じが多いか少ないかで、チョウやガの幼虫が食べ始めるまでの時間や、成長が変わりました。この研究は、毛じが、体の中にもつ化学物質による防御とは別に、食べられるのを防ぐ働きをすると結論しています[4]。
果実のトゲについては
ここで注意が必要です。この研究の対象は主に葉で、果実のトゲが食害を防ぐと直接示したものではありません。レビュー論文も、果実の毛じは他の部分に比べて研究が少ないと述べています[3]。果実でも似た役割があるのかもしれない、という段階です。
近年のレビュー論文は、植物の毛じが草食動物・昆虫に対する防御、水分損失の軽減、紫外線からの保護に重要な役割をもつと述べている。同時に、果実の毛じは他の組織に比べて研究が少ないとも指摘している[3]。
Kaur と Kariyat(2023)は、キュウリとヒョウタン属(Lagenaria)を比べ、毛じの多寡によって、チョウ目幼虫が食べ始めるまでの時間や成長が変わることを示した。毛じは化学防御とは独立に、摂食前後の両方で効く防御手段になりうると結論している[4]。
ただし、この研究は主に葉を対象としており、果実のトゲが食害を防ぐと直接示したものではない。前者のレビューも一般論であり、果実のトゲが食害を防ぐと直接示した証拠は、今回確認した資料からは見つからなかった。
4. むかしの きゅうりは、どんな あじ?
4. 昔は、黄色く熟した実を食べていた
4. 未熟果を食べる習慣の成立 ── 1780年代〜江戸末期
きゅうりは、ヒマラヤ山の ふもとが ふるさとと いわれます[5]。日本には、千年ほど まえに つたわって いました[5]。
そのころの ひとは、いまの ように みどりの うちでは たべず、黄色く なるまで そだてて たべて いたようです[5]。黄色い みは にがくて、あまり すかれなかった ようです[5]。
みどりの わかい うちに たべる ように なったのは、ずっと あとの ことです。いまの きゅうりの あじは、えどの おわりごろから ひろまった たべかたが もとに なっています[5]。
黄色くなってから食べていた
キュウリは北西インドのヒマラヤ山脈のふもとが原産地といわれ、日本には遅くとも10世紀前半には伝わっていました。平安時代の辞書『和名類聚抄』などに、「胡瓜」(からうり)の名が見えます[5]。
東アジアでは長く、完熟して黄色くなったキュウリを食べていたようです。おそらく強い苦味があり、好まれなかったと考えられています[5]。
「下品な瓜」と言われた時代
江戸時代の儒学者の貝原益軒(1630〜1714年)は、晩年の本『菜譜』で、キュウリを瓜の仲間では下品で、味がよくなく、小さな毒もある、と書きました[5]。
未熟なうちに食べるようになる
未熟なキュウリを食べる習慣は、1780年代以降に始まったとされます。定着したのは、江戸時代の末期、19世紀半ばを過ぎたころです[5]。
キュウリは北西インドのヒマラヤ山脈のふもとが原産地といわれ、日本では遅くとも10世紀前半に伝わっていた。『和名類聚抄』や『本草和名』に「胡瓜」(加良宇利)として載る[5]。
東アジアでは長く、完熟して黄色くなった果実を食べていたとされる。強い苦味が嫌われたためと筆者は推定している。江戸時代には「下品」「毒がある」など評価が低く、貝原益軒(1630〜1714年)は『菜譜』で、瓜類の下品で、味がよくなく、小毒があると記した[5]。
未熟な果実を食べる習慣は1780年代以降に始まり、定着は江戸時代末期(19世紀半ば過ぎ)とされる。水分の多い華北系の品種が大規模に入ったのは明治以降で、戦後に生野菜の習慣が定着して消費が伸びた[5]。食べる時期が変わったことは、トゲやイボが目に見える形の、緑色の若い実が主役になったことを意味する。
5. とげが すくない きゅうりも あるの?
5. トゲの少ないキュウリもある
5. 「イボ無しキュウリ」と、ブルームのない系統
いまは、とげが ほとんど ない きゅうりも あります。「イボなしキュウリ」と よばれて います[2]。
ある 本には、とげは おちやすく、とげの あとには ばいきんが つきやすいと いう ことも かいて あります[2]。もちろん、きゅうりは よく あらって たべましょう。
のうぎょうの 研究所の ひとたちも、ひょうめんに ぶつぶつも とげも ない きゅうりを つくり、2011年に はっぴょう しました[6]。
「イボ無しキュウリ」
目立ったトゲがほとんどないキュウリ品種も出ています。「フリーダム」などです。こうしたものは「イボ無しキュウリ」と呼ばれます[2][1]。フリーダムは、果実の表面に白い粉(ブルーム)も出ません[1]。
品種名は、資料によって表記が別のものもあるので、ここでは1つだけ挙げています。
トゲは落ちやすい
坂田さんの解説によると、トゲは落ちやすく、トゲの跡には大腸菌などの生きた菌が付きやすく、洗っても落としきれないとされています[2]。
果実の表面がなめらかな系統
農研機構の「きゅうり中間母本農6号」は、果実の表面にブルームもイボ・トゲもありません[6]。
トゲのほとんどないキュウリの品種が出ており、「イボ無しキュウリ」と呼ばれる。「フリーダム」はブルームも出ない[2][1]。同じ系統の品種名が、資料により別の表記で書かれることがあるため、ここでは名を1つに絞った。
トゲは落ちやすく、トゲ跡には大腸菌などの生菌が付着しやすく、洗っても落としきれないとされる[2]。ただし、この記述から、品種改良の動機がこの点だったとは読み取れない。
農研機構が2011年に発表した「きゅうり中間母本農6号」は、果実表面にブルームもイボ・トゲもない[6]。トゲは、未熟果を食べる文化と、見た目や口ざわりへの好みの中で、少なくてもよいものになってきたともいえる。ただし、この点は資料が明示しているわけではなく、筆者の推測にとどまる。
6. じぶんでも しらべて みよう
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
いえに きゅうりが あれば、おうちの ひとと いっしょに 見て みましょう。むしめがねが あれば、とげの 先と、つけねの ぶつぶつを 見くらべます。とげは 手に ささる ことが あるので、そっと さわります。
おみせで できること
やおやさんや スーパーで、いろいろな きゅうりを 見くらべて みましょう。とげの 先が 白いか 黒いか、とげが すくないか。あれば、ちがいが わかります。
今日できること
家にキュウリがあれば、虫めがねでトゲの先と、その土台のイボを見比べてみましょう。トゲはささることがあるので、そっと触ります。あれば、白いぼと黒いぼで先の色を比べても面白いです。
お店でできること
八百屋やスーパーで、トゲの多さやイボの高さがちがうキュウリを探してみます。見つかれば、産地や品種名を書いておきましょう。
資料を読むなら
[1]は「イボ無しキュウリ」の解説、[2]は農畜産業振興機構の月報、[5]は日本語で読める論文です。
今日できること
手元のキュウリのトゲの先とつけ根を、虫めがねで観察する。トゲは手に刺さりやすいので、指先で軽く触れる程度にする。白いぼか黒いぼかを、トゲの先の色で判断してみる。
出かけてできること
店頭でトゲの多さ、イボの高さ、ブルームの有無が異なる品種を見比べ、産地や品種名を記録する。
資料を読むなら
- [1]は「イボ無しキュウリ」の解説で、白いぼ・黒いぼの遺伝の話も載る。
- [2]は農畜産業振興機構の月報で、トゲとイボの関係の説明がある。
- [5]は日本への伝来と普及の歴史を扱う。
- [6]は農研機構の発表資料。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
アクセス日はすべて2026-09-29。
- 「イボ無しキュウリ」解説(農林水産・食品産業技術振興協会)https://www.noden.or.jp/asset/00032/bio2015_01.pdf (毛じ・白いぼ/黒いぼ・遺伝・イボ無し品種)
- 坂田好輝「加工・業務用野菜の品種及び技術研究最前線①」月報 野菜情報 2007年12月(農畜産業振興機構)https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/0712_joho02.html (トゲとイボの関係・トゲ跡・トゲの少ない品種)
- The role, regulation and application of plant fruit trichomes. Molecular Horticulture, 2025(PubMed 要旨)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40775671/ (毛じの働き・果実の毛じの研究の少なさ)
- Kaur & Kariyat, 2023, Journal of Pest Science(PubMed 要旨)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37168103/ (キュウリとヒョウタン属の毛じと食害)
- 吉田宗弘「キュウリの伝来と普及」https://ku-food-lab.com/wp/wp-content/uploads/2022/04/b8f879df029b7b91ec380580aee62523.pdf (原産地・伝来・未熟果を食べる習慣)
- 農研機構プレスリリース「果皮の光沢に優れるきゅうり中間母本農6号」(2011年)https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/vegetea/011445.html (イボ・トゲのない系統)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。