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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

むかしの インターネットは、どうして 電話の ような 音が したの?

あの「ピー・ガー」は何だったのか ── 電話回線でつないだ時代の音と、夜11時の行列

ダイヤルアップ接続の音の正体 ── 音のしくみから、ブロードバンドへの移り変わりまで

分野:技術

むかし、パソコンを インターネットに つなぐと、「ピー、ガー」と 音が しました。こわれた 音では ありません。

あの 音は、きかいと きかいが、「どの はやさなら 話せるかな」と 相談して いた 声です。この メモでは、音の わけと、その あと インターネットが どう かわったかが 分かります。

むかし、パソコンをインターネットにつなぐと、スピーカーから「ピー、ガー」という音が聞こえました。故障の音ではなく、モデム同士が回線の具合を確かめ、使える速さを相談している最中の音です。

なぜ電話のような音だったのか。電話代を気にして夜11時を待った人がいたのはなぜか。音はなぜ消えたのか。このメモを読むと、その流れが分かります。

ダイヤルアップ接続のときにスピーカーから聞こえた「ピー・ガー」は、故障音ではない。モデム同士が、電話網に載せられる音の信号で、対応方式と回線の状態を確かめ合う交渉の音だった。

なぜ音だったのか、夜11時に接続が集中したとされるのはなぜか、そのあとブロードバンドに交代したのはいつごろか。この流れが分かるようにまとめる。

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1. 電話の 線に、音で のせる

1. 電話の線に、データを音の形にして載せる

1. モデムの役目 ── データを音声帯域の音に変える

むかしの インターネットは、家の 電話の 線を 使って つなぎました。電話の 線は、もともと 人の 声を 運ぶ ために 作られた ものです。声の 高さの はんいは 決まって いて、それより 高すぎる 音や ひくすぎる 音は、あまり 通りません[2]。

そこで、パソコンの 中の データを、電話の 線を 通る 音に かえる そうちが ありました。モデムと いいます[1]。

たとえば、糸電話を 思い出して ください。糸には 声しか 通れません。文字を そのまま 入れる ことは できないので、声の 高い・ひくいで 合図を 作る ようなものです。ただし 本当の モデムは、もっと 細かく、はやく 音を かえて います。

むかしのインターネットは、家庭の電話線を使ってつなぎました。電話の回線は、人の声を運ぶために作られていて、通せるのは、声に向いた限られた高さの範囲の音です。音の高さには上限があって、それが速さの限界の背景になります[2]。

パソコンの中のデータは、そのままでは電話網に載りません。そこで、データをこの範囲の音に変える装置が使われました。モデム(変調・復調装置)です。すでにある電話網をそのまま使うために、データのほうを音の形にしたのです[1]。

糸電話にたとえると、糸には声しか通れないので、声の高い・低いで合図を作るようなものです。実際のモデムは、もっと細かい音の変化を、とても速く重ねています。

モデム(modem、変調・復調装置)は、デジタルの情報を、電話網が運べるアナログの周波数の信号に符号化する装置だ。ダイヤルアップ接続では、既存の電話網に載せるために、データを可聴帯域の音の形にした[1]。

電話回線は音声周波数の範囲を通す作りで、これがアナログモデムの速度の限界の背景になる[2]。通せる帯域には上限がある。

2. ピーと ガーは、きかいの 相談

2. 音は「つなぐ前の相談」だった

2. ハンドシェイク ── 応答音、変調方式の交渉、V.34の4段階

電話を かけると、相手の モデムが 出ます。まず 相手が、あいさつの ような 音を 出します。この 音は、回線の まん中に ある 「こだまを おさえる しかけ」などを 止める 音でも あると、かいせつ されて います[3]。

そのあと 二つの モデムは、「わたしは この 話し方が できるよ」と 教え合い、二人とも できる 話し方を さがします[3]。さらに、回線が どれくらい 音を よわめるかを、ためしの 音で しらべます[3]。

ある 決まりごとの モデム(V.34)では、この 相談が 4つの 場面に 分かれて いました。回線との やりとり、回線の しらべ、こだまを けす れんしゅう、さいごの ちょうせいです[4]。電話の 相手に 声で「聞こえますか」と たしかめて から、話す 速さを 決める ようなものです。

電話がつながると、相手側(応答側)のモデムが、まず特別な応答音を出します。この音は、回線の途中にあるエコー(こだま)抑制の回路などを止める役目もあると説明されています[3]。

次に、二つのモデムは、自分が使える通信方式(変調方式)を伝え合い、双方が使える方式を探します。さらに、回線でどれくらい信号が弱まるかを、試験用の信号で調べます[3]。使える速さは、この相談の結果で決まります。

V.34という規格の接続は、回線とのやりとり、回線の試験、エコーの打ち消しなどの練習(トレーニング)、最終調整という4つの段階で進みます[4]。「聞こえますか」と確かめてから、話す速さを決める会話に似ています。

V.8方式で始まる接続では、応答側モデムがまず2100Hzの応答音(ANSam)を出すとされる。この音は、回線上のエコー抑制回路などを無効にする働きも持つ[3]。

続いて両モデムは、対応する変調方式を一覧にして伝え合い、どちらも使える方式を選ぶ。回線の減衰などは試験信号で測る[3]。聞こえる「ピー・ガー」は、この交渉の過程が可聴音として出たものだ。

V.34では、Phase 1(回線との相互作用)、Phase 2(試験と距離測定)、Phase 3(エコー打ち消しと等化器の訓練)、Phase 4(最終訓練)の4段階で進む[4]。

3. 音は、わざと 聞こえるように して あった

3. 音がスピーカーから聞こえたわけ

3. 初期設定でスピーカーが鳴った ── ATM0で消せた

どうして 音が スピーカーから 聞こえたのでしょう。ある かいせつでは、当時の モデムは、つなぐ あいだの 音を 出すのが はじめの せっていだったと 書かれて います[3]。

書いた 人は、まちがえて 人の 電話に かけて しまった ときも、音で 気づけて、電話に 出て あやまる 時間が あるからかも しれない、と 考えて います[3]。これは 書いた 人の 予想です。音を けす めいれいも ありましたが、ソフトや きしゅに よって ちがいます。

あの音がスピーカーから出たのは、当時のモデムが、接続中の音をスピーカーから出すのを初期設定にしていたためだと説明されています[3]。

解説の筆者は、うっかり人の電話にかけてしまったとき、音で気づけて受話器を取って謝る時間があったのではないか、と推測しています(筆者自身が推測と断っています)[3]。ATM0という命令で消せましたが、それを送るのはソフト側で、機種による違いもあります。

音がスピーカーから聞こえたのは、当時のモデムが、ハンドシェイクの音をユーザーに聞かせるのを既定にしていたためと説明される。誤って人間に電話した場合にも受話器を取る時間が残る、という利点は、筆者自身が推測(speculation)として述べたものだ[3]。

音を消すにはATM0のコマンドを使うが、送るのはソフト側で、機種依存がある[3]。すべての機種・ソフトで同じ設定だったとまでは、資料からは言えない。

4. 電話代が かかる インターネット

4. つないでいる間は電話代がかかった

4. V.90の56kbpsと、時間課金の時代

電話の 線を 使うと、はやさには、これより 上には いけない かぎりが ありました。1998年に 決まった 世界の きまり(V.90)では、上りの 速さは 1秒びょうに 多くて 33,600ビット、下りは 多くて 56,000ビットです[5]。「56K」と いわれた モデムの 数字は、一ばん 上の 数字で、いつも 出る わけでは ありません。

もっと 大きな ざんねんな ことが ありました。1996年ごろ、インターネットを 使う 人は、プロバイダ(つなぐ 会社)が 決めた 電話番号に 電話を かけて つなぎました。つなぐ 時間に 合わせて、電話代が かかりました[6]。

ずっと つなぎっぱなしに できる 家庭向けの サービスは、2000年の「フレッツ・ISDN」が はじまりの ほうでした。それまでは、つないだ 時間に おうじて 電話代が かかるのが ふつうでした[6]。

電話回線を使う方式には、速さの上限がありました。1998年9月に承認されたITUの勧告V.90は、公衆電話網で、下りが最大56,000ビット/秒、上りが最大33,600ビット/秒のモデムの組を定めています[5]。「56K」は下りの上限で、実際の速さはそれ以下でした。

もう一つの悩みは、お金です。1996年当時、インターネットを使うには、プロバイダが指定する電話番号に電話をかけるダイヤルアップ接続が主流で、つないでいる時間に応じて通話料がかかりました[6]。

家庭向けの常時接続サービス「フレッツ・ISDN」が登場するのは2000年です[6]。それまでは、時間に応じた通話料が普通でした。

ITU-T勧告V.90(1998年9月承認)は、公衆電話網で下り最大56,000bit/s・上り最大33,600bit/sのデジタル/アナログモデムの組を定める[5]。56kは下りの上限値であり、実測はそれより低い。

費用の面では、1996年当時、ISP指定の電話番号に電話をかけるダイヤルアップ接続が主流で、接続時間に応じて通話料が加算された[6]。一般家庭向けの常時接続サービス「フレッツ・ISDN」の登場は2000年で、それまでは接続時間に応じた通話料が普通だった[6]。

5. 夜の 11時に、電話を かける 人が ふえた?

5. 夜11時を待つ人たち? ── テレホーダイ

5. テレホーダイ ── 23時〜翌8時の定額と、23時に集中したとされる話

電話代を 気に する 人の ために、NTTには「テレホーダイ」と いう わりびきが ありました。夜の 11時から 朝の 8時までの あいだ、あらかじめ 決めた 電話番号(2つまで)への 電話が、きまった ねだんに なりました[7][8]。1995年に はじまったと されて います。

だから 夜の 11時ごろに、電話を かけて つなぐ 人が ふえたと つたえられて います[7]。この 話は 一つの ものに かかれた ことで、ほんとうに どのくらいの 人が いたかは 分かりません。

この わりびきは、電話の しくみが かわる ことに 合わせて、2023年の 終わりから 2024年の はじめに かけて おわりました[9]。

NTTには、「テレホーダイ」という割引がありました。夜11時から翌朝8時まで、あらかじめ登録した2つまでの電話番号への通話が定額になるものです[7][8]。1995年8月に始まったと説明されていますが、「1995年ごろ」と見ておくのが安全です。

プロバイダのアクセスポイントの番号を登録すれば、夜間は接続時間を気にせずにつないでいられます。そのため、23時ごろに接続が集中した、と伝えられています[7]。ウィキペディア1つに基づく話なので、断定はしません。

固定電話がIP網に移行し、通話料が一律の定額になることにあわせて、テレホーダイなどの割引サービスは終了すると、NTT東西が発表しました[9]。終了時期は2023年末〜2024年1月と、資料により書き方が分かれます。

テレホーダイは、NTTが1995年8月22日から提供したとされる割引で、23時〜翌8時に、あらかじめ指定した2つまでの電話番号への通話が定額になった[7]。NTT東の夜間定額のダイヤルアップ接続サービスとして、@ITも同じ時間帯(23:00〜8:00)を記す[8]。開始日はウィキペディアに基づく数字である。

夜間のみ定額なので、23時ごろにアクセスポイントへの接続が集中した、と伝えられる[7]。ウィキペディア単独の記述で、接続数の実測値ではない。

終了は、固定電話のIP網移行に伴う通話料のフラット化のためで、2022年にNTT東西が発表した[9]。報道は「2024年1月に終了」、ウィキペディアは「2023年12月31日まで提供」と書き方が異なり、同じ出来事の表し方の違いとみられる。

6. 音が 聞こえなく なった あと

6. ADSLと光ファイバーへ ── 音が消えていく

6. ブロードバンドへの交代 ── DSLの急増とFTTHの逆転

2000年代に 入ると、電話を かけずに ずっと つながる サービスが ふえました。2002年3月の DSL(電話の 線を 使う べつの つなぎ方)の 数は 238万こで、1年で 34ばいくらいに なりました[10]。

その あと 光ファイバー(ガラスの ほそい 線)も ふえます。2005年から ふえ、2008年には DSLの 数を 上回りました[11]。

パソコンの ある 家の うち、2002年は 70.6%が 電話の 線を 使った つなぎ方でした。2010年には 77.9%が ブロードバンド(はやい つなぎ方)に なりました[11]。これは 家に 聞いた 調べで、つないだ 数では ありません。

音の わけを 知ると、「ピー・ガー」が、電話の 決まりに 合わせて つないで いた ころの 声だったと 思えて きます。

2000年代に入ると、電話をかけ直す必要のない常時接続が広がります。平成14年(2002年)3月時点のDSL回線は238万件で、1年間で約34倍に急増したと、総務省の白書は書いています[10]。

その後、光ファイバー(FTTH)が2005年以降に増え、2008年にはDSLの契約数を上回りました[11]。

パソコンを持つ世帯で見ると、2002年は70.6%が、電話線のダイヤルアップなど狭い帯域の接続(ナローバンド)を使っていました。2004年には、ナローバンドとブロードバンドが並びます。2010年には77.9%がDSL・光・ケーブルのブロードバンドです[11]。これは世帯調査の割合で、契約数ではありません。

「ピー・ガー」は、電話網の決まりに合わせてデータを音にしていた時代の、接続の声でした。その声が聞こえなくなったころには、つなぎ方そのものが変わっていました。

総務省『平成14年版情報通信白書』は、平成14年(2002年)3月時点でDSL回線が238万件、1年間で34倍に急増したと記す[10]。238万÷34≒7万件が前年の水準となる。

『平成23年版情報通信白書』によると、パソコン所有世帯のうちナローバンド利用は平成14年に70.6%、平成16年に両者が並び、平成22年には77.9%がDSL・FTTH・ケーブルのブロードバンドになった。FTTHは平成17年以降増え、平成20年にDSLの契約数を上回った[11]。割合は世帯調査で、契約数ではない。

ダイヤルアップの56kbpsは下りの上限値[5]である。

7. 自分でも 調べて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

やって みよう。声の 高い・ひくいで、合図を 送る あそびです。家の 人や 友だちと 二人で やります。

「高い 声は ○、ひくい 声は ×」と 決めます。1人が 高い・ひくいを 5回 ならべて、声だけで 5つの こたえを つたえます。もう 1人は 見ないで 聞いて、紙に ○と ×を 書きとります。合って いましたか。

声を 大きく しすぎない こと。かぜを ひいて いる ときは やめましょう。モデムは、この 高い・ひくいの 合図を、目に 見えない ほど はやく 音で して いました。

やってみよう。声の高い・低いで合図を送る遊びです。「高い声は○、低い声は×」と決めて、1人が高低を5回並べ、もう1人は顔を見ずに聞いて、紙に○と×を書きとります。合っていたでしょうか。モデムが音の変化にデータを乗せていた考え方を、口で体験できます。声を張り上げすぎないようにしましょう。

もっと調べたい人は、ITUのV.90の勧告ページ[5]で、規格の名前と数字を確かめられます。総務省の白書[10][11]は、DSLと光の増え方の数字が載っています。windytanさんの解説[3]は、音を図にして説明していて、英語です。

手元でできる体験として、声の高低による合図遊びがある。「高い声=○、低い声=×」と決め、1人が高低を5回並べ、もう1人が聞き取って記録する。データを音の高さの変化に載せるモデムの発想を、声で確かめられる。

原典は、ITU-T V.90のページ[5]、総務省の白書[10][11]、windytanの解説[3](英語、接続音を図示)、INTERNET Watchの30周年特集[6]が読みやすい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:ウィキペディア、大学の講義資料、モデム技術の解説、ITUの勧告、報道記事、総務省の白書を使った。何に使ったかを、それぞれの後ろに書いた。

  1. ウィキペディア「Dial-up Internet access」。https://en.wikipedia.org/wiki/Dial-up_Internet_access (モデムがデータを音の信号に変えることについて)
  2. University of Calgary 講義資料(音声周波数帯域)。https://cspages.ucalgary.ca/~unger/441/lectures/2.2/tsld033.htm (電話回線が通す音の範囲について)
  3. windytan「The sound of the dialup, pictured」(2012年)。https://www.windytan.com/2012/11/the-sound-of-dialup-pictured.html (接続音の順番と、音が聞こえた理由について)
  4. 3AM Systems「V.34 handshake & modulation」。https://www.3amsystems.com/Technical_library/V34 (V.34の4段階について)
  5. ITU-T 勧告 V.90。https://www.itu.int/rec/T-REC-V.90/en (56kモデムの規格の上限値について)
  6. INTERNET Watch 30周年特集。https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/30th/2081494.html (1996年当時の接続と、常時接続の登場について)
  7. ウィキペディア「テレホーダイ」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%80%E3%82%A4 (テレホーダイの内容と23時への集中について。この1資料に基づく)
  8. @IT。https://atmarkit.itmedia.co.jp/icd/root/02/5787602.html (夜間定額のダイヤルアップ接続の時間帯について)
  9. INTERNET Watch(2022年)。https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1382244.html (テレホーダイなどの割引の終了について)
  10. 総務省『平成14年版 情報通信白書』。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h14/html/E1013000.html (DSL回線数の急増について)
  11. 総務省『平成23年版 情報通信白書』。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc212110.html (ナローバンドからブロードバンドへの移り変わりと、光がDSLを上回ったことについて)

なおした ところ

更新履歴

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