1. 雲が ないのに、なにが ふって くるの?
1. 青空から降る、きらきらした粒
1. 晴天から降る微細な氷の結晶
冬の 朝、空は 晴れて いるのに、目の まえで 小さな 光が きらきら ふって くることが あります。ダイヤモンドダストと よばれる ものです。
正体は、とても 小さな 氷の つぶです。気象庁では「さいひょう」と いい、空気中の 水が こおって、ゆっくり おりて くる ものと せつめいして います[1]。雲のような 氷の つぶが 地面の ちかくで できるので、空に 雲が なくても ふる、と いわれます[3]。
氷の つぶは、六つの かどを もつ 板や はしらの かたちを して いる ことが あります。だから、日の 光を はね返したり、まげたり して、キラッと 光ります[3]。
では、雪や きりとは なにが ちがうのでしょう。
冬の朝、空は晴れているのに、目の前で小さな光が舞っていることがあります。これがダイヤモンドダストです。
気象庁の予報用語では、この現象は細氷といい、大気中の水蒸気が昇華して氷の結晶になり、ゆっくり降りてくるものと説明されています[1]。水蒸気が液体の水を経ずに、直接氷になる変化が昇華です。雲のような氷の粒が地面近くでできるため、空に雲がなくても降るといわれます[3]。
結晶は六角形の板や柱の形をしていることがあり、プリズムのように光を反射したり曲げたりするため、きらめいて見えるといわれます[3]。
雲がないのに降るという点は、雪と大きく違います。では、雪や霧とは、どこで線が引かれているのでしょうか。
2. ゆきや きりと、どこで わけるの?
2. 「1km」という線で決まる区別
2. 氷霧と細氷を分ける視程1km
ぼんやり 白く 見えるのは、きりでは ないのでしょうか。じつは、空気中に 氷の つぶが うかんで いる ときも、見える きょりで 名前が かわります。
とおくが 1キロメートル 見えないほど なら「こおりぎり」、それより とおくまで 見えるなら「さいひょう」と きろくされます[2]。ダイヤモンドダストは、さいひょうの ふつうの よびかたです。
きりも おなじで、1キロメートル 見えないほどが きり、それより 見えるなら「もや」です。
「ふんいき」では なく、数字で きめて おけば、みんなが おなじ 見かたで はなせるからです。では、この 数字は、どんな 朝に そろうのでしょう。
「なんとなく白っぽい」だけでは、観測する人によって記録が変わってしまいます。そこで気象では、水平方向にどれだけ先まで見えるか、つまり視程を数字にして決めます。
空気中に氷の結晶が浮かび、視程が1km未満の状態なら氷霧、それ以上見通せる状態なら細氷として記録されます[2]。ダイヤモンドダストは、この細氷の俗称です。
霧ともやも同じ考え方で、視程1km未満が霧、それ以上がもやです[2]。1kmは、氷の大きさの区別ではなく、見通しの区別だという点に注意が必要です。
気象観測では、感じ方より数字で決めることで、誰が見ても同じ位置づけで話せるようにしているのです。では、この現象はどんな朝に見られるのでしょうか。
同じ氷晶が空気中に浮かんでいても、視程によって名称が変わる。気象観測では、視程1km未満なら氷霧(ice fog)、それ以上なら細氷(ice prisms、またはdiamond dust)として記録される[2]。
この1kmは、霧ともやの区別と同じ数値である。日本気象学会の論考によれば、視程1km未満が霧、それ以上がもやで、現象を皆が同じ位置づけで扱えるよう数値化されている[2]。したがって、氷霧と細氷の違いは氷晶の大小ではなく、水平視程である。
この区別は、見た目の印象ではなく、観測上の取り決めである。ただし、数値で分けても、粒の出現条件が分かるわけではない。ではどんな朝に、氷晶が浮かぶ状況がそろうのか。
3. どんな 朝に、見られるの?
3. 冷え込んだ朝に、条件がそろう
3. 発生条件の目安と、資料による幅
見られやすいのは、とても さむい、晴れて かぜの ない 朝と いわれます[7]。空気に すいじょうきが ふくまれて いるほど、氷の つぶが できやすく なります。
北海道の 冬は、マイナス 25どより 下がる 日も めずらしく ありません[2]。びえいちょうでは、マイナス 23.3どの 朝に、朝日に 氷が きらめいたと ほうどうされました[5]。
ただし「マイナス 10どなら かならず 見える」わけでは ありません。数字は 目安で、しりょうに よって ちがいます[7]。ほかの じょうけんも そろった ときだけ 見られると いわれます。
では、なんきょくではどうでしょう。
冷えた朝に、ダイヤモンドダストが見られることがあります。報道や観光の解説では、晴れていて気温がおよそ-15℃以下、風がなく、湿度が高いといった条件が挙げられます[7]。一般には、気温-10〜-30℃と高い湿度が目安とされることもあり、資料によって数字に幅があります。
できかたの一つとして、逆転層という状態が挙げられます。地面近くが冷え、その上に湿った暖かい空気がある状態です。上下の空気が混ざると地面付近の相対湿度が上がり、氷の結晶ができるという説明があります[3]。日本のどこでもこの仕組みだとは、言い切れません。
北海道の厳冬期は、-25℃以下になることも珍しくありません[2]。美瑛町では、最低気温が-23.3℃まで下がった2月下旬の朝、朝日を受けて氷の結晶が緑や赤、黄色にきらめいたと報じられました[5]。色の言い方は報道の表現です。
気象庁が「-何℃以下」と定めているわけではなく、これらの数字は目安と考えるのがよいでしょう。次は、こうした朝が、ほとんど毎日のように続く場所の話です。
発生条件の通説は、気温-10〜-30℃、高湿度とされるが、報道・観光の解説では、晴天、気温-15℃以下、無風、高湿度といった条件が挙げられ、数字に幅がある[7]。気象庁は細氷を「気温-何℃以下」とは定義していないため、これらの数値は目安として読むのが妥当である。
できかたの一つに、逆転層がある。地面近くが冷たく、上に湿った暖かい空気がある状態である。この状態で上下の空気が混ざると、地面付近の相対湿度が上がって氷晶が生じるという説明がある[3]。ただし、日本で見られる現象すべてがこの仕組みだとは、資料からは言えない。
日本での例として、北海道は厳冬期に-25℃以下になることが珍しくない[2]。美瑛町では最低気温-23.3℃の2月下旬の朝、朝日で氷晶がきらめき、緑・赤・黄色に輝いたと報じられた[5]。
条件が厳しいなら、頻度は低いはずだ。では、極端に冷え、風の穏やかな南極では、どのくらいの頻度なのか。
4. なんきょくでは、どのくらい できるの?
4. 南極高原では、年に316日ほど
4. プラトー基地の年平均316日と、ハロの多彩さ
日本では、ダイヤモンドダストは 冬の 朝の とくべつな こうけいです。ところが 南極では、ようすが ちがいます。
南極の 高原に あった アメリカの きちでは、へいきんして 年に 316日、ダイヤモンドダストの 雲が できると、ギネス世界きろくが きろくして います[4]。1年の ほとんどの 日です。
日本の 南極の しょうわ きちの せつめいでは、かぜの おだやかな ところで、ダイヤモンドダストに よって、いろいろな かたちの 光の わが よく 見えると あります[6]。
日本では 見つけられたら うれしい こうけいが、南極では ふつうの 空の 一部です。この こうけいは、はこの 中でも つくれるのでしょうか。
日本では、冬の朝に運がよければ出会える光景です。ところが南極高原は、様子がまるで違います。
南極高原にあった米国のプラトー基地(現在は閉鎖)では、平均して年に316日、ダイヤモンドダストの雲ができると、ギネス世界記録が記録として紹介しています[4]。1年365日のうち、316日です。
気象庁の昭和基地の解説にも、風が穏やかな南極の地点では、ダイヤモンドダストによって多彩なハロ(太陽や月のまわりの光の輪など)がよく現れ、輝き方も顕著だとあります[6]。
ここでの316日は、年平均の日数です。
日本では貴重な光景が、南極高原では空の日常になっています。それなら、この現象を人の手でつくれないでしょうか。
5. 箱の 中で、つくれるの?
5. 高校生が、容器の中でつくった
5. 容器内再現実験と、その不確かさ
きさらづ市の 高校生が、この こうけいを 箱の 中で つくる じっけんを きしょうがっかいの 発表で ほうこくしました[8]。
ドライアイスで マイナス 20どより 下まで ひやした 発ぽうスチロールの ようきの 中で、息と エアキャップを つぶす 空気を 入れると、30秒から 1分ほどで ダイヤモンドダストが できたそうです。
ただ、じょうけんに よっては できない ことも あったと あります。とても つめたい ドライアイスを 使うので、おうちでは まねしません。
雲が なくても 氷が ふる。その ふしぎは、身近な 空を 見る 目を かえて くれます。
木更津高校の生徒が、日本気象学会のジュニアセッションで、容器の中でダイヤモンドダストをつくった実験を報告しています[8]。
発泡スチロールの容器をドライアイスで-20℃以下に冷やし、息とエアキャップをつぶした空気を入れると、30秒〜1分後に発生したそうです。水蒸気を入れた別の条件では、発生までにおよそ90〜160秒かかりました。
ただし、条件によっては発生しない場合もあったと報告されています。この実験はドライアイスを使うため、家庭で試すことは勧められません。
気温を下げて水蒸気を入れると、雲のない容器の中にも氷の粒がきらめく。自然の朝の条件を、実験の形にして確かめようとした報告です。
木更津高校の生徒が、日本気象学会ジュニアセッションで、容器内の再現実験を報告している[8]。発泡スチロール容器内をドライアイスで-20℃以下に冷やし、息とエアキャップをつぶした空気を入れたところ、30秒〜1分後にダイヤモンドダストが発生した。別に水蒸気を入れた条件では、発生までにおよそ90〜160秒だった。
発表には、条件によっては発生しないなどの不確定さも書かれている。したがって、自然の条件をどこまで再現できたかは、この一例だけでは決められない。ドライアイスを用いるため、家庭向けの実験ではない。
この実験からは、気温だけでなく水蒸気の量や氷晶ができるきっかけも関係しそうだと考えられる。原典の発表資料には、実験の設定や不確かさが詳しく書かれている。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
きしょうちょうの「よほうようご」の ページで、「さいひょう」や「ひょうむ」を ひいて みましょう。ことばの せつめいが、この 記事の はなしと おなじか、くらべられます。
出かけてできること
1キロメートルほど さきに ある たてものや やまを、ちずで さがして みましょう。おなじ ところから おなじ めじるしを、天気の ちがう 日に 見くらべます。ただしく はかる わけでは ありませんが、見える きょりの かんじが すこし わかります。
こうしきの 情報
気象庁の ページと、ほかに、昭和きちの せつめいの ページも あります。
今日できること
気象庁の予報用語のページで、細氷や氷霧を引いてみてください。この記事の説明と、公式の定義を見比べられます。
出かけてできること
地図で、自分の家から1kmほど先にある建物や山を探し、同じ場所から同じ目印を、天気の違う日に見比べます。厳密な測定ではありませんが、視程という数字の感覚がつかめます。
公式情報
気象庁の予報用語や昭和基地の解説、日本気象学会の論考、ジュニアセッションの発表が、公開されています。
今日できること
気象庁の予報用語で、細氷や氷霧を引き、この記事の説明と公式の定義を見比べる。
出かけてできること
地図で自宅から1kmほど先の目印を探し、同じ場所から同じ目印を天気の違う日に見て記録する。厳密な測定ではないが、視程と天気の関係の目安になる。
公式情報
気象庁の予報用語・昭和基地の解説、日本気象学会の論考、ジュニアセッションの発表資料が公開されている。同じ目印を天気の違う日に見比べる観察と合わせて読むと、公式の説明と自分の目に映る景色を結びつけやすい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、細氷の定義は気象庁の予報用語、氷霧との区別は日本気象学会の論考、南極の頻度はギネス世界記録と気象庁の昭和基地の解説、発生条件は報道・観光解説と英語の解説、実験は学会発表による。
- 気象庁「予報用語(降水に関する用語)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html (細氷の定義)
- 菊地勝弘「歳時記と気象用語」天気68(1), 2021(日本気象学会) https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2021/2021_01_0031.pdf (氷霧と細氷、視程1km、北海道の寒さ)
- Wikipedia "Diamond dust" https://en.wikipedia.org/wiki/Diamond_dust (晴天降水、氷の結晶の形、逆転層の説明)
- Guinness World Records "Highest occurrence of diamond dust" https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/405476-highest-occurrence-of-diamond-dust (プラトー基地の年平均316日)
- 北海道新聞「厳寒が生む「宝石」 美瑛でダイヤモンドダスト」 https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/5741919949001/ (美瑛町の報道例)
- 気象庁「昭和基地の気象」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku/syowabase/weather/weather.html (南極でのハロの現れ方)
- 現代ビジネス 解説記事 https://gendai.media/articles/-/59938 (発生条件の目安)
- 笹子・梅津(木更津高校)日本気象学会ジュニアセッション JS2-05 https://www.metsoc.jp/default/wp-content/uploads/2021/05/JS2-05.pdf (容器内での再現実験)
なおした ところ
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