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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ドローンは どうして 空で ぴたっと とまれるの? ── プロペラと センサーで とまる しくみ

ドローンはなぜ空中で止まれるのか ── 100年前は、人が4人で支えていた

ドローンはなぜ空中で静止できるのか ── 逆回転の4枚のプロペラ、毎秒数百回の姿勢制御、気圧計・GPS・カメラ

分野:技術

1907ねん、4本の うでの それぞれに、プロペラを 上と 下に 1つずつ つけた きかいが、人を のせて じめんから うきました。たかさは 60センチぐらいです。でも、きかいの まわりで、4人の 人が ぼうで ささえて いました。

いまの ドローンは、だれにも ささえて もらわずに、空で ぴたっと とまります。むかしは 人が ささえて いました。いまは センサーと コンピュータが、かたむきや いちを なおして います。プロペラの ひみつから、じゅんばんに 見て いきます。

1907年、4本の腕のそれぞれにローターを上下に1つずつ付けた機械が、人を乗せて地面から浮き上がりました。高さは約60センチです。ただし、機体は自分の力だけで安定していたのではなく、地上の4人が棒で支えていました[1][2]。

いまのドローンは、だれにも支えられずに、空中でぴたりと止まります。当時は人が機体を支えていました。いまはセンサーと制御装置が、傾きや位置を調整しています。反動を消す4枚のプロペラ、傾きを測るセンサー、高さと位置を知る気圧計・GPS・カメラの順に見ていきます。

1907年9月29日、ジャイロプレーン1号(4本の腕に上下2枚ずつ、計8枚のローターをもつ)が、人を乗せて初めて地面から浮いたと記録される。高さは約0.6m、のちに約1.5m。ただし自由飛行ではなく、4人が機体を支えて安定させており、操縦も方向転換もできなかった[1][2]。

それから百年余り。ドローン(クアッドコプター)は、だれにも支えられずに空中で静止する。当時は人が機体を支えていたが、いまはセンサーと制御装置が傾きや位置を調整している。その中身を、逆回転のプロペラによる反トルクの相殺、姿勢制御、気圧計・GNSS・下向きカメラによる高さと位置の保持を、複数の資料から順にたどる。

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1. 60センチ うかんだ、いちばん はじめの プロペラの きかい

1. 1907年、人が4人で支えて浮いた、ローターが8枚の機械

1. 1907年のジャイロプレーン1号 ──浮くことと、安定して浮くことは別だった

1907ねん9がつ29にち、4本の うでの それぞれに、プロペラを 上と 下に 1つずつ つけた きかい「ジャイロプレーン1ごう」が、人を のせて、はじめて うきました[1]。たかさは 60センチぐらいです。あとで 1.5メートルぐらいまで あがった、と いわれます[1]。

でも、ひとりで うかんだ のでは ありません。4人が じめんから ぼうで ささえて、ぐらぐらしない ように して いました[1][2]。まがる ことも、むきを かえる ことも、できませんでした[1]。

1924ねんには、べつの 4つプロペラの きかいが、1キロぐらいの コースを 7ふん40びょうで とびました[3]。ただ、ぐらつきを おさえる ために、ちいさな プロペラを いくつも たして いました[3]。

そのあと、ちいさな コンピュータと ちいさな センサーが すすんで、ぐらつきを おさえる そうちの ついた ラジコンが つくれる ように なりました[4]。かたむきを はかる ものと、なおす ものが、そろって きました。

ジャイロプレーン1号は、1907年9月29日に、人を乗せて初めて浮いたとされる機械です。4本の腕に、ローターが上下2枚ずつ付いていました。回転の反動を消すために、ローターの4組のうち2組を時計回り、2組を反時計回りに回す設計でした[1]。反動を消す考え方は、100年以上前からあったのです。

ところが、機体は自由飛行ではありませんでした。4人が地上から棒で支えて、ぐらつかないようにしていました。約2フィート(約61cm)浮いた、と書く資料もあります[2]。曲がることも、向きを変えることもできませんでした[1]。

1924年5月4日には、別の四ローター機が、約1kmの三角形のコースを7分40秒で飛びました。この機体は、安定させたり向きを変えたりするために、水平に並べた小さなローターを補助に使っていました[3]。

初期の四ローター機は、安定を助ける仕組みが弱くて、操縦する人の負担が大きすぎた、といわれます。その後、小型のコンピュータと、小さな慣性センサー(MEMS)が進歩して、安定化装置つきのラジコン用クアッドコプターが作れるようになりました[4]。その後は、傾きを測るセンサーと、機体を直す制御装置が、小さなドローンにも載せられるようになりました。

その道具は、どうやって機体を支えているのでしょう。まず、プロペラの回転そのものから見ます。

ジャイロプレーン1号は、4本の腕それぞれに上下2枚のローター(計8枚)を備え、4組のうち2組を時計回り、2組を反時計回りに回し、回転の反動(反トルク)を打ち消す設計だった[1]。反動を消す考え方は、百年以上前からあったことになる。しかし機体は自由飛行ではなく、4人が地上から棒で支えて位置を保っていた[1][2]。約2フィート(約61cm)浮いたと書く資料もある[2]。

1924年5月4日には、Oehmichen の四ローター機「Nº2」が、約1kmの三角形の周回コースを7分40秒で飛んだ。ただしこの機体は、安定と操舵のために、水平に並べた小さなローターも使っていた[3]。四つの大きなローターだけでは足りず、安定を受け持つ別の部品が要ったことになる。

Wikipedia は、初期の四ローター機について、安定化の補助が弱く操縦者の負担が大きすぎた、と述べる。その後、マイクロプロセッサと MEMS 慣性センサーが進歩し、安定化装置つきのラジコン用クアッドコプターが作れるようになった[4]。人が支えていた安定化を、センサーと制御装置で行う道具立ては、この2つがそろって使えるようになった、と読める。

その道具の中身を、回転の反動の処理から順に見ていく。

2. 4つの プロペラは、どうして くるくる まわらないの?

2. 隣どうしを逆回りにして、回転の反動を消す

2. 反トルクの相殺と、回転数だけで行う操縦

プロペラが かぜを おすと、その はんたいに、きたいを ひねる ちからが はたらきます。これを ほうって おくと、ドローンは くるくる まわって しまいます。

そこで、4つの プロペラの うち、となりどうしを ぎゃくむきに まわします。右まわりが 2つ、左まわりが 2つです。ひねる ちからが たがいに うち消し あいます[4][5]。

右まわりの プロペラが きたいを ひねる むきと、左まわりの プロペラが ひねる むきは、はんたいです。おなじ つよさで まわせば、ひねる ちからが つりあって、きたいは まわりません。

ヘリコプターは、大きな プロペラが 1つ あります。その ひねりを、しっぽの 小さな プロペラで うち消します。ドローンには、しっぽが いりません[4]。

うごかす ときは、4つの モーターの まわる はやさを ちがう ものに するだけです。前を はやく、うしろを おそくすると、前うしろに かたむきます。左右も おなじです[6]。

プロペラが空気を押すと、その反動で、機体をひねる力がはたらきます。クアッドコプターは、時計回りのプロペラ2枚と、反時計回りのプロペラ2枚をもち、逆向きどうしで反動を打ち消します[4]。隣り合うプロペラは逆向きで、同じ向きなのは対角どうしです。全部が同じ回転数なら、ひねる力は釣り合ってゼロになります[5]。

ヘリコプターは、大きなローター1つの反動を、尾部の小さなローターで打ち消します。クアッドコプターは、逆回転の組で打ち消せるので、尾部ローターが要りません。羽根が短くて作りやすい、という利点もあります[4]。

操縦の手段は、4つのモーターの回転数を別々に変えることだけです。羽根の角度は固定で、ヘリコプターのような角度を変える仕掛けは、ふつうは持ちません[4]。向かい合うモーターの力に差をつけると、前後や左右に傾き、逆回転の2組の力に差をつけると、機体がひねられて向きが変わります[6]。

簡単なモデルでは、プロペラの力は回転数の2乗に比例します[5]。回転数を5%上げると、力は約10%増えます。1.05の2乗が約1.1025だからです。ほんの少しの回転数の差が、機体を傾ける力になるのです。

クアッドコプターは、時計回りのプロペラ2枚と反時計回りのプロペラ2枚をもつ[4]。隣り合うプロペラが逆向きで、同じ向きなのは対角どうしだ。すべてが同じ回転数なら、機体をひねる力は釣り合ってゼロになる[5]。ヘリコプターは大きなローター1つの反トルクを尾部の小さなローターで打ち消すが、クアッドコプターは逆回転の組で打ち消せるため、尾部ローターが要らない。羽根が短く、作りやすい点も利点とされる[4]。

操縦の手段は、4つのモーターの回転数を別々に変えることだけだ。羽根の角度は固定で、ヘリコプターのようなサイクリックピッチ機構は通常持たない[4]。Hoffmann らの解説では、向かい合うモーターの推力差がロールとピッチのトルクを生み、逆回転の2組の推力差がヨーのトルクを生む[6]。

簡易モデルでは、プロペラの推力は回転数の2乗に比例する[5]。回転数を5%上げると、推力は約10%増える(1.05の2乗は1.1025)。わずかな回転数の差が、機体を傾ける力になる。実際の関係は電圧や羽根の状態で変わるので、「およそ2乗」の目安と考えるのがよい。

3. 「とまって いる」は、なおし つづけて いる こと

3. 傾きを測って、毎秒何百回も回転数を直す

3. 姿勢制御 ── 入れ子の制御ループと、毎秒何百回もの更新

ドローンは、ぴたっと とまって いるように 見えて、じつは モーターの はやさを こまかく かえ つづけて います。

ホバリングは、うごかない ことでは なくて、おもさと、おしあげる ちからが つりあって いる ことです[7]。すこし かたむいたら、すぐ モーターの はやさを かえて、もとに もどします。

かたむきを しる ために、ジャイロや かそくどけいと いう センサーを つかいます[8]。どちらも、とくいな こと、にがてな ことが あります。だから、ふたつを あわせて つかいます[9]。

なおす はやさは、1びょうに 400かい、と いう ドローン用の ソフトが あります[10]。1びょうに 400かいなら、0.0025びょうごとに、かたむきを はかって なおして いる ことに なります。

ホバリングは、止まっている状態ではありません。機体の重さと、モーターが押し上げる力が釣り合っている状態です。PX4という飛行制御ソフトには、重さを支える分の力をあらかじめ足しておく設定があり、そこからのずれを制御が直し続けます[7]。

機体の状態を知るセンサーには、ジャイロ、加速度計、コンパス、気圧計があります。PX4は、最低限これらを必要とします[8]。ジャイロは回る速さを積み重ねて角度を出すため、雑音やずれが時間とともに積もります。加速度計は、振動のような細かい乱れに弱いのです。それぞれの得意と不得意を組み合わせて、ずれを直します[9]。

直し方は、入れ子になっています。ArduCopterというソフトは、目標の角度との差から、目標の回転の速さを決め、その回転の速さとの差から、モーターへの指令を決めます。最後に「モーターミキシング」が、ロール・ピッチ・ヨー・上下の指令を、4つのモーターそれぞれの出力に変えます[10]。

このソフトの主なループは、毎秒400回、2.5ミリ秒ごとに動きます[10]。競技用ドローンのソフトでは、設定例として、ジャイロ8kHz・制御4kHzの組み合わせがあります[11]。4kHzなら、1秒に4000回、0.25ミリ秒ごとに更新される計算です。ただし、市販の機体が毎秒何回なのかは、公表されていないことが多いようです。

これで機体は水平を保てます。でも、それだけで「その場にとどまれる」のでしょうか。

ホバリングは静止ではなく、重さと推力が釣り合っている状態だ。PX4には、機体の重さを支える分の推力をあらかじめ足しておく「ホバー推力」(MPC_THR_HOVER)の設定があり、そこからのずれを積分項が直し続ける[7]。

基本のセンサーは、ジャイロ、加速度計、磁力計、気圧計だ。PX4は最低限、この4つを必要とする[8]。ジャイロは角速度を積分して角度を出すため、雑音とドリフトが時間とともに積もる。加速度計は振動などの高周波の乱れに弱い。両者の得意・不得意を組み合わせる相補フィルタで、ずれを補正できる[9]。ArduPilot の拡張カルマンフィルタは、ジャイロ・加速度計・コンパス・GPS・気圧計などの測定値を合わせて、位置・速度・向きを推定し、大きく外れた測定を退けやすい[12]。

制御はカスケード(入れ子)になっている。ArduCopter は、角度の誤差を P 制御で目標の回転速度に変え、回転速度の誤差を PID 制御でモーター指令に変える。最後に「モーターミキシング」が、ロール・ピッチ・ヨー・スロットルの指令を各モーターの出力値に変換する[10]。PX4 は、位置・速度・姿勢・角速度の4段のループを階層にし、最も内側の角速度ループがミキサー経由でモーター指令を出す[13]。

周期は、ArduCopter(Pixhawk)のメインループで毎秒400回、つまり2.5ミリ秒ごとの更新だ[10]。競技用の Betaflight では、設定例として、ジャイロ8kHz・PID制御4kHzの組み合わせがある[11]。4kHzなら、1秒に4000回、0.25ミリ秒ごとに更新される計算になる。ただし、これはオープンソースのソフトの数値で、DJI など市販機の制御周期は公開されていない。

ここまでは、機体を水平に保つ内側の層の話だ。その場にとどまるには、もう一つ外側の層が要る。

4. たいらに して いる だけでは、ながされて しまう

4. 「水平を保つ」と「その場にとどまる」は別の仕事

4. 姿勢保持と位置保持は別の層 ── Stabilize モードと ATTI モード

かたむきを なおす だけの ドローンは、たいらには なります。でも、かぜが ふくと、そのまま ながされて しまいます。

そういう モードを、ArduPilot と いう ソフトでは「Stabilize(スタビライズ)」と いいます。しかも、たかさも まもって くれません。ながされる たびに、そうじゅうする 人が うごかして なおします[14]。

DJI の ドローンにも、にた しくみが あります。ATTI(アッティ)と いう モードでは、ホバリングも ブレーキも じぶんでは できません。かぜで ながされます[15]。

ぴたっと とまる ためには、「いま どこに いるか」を しる ための、べつの 目が いります。

ArduPilot の「Stabilize」モードは、傾きを自動で水平に戻します。ただし、位置も高度も保ちません。風で流されるので、操縦する人が、傾ける操作とスロットルで、その場に戻し続ける必要があります[14]。

DJI Mini 4 Pro の飛行マニュアルにも、同じ考え方が出てきます。カメラによる位置の確認(ビジョン)が使えず、GNSS(GPSなどの衛星測位)も弱いとき、機体は「ATTIモード」になります。ATTIモードでは、自動でホバリングもブレーキもできず、風などで水平にドリフトすると書かれています[15]。

反対に、その場にとどまるモードは、位置の推定(GPSやオプティカルフローなど)、高度の推定(気圧計など)、操縦入力を必要とします。スティックから手を離すと、機体は自動でブレーキをかけて水平になり、風などの力を補いながら空間の一点に固定されます[16]。

PX4 の制御は、位置、速度、姿勢、角速度の4段になっています[13]。これまでの内側の層は姿勢と角速度、外側にあるのが位置です。位置を知るには、傾きのセンサーとは別の見張り役が要ります。

ArduPilot の Stabilize モードは、傾きを自動で水平に戻すが、位置も高度も保持しない。風で流されるので、操縦者は、傾け操作とスロットルで、機体を元の位置に戻し続けなければならない[14]。

DJI Mini 4 Pro の飛行マニュアルにも、同じ構図がある。ビジョンが使えず GNSS も弱いとき、機体は「ATTI モード」になる。このモードでは、自動でのホバリングもブレーキもできず、風などで水平にドリフトすると書かれている[15]。

その場にとどまる側は、PX4 の Position モードの説明が整理されている。スティックを離すと、機体は自動でブレーキをかけて水平になり、風などの力を補償しながら3次元空間の位置に固定される。必要なものは、位置推定(GPS やオプティカルフローなど)、高度推定(気圧計など)、操縦入力の3つだ[16]。

前の章の4段の階層で言えば、姿勢と角速度が内側の層で、位置はその外側に載る[13]。内側の層は傾きのセンサーで回り、位置の層は外の世界に対する位置と速度の推定に頼る。水平を保つことと、その場にとどまることは、別の層の仕事だ。

では、その「別の目」は、何で位置を知るのか。

5. たかさと いちを しる、3つの め

5. 高さは気圧計、位置はGPSと下向きカメラ

5. 気圧計・GNSS・オプティカルフロー ── 弱点をおぎない合う

1つめは、きあつけいです。高い ところほど、きあつは ひくく なります[17]。ちいさな センサーが、その ちがいを はかります。たかさの ちがいを 1メートルぐらいの ずれで はかれる、と いう センサーも あります[17]。

2つめは、GPSです。スマホの GPS は、空が ひらけた ところで、はんけい 5メートルぐらいの ずれが ふつうです。ビルや 木の ちかくでは、もっと わるく なります[18]。

3つめは、したむきの カメラです。じめんの もようが どちらへ ながれるかを 見て、うごきを しります。GPS が なくても つかえます[19]。ただし、くらい ところでは つかいにくい ものです[20]。

むかしは、人が 目で 見て、ながされないように ささえて いました。いまは、この 3つの 目と、コンピュータが、ながされた ことを しらべて、なおして います。

高さを知るのは、気圧計の役目です。高いところほど気圧が低くなるので、気圧の変化から高さの変化がわかります[17]。気圧センサーの一つ、BoschのBMP280は、高さの差を±1mほどの誤差で測れるとされます。1フロア、つまり約3mは、気圧にして約0.36hPaの差です。0.12hPaが約1mにあたるので、その3倍です[17]。

位置を知るのは、GPSとカメラです。スマートフォンのGPSは、空が開けた場所で半径約4.9m以内が目安で、ビルや橋や木の近くでは悪くなります[18]。

そこで役に立つのが、下向きのカメラです。カメラと下向きの距離センサーで、地面の動きを見て、機体の速度を推定します。GPSがなくても、その場に止まるのに使えます[19]。地面の模様の動きに、高度で距離への換算をして、傾きの影響も補正します。ただし、明るい場所が必要です[20]。地上から約20mより高いと、分解能が足りず、ゆっくりした振動が出ることがあると、PX4は述べています[19]。

DJI Mini 4 Pro の飛行マニュアルには、無風か微風のときのホバリング精度が、ビジョン使用で±0.1m、GNSS使用で±0.5mと書かれています[15]。位置の確認は、気圧計と、空の衛星と、下向きのカメラが、分け合って行っていると考えられます。

高さは、主に気圧計で推定する。Bosch の BMP280 の相対精度は±0.12hPaで、高さの差にして±1m相当、絶対精度は典型的に±1hPaとされる[17]。1m が約0.12hPa にあたるので、1フロア約3mの差は約0.36hPa という計算になる。絶対値より、変化を見る用途に向く、と読める。

水平位置は、GNSS と、下向きのオプティカルフローが担う。GPS.gov は、スマートフォンの GPS を、開けた空の下で半径約4.9m以内が典型と述べ、ビル・橋・木の近くでは悪化するとする[18]。二周波受信機や補強システムがあれば、リアルタイムで数cmにもなる[18]。研究用の Stanford STARMAC は、搬送波位相差分 GPS(相対精度1〜2cm、10Hz)と慣性測定をカルマンフィルタで組み合わせて状態を推定した[6]。

オプティカルフローは、下向きのカメラと下向きの距離センサーで、地面の動きから速度を推定する方式だ。GPS がなくても位置保持に使える[19]。ArduPilot の解説にある光学式マウスセンサー(ADNS3080)を使う方式では、地面の模様の動きを、高度を使って実際の距離に換算し、機体の傾きの影響も補正する。明るい環境が必要で、いまは非推奨とされる[20]。PX4 は、一般的なセンサーは分解能が低く、地上高が約20m を超えるとホバリング中にゆっくりした振動が出うる、と述べる[19]。

DJI Mini 4 Pro のマニュアルは、無風または微風のときのホバリング精度を、ビジョンポジショニング時に上下・水平とも±0.1m、GNSS 使用時に±0.5m とする[15]。スマートフォンの GPS の誤差(約4.9m)とは、絶対位置の精度とホバリングのぶれという別の量なので、単純には比べられない。

PX4 は、Position モードの前提として、水平位置の推定源に GPS またはオプティカルフロー、高度の推定源に気圧計などを挙げる。適切なセンサーがあれば、GPS のない環境でも位置保持に使える場合がある[16]。それぞれの弱点を、別のセンサーが補う形になっている。

位置の確認は、気圧計・衛星・カメラが分担していることになる。

6. かぜが ふいたら、どうするの?

6. 風には、風上へ傾いて踏んばる

6. 風の中の静止 ── 傾けて横向きの推力を作る(力の釣り合いからの推論)

ドローンは、おしあげる ちからの むきを かえて、いちを かえます。いちは、「ちからの 大きさと むき」で きめられます[6]。

かぜに おされたら、かぜが ふいて くる ほうへ、すこし かたむきます。おしあげる ちからの 一ぶが よこむきに なって、かぜの ちからと つりあうと、そこから うごきません。これは、ちからの つりあいから かんがえた ことです。

かぜの つよい 日に、かぜの ほうへ からだを かたむけて たえる のと にて います。ただし ほんとうは、ドローンは あしではなく、プロペラの ちからで ふんばります。

かぜが ふき つづけると、「あと ちょっと」の ずれが のこりがちです。そこで、ずれを ためて、その ぶん つよく おす しくみを つかいます[7]。

スタンフォード大学の研究チームの解説では、機体の位置は、推力の大きさと向きで動かします[6]。そこから考えると、風で流されたとき、機体は風上側に傾いて、押し上げる力の一部を横向きに使うことになります。それが風の力と釣り合えば、その場にとどまれます。これは力の釣り合いからの推論で、実機が風の中で何度傾けているかを示す資料は、見つかっていません。

傾けると、横向きの力が出る代わりに、高さを保つ力が減ります。DJI Mini 4 Pro の最大の傾きは35°です[15]。この角度で高さを保つには、まっすぐのときの約1.22倍の推力が要ります。1÷cos35°を計算した値です。

一定の風が吹き続けるときは、ずれが「あと少し」残りがちです。PX4は、ずれを積み重ねて直す仕組み(積分項)が低すぎると、風の中で目標に届かないかもしれない、と述べています[7]。

同じマニュアルは、風速が10.7m/sを超える環境での飛行を禁止しています[15]。機体ごとに、風に耐えられる限界があるのです。

位置は推力の大きさと向きで制御する[6]。ここから力の釣り合いで考えると、風に流された機体は、風上側に傾けて推力の一部を横向きに使い、風の力を打ち消すことになる。これは推論であり、実機の風中の傾き角や制御則の実測値は、見つかっていない。

傾きには代償がある。DJI Mini 4 Pro の最大ピッチ角は35°だ[15]。35°傾けたときに高さを保つには、推力が1/cos35°≒1.22倍要る。水平方向には、最大で g×tan35°≒6.9m/s²の加速度が出せる計算になる。どちらも筆者の計算で、実機の性能の値ではない。

風が一定に吹き続けるとき、比例制御だけでは目標にわずかに届かないずれが残る。PID の積分(I)項は、そのずれを積み重ねて消す役目で、PX4 は、低すぎると風の中で設定値に届かないことがあると述べる[7]。上下方向でも、積分項が、ホバー推力の設定とのずれを補い続ける。

限界もある。同マニュアルは、使用環境として風速10.7m/sを超える環境を禁止している[15]。力の釣り合いから考えると、傾きの上限と推力の余裕が、風に耐える限界を決めることになる。

7. ものさしを 手に たてて みよう

7. 定規を手のひらに立てて、制御を体験する

7. 出口 ── 定規を手のひらに立てて、「測って直す」動きを確かめる

おうちの 人と いっしょに、ものさしを 1ぽん、手の ひらに たてて みましょう。ものが ない ひろい ところで、やわらかい ものさしを えらびます。

かたむいたら、手を うごかして、まっすぐに もどします。この「かたむきを しって、なおす」を すばやく くりかえすと、ものさしは たおれません。ドローンも、かたむきを はかって、すぐに なおす ことを くりかえして、うかんで います。すぐに たおれても だいじょうぶです。すこしの あいだ たてられれば じゅうぶんです。

長さ30〜50センチほどの軽い定規を、手のひらに立てて、倒れないように保ってみましょう。物のない広い場所で、大人といっしょに、先のとがっていない定規で行います。

傾きに気づいたら、手を動かして直す。この「測って、直す」を素早く繰り返すと、定規は立ち続けます。ドローンの姿勢制御は、これを毎秒何百回も繰り返しています。うまくいかなくても大丈夫です。少しの間立てられれば十分です。

もっと知りたくなったら、この記事の4段の制御の階層(姿勢・速度・位置)を、もう一度見直してみましょう。

制御の考え方は、道具がなくても体験できる。長さ30〜50cm程度の軽い定規を手のひらに立て、倒れないように手を動かして保ってみる。物のない広い場所で、先のとがっていない定規を使い、大人といっしょに行う。

傾きに気づき、手を動かして直す。この「測って、直す」を素早く繰り返すことが、この記事で見てきた姿勢制御の考え方と同じだ。少しの間立てられれば十分で、うまくいかなくても構わない。

研究者向けの入門としては、Mahony・Kumar・Corke(2012)の解説論文が、クアッドコプターのモデル化・推定・制御をまとめている[21]。PX4 の制御構成図と並べて読むと、モデル・推定・制御が数式でどう書かれるかを読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:飛行制御ソフト(PX4・ArduPilot)の公式資料、DJIの飛行マニュアル、センサーのデータシート、GPS.gov、研究論文、歴史の解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. "Breguet-Richet Gyroplane" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Breguet-Richet_Gyroplane (1907年の飛行の日付・高さ、4人が支えていたこと、回転の向きの設計について)
  2. Transportation History「1907: A Unique and Forward-Looking Aircraft Took Its First Flight」(2019)。 https://transportationhistory.org/2019/11/13/1907-a-unique-and-forward-looking-aircraft-took-its-first-flight/ (約2フィート浮いたことと、地上から棒で支えていたことの裏づけについて)
  3. This Day in Aviation「4 May 1924」。 https://www.thisdayinaviation.com/4-1924/ (1924年の四ローター機の飛行と、安定のための補助ローターについて)
  4. "Quadcopter" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Quadcopter (逆回転による反動の相殺、回転数だけの操縦、初期機の安定化の課題について)
  5. Andrew Gibiansky「Quadcopter Dynamics and Simulation」。 https://andrew.gibiansky.com/blog/physics/quadcopter-dynamics/ (隣り合うプロペラが逆向きであること、推力と回転数の関係について)
  6. Hoffmann et al.「Quadrotor Helicopter Flight Dynamics and Control: Theory and Experiment」AIAA GNC (2007)。 https://ai.stanford.edu/~gabeh/papers/Quadrotor_Dynamics_GNC07.pdf (ロール・ピッチ・ヨーの作り方、位置の制御、GPSと慣性測定の組み合わせについて)
  7. PX4 Guide「Multicopter PID Tuning Guide (Basic)」。 https://docs.px4.io/v1.15/en/config_mc/pid_tuning_guide_multicopter_basic (ホバー推力の設定と、積分項の役目について)
  8. PX4 Guide「Basic Concepts」。 https://docs.px4.io/main/en/getting_started/px4_basic_concepts.html (必要な最低限のセンサーについて)
  9. Attitude Estimation Algorithm of Portable Mobile Robot Based on Complementary Filter (PMC)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8623241/ (ジャイロと加速度計の弱点と、相補フィルタについて)
  10. ArduPilot Dev「Copter Attitude Control」。 https://ardupilot.org/dev/docs/apmcopter-programming-attitude-control-2.html (入れ子の制御、モーターミキシング、毎秒400回の更新について)
  11. Oscar Liang「Looptime and Flight Controller」。 https://oscarliang.com/best-looptime-flight-controller/ (競技用ドローンのソフトの設定例について)
  12. ArduPilot Copter「Extended Kalman Filter Navigation Overview」。 https://ardupilot.org/copter/docs/common-apm-navigation-extended-kalman-filter-overview.html (複数のセンサーの測定値を合わせて状態を推定することについて)
  13. PX4 Guide「Multicopter Control Architecture」。 https://docs.px4.io/main/en/flight_stack/controller_diagrams.html (位置・速度・姿勢・角速度の4段の制御ループについて)
  14. ArduPilot Copter「Stabilize Mode」。 https://ardupilot.org/copter/docs/stabilize-mode.html (傾きだけを直し、位置は保持しないモードについて)
  15. DJI Mini 4 Pro UAS Flight Manual (DJI Japan, 2025)。 https://dl.djicdn.com/downloads/DJI_Mini_4_Pro/UAS_Flight+Manual_DJI_Model_DJI_Mini_4_Pro_EN.pdf (ATTIモード、ホバリング精度、最大ピッチ角、風速の制限について)
  16. PX4 Guide「Position Mode (Multicopter)」。 https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/position (位置を保つモードに必要な推定について)
  17. Bosch Sensortec「BMP280 Data sheet」rev.1.26。 https://www.bosch-sensortec.com/media/boschsensortec/downloads/datasheets/bst-bmp280-ds001.pdf (気圧センサーの精度と、高さに直したときの目安について)
  18. GPS.gov「GPS Accuracy」。 https://www.gps.gov/gps-accuracy (スマートフォンのGPSの誤差の目安について)
  19. PX4 Guide「Optical Flow」。 https://docs.px4.io/main/en/sensor/optical_flow.html (下向きカメラで速度を推定する方式と、高く飛ぶときの弱点について)
  20. ArduPilot Copter「Mouse-based Optical Flow Sensor (ADNS3080)」(アーカイブ)。 https://ardupilot.org/copter/docs/common-mouse-based-optical-flow-sensor-adns3080.html (地面の模様の動きを距離に換算する方式について)
  21. Mahony, Kumar, Corke「Multirotor Aerial Vehicles: Modeling, Estimation, and Control of Quadrotor」(2012)。 https://eprints.qut.edu.au/77164/ (クアッドコプターの入門解説論文について)

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