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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

電話より 前に、絵が 電線で 送られて いたって ほんとう?

電話より11年早く、電線で絵を送ったファクシミリ ── 「点」に分けて送るしくみ

電話より前に始まった絵の電送 ── 画素に分ける走査と、同期、G3の符号化

分野:技術

1865ねん、でんわが できる 11ねん 前に、フランスで 絵や 名前を でんせんで 送る サービスが はじまって いました。

声を 送る 線で、どうして 絵が 送れるのでしょう。この メモを 読むと、絵を 小さな 点に わけて 送る 考え方と、日本の ようすが 分かります。

電話が発明されたのは1876年といわれます。ところが、その11年前の1865年には、フランスのパリとリヨンの間で、電信線を使って絵や署名を送るサービスが始まっていました[4]。

声でも文字でもない絵を、どうやって電線に乗せたのでしょうか。絵を点に分けて順に送る考え方、速さをそろえる苦労、日本での1928年の成功、1分で送れるようになった工夫が分かります。

電話の発明(1876年)より約11年早い1865年に、イタリアの物理学者カゼリのパンテレグラフが、パリとリヨンの間で商用サービスを始めた[4]。電線で絵が送れたのは、絵を点に分けて順に電気信号にする方法を使ったからである。

では、送り手と受け手の動きを合わせるという難題は、どう解かれたのか。日本ではいつ実用になり、1980年のG3標準では何が変わったのか。複数の資料から、その流れが分かる。

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1. 絵は どうやって 電線を とおるの?

1. 電線に乗せるために、絵を「点」に分けて順に送る

1. 画素への分解 ── 送信走査と画信号という考え方

電線には、電気の 強い・弱いを 送る ことしか できません。

そこで、絵を 小さな 点に わけます。ノートの ます目の ように、たくさんの 点に わけて、1こずつ、こい・うすいを しらべて いきます。

こい・うすいは、電気の 強い・弱いに かえて 送ります。わけ方は、紙の 左から 右へ、1行 おわったら つぎの 行へ、という ならびです[1]。

でも、受け取る がわが 同じ じゅんで 点を 打たないと、絵は ぐちゃぐちゃに なります。さいしょに これを 考えた 人は、どう したのでしょう。

電線が運べるのは、電気の強弱だけです。絵そのものは通れません。そこで、ファクシミリは絵を碁盤の目のような小さな区画(画素)に分け、順に読み取ります。区画ごとの濃さは、電気の信号に変えて送ります[1]。

一例では、いまのしくみは小さな光センサーを横に1列に並べ、紙の幅の方向を一度に読みます。そのあと原稿を少しずつ動かして、縦の方向を読んでいきます[1]。1行ずつ読んで、行を重ねていく、と考えると分かりやすいと思います。

ここで問題になるのが、受け手の側です。送り手が読んだ順番と同じ速さで、同じ位置に点を打ち直さなければ、絵は元に戻りません。この難題に最初に挑んだ人がいます。

電線で絵を送るには、絵を電気信号の列に直す必要がある。ファクシミリの原理は、原画像を碁盤の目のような多数の微細な区画(画素)に分けて順に読み取り(送信走査)、各画素の濃淡を電気信号(画信号)に変えて送ることにある[1]。

一例として、現在のICイメージセンサーは、微小な光電変換素子を1列に並べて紙の幅方向(主走査)を読み取り、原稿を動かすことで縦方向(副走査)を読み取る[1]。この分解は、受け手の装置が同じ順序で画素を再構成して初めて意味をもつ。つまり送信側と受信側の動きを一致させる問題が、最初から付いて回る。

では、この問題に最初に取り組んだのは誰で、どんな装置だったのか。

2. ふりこ ふたつで、絵を 送ろうと した 人

2. 電話より33年前、振り子を2つ使った特許があった

2. 1843年のベイン特許 ── 2つの振り子と、同期の失敗

1843ねん、スコットランドの ベインさんの とっきょに、絵を 送る しくみが 書かれました。でんわの はつめいより 33ねん 前です[2]。

ふりこ ふたつを とけいで うごかして、送る がわと うけとる がわで、いっしょに ゆらします。ふりこが ゆれる たびに、絵の 1行を なぞる しくみでした[2]。

けれど、ふたつの そうちは、ほんとうには ぴったり あいませんでした。そのため、絵は きれいに うつらなかった といわれます[2]。

ずれを なくす には、どう したら いいのでしょう。

電話の発明より33年前の1843年5月27日、スコットランドのアレクサンダー・ベインの特許に、絵を電気で送る仕組みが記されました。いまのファクシミリの出発点とされる特許です[2]。

ベインは、時計仕掛けで動く2つの振り子を、送る側と受ける側に1つずつ置きました。振り子が揺れるたびに、絵の1行をなぞります。送る側では、金属のピンの絵を、電気を通す針でなぞって、電気を入れたり切ったりして信号にしました。受ける側では、薬品をしみこませた紙に、跡をつけました[2]。

ところが、2つの装置は本当にはそろわず、英語版Wikipediaの説明では画質は悪かったとされています[2]。特許の時点が起源で、その機械が役に立つまでには、続く人の工夫が必要でした。

揺れる速さをそろえるには、何がいるのでしょうか。

1843年5月27日付の英国特許に、スコットランドのアレクサンダー・ベインが仕組みを記した。電話の発明(1876年)より33年早く、ファクシミリの起源とされる[2]。

仕組みは、時計で動く2つの振り子を送信側と受信側に置き、1行ずつ走査するものだった。送信側では、絶縁体の円筒上の金属ピンを電気の探り針でなぞってオン・オフの信号にし、受信側では薬品を染みこませた紙に跡をつけた[2]。ところが、2つの装置は本当には同期せず、画質は悪かったと英語版Wikipediaは説明する[2]。

特許の時点では実用になっていない点が大事である。受信側が送信側と同じ速さで同じ位置を動く、つまり同期という問題が、起源の時点から課題だった。では、この同期をどう解いたのか。

3. ぎんこうで はたらいた、ふりこの ファクス

3. 銀行の署名を送った1865年のパンテレグラフ

3. カゼリのパンテレグラフ ── 同期を解き、商用化した1865年

イタリアの カゼリさんは、ふりこで 送る がわと 受ける がわの 速さを そろえる ふしぎな きかいを 作りました。パンテレグラフと よびます[3]。

電気を とおさない インクで 書いた 文字を、金ぞくの 板に のせます。それを なぞって 電気の 入り切りに かえます。うけとる がわでは、電気が とおると くろく なる 紙に、あとが つきます[3]。

1865ねんに、パリと リヨンの あいだで、はじめて お金を とる サービスが はじまりました。でんわより 11ねん 早いです[4]。

しらべた 話では、いちばん 多い 使い道は、ぎんこうで 名前(サイン)が 本人の ものか たしかめる ことだった とされます[3]。1まいを 送るのに、2分 ちかく かかった といわれます。

これは 日本では どう つかわれたのでしょう。

ふりこで速さをそろえる工夫に成功したのが、イタリアの物理学者ジョヴァンニ・カゼリです。1865年5月16日、パリとリヨンの間の電信線で、パンテレグラフの商用サービスが始まりました。電話の発明より約11年早い出来事です[4]。

電気を通さないインクで書いた文字を、金属の板にのせて走査します。受ける側には、電流が流れると黒ずむ紙を置いて、跡をつけます。ふりこで、送る側と受ける側の動きをそろえる設計でした[3]。

25語ほどの1枚の送信に、約108秒かかったとされます[3]。いちばん多い使い道は、銀行の取引で署名が本物かを確かめることでした[3]。文字の意味でなく形を送るので、署名の確認に向いていたのかもしれません。

では、日本ではいつ、どんな場面で絵が電線を走ったのでしょうか。

同期の問題に対するカゼリの答えも、振り子だった。パンテレグラフは振り子で送受信を同期させ、絶縁インクで書いた文字を金属板に置いて走査し、受信側は電流で黒ずむ紙に跡をつける[3]。1865年5月16日にパリとリヨンの間の電信線で商用開始され、電話の発明より約11年早かった[4]。

25語ほどの1枚の送信に約108秒を要し、最も一般的な用途は銀行取引での署名の確認だった[3]。署名は文字の意味でなく、形そのものを確かめる必要があるため、絵を送る方式が向いていたと考えられる。なお、1861年を発明年とする資料もあり、商用開始とは別である。

ベイン以後も、同期の工夫は続いた。1848年には英国のベイクウェルが円筒走査式の画像電信を発明し、ベインの同期の問題を改良したとされる[8]。では、日本ではいつ、どんな場面でこの仕組みが使われたのか。

4. 日本では、大きな ぎしきの 写真を 電線で 送った

4. 日本の国産装置が、即位の礼の写真を電送した1928年

4. 1928年のNE式写真電送 ── 国産装置が果たした役割

日本では 1928ねん、にわ やすじろうさんたちが、NEしきと いう、写真を 電線で 送る そうちを 作りました[5]。

その ときは、京都で、てんのうの 大きな ぎしきが ありました。その 写真を 東京の 新聞に 早く 出すために、毎日新聞が この そうちを つかって、うまく いきました[5]。

日本で 作った そうちで 写真を 送れた ことが、そのころは 大きく とりあげられました[5]。

それから 何十年かして、ファクスは 家や 会社に 広がります。どうして でしょう。

日本では、1928年(昭和3年)に、丹羽保次郎らがNE式という写真電送の装置を開発しました。同じ年の11月、京都であった昭和天皇の即位の礼の写真を、東京へ送る場面で、毎日新聞社がこの方式を使い、成功したと伝えられています[5]。

資料によっては、送った区間が「大阪から東京の間の有線」と書かれています。京都から先の道すじは、書き方がちがうため、ここでは区間を言い切らないでおきます[5]。

この成功は、国産技術の勝利ともてはやされた、と紹介されています[5]。海外の技術を輸入して使うのでなく、日本の人たちが作った装置で、大きな行事の写真を新聞に載せたことが、誇らしい出来事として受け止められたのです。

では、新聞社の道具だったファクシミリは、いつ家や会社に広がったのでしょうか。

日本では1928年(昭和3年)、丹羽保次郎らがNE式写真電送装置を開発した。同年11月の昭和天皇の即位礼で、毎日新聞社が京都から東京への電送にこの方式を採用し、成功した[5]。

ただし、送信区間の記述は資料で異なる。ある資料は「大阪―東京間の有線電送」とする[5]。本稿では区間を断定しない。国産装置で成功したことが「国産技術の勝利」ともてはやされた、と紹介されている[5]。

その後、ファクシミリは新聞社の専用設備から、家庭と企業の電話回線へと広がる。何が転機になったのか。

5. ファクスは 3分から 1分で 送れるように なった

5. 1分で送れるようになった理由 ── 白と黒の長さだけを送る

5. 1972年の電話網開放とG3標準 ── 白黒の続く長さを送る符号化

日本では 1972ねんに、きまりが かわって、電話の 線を だれでも つかえる ように なりました[1]。ファクスは、ぐんと 広がりました。

はじめは、1まい 送るのに 3分 かかる ものでした。1980ねんに、日本の 会社が 出した 考えを もとに、1分で 送れる しくみが、せかいの きまりに なりました[6]。

わざは、「白が 5こ、黒が 2こ」の ように、同じ ものが つづく 長さだけを 送る ことです。1こずつ 送らない ぶん、時間が みじかく なります[8]。

文字の 紙では、20ぶんの 1ぐらいに へる ことも ある、と いわれて います。中身によって ちがいます。絵の 紙では、そこまで へりません[8]。

日本で、ファクシミリが急に広がったのは、1972年の法改正で電話網が開放されてからです[1]。1972年ごろから、建築図面や企画書を送る使い方が始まったといわれます[6]。

当時のファクシミリは世代が進むごとに速くなっています。G1は1968年、G2は1976年で、1枚約3分の「3分ファクシミリ」でした。1980年のG3は、「1分ファクシミリ」と呼ばれました[6]。

この速さの鍵が、白と黒の長さだけを送る符号化です。文字の紙は、白い部分が長く続きます。「白が100こ、黒が3こ」のように長さで送ると、情報が減ります。この基本の方式をMH符号化といいます。1980年に、日本のKDDと電電公社の提案をもとにした、となりの行との差も使うMR方式が、国際標準(ITU-T勧告T.4)の一つに取り入れられました[6]。MR方式は、MH符号化の約2倍の圧縮性能だった、と説明されています[6]。

この標準化は、2012年にIEEEマイルストーンに認定されました。日本の端末メーカーの技術で、日本のファクシミリが世界に広まったとされています[7]。

ファクスのいまは、どう記録しているのでしょうか。

日本で普及が進んだ契機は、1972年の法改正で電話網が一般に開放されたことである[1]。1972年ごろから建築図面や企画書の送信に使われ始め、世代も進んだ。G1は1968年、G2は1976年(3分ファクシミリ)、G3は1980年(1分ファクシミリ)である[6]。

G3の速さを支えたのは符号化である。基本は、各行の繰り返す白や黒の長さ(ランレングス)を符号にして送り、変調の前に冗長な情報を減らすMH符号化である。英語版Wikipediaが紹介する目安では、文字原稿でMH圧縮の平均圧縮率は約20だが、内容によって異なり、絵では下がる[8]。1980年には、日本のKDD・電電公社の提案をもとに、隣の行との差も使う2次元符号化のMR(Modified READ)方式が、ITU-T勧告T.4に取り入れられ、G3の国際標準の選択肢になった。MR方式はMH符号化の約2倍の圧縮性能とされる[6]。

この標準化は、NTTとKDDIの共同開発と普及推進として、2012年にIEEEマイルストーンに認定された。日本の端末メーカーの技術で日本のファクシミリが世界に広まった、と両社は述べている[7]。受信側の記録方式にも、感熱記録・熱転写記録・インクジェット記録などがある[1]。

自分でも 調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

ノートの ます目に、白と 黒で 小さな 絵を かいて みましょう。うえの 行から 1行ずつ、「白 3こ、黒 2こ」の ように、同じ 色の 長さだけを 数字で 書きます。

その 数字だけを 家の 人や 友だちに 見せて、同じ 絵に もどして もらいます。うまく もどせたら、ファクスと 同じ 考え方です。

くわしく 知りたい とき

下に ある ページに、ファクスの れきしや、日本の ぎじゅつの ことが のって います。

今日できること

ノートのます目を使って、ファクシミリごっこをしてみましょう。白と黒だけの小さな絵を描き、上の行から順に「白3、黒2、白1」のように、同じ色が続く長さを数字で書き出します。

その数字だけを家の人に渡して、同じ絵に戻してもらいます。数字が少なくて済む絵と、多くなる絵のちがいを比べると、文字の紙のほうが短く送れて、絵では下がる理由が実感できると思います。

くわしく 知りたい とき

出典のうち、ETHW(IEEEマイルストーンの解説)は、G3の標準化の経緯を英語で説明しています。

今日できること

方眼紙に白黒の小さな絵を描き、行ごとに「白3、黒2、白1」のように同じ色の連続の長さを書き出す。その数字の列だけを他の人に見せて、絵を再現してもらう。ランレングス符号化が、文字原稿のように白が長く続くものに向き、細かな絵では効きにくい理由を、手で確かめられる。

資料を読むなら

  • ETHW「International Standardization of G3 Facsimile, 1980」。標準化の経緯と提案の中身が、英語で読める[6]。
  • NTT・KDDI 2012年のニュースリリース。国内での位置づけが分かる[7]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

原理の説明は百科事典、国際標準はIEEEとNTT・KDDIの発表、ベイン・カゼリの記述は英語版Wikipediaを参照しました。

  1. 改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書「ファクシミリ」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/ファクシミリ (走査・画素・記録方式・1972年の電話網開放)
  2. Wikipedia「Alexander Bain (inventor)」。https://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Bain_(inventor) (1843年の特許・振り子の仕組み・同期の問題)
  3. Wikipedia「Pantelegraph」。https://en.wikipedia.org/wiki/Pantelegraph (パンテレグラフの仕組み・送信時間・用途)
  4. Wikipedia「Giovanni Caselli」。https://en.wikipedia.org/wiki/Giovanni_Caselli (1865年のパリ〜リヨン商用開始)
  5. 日本大百科全書「丹羽保次郎」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/丹羽保次郎 (NE式・1928年の即位礼での採用)
  6. IEEE Milestone: International Standardization of G3 Facsimile, 1980(ETHW)。https://ethw.org/Milestones:International_Standardization_of_G3_Facsimile (G1〜G3の世代・T.4標準化)
  7. NTT・KDDI ニュースリリース(2012年4月5日)。https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2012/1204/120405a.pdf (IEEEマイルストーン認定)
  8. Wikipedia「Fax」。https://en.wikipedia.org/wiki/Fax (ベイクウェル・ランレングスの圧縮率の目安)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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