1. 泡は、なにが 出て いるの?
1. じゅわっと出る泡は、何が出ているのか
1. 泡の正体 ── 油ではなく水分が抜ける姿
あげものの 泡は、油が ぶくぶく して いるのでは ありません。食べものの 中に ある 水が、あつい 油で 水蒸気に なって、外へ とび出して いる すがたと 説明されます[1]。
てんぷらなら、ころもの 水も 出て いきます。あつい やかんの 口から 出る 湯気を、ちいさく した ような ものです。ただし 本当の 泡は、油の 中で 出るので、かたちは ちがいます。
水が 出て いくと、そのあとに 何が おきるのでしょうか。
あつい油に入れた食べ物からは、水分が水蒸気になって出ていきます。この水蒸気が泡となって見え、音も立てます。天ぷらなら、衣の水分も同じように抜けていきます[1]。
東京聖栄大学の調理科学の資料では、天ぷらやフリッターは120〜180℃の高温の油で加熱され、衣などの水分が蒸発すると説明されています[2]。ふだん何気なく聞いている「じゅわー」という音は、水が水蒸気になる合図でもあるわけです。
抜けた水のあとには、何が残り、食べ物はどう変わるのでしょうか。
油に入れた食材から立つ泡は、食材(天ぷらでは衣も)に含まれる水分が水蒸気になって抜けていく姿だと説明される[1]。ただしこの記述は解説記事であり、直接の根拠としては弱い。そこで、より一次に近い資料を見ると、東京聖栄大学の調理科学研究室の資料は、天ぷらやフリッターが120〜180℃の油で加熱され、材料、とくに衣の水分が蒸発すると述べている[2]。
この資料は「水分が蒸発する」と述べるのであって、泡そのものを名指しして水蒸気と書いているわけではない。泡が水蒸気だという理解は、この資料と解説記事を合わせたものであり、そう説明される、という強さにとどめておく。
では、水が抜けた食材は、油の中でどう変わっていくのか。
2. どうして あげものは、さいしょ しずんで あとで うくの?
2. 沈んでいた食べ物が浮いてくるのは、軽くなるから
2. 浮き上がりの理屈 ── 質量の減少と体積の増加
あげものを 入れた ばかりの ときは、油の 中に しずみます。ところが、ぶくぶくが つづくと、やがて うかんで きます。
水が 水蒸気に なって 出ていくと、食べものは すこし 軽くなり、体積は ふくらみます。おなじ 大きさで くらべると、油より 軽くなった ときに、うくのだと、ポテトを 例に した 解説では 説明されます[3]。
ゴムの ふくろに 空気を 入れて ふくらませると、水に うかびやすく なるのに にて います。ただし、あげものは ふくろでは なく、中の 水が 出て いく 点が ちがいます。
うくのは、火が とおった かどうかを たしかめる 方法では ありません。あくまで、ひとつの 目安です。
揚げ物を入れた直後は、たいてい油の中に沈みます。ところが、しばらくすると浮いてくる。ポテトを例にした解説では、加熱で水分が水蒸気になって食べ物の質量が減り、同時に体積がふくらむので、全体の密度が油より小さくなって浮くと説明されています[3]。
研究者はこれをもっと細かく調べました。工業的につくるポテト生地のスナックを揚げると、油に沈んでいた生地は、ある時間を過ぎると浮力が増して浮き上がります。その時刻を予測する数理モデルが、2021年に発表されました[4]。
この研究によると、生地の上面から出た水蒸気は泡になって上へ抜け、下面から出た水蒸気は、浮力をもつ蒸気の膜になります[4]。対象は工場でつくるスナックなので、家庭の天ぷらにそのまま当てはまるとは限りません。
浮いたことは目安になっても、火が通ったことの証明ではありません。では、揚がり具合を見るには、泡のどこを見ればよいのでしょうか。
入れた直後の食材が沈むのは、油より密度が大きいからだ。ところが加熱が進むと、水分が水蒸気となって抜けて質量が減り、体積は増えるため、全体の密度が油より小さくなって浮く。ポテトを例にした解説はそう説明する[3]。ただしこれは一般向けの解説であり、密度を実測した値ではない。
より精密な扱いとして、Babbらは、ポテト生地スナックの揚げを数理モデル化し、沈んでいた生地が臨界時間を過ぎて浮力を増し浮き上がる時刻(lift-off time)を予測した(SIAM J. Appl. Math., 2021)[4]。上面で生じた水蒸気は泡として上へ抜けるが、下面で生じた水蒸気は浮力を持つ蒸気の膜(vapor blanket)になるという。
だが対象は工業的なポテト生地スナックで、天ぷらや家庭の揚げ物に直接あてはまるとは書かれていない。この研究が示すのは、浮き上がりが単に「軽くなる」だけでなく、水蒸気の出る場所や膜の形成とも関わりうる、という方向だ。浮いたことは目安にはなっても、火の通りを確かめる方法ではない。
では、揚がり具合を見るには、泡のどこを見ればよいのか。
3. 泡が 小さく なるのは、なんの あいず?
3. 大きな泡が小さくなるとき、食べ物の中では
3. 泡の大きさの変化 ── 水分の減り具合を読む
あげものを 入れた ばかりの ときは、大きな 泡が たくさん 出ます。しばらく して あがって くる ころには、泡が 小さく なる ことが あると いわれます[1]。
これは、出て くる 水が へって きた 目安の ひとつと 考えられて います。ただし、泡の 大きさで、あがりぐあいが きまる わけでは ありません。
だから、大人が あげて いる ところを、すこし はなれて 見ると、泡の 大きさが かわるのが 分かります。音も、すこしずつ 小さく なります。
揚げ物を油に入れたばかりのときは、大きな泡が出ます。しばらくして揚がってくる頃には、泡が小さくなることがあります。これは、水分が減ってきた目安の一つとされています[1]。ただし、泡の大きさだけで揚がり具合が決まるわけではありません。
油の温度も、泡に関係します。農林水産省の資料では、揚げ油の温度は野菜が170℃くらい、肉や魚は175〜180℃くらいが基本とされています[5]。一度に入れすぎると温度が下がりすぎるので、量は油の表面積の半分くらいまでにするとよい、とも書かれています[5]。
同じ資料には、口が広い鍋のほうが蒸気がとびやすく、からっと揚がる、という説明もあります[5]。水が外へ逃げやすいほうが、からっと仕上がるということです。
抜けた水のあとには、何が入りこむのでしょうか。
投入直後は大きな泡が盛んに出て、揚がってくる頃には小さくなることがある。これは水分が減ってきた目安の一つとされる[1]。この観察は、水分の放出量が時間とともに減るという理解とも整合する。ただし、泡の大きさの変化と水分量を対応づけた実測値は、今回の資料には見つからなかった。
ここで温度が効く。農林水産省の資料は、揚げ油の温度を野菜で170℃前後、肉や魚で175〜180℃前後を基本とし、一度に揚げる量は、温度が下がりすぎないよう油の表面積の半分程度までとしている[5]。量が多いと油の温度が下がり、水分の抜け方が変わると考えられる。また同資料は、口が広い鍋のほうが蒸気がとびやすく、からっと揚がるとしている[5]。
水が抜けたぶんは、空洞になるのか。それとも別のものが入るのか。
4. 水が 出た あとには、なにが 入るの?
4. 水が出たあとに入りこむ、油
4. 「油と水の交代」── 吸油率が示す置き換わり
水が 出て いった ところへ、こんどは 油が 入って いきます。これを「あぶらと 水の こうたい」と いいます[2]。
ころもが ぶあついほど、油は はいりやすく なります。すあげ、からあげ、フライ、てんぷらの じゅんに、油を すう わりあいが 大きくなると されます[6]。
あげものが あぶらっぽいか、からっと して いるかは、水と 油の いれかわり方で かわるのです。
5. 泡の 音や かたちは、研究に なって いるの?
5. 揚げ物の音は、研究の対象にもなっている
5. 泡と音の研究 ── 水滴を熱い油に落とす実験
あげものの 音や 泡は、研究の もとにも なって います。あつい 油に 水が ふれると、泡の でき方が いくつかに わかれる ことが、しらべられました[7]。
泡の しゅるいに よって、音の ようすも ちがう そうです。
ただし、これは 水の つぶを あつい 油に おとして しらべた 実験の けっかです。食べものの 泡と、まったく おなじだと 言いきる ことは できません。
熱くなった油に水が触れたときの泡は、木山さんやトラスコットさんらの研究チームによって、3つのタイプに分けられました。爆発するように広がる泡、細長くのびる泡、振動する泡です。泡のタイプごとに、出る音の特徴が違うと報告されています。2022年に、専門誌Physics of Fluidsで発表されました[7]。
音が違うということは、揚げ物の「じゅわー」という音の中に、いくつかの泡の出来事が混じっているのかもしれません。
ただし、これは水滴を熱い油に落とす実験の結果です。食材から出る泡と同じだと言い切ることはできません。
加熱した油に水が触れて起こる泡の現象は、Kiyama、Truscottらの研究チームによって、爆発キャビティ、伸長キャビティ、振動キャビティの3種類に分類されている。泡のタイプごとに音の特徴が違うという(Physics of Fluids, 2022)[7]。
揚げ物の「じゅわー」という音が、単一の音ではなく、性質の異なる泡の出来事の重なりかもしれない、という見方につながる。ただしこの実験は水滴を熱い油に落としたもので、食材から出る泡と同一とは言い切れない。
実験室の研究は、台所の泡にも、まだ分けて考える余地があることを示している。
6. あげものを、はなれた ところから 見て みよう
6. 大人が揚げるとき、少し離れて泡と音を見る
6. 出口 ── 観察の道すじと、資料を読む
おうちの 人と いっしょに、あげものを して いる ところを、十分 はなれた ところから 見て みましょう。あぶらは はねる ことが あるので、火の そばには ちかづきません。
いれた ばかりの ときと、あとの ときで、泡の 大きさや 音は どう ちがうでしょうか。あげものが しずんで、うく ところも 見られるかも しれません。
あぶらの あつい なべは、大人が 見て いる ときだけ 使います。火を つけたまま はなれないのが、たいせつです。
大人と一緒に、大人が揚げ物をするところを、十分に離れた場所から見て、泡の大きさと音がどう変わるかを観察してみてください。油ははねることがあるので、鍋には近づかず、油にも火にも触りません。
入れた直後と、しばらくあとで、泡の大きさと音はどう違うでしょうか。料理のやり方は、いつもどおりのままにしておきます。
油の火災について、東京消防庁は、少量の油の急加熱や、冷凍食材が鍋底中央に接していることなどで発火する例をあげています[8]。揚げている間は、鍋の前から離れないことが大切です。
大人と一緒に、大人が普段どおりに揚げるところを、十分に離れた場所から観察するとよい。条件は変えず、泡の大きさと音の変化を記録する。油は跳ねるので、鍋には近づかず、触らない。
安全面では、東京消防庁の資料が、冷凍食材が鍋底中央に接する、調理油が少量で急加熱される、といった例を挙げ、過熱防止装置付きのこんろでも発火はありうるとしている。装置は鍋底が約250℃で自動消火するが、それに頼りきらず、揚げ物中は目を離さない[8]。
資料を読むなら、日本語で完結する東京聖栄大学の資料[2]、農林水産省の資料[5]、京丹後市の吸油率の資料[6]が入り口になる。研究では、Babbらの論文(2021)[4]が、英語だが浮き上がりを数式で扱った例だ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:食品科学・調理科学の資料、農林水産省、京丹後市、東京消防庁の資料、研究機関と論文の記録、解説記事を使った。泡=水蒸気、および浮く理由の一部は、解説記事と研究を合わせた説明であり、一次資料が直接に明言しているわけではない。
- ナゾロジー「天ぷらの衣」に関する記事。 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/166743 (泡は水分が抜ける姿とされる点、泡が小さくなる目安について)
- 東京聖栄大学 調理科学研究室「天ぷらとフリッター」。 https://www.tsc-05.ac.jp/images/nutrition_ed/2018fsp/09.pdf (高温の油での水分蒸発と「油と水の交代」について)
- Science ABC, "Why does deep-fat fried food float in oil". https://www.scienceabc.com/eyeopeners/why-does-deep-fat-fried-food-float-in-oil (水分が抜けて浮く理由の一般向けの説明について)
- Babb et al., "Predicting Lift-Off Time When Deep-Frying Potato Dough Snacks," SIAM Journal on Applied Mathematics, 2021(ハダースフィールド大学の記録)。 https://pure.hud.ac.uk/en/publications/predicting-lift-off-time-when-deep-frying-potato-dough-snacks/ (ポテト生地スナックの浮き上がる時刻の数理モデルについて)
- 農林水産省「揚げ物の油の温度と扱い方」。 https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1503/01.html (油の温度、量、鍋の口の広さについて)
- 京丹後市「揚げ物の種類によって違う吸油量」。 https://www.city.kyotango.lg.jp/material/files/group/25/oil.pdf (揚げ物の種類ごとの吸油率の目安について)
- Newswise「Sizzling sound of deep frying reveals complex physics」(Physics of Fluids, 2022の紹介)。 https://www.newswise.com/articles/sizzling-sound-of-deep-frying-reveals-complex-physics (泡の3つのタイプと音について。要約ページで確認)
- 東京消防庁「天ぷら油火災の実態」。 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000011735.pdf (調理油の発火例と過熱防止装置について)
なおした ところ
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