このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

「ともだちの ともだち」で だれにでも つながる? ── フェイスブックでは 3.57人

「友達の友達」をたどると何人で届くのか ── 手紙リレーは2割しか着かず、Facebookでは平均3.57人

「友達の友達」の距離 ── 1969年の手紙リレー(開始296人→到達64本)から、2011・2016年のFacebook全体の平均3.74人・3.57人まで

分野:技術

フェイスブックを つかう 人どうしでは、つながって いる 2人の あいだに、へいきん 3.57人が はさまって いました。2016年に、そう 発表されました[4]。

でも、むかしの 手紙の じっけんでは、はじめた 296本の うち、ゴールに 着いたのは 64本、10本に 2本ぐらいでした。どうして こんなに ちがうのでしょう。この メモを よむと、その わけが わかります。

Facebookを使っている人どうしでは、つながっている2人のあいだに、平均3.57人がはさまっていました。2016年にFacebookはそう発表しました[4]。ところが、1969年に「友達の友達」だけで手紙を送る実験をしたときは、始めた296本のうちゴールに着いたのは64本、2割強にすぎませんでした[2]。

同じ「友達の友達」なのに、なぜこれほど結果が違うのでしょうか。手紙の実験、メールの実験、Facebook全体の計算を順に比べると、数字の読み方と、世界が小さく見える理由が分かります。

Facebookの利用者どうしの平均距離は、2011年に4.74(仲介者3.74人)[1]、2016年に仲介者3.57人と発表された[4]。一方、1969年のミルグラムらの手紙リレーで目標に届いた鎖は、始めた296人のうち64本にとどまり、平均5.2人はその届いた鎖だけの値だった[2]。

実験ごとに数字が違うのは、何を数えているかが違うからだ。手紙・メール・SNS全体の3つの調べ方を比べると、「六次の隔たり」という言葉の根拠と限界、そして距離が短くなる理由が分かる。

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1. 手紙は 友だちの 友だちを たどって 着くの?

1. 手紙を「名前で呼び合う知り合い」だけに渡したら着くのか

1. 手紙リレー実験の設計 ── 名前で呼び合う知り合いにだけ渡す

あなたが、ぜんぜん しらない 人に 手紙を とどけたいと します。住所は わかりません。ただし、名前で よび合う 知り合いにだけ 手紙を わたして いい。そう 言われたら、どう しますか。

1969年、アメリカで、これを 本当に ためした 人たちが います。ゴールは、ボストンで かぶの うり買いを する 人でした。ネブラスカ州と ボストンの 296人が、手紙を 友だちに わたして、ゴールを めざしました[2]。

この 話の 元に なったのは、1929年の ハンガリーの 作家の 短い 話だと いわれます。世界の どの 2人も、友だちの くさりを 6かい たどれば つながる、と 書かれて いました[1]。

手紙は、ほんとうに 着いたのでしょうか。

住所を知らない相手に手紙を届けるとき、使えるのが「名前で呼び合う知り合い」だけだとしたら、あなたはだれに渡すでしょうか。

1969年のアメリカでの実験

これを実際に試したのが、トラヴァースとミルグラムです。ネブラスカ州とボストンの296人が、マサチューセッツ州にいる目標の人物(ボストンの株式仲買人)に手紙を届けるよう頼まれました。ルールは、ファーストネームで呼び合う知り合いにだけ手紙を渡せる、というものでした[2]。

この発想は、さらに古くからあります。ハンガリーの作家カリンティ・フリジェシュが1929年の短編「鎖」で、世界のどの2人も友人関係の鎖でたかだか6つでつながる、と書いたと紹介されています[1]。実験は、この考えが現実に当てはまるかを調べるものでした。

では、手紙は本当に目標まで着いたのでしょうか。

住所も顔も知らない相手に手紙を届けるとき、手がかりが「知り合いの知り合い」しかなければ、鎖は何人になるのか。これを実験で測ろうとしたのが、1969年のトラヴァースとミルグラムである。ネブラスカ州とボストンから任意に選んだ296人に、マサチューセッツ州の目標人物(ボストンの株式仲買人)へ宛てた書類を渡し、ファーストネームで呼び合う知り合いにだけ転送してよい、という条件をつけた[2]。

背景には、ハンガリーの作家カリンティ・フリジェシュが1929年の短編「Láncszemek(鎖)」で、どの2人も友人関係の鎖でたかだか6つでつながると書いたことがある[1]。この実験は、その発想を数字で確かめる試みだった。

では、296本の鎖のうち、実際に目標へ着いたのはいくつだったのか。

2. はじめた 296本の うち、着いた 手紙は 64本

2. 平均5.2人は、着いた手紙だけの数字だった

2. 開始296人のうち到達64本と平均5.2人 ── 平均は到達した鎖だけの値

はじめた 296本の うち、ゴールに 着いた 手紙は 64本でした。10本に 2本 ちょっと です[2]。

着いた 手紙が、ゴールまでに とおった 人の 数は、へいきん 5.2人でした[2]。ここで 気を つけたい ことが あります。この 5.2人は、着いた 手紙だけを 数えた 数です。ほかの 手紙は、とちゅうで 止まって しまいました。

「6人で つながる」と いう 言い方が 広まったのは、1990年の げきの 題名に なってからだと いわれます[1]。この じっけんの 数字は、そのまま 6では ありませんでした。

では、着いた 手紙は、どんな 人を とおって きたのでしょう。

結果を見ると、目標に届いた鎖は64本でした。始めた296本のうちですから、約22%、およそ5本に1本です。届いた鎖の、始めた人から目標までの仲介者は平均5.2人でした[2]。

「平均」にひそむ落とし穴

この5.2人は、着いた鎖だけを数えた平均です。途中で止まった鎖は、平均に入っていません。つまり、「だれでも5.2人で届く」と読むことはできません。

「六次の隔たり」という言い方が広まったのは、ミルグラムの数字そのものより、1990年のジョン・グエアの戯曲がきっかけだったと紹介されています。ミルグラムの平均仲介者数は、選んだ人の集団によって4.4〜5.7の幅があります[1]。

では、届いた64本は、どんな人を通ってきたのでしょうか。

結果は、開始した296本のうち到達した鎖が64本、約22%にとどまった。到達した鎖について、始点から目標までの仲介者は平均5.2人である[2]。ここで平均の対象に注意が要る。これは到達に成功した鎖だけの値で、脱落した多数の鎖は含まれない。したがって「無作為の2人が平均5.2人でつながる」とは言えない。

「六次の隔たり」が広く知られたのは、1990年のジョン・グエアの戯曲による。ミルグラムの平均仲介者数も、標本の取り方によって4.4〜5.7と幅がある[1]。「六次の隔たり」という言葉は、ミルグラムの平均値そのものとは別に広まった。

では、到達した64本は、どのような経路をたどったのか。

3. 手紙は 顔の 広い 人に あつまった

3. 着いた手紙の半分近くが、同じ3人のだれかを通っていた

3. 鎖の集中 ── 到達鎖の48%が同じ3人のうちの誰かを経由

着いた 手紙を しらべると、ふしぎな ことが ありました。ゴールの 直前に、同じ 3人の だれかを とおった 手紙が、半分ちかくも あったのです[2]。

この 3人は、友だちが 多い「顔の 広い 人」だったようです。しらべた 人の 話では、たくさんの 手紙が その 人たちを 通っていました。

また、ボストンから はじめた 手紙の ほうが、ネブラスカから はじめた 手紙より、通る 人が 少なくて すみました[2]。ゴールに 近い 町の 人ほど、近道が 作りやすかったのかも しれません。ただし、これは わたしの 想ぞうです。

ところが、もっと 大きな じっけんで、ちがう 答えが 出ます。

届いた鎖を詳しく調べると、特徴がありました。目標に着く直前に、同じ3人のうちの誰かを通った鎖が48%あったのです。報告では、鎖が少数の「顔の広い人」に集中したと述べられています[2]。

ただし、この48%は、届いた64本についての割合です。届かなかった鎖が同じ道をたどったかどうかは、この数字からは分かりません。

もう1つ、ボストンから始めた鎖は、ネブラスカから始めた鎖より仲介者が少なくて済みました[2]。目標に近い地域の人ほど短い鎖で届いたことになります。

顔の広い人に頼るしかないのなら、世界は小さいというより、少数の人が支えているだけかもしれません。もっと多くの人で試したら、どうなるでしょうか。

到達した鎖のうち48%が、目標に着く直前に同じ3人のうちの誰かを経由していた。報告者はこれを、社会関係図(ソシオメトリー)上の「スター」への集中と呼んでいる[2]。分母は到達した64本で、全296本ではない。

地域差もある。ボストン発の鎖はネブラスカ発の鎖より仲介者が少なく、目標との地理的な近さが鎖の長さに効いていた[2]。

この結果から、「世界が小さい」のは少数のハブ(顔の広い人)のおかげで、ハブがなければ成り立たない、という仮説が自然に浮かぶ。しかし、サンプルは296人で、到達は2割強にすぎない。この仮説は、規模を大きくした実験で検証できる。

4. 6万人の メール じっけんは、ほとんど 止まった

4. 6万人のメール実験で、着いた鎖は384本だけだった

4. 2003年の電子メール実験 ── 384/24,163本と、脱落を補正した中央値約7

2003年、こんどは メールで じっけんが 行われました。6万人を こえる 人が やりましたが、24163本の くさりの うち、ゴールに 着いたのは 384本だけでした[3]。100本に 2本にも なりません。

ゴールは、13の 国に いる 18人。みんな、メールを 友だちに 送って めざしました[3]。

着いた くさりの へいきんは 4.05人でした。ただし、みじかい くさりほど 着きやすいので、この 数字は 小さめに 出ます。とちゅうで やめた 分も ふくめて 計算しなおすと、まん中の 数は 7人ぐらいに なりました[3]。同じ 国の 中なら 5人、国を またぐと 7人です。

では、なぜ くさりは 止まったのでしょう。そして、着いた くさりは、どんな 道を 通ったのでしょう。

2003年、ドッズ、ムハマド、ワッツの3人が、さらに大きな実験をしました。6万人を超える人が参加しましたが、目標に届いた鎖は24,163本中384本、約1.6%でした[3]。

参加者は、13か国にいる18人の目標に、知り合いへメールを転送してたどり着こうとしたのです[3]。

届いた鎖の平均は、小さめに出る

届いた鎖の平均は4.05でした。ただし、短い鎖ほど途中で切れにくく届きやすいので、この平均は実際より小さく出ます。途中でやめた人の分を補正して推定すると、中央値は約7になり、同じ国の中なら5、国をまたぐと7と報告されています[3]。

鎖が切れた理由は何だったのでしょうか。また、届いた鎖は、1969年と同じように顔の広い人を通っていたのでしょうか。

2003年のドッズ、ムハマド、ワッツの実験は、規模がミルグラムより桁違いに大きい。6万人超が参加し、13か国18人の目標へ知り合いにメールを転送する形で進められた[3]。

到達は24,163本中384本、約1.6%にすぎない。到達した鎖の平均長は約4.05だが、著者ら自身がこの数字を誤解を招くものとしている。短い鎖ほど到達しやすく、長い鎖は途中で脱落しやすいため、到達鎖だけの平均は短いほうに偏るからだ。脱落を補正した推定では、中央値L*は約7で、同じ国内が5、国をまたぐと7になる[3]。

ミルグラムの5.2は「届いた鎖の平均」、ここでの約7は「脱落を見込んだ推定」で、数え方が違う。どちらが正しい、という比べ方はできない。では、脱落はなぜ起き、成功した鎖はどんな関係を使ったのか。

5. 着いた くさりは、あまり 親しくない 人も 使った

5. 着いた鎖は、「あまり親しくない人」をよく使っていた

5. 中程度〜弱いつながりが道になる ── 1969年の結果との食いちがい

この じっけんを した 人たちは、くさりが 止まった おもな わけを、「道が 見つからない」ことより「やる気が 出ない」ことだと 考えました[3]。メールを 回すのは めんどうです。これは、書いた 人たちの 考えで、たしかめられた わけでは ありません。

着いた くさりは、わりと 親しい 人だけでなく、あまり 親しくない 人も、うまくいかなかった くさりより よく 使って いました。仕事の 知り合いも 多かったそうです。それに、着いた くさりの 中には、顔の 広い 人を 通らないものも ありました[3]。

手紙の じっけんでは 3人に あつまり、メールでは あつまらなかった。話が ちがって います。やり方も、人も、時代も ちがうので、同じ 場所で くらべることは できません。

では、フェイスブックの 全部の 人を しらべたら、どう なるでしょう。

著者らは、鎖が途中で切れた主な原因を、道が見つからないことより、続ける動機が足りなかったことだと考えました[3]。これは著者らの解釈で、断定されたものではありません。

届いた鎖には特徴がありました。ごく親しい人だけでなく、「あまり親しくない」弱いつながりも、失敗した鎖より多く使われていたのです。職場の関係も多く、さらに、大きなハブ(顔の広い人)がいなくても届いたと報告されています[3]。

1969年は「3人に集中」、2003年は「ハブは必須でない」と、結論が逆に見えます。ただし、手紙とメール、アメリカ国内と13か国、人数の違いなど、条件が大きく異なります。どちらかが間違いだと決めることはできません。

実験には「途中でやめる人」という壁が必ず付きまといます。では、実験でなく、全員のつながりのデータが手元にあれば、どうなるのでしょうか。

鎖が切れた主因について、著者らは経路探索の困難さより動機の不足が大きいと考えた。ただしこれは著者らの解釈で、検証された因果ではない[3]。

成功した鎖は、中程度から弱い強さのつながり(弱い紐帯)を、失敗した鎖より多く使い、職業上の関係に偏る傾向があった。さらに、高い次数を持つハブは成功に必須ではなかった[3]。1969年の「48%が3人に集中」[2]とは、結論が逆向きに見える。

この食いちがいを、どちらかの誤りと決めることはできない。媒体(郵便とメール)、目標の数と所在(1人のボストンの人物と13か国の18人)、標本の規模と構成がすべて異なり、脱落の仕方も違うからだ。実験の枠組みでは、脱落が常に結果を左右する。では、脱落のないデータが存在すれば、距離はどう見えるか。

6. フェイスブックの 中では、へいきん 3.57人

6. Facebook全体を調べたら、平均3.57人でつながっていた

6. Facebook全体の平均距離 ── 2011年の3.74人から2016年の3.57人へ

2011年、フェイスブックの 研究者たちが、すべての 友だちの つながりを コンピューターで しらべました。5月に 直近の 28日の うちに つかった 人は、7おく2100まん人 ほど でした[1]。

2人の あいだに はさむ 人は、へいきん 3.74人でした。友だちを たどる 回数に すれば 4.74回です。1人 ふえるか へるかで、数え方が かわります[1]。

2016年には、やく 16おく人で しらべなおして、へいきん 3.57人に なりました。アメリカの 中だけなら 3.46人です[4]。

ここで 気を つけたい ことが あります。これは フェイスブックを つかって いる 人の 話で、世界中の 人の 話では ありません。

それにしても、どうして こんなに ちかいのでしょう。

2011年5月、Facebookと大学の研究者らは、直近28日以内にログインした約7億2100万人・約690億の友達関係を調べました。2人のあいだの平均距離は4.74、つまり、間にはさむ人は平均3.74人でした[1]。距離は友達リンクの数で数えるので、人数で数えると1つ少なくなります。

さらに、つながっている2人組のうち92%は、距離が5以下、つまり、はさむ人が4人以下でした[1]。全員のペアを1つずつたどったわけではなく、HyperANFという近似の計算方法を使っています。

2016年2月には、アクティブな約16億人で調べ直した結果が発表されました。平均はさらに縮んで3.57人、アメリカ国内だけなら3.46人です[4]。

ただし、対象はFacebookの利用者だけです。世界中の人の話ではなく、距離の定義も、実験とは違います。それでも、数字が小さいことには変わりありません。

平均の友達数は約190人でした[1]。それなのに、なぜ平均4人弱で地球の反対側にまで着くのでしょうか。

2011年5月、直近28日以内にログインした約7億2100万人・約690億の友達関係の全体について、平均距離は4.74、仲介者数にして3.74だった[1]。距離はリンク数、人数にすれば1つ少ない。さらに、到達可能なペアの92%が距離5以下だった。この結果はHyperANFという近似アルゴリズムによる推定で、全ペアを1つずつたどったものではない[1]。

2016年2月、Facebookはアクティブな約16億人について、平均3.57人(距離4.57)と発表した。2011年の3.74から減っている。アメリカ国内では3.46人だった[4]。

ただし、これは「Facebookのアクティブな利用者のあいだ」の値だ。ミルグラムやドッズの実験は、現実の脱落を含んだ人づての探索で、全員の接続情報を持つFacebookの計算とは、問いの立て方が異なる。到達した鎖の平均と単純に並べて、「実験は間違いだった」とも「Facebookが世界の真実だ」とも言えない。

では、平均の友達数が約190人[1]のネットワークで、なぜ約4人の距離に収まるのか。

7. 友だちは かさなるのに、なぜ ちかいの?

7. 友達が重なっていても、世界が小さくなるわけ

7. クラスター性が高くても短い ── ワッツとストロガッツのスモールワールド

1人の 友だちが 190人 いると します。その 友だちが、また 190人ずつ 友だちを もてば、友だちの 友だちは 190×190で 36100人に なりそうです。

ただし、これは 友だちが ぜんぜん かさならない ときの 数です。本当は、クラスの 友だちは たいてい おたがいに 知り合いです。だから、もっと 少なく なります。

では、近所で かたまって いるのに、どうして 遠くまで ちかいのでしょう。1998年、ワッツと ストロガッツと いう 研究者が、こんな 考えを しめしました。ふだんは 近所の 人どうしで つながって いても、少しだけ 遠くへの「近道」が あれば、全体の 道のりは ぐっと みじかく なる、というものです[5]。この ような ネットワークを「スモールワールド」と 名づけました。

たとえば、同じ 学校の みんなが 知り合いでも、1人が となりの町の 友だちを 知って いれば、その 町の 人にも つながります。ただし、これは 考え方の たとえです。フェイスブックが 小さい わけを、これだけで 言い切る ことは できません。

平均190人の友達がいる人を考えます。その友達がそれぞれ190人の友達を持つとすると、友達の友達は190×190で約3万6千人になりそうです[1]。ただし、これは友達どうしが重ならない場合の上限の計算です。実際は、同じ学校や職場の友達は互いに知り合いなので、ずっと少なくなります。

では、近所で固まっているネットワークが、なぜ遠くまで短い距離なのでしょうか。1998年、ワッツとストロガッツは、友達が近所で固まっている(クラスター性が高い)ネットワークでも、少数の遠くへの近道を混ぜるだけで平均の経路が短くなることを示しました。彼らはこれを「スモールワールド」と呼びました[5]。

たとえば、同じクラスの全員が互いに知り合いでも、1人だけ隣町に友達がいれば、その町の人たちとも道がつながります。こうした近道が少しあるだけで、全体の距離は大きく変わります。

友達数が平均約190人[1]なら、2歩先は単純計算で190²≒3.6万人になる。ただしこれは重なりを無視した上限で、実際の友達どうしは互いに知り合いであることが多く、2歩先の人数はずっと少ない。

それでも距離が短くなる理由を、1998年のワッツとストロガッツ(Nature)は、友達が近所で固まっている(クラスター性が高い)規則的な格子状のネットワークでも、ごく少数の辺をつなぎ換えて遠くへの近道を作るだけで、平均経路長がランダムなネットワーク並みに短くなる、と示した。彼らはこれを「スモールワールド」と呼んだ[5]。

この理論は、「固まっているのに短い」という両立を説明する枠組みで、Facebookの測定値そのものを導くものではない。理論と実測を並べて見る、という見方が適切だろう。

8. 自分の 「友だちの 友だち」を えがいて みよう

8. 校長先生までの道を、紙の上でたどってみる

8. 出口 ── 紙の上で試す経路探索と、資料の読みどころ

かみに、まんなかを 空けて、左はしに 自分、右はしに 校長先生の 名前を 書きます。

まんなかに、「名前で よび合う 人だけ」で 校長先生まで つなげる 道を えがきます。つかえるのは、自分が 名前を 知っている 人だけです。校長先生までの 道が 見つからなければ、名前を 知っている ほかの 人を ゴールに えらんでも いいし、「見つからなかった」と 書いても かまいません。

何人 あいだに 入れば つながりますか。道は 1つとは かぎりません。近道が ありそうなら、どれか 考えて みましょう。ただし、本当に 手紙を 回したり、知らない 人に れんらくを とったり しては いけません。紙の 上だけで 行います。

数が 少ない ほうが えらい わけでは ありません。人に よって、ちがって かまいません。

紙の左はしに自分、右はしに校長先生の名前を書きます。そのあいだを、自分が名前を知っている「名前で呼び合う人」だけでつなぐ道を描いてみましょう。校長先生までの道が見つからなければ、名前を知っている別の人をゴールにしても、「見つからなかった」と記録してもかまいません。

あいだに何人入りましたか。道は何通りかありますか。「この人がいれば短くなる」という近道の人は見つかりましたか。見つかったら、それがあなたにとっての「少数の近道」かもしれません。

実際に連絡を取る必要はありません。紙の上だけで十分です。数が少ないほうが優れているわけではなく、人によって違って当然です。

描き終えたら、家の人と見せ合って、同じ人を通る道があるか、比べてみましょう。

手元で試すなら、紙の上に「自分」と「自分が知っている特定の第三者(学校の校長など)」を書き、名前で呼び合う関係だけで結ぶ最短の道を探す、という方法がある。実際の連絡は取らず、紙の上だけで行う。

本文の数値で、到達数÷開始数を計算して比べてみよう。手紙の実験は64÷296≒0.22、メール実験は384÷24,163≒0.016で、約14倍の差がある。到達した鎖の平均(5.2と4.05)は、この低い到達率の中での値だ。Facebook全体の計算は、利用者のあいだに限り、近似アルゴリズムで求めた値である。

手紙の実験で近道を作った「顔の広い人」と、メール実験での「弱いつながり」が、Facebook全体の数字にどう現れているのかは、原典を読んでみたくなる問いだ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の数字は、次の資料から使いました。Facebookの研究者の論文、実験の原論文、Facebook Researchの発表、ワッツとストロガッツの論文要旨を、つき合わせています。

  1. Backstrom, Boldi, Rosa, Ugander, Vigna "Four Degrees of Separation"(2011年)。https://arxiv.org/pdf/1111.4570 (カリンティの1929年の短編・「六次の隔たり」の広まり・2011年の平均距離・92%・平均友達数)
  2. Travers & Milgram "An Experimental Study of the Small World Problem"(Sociometry、1969年)。https://www.csc2.ncsu.edu/faculty/mpsingh/local/Social/f24/wrap/readings/Travers+Milgram-Sociometry-1969-2786545.pdf (296人・64本・平均5.2人・48%が3人に集中)
  3. Dodds, Muhamad, Watts "An Experimental Study of Search in Global Social Networks"(Science、2003年)。https://www.cs.princeton.edu/~chazelle/courses/BIB/dodds2003pa.pdf (6万人超・384/24,163本・中央値約7・弱いつながり)
  4. Facebook Research "Three and a half degrees of separation"(2016年)。https://research.facebook.com/blog/2016/2/three-and-a-half-degrees-of-separation/ (2016年の平均3.57人・アメリカ国内3.46人)
  5. Watts & Strogatz "Collective dynamics of 'small-world' networks"(Nature 393、1998年)。https://ideas.repec.org/a/nat/nature/v393y1998i6684d10.1038_30918.html (スモールワールドの考え方。要旨で確認)

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