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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

深い 海の 生きものは、なぜ 大きいの?

ダイオウイカは、なぜ大きいのか ── 深海の「巨大化」と、まだ決まっていない答え

深海巨大症の仮説と、ダイオウイカのサイズ ── 2004年の撮影・4つの仮説・合わない点

分野:生きもの

2004年、海の 中で 生きて いる ダイオウイカの 写真が、はじめて とれました。うでの 先から 長い あしの 先まで 入れると、8メートルを こえると 考えられて います[1]。

こんなに 大きいのは、なぜでしょう。じつは、その 答えは、まだ 1つに きまって いません。

2004年、小笠原の沖で、生きたダイオウイカがはじめて撮影されました。写っていた1ぴきは、腕と長い触腕まで入れた全長が8メートルをこえると見積もられています[1]。

深海には、こんなふうに大きくなる生きものがいます。では、なぜ大きくなるのでしょうか。理由の候補はいくつか出ていますが、どれが正しいのかは決まっていません。

2004年、小笠原沖で世界初となる生きたダイオウイカの撮影に成功した。撮影された個体は外套長約1.7m、腕を含む体長4.7m、触腕まで含めた全長は8m超と推定されている[1]。

深海の生きものが大きくなる現象は「深海巨大症」と呼ばれる。ただし、原因についての仮説は複数あって定説はなく、ダイオウイカ自身が仮説に当てはまりにくい点もある。ここでは、実測値と仮説を分けて整理する。

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1. はじめて 見えた 生きた すがた

1. 餌をつけたカメラに、ダイオウイカが来た

1. 餌つきカメラで撮影されたダイオウイカの大きさ ── 外套長・体長・全長

それまで、ダイオウイカは、はまに うちあげられた ものや、あみに かかった ものしか 見つかりませんでした。生きて 泳ぐ すがたは、だれも 見た ことが なかったのです。

2004年、おがさわらの 海で、餌えさを つけた カメラを しずめました。そこに ダイオウイカが やって きて、写真に うつりました[1]。

この イカは、昼の あいだ、水面から 650メートルから 900メートルほどの 深さで 餌えさを とって いると 考えられて います[1]。太陽の 光が ほとんど とどかない ところです。

それまでのダイオウイカは、浜に打ち上げられたものや、網にかかったものなど、死んだ姿でしか知られていませんでした。生きて泳ぐ姿を見た人はいなかったのです。

2004年、餌をつけたカメラを小笠原の沖の海に入れると、そこにダイオウイカが現れ、撮影に成功しました。撮影された個体は、外套長(胴体の長さ)が約1.7メートル、腕を含めた体長が4.7メートル、触腕まで含めた全長は8メートルをこえると推定されています[1]。

その後の調べで、ダイオウイカは日中、水深650〜900メートルの中層で餌をとっている可能性が高いとされました。小型のソコダラの仲間を食べた跡も記録されていて、自分より小さいイカを食べる可能性も低くないそうです[1]。

ダイオウイカは長く、漂着個体や漁で偶然かかった個体でしか知られていなかった。2004年、餌をつけたカメラで小笠原沖の生きた個体の撮影に成功する[1]。

この個体は外套長約1.7m、腕を含む体長4.7m、触腕を含む全長8m超と推定された。外套長は胴の長さ、体長は腕の先まで、全長は長い触腕をのばした先までで、測る部分が違う。2006年に釣獲された未成熟のメスは、外套長約1.4m、体長約3.5mだった[1]。

行動の記録から、日中は水深650〜900mの中層で採餌している可能性が高いとされる。ソコダラ類の食痕も記録されており、自分より小さいイカを食べる可能性も低くない[1]。

2. どれくらい 大きいの?

2. 「20メートル」は本当か ── 測り方で変わる大きさ

2. ダイオウイカの最大サイズ ── 5m・10m・20mの食いちがい

「20メートルの ダイオウイカが いた」という はなしを 聞く ことが あります。でも、それは 科学の 目で たしかめられて いません[2]。

ちかごろの 見つもりでは、メスの からだ(ヒレの うしろから うでの 先まで)で 5メートルぐらい、長い あしを のばして 10メートルほどと いわれます[2]。

いっぽう、数の 計算から、10メートルくらいや 20メートルも ありえると 書いた 研究も あります[3]。研究する 人の 考えは、そろって いません。

「20メートル級のダイオウイカ」という話を聞くことがありますが、そうした記録は科学的には確かめられていません[2]。

近年の見積もりでは、メスの体(ヒレの後ろの端から腕の先まで)で最大約5メートル、長い触腕をのばして約10メートルほどとされます[2]。

一方で、統計の解析から、10メートル級や全長20メートルも「あり得る」と考える論文が2016年に出ています[3]。見解は一致していません。

数字がばらつく大きな理由は、どこからどこまでを測ったかが記録ごとに違うことです。外套長、腕までの体長、触腕まで入れた全長を、混ぜて比べることはできません。ダイオウイカはメスのほうがオスより大きくなる傾向があり、これも数字の幅につながると考えられます[2]。

大型個体の記録は「最大13m」「20m」など幅がある。20m以上の標本は科学的に記録されていない。近年の見積もりでは、メスの体(ヒレ後端から腕の先)で最大約5m、長い触腕を伸ばして約10m程度とされる[2]。

これに対し、統計解析で10m級・全長20mを「あり得る」とする論文(Paxton 2016)がある[3]。外套長・体長・全長を混ぜると数字は比べられないので、測定部位が揃っているかを見ることが要になる。

種としては1種のみとされ、メスのほうがオスより大きくなる傾向がある。ただし種数の情報は二次資料による[2]。

3. 深い 海は、みんな 大きく なるの?

3. 大きくなるのは一部だけ ── 巨大ヨコエビと、小さくなる仲間

3. 深海巨大症は分類群によって異なる ── 巨大ヨコエビとメイオファウナ

深い 海の 生きものが 大きく なる ことは、「深海しんかいきょ大しょう」と よばれます[4]。でも、ぜんぶの 生きものが 大きくは なりません。

大きく なる れいは、エビや ヨコエビの なかま、イカや タコの なかま、クラゲの なかま、ウナギの なかまなどです[4]。

なかでも 目を ひくのは、ヨコエビの 1しゅです。ふつうの ヨコエビは 4センチ より 小さいのに、この なかまの おとなは 24センチから 34センチ。ものさし 1本 ぶんぐらいです[5]。

ところが、目に 見えにくい ほど 小さな 生きものは、深く なるほど、むしろ 小さく なる ことが わかって います[4]。

深い海の生きものが、浅い海の近い仲間より大きくなる現象は「深海巨大症」と呼ばれます。ただし、深海の生きものが全部大きいわけではありません。

大きくなる例が知られているのは、ヨコエビやダンゴムシの仲間、エビなどの甲殻類、イカやタコの仲間、クラゲの仲間、ウナギの仲間などです[4]。

たとえば巨大ヨコエビ(Alicella gigantea)の成体は体長240〜340ミリで、ふつうのヨコエビの多くが40ミリ未満なのとくらべると、6倍以上になります[5]。

反対に、1ミリに満たない小さな生きもの(メイオファウナ)は、深くなるほど小さくなる逆の傾向を見せます[4]。深さだけで大きさが決まるのではなく、生きものの種類によって様子が違うのです。

深海巨大症が報告される分類群は、甲殻類(ヨコエビ・ダンゴムシの仲間・エビ)、頭足類、刺胞動物、ウナギ類などだが、これは全体に当てはまる法則ではない。体長1mm未満のメイオファウナは、深いほど小さくなる逆の傾向を示す[4]。

端脚類の巨大種Alicella giganteaの成体は体長240〜340mmで、ヨコエビの大半が40mm未満であることを考えると、6倍以上になる[5]。

この論文は、低温・高水圧で細胞のサイズと寿命が増すという説が引かれる一方、成長に関わる7つの遺伝子に正の選択がかかっていたと報告している[5]。つまり、大きさを説明する候補は環境と遺伝の両方から出ており、1つに絞られていない。

4. 大きく なる 理由の 考え

4. 理由の候補は4つ ── 冷たさ・酸素・餌・敵

4. 深海巨大症の4つの仮説 ── 互いに排他的でない

大きく なる 理由には、いくつかの 考えが あります[4]。

1つめは、水が つめたい こと。つめたいと からだの 小さな つぶ(細胞さいぼう)が 大きく なり、長生きに なると いう 考えです。

2つめは、水に とけた 酸素さんそが 多い ほど、大きく なれると いう 考えです。

3つめは、餌えさが 少ない ところでは、大きい ほうが よいと いう 考えです。大きいと、遠くまで さがしに 行けるからです。

4つめは、食べに くる 生きものが 少ない こと。

これらは、どれか 1つだけが 正しいのでは なく、いっしょに はたらく かもしれません。どれが 本当かは、きまって いません[4]。

深海巨大症の理由については、次のような仮説が出ています。これらは互いにぶつかり合う関係ではなく、いくつかが同時にはたらく可能性もあります[4]。

冷たいと、大きく長生きになる

水温が低いと、生きものの細胞が大きくなり、寿命ものびるという考えです。寒い地方の動物ほど体が大きいという「ベルクマンの法則」の延長にあたります[4]。

酸素が多いと、大きくなれる

水に溶けている酸素が多いほど、体が大きくなれるという考えです[4]。

餌が少ないと、大きいほうが得

餌が少ない環境では、大きな体のほうが遠くまで餌を探しに行けます[4]。

食べに来る敵が少ない

捕食者が少なければ、大きな体でもねらわれにくい、という考えです[4]。

どの説が中心なのかは決まっていません。生きものの種類によって、当てはまる説が違う可能性もあります。

深海巨大症の仮説は主に4つある。互いに排他的ではない[4]。

(1) 低温で細胞が大きくなり、寿命が延びる(ベルクマンの法則の延長)。(2) 溶存酸素が多いと大きくなれる。(3) 餌が乏しい環境では、大きいほど有利(遠くまで餌を探せる)。(4) 捕食が少ない。

どれか1つが原因と断定する根拠は、ここで使った資料にはない。生物群ごとに主な要因が違う可能性もある。次の章で、(4)を調べた一つの研究を見る。

5. 食べに くる 生きものは、本当に 少ないの?

5. 貝の傷あとで、敵の多さを調べた研究

5. 貝に似た腕足動物の殻から、捕食と水深を調べた研究 ── Harper & Peck (2016)

深い 海ほど、食べに くる 生きものが 少ないと いう 話は、よく 聞かれます。これを 貝に にた 生きものの からで しらべた 研究が あります[6]。

からに、かじられて なおった あとが どれだけ あるかを かぞえると、その 数は、深く なるほど へって いました[6]。

ただ、しらべたのは 貝に にた 生きもので、イカでは ありません。「大きく なる 理由」を じかに たしかめた ものでも ないのです。

「深い海ほど食べに来る敵が少ない」という話は、よく聞かれます。これを、腕足動物という貝に似た生きものの殻で調べた研究があります。殻についた、かじられて直った傷あとの数を数える方法です[6]。

この研究では、傷あとの頻度は水深とともに対数的に減りました。水深200メートルより深いと、緯度による差はなかったといいます[6]。

深海で捕食が少ないという考えを支える結果です。ただし、調べたのは腕足動物で、大きさが変わる理由を確かめた研究ではありません。

捕食圧が深いほど下がるという通説を、腕足動物の殻の修復痕から調べた研究がある(Harper & Peck 2016)。修復頻度は水深と対数的に減り、200mより深いと緯度による差がなかった[6]。

深海で捕食が少ないことを支える結果だが、対象は腕足動物であり、巨大化そのものの検証ではない。この結果を、そのままイカや甲殻類の巨大化に結びつけることはできない。なお、検索要約から確認した内容であり、数字は原論文で確かめる必要がある。

6. ダイオウイカは、当てはまるの?

6. 寿命が短い? ── ダイオウイカが仮説に合いきらない点

6. ダイオウイカの成長と寿命は、巨大化の仮説に合うのか

さっきの 1つめの 考えは、「つめたいと 長生きに なって 大きく なる」でした。ダイオウイカは どうでしょう。

ダイオウイカは、大きく なるのが はやく、寿命じゅみょうが みじかいと いわれます[7]。口の 「くちばし」に ある 線から 年れいを 見つもった 研究では、411日から 674日と いう 数が 出ました[7]。

これは 1年と 1か月から、1年と 10か月ぐらいです。大きい イカでも、3年ほどと いう 見つもりも あります。

ただ、寿命じゅみょうは 2年から 3年と いう 考えと、25年より 長いと いう 考えが あって、きまって いません[7]。

もし 寿命じゅみょうが みじかいなら、「長生きだから 大きい」は 当てはまりにくく なります。これは しらべた ものから 考えた ことで、はっきり 書いた 研究が あるわけでは ありません。

1つめの仮説は「冷たいと長生きになって大きくなる」でした。ダイオウイカはこれに当てはまるでしょうか。

ダイオウイカは成長が速く、寿命が短いとされます。くちばしにある日輪(成長線。木の年輪のようなもの)から推定した年齢は411〜674日で、これは約1年1か月から1年10か月にあたります。いちばん大きな個体でも約3年程度と見積もる研究があります[7]。

ただし、寿命については2〜3年という説と、25年をこえるという説があり、決着していません[7]。

もし寿命が短いなら、「長生きだから大きい」という説はダイオウイカには当てはまりにくくなります。この点は、資料から考えられることであって、はっきり書いてある研究があるわけではありません。餌が少ないことや、捕食者が少ないことなど、ほかの説のほうが当てはまるのかもしれません。

ダイオウイカは急速に成長し寿命が短いとされる。くちばしの日輪(成長線)から推定された年齢は411〜674日(約1年1か月〜1年10か月)で、最大個体でも約3年程度との推定がある[7]。

一方、寿命は2〜3年説と25年超説があり、定説はない(25年超説の原資料は本稿では未確認)。年齢の数字は検索要約の段階で確認した内容で、原論文で確かめるまでは「推定」にとどめる[7]。

仮説(1)は低温で寿命が延びることを前提にするので、短命なら合いにくい。これは仮説(1)と上の資料から導いた推論であり、出典で直接論じられているわけではない。餌の少なさ(3)や捕食の少なさ(4)など、ほかの仮説が効いている可能性もあるが、それも本資料では判断できない。

7. 自分でも しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

ひもと メジャーを 用意して、ひろい ところで 8メートルを はかって みましょう。家の 中では 足りないので、公園や 学校の 校庭など、車の 来ない 場所で、おうちの 人と いっしょに やります。8メートルの ひもの 先に 立つと、ダイオウイカの 長さが 少し 見えて きます。

出かけて できること

水族館や 科学館で、ダイオウイカの ひょうほんや 写真が 見られる ことが あります。ただし、どこで 見られるかは 時期で ちがうので、行く 前に 電話や ホームページで たしかめて ください。

本で しらべる まえに

こくりつ 科学はくぶつかんの 「ダイオウイカ」の ページには、写真を とった ときの ようすが 書いて あります[1]。

今日できること

ひもとメジャーで、広い場所に8メートルをはかってみましょう。家の中では足りないので、公園や校庭など車の来ない場所で、家の人といっしょに行います。撮影された個体の全長8メートルは、外套長1.7メートルの5倍近くです。同じイカでも、どこまで測るかで数字がこれだけ変わることが、ひもで実感できます。

出かけてできること

水族館や科学館では、ダイオウイカの標本や写真を展示していることがあります。展示の有無は時期で変わるので、行く前に公式サイトで確かめてください。

公式情報

国立科学博物館の解説には、2004年の撮影の様子や、その後の調べで分かったことがまとまっています[1]。

読んでみる

国立科学博物館の「ダイオウイカ―深海のミステリー」は、撮影の経緯と個体の測定値をまとめている[1]。仮説の全体は深海巨大症の解説[4]で概観できるが、二次資料なので、各仮説の原論文にあたってほしい。

確かめてみる

Paxton (2016)は最大サイズの見積もりの根拠となる論文[3]、Harper & Peck (2016)は捕食圧と水深の関係を扱う[6]。どちらも英語で書かれているが、要旨だけなら短く読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字や記録は、下の資料の内容にもとづきます。うち3・6・7は検索で得た要約の内容で、原文全体の確認はできていません。

  1. 国立科学博物館「ダイオウイカ―深海のミステリー」 https://www.kahaku.go.jp/pickup-science/nid00000994.html (撮影の経緯・個体の大きさ・生息深度)
  2. Wikipedia「Giant squid」 https://en.wikipedia.org/wiki/Giant_squid (最大サイズの見積もり・種数、二次資料)
  3. Paxton, C. G. M. (2016) Journal of Zoology(ダイオウイカの最大サイズの統計解析) https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jzo.12347 (10m級・20mを「あり得る」とする統計解析)
  4. Wikipedia「Deep-sea gigantism」 https://en.wikipedia.org/wiki/Deep-sea_gigantism (仮説の整理・巨大化する分類群、二次資料)
  5. Frontiers in Marine Science (2021) Alicella gigantea https://www.frontiersin.org/journals/marine-science/articles/10.3389/fmars.2021.743663/full (巨大ヨコエビの体長と成長の仮説)
  6. Harper, E. M. & Peck, L. S. (2016) Global Ecology and Biogeography https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/geb.12444 (腕足動物の殻の修復痕と水深)
  7. Giant squid draft genome ほか (PMC6962438) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6962438/ (成長の速さ・寿命の推定)

なおした ところ

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