1. やかんの 中の 白い ものは なに?
1. やかんの内側の白いカリカリは何なのか
1. 水垢の正体 ── 蒸発したあとに残るもの
おゆを たくさん わかした やかんを のぞくと、ふちに 白い カリカリが ついて いる ことが あります。だれかが ぬったのでは ありません。
あれは、水に とけて いた ものが のこった もの だと 説明されます。水が じょうはつして 空に 出て いくとき、とけて いた ものは 出て いけずに、やかんの 中に のこるのです。
では、その「とけて いた もの」は、なんでしょう。カルシウムと いう ミネラルが 大きな やくわりを して いると 言われます。この カルシウムと マグネシウムの 量が、水の「かたさ」を きめます。
お湯を毎日わかすやかんや電気ポットの内側に、白いカリカリしたものが付くことがあります。これは、水に溶けていたミネラルが、水の蒸発したあとに固まって残ったものだと説明されるのが一般的です。
水が蒸発しても、溶けていたミネラルは空気中に逃げません。だから、同じやかんで水を何度もわかすと、少しずつ残ってたまっていきます。
では、その「溶けているミネラル」の量は、どうやって表すのでしょうか。それを表す数字が、次に出てくる「硬度」です。
やかんや電気ポットの内側に付く白い水垢は、水に溶けていたカルシウムなどが、加熱と蒸発で結晶になり残ったものと説明される(炭酸カルシウムが主とされる)。
水は蒸発しても、溶けていたミネラルは空気中に出ていかない。だから、使うほど濃縮されて残る。この「溶けているミネラルの量」を数字にしたものが、硬度である。
2. 水の「かたさ」は、どう はかるの?
2. 水の「硬さ」は何を数えた数字なのか
2. 硬度の定義とWHOの分類 ── mg/Lで測る「ミネラルの量」
水は さわっても かたく ありません。それでも「硬水」「軟水」と 言うのは、水に とけて いる カルシウムと マグネシウムの 量を、「硬度」と いう 数字で あらわして いるからです[1]。
多いと 硬水、少ないと 軟水です。カルシウムは、牛にゅうの 話で よく 聞く ミネラルです。
せかいの ほけん きかん(WHO)の 目安では、1リットルに 60ミリグラムより 少ないと 軟水、120ミリグラムより 多いと 硬水と 分けられます[1]。ただし この 分け方は、国や 町に よって ちがう ことも あります。
では、日本の 水は、この 数字で 見ると、どう なるのでしょう。
3. 日本の 水は、せかいで 見ると どのくらい やわらかい?
3. 日本の水道水は、世界と比べてどれくらい柔らかいのか
3. 国内665地点の調査 ── 日本の平均48.9mg/Lと国際比較
日本じゅうの 665か所の 水道の 水を しらべた 研究が あります。ここで 出た 硬度の 平均は、およそ 49でした[4]。60より 小さいので、WHOの 目安では 軟水です。
おなじ 研究で くらべると、フランスは およそ 178、ドイツは およそ 187でした[4]。日本の 3.6ばいから 3.8ばいくらいに なります。
ただし、日本の 中にも ちがいが あります。関東では たかめで、北海道や 東北では ひくい ようだと 報告されて います[4]。
それでも 日本の 水は、せかいで 見ると やわらかい ほうです。では、どうして でしょう。
国内665地点の水道水を調べた2021年の研究では、硬度の平均は48.9mg/L、中央値は46.0mg/Lでした[4]。WHOの目安では軟水にあたります。同じ研究で比べた海外の平均は、フランスが178mg/L、ドイツが187mg/Lです[4]。178÷48.9≒3.6、187÷48.9≒3.8ですので、日本の約3.6〜3.8倍になります。
ただし、これは調査年や方法が国ごとに違う数字の比べ合わせで、あくまで目安です。日本の中にも差があり、関東で高めに、北海道・東北で低めになる傾向が報告されています[4]。「平均が軟水」であって、「全国どこでも軟水」ではありません。
では、日本の水は、なぜ全体として軟らかくなるのでしょうか。
国内665地点の水道水を調べた研究では、硬度の平均は48.9±25.8mg/L(標準偏差)、中央値は46.0mg/Lで、WHOの区分では軟水にあたる[4]。同じ研究で示された平均は、フランス178mg/L、ドイツ187mg/Lで、178÷48.9≒3.6、187÷48.9≒3.8から、日本の約3.6〜3.8倍と計算できる。ただし、調査年や方法は国ごとに異なるため、厳密な比較ではなく目安である。
標準偏差が平均の半分ほどあることが示すとおり、国内でもばらつきは小さくない。関東で高く、北海道・東北で低い傾向が報告されている[4]。平均が軟水であることと、どの地域も軟水であることは別の話である。
では、その差はどこで生まれるのか。水道管の影響なのか、水源の性質なのか。
4. なぜ 日本の 水は やわらかいの?
4. 川が急で短いと、水はなぜ柔らかくなるのか
4. 軟水の由来 ── 原水の性質と、地形による溶け込み時間
まず、水道の くだが わけでは ないか、と 考える 人が いるかも しれません。でも、さきほどの 研究は、くだから まざる ことは 少なそうで、硬度は もとの 水の ようすから 来ると 考えて います[4]。
もとの 水は、川や ちかの 水です。日本の 川は 山から 海まで みじかく、けっこう 急です。ふった 雨は あっと いう間に 海へ 出て しまう、と 説明されます[5]。
ミネラルは、水が 石や 土に ふれて いる 間に とけて いきます。日本の 水は ふれて いる 時間が みじかい ことも、とけこみが 少ない りゆうの ひとつだと 考えられて います。
ヨーロッパには 石灰岩が 多く、ゆるやかな 大地を ゆっくり 流れる 間に ミネラルが とけると 説明されます[5]。ただし、地形だけで ぜんぶ 説明できる わけでは ありません。
水道管が原因ではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、この研究は、管から混ざる可能性は低いとみています。浄水や配水の途中で硬度が多少変わることはありえますが、全体としては原水(水源の水)の水質に由来すると結論しています[4]。では、原水がなぜ軟らかいのでしょうか。
河川財団の資料では、日本は急峻な山国で、川は短く勾配が急なため、降った雨が短時間で海へ流れ込む、と説明されています[5]。ミネラルは、水が岩や土に触れている間に溶け込みます。触れる時間が短いことも、溶け込む量が少ない要因の一つと考えられています。
ヨーロッパについては、石灰岩が多く、緩やかな大陸を長い時間をかけて水が流れるため、ミネラルが多く溶けると説明されています[5]。ただし、これは複数の要因を含む一般的な説明で、地質や地形の一つだけで決まるわけではありません。
では、この差は暮らしの中で、何に表れるのでしょうか。まず、台所からのぞいてみます。
まず水道管の影響が疑われるが、この研究は管からの混入の可能性は低いとする。浄水・配水の過程で硬度が変動しうることは認めつつ、全体としては水道水の硬度は原水の水質に由来すると結論している[4]。原水が軟らかいとすれば、その理由は水源の側にある。
河川財団の資料は、日本は急峻な山国で、河川の長さは短く勾配が急なため、降った雨が短時間で海に達すると説明している[5]。岩石中のミネラルは水が接している間に溶け出すので、接触時間の短さが溶け込む量を抑える要因の一つと考えるのが、この説明の骨格である。これに対しヨーロッパは、石灰岩が多く、勾配の緩やかな大陸を水が長い時間をかけて流れるため、ミネラルが多く溶けると説明される[5]。
ただし「地形だけ」あるいは「特定の岩石だけ」で決まるとは言い切れず、複合要因と見るのが妥当である。
では、この違いは、台所や洗濯場で実際にどんな差になって表れるのか。
5. だしや おちゃの 味は、水で かわるの?
5. だしやお茶の味は、水で変わるのか
5. 料理と味への影響 ── 好みと条件で変わる「向き・不向き」
こんぶや かつおぶしで だしを とる とき、水が 軟水だと、うまみが 出やすく 和食に 向くと 言われます[1]。おちゃも、軟水の ほうが 合うと 言われます[2]。
いっぽう 硬水は、お肉の くさみを おさえ、あくが とりやすい ので、シチューなどの 洋風の りょうりに 向くと 言われます[1]。ただし、これは すききらいや、りょうりの 条件でも かわります。「かならず」では ありません。
千葉県の 水道の 水は、硬度が 80ミリグラムぐらいで、中くらいの 軟水と 説明されて います[2]。日本でも 町に よって 味が ちがう かもしれません。
昆布やかつお節でだしをとるとき、軟水はグルタミン酸などのうまみ成分を引き出しやすく、和食に向くと説明されています[1]。緑茶にも軟水が向くとされています[2]。
反対に、硬水は肉の臭みを抑え、アクを取りやすくするため、シチューのような洋風の煮込みに向くと説明されています[1]。また、硬水は独特のくせのある味があり、好みが分かれるとも書かれています[2]。どちらも「向いているといわれる」という説明で、材料や作り方、人の好みによって変わるはずです。
千葉県営水道の水は、硬度80mg/L程度の中程度の軟水と説明されています[2]。国内でも地域によって硬度が違うことは、先ほどの研究の結果とも合います。
台所の外では、水の硬さはどんな場面で問題になるのでしょうか。
神奈川県の資料は、軟水が昆布やかつおだしのグルタミン酸などのうま味成分を引き出すため、日本食に適するとし、硬水は肉の臭みを抑えアクを取りやすいので、シチューなど洋風の煮込みに向くとする[1]。千葉県の資料も、緑茶には軟水が向き、硬水は特有のくせのある味で好みが分かれるとする[2]。
これらは行政資料の「向き・不向き」の説明であって、味覚を測定した実験の結果を述べたものではない。素材、抽出温度・時間、個人の好みで結果は変わるはずで、「必ずこうなる」と読むのは誤りである。
ちなみに、千葉県営水道の水は硬度80mg/L程度の中程度の軟水と説明されており[2]、国内でも味の違いを感じる余地はある。
味だけでなく、洗濯や工業、酒造りのような場面でも、水の硬さが問題になる。
6. せんたくや お酒づくりでは?
6. 洗濯・機械・お酒づくりで、水の硬さはどう働くのか
6. 洗濯・ボイラー・醸造 ── 硬度が「困りごと」にも「利点」にもなる
京都府の 資料では、ヨーロッパの ような 硬水は、せんたくや 色そめ、ひょうはくに 向かないと 説明されて います[3]。せっけんの あわが たちにくくなる ことも、その ひとつだと 言われます。
湯を わかす きかい(ボイラー)でも、やかんと おなじように、水に とけて いた ものが つもって かたまります。すると、ねつが つたわりにくくなると 説明されて います[3]。
でも、ほどよい かたさは、お酒を つくる ときに はっこうを たすける ことも あるそうです[3]。かたさは、よい わるいでは なく、使いみちで かわるのです。
京都府の資料では、硬水は洗濯・染色・漂白に適さないと説明されています[3]。硬水では石けんが泡立ちにくくなるとされ、それも理由の一つと言われます。
ボイラーや冷却用の水に硬水を使うと、缶石(スケール)が生じて熱の伝わりを妨げる、ともされています[3]。やかんの水垢と同じ現象が、大きな機械の中で起きているというわけです。
一方で、適度な硬度は酒の醸造で発酵を助ける面もあるとされています[3]。硬いか軟らかいかは、それだけで良し悪しが決まるのではなく、用途で決まります。
日本の水道水質基準では硬度は300mg/L以下とされ、石けんの泡立ちなどへの影響を防ぐ観点で決められていると説明されています[7]。健康被害の線ではなく、暮らしの使いやすさの基準だと読めます。ここまでの説明を、自分でも確かめる方法はあるでしょうか。
京都府の資料は、硬水は洗濯・染色・漂白に適さず、ボイラーや冷却用水に使うと缶石(スケール)を生じて熱伝導を妨げると説明する[3]。前者は、硬水では石けんが泡立ちにくくなるとされることと関係すると言われる。後者は、やかんの水垢と同じ原理が装置の中で起きたものと理解できる。
一方、同じ資料は、適度な硬度が酒の醸造で発酵を助ける面もあると述べる[3]。硬度は良し悪しではなく、用途に合うかどうかで評価される量である。
日本の水道水質基準は、硬度を300mg/L以下(性状に関する基準)とし、石けんの泡立ちなどへの影響を防ぐ観点で設定されている、と厚生労働省の資料で説明されている[7]。300は健康被害が出る線ではなく、生活上の使いやすさの目安と読むのが妥当である。
ここまでの話を、身のまわりで確かめるには、どうすればよいか。
7. 水を ちょっとだけ 調べて みよう
7. 自分の町の水を調べてみる
7. 出口 ── 水を蒸発させてみる/自分の町の硬度を調べる
まず、こんな ことを やって みませんか。小さい おさらに 水を 少し 入れて、まどぎわに おいて おきます。水が なくなるまで まつと、白い わっかが のる ことが あります。
火は つかいません。もし ペットボトルの「硬水」と 書いて ある 水が 家に あれば、おなじ おさらに おなじ 量を 入れて ならべて くらべても おもしろい でしょう。わっかの 大きさだけで、かたさは きめられません。水を のむ ときは、おうちの 人と いっしょに してください。
つぎに、自分の 町の 水道の 水の 硬度は いくつか、水道局の ホームページで 調べて みましょう。日本の 中でも、町に よって ちがう かもしれません。
小皿に水を少量入れ、窓辺に置いて、水がなくなるまで待ってみてください。火は使いません。白い輪が残ることがあります。
もし「硬水」と書かれたミネラルウォーターが家にあれば、同じ大きさの小皿に同じ量を入れて水道水と並べると、違いが見えるかもしれません。ただし、跡の有無だけで硬度を正確に比べることはできません。飲むときは、家の人と一緒にしてください。
もう一つは、自分の町の水道水の硬度を、水道局のウェブサイトで調べることです。同じ県内でも、水源が違えば数字が違うことがあります。自分の町は、この記事の日本の平均より高いのか、低いのか、比べてみてください。
水道局のページには、水源や水質の情報がのっていることがあります。町ごとの硬度と水源を見比べると、なぜ数字が違うのかを考える手がかりになります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:神奈川県・千葉県・京都府の解説ページ、国内の水道水を調べた論文、河川財団の資料、環境省の資料を使った。厚生労働省の資料は、硬度300mg/Lの基準の説明に使った。
- 神奈川県「軟水・硬水に関する情報」。 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/h3x/top/nansuikousui.html (硬度の定義、WHOの分類、料理への影響について)
- 千葉県水道局「おいしい水豆知識」。 https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/mame/mame02.html (硬度の説明、千葉県営水道の硬度、お茶と味について)
- 京都府「お役立ち硬水」。 https://www.pref.kyoto.jp/hokanken/oyakudati_kousui.html (洗濯・ボイラー・醸造への影響について)
- Hori et al., Scientific Reports, 2021(国内665地点の水道水の硬度)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8242065/ (日本の硬度の平均、フランス・ドイツとの比較、地域差、水道管の影響について)
- 河川財団「こぼれ話」第83号。 https://www.japanriver.or.jp/merumaga/koborebanashi/bn/no83.pdf (日本の川と地形による軟水の説明について。検索抜粋で確認)
- 環境省の水質基準に関する資料。 https://www.env.go.jp/content/000219118.pdf (水質基準の一覧について)
- 厚生労働省の水質基準の検討資料。 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001691773.pdf (硬度300mg/L以下の基準の理由について)
なおした ところ
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