このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ヘリは どうして おもい にもつを ぶらさげて とべるの?

ヘリコプターはなぜ重い荷物を吊って飛べるのか ── 空でも28トンの機体が運ぶもの

ヘリコプターの重量物輸送 ── Mi-26の離陸重量56トン、カーゴフック、吊り荷の振れ、高温高地の制約

分野:技術

ロシアの Mi-26(エムアイ にじゅうろく)という ヘリは、なにも のせて いなくても、28トンも あります。その ヘリが、20トンの にもつを のせて、空に うかびます。

じぶんの おもさに ちかい にもつを、どうやって もちあげるのでしょう。ぶらさげて はこぶと、こまる ことも おきます。じゅんばんに 見て いきましょう。

ロシア製の大型ヘリコプター Mi-26 は、空っぽの状態で約28トンあります。この機体が、最大で約20トンの荷物を積んで飛びます[1]。自分の重さに近い荷物を、空気の力だけで持ち上げているわけです。

その力はどこから来るのか、荷物を機体の外に吊ると何が起きるのか、そして「荷物を手放す」ことが正しい判断になるのはどんなときか。運ぶ側の工夫を、順に見ていきます。

Mi-26 の空虚重量は28,200kg、最大離陸重量は56,000kg、積載は最大約20,000kgとされる[1]。離陸できる重さが、空の機体のおよそ2倍(56,000÷28,200≒1.99)にあたる計算だ。

この重さを空気で支える仕組みと、荷を機体の外に吊るときの制約を、ボーイング社の資料、英国民間航空局(CAA)の運用資料、日本の送電線工事の事例などから整理する。吊った荷が揺れたときは、荷を切り離すことも選択肢に入る。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 20トンの にもつは、どこまで ふつうの こと?

1. 空でも28トンの機体に、20トンの荷物

1. Mi-26 の数字 ── 空虚28.2t、積載約20t、離陸重量56t

Mi-26の おもさは、なにも のせて いない ときで 28トン ぐらいです。にもつは 20トンまで のせられます[1]。

ぜんぶ あわせて 56トンまで、じめんから はなれる ように つくられて います[1]。からっぽの ときの、およそ 2ばいです。

上に ある プロペラ(ローター)の 大きさは、ちょっけいが 32メートルです[1]。ふつうの 学校の プールの ながさ(25メートル)より、ずっと 大きいのです。

Mi-26 の空虚重量は約28,200kg、最大離陸重量は56,000kgです。積める荷物は最大で約20トンとされています[1]。離陸できる重さは、空っぽのときのおよそ2倍という計算になります。

メインローターの直径は32m、ブレード(羽根)は8枚です[1]。学校の25mプールより、羽根の回る円のほうが大きいことになります。荷物を積める機体は、まず羽根が大きい。数字を見るだけでも、そのことが伝わってきます。

Mi-26 は、量産されたヘリコプターとして最も重い荷物を運ぶ機体のひとつ、と紹介されています[1]。

Mi-26(初飛行1977年)の主な諸元は、空虚重量28,200kg、最大離陸重量56,000kg、最大積載約20,000kg、メインローター直径32m・8枚ブレードとされる[1]。28,200+20,000=48,200kgなので、最大離陸重量との差は約7,800kgだが、この差の内訳は今回の資料では確認できない。

「量産ヘリとして最大級」という位置づけは資料の書き方によるもので、世界一といい切れるかは基準しだいだ。二次資料のWikipediaによれば、Mi-26 は「2,000mまで持ち上げた質量」の国際航空連盟(FAI)世界記録(56,768.8kg、1982年)を今も持つと記されている[1]。

2. おもさを ささえる 力は、どこから くるの?

2. 荷物の重さも、羽根が空気で支えている

2. ホバリングは揚力と重量のつり合い ── 荷物の重さも足される

ヘリは、大きな はねを まわして、空気を 下へ おくります。すると、ヘリは 上へ おされます。

この 上へ おす 力(ようりょく)が、ヘリと にもつと ねんりょうを あわせた おもさと ちょうど おなじだと、空で とまります。もっと 大きく なると、上へ のぼります[2]。

にもつを のせたり ぶらさげたり すると、その おもさも たされます。にもつが かるく なる わけでは ありません。だから、おもい にもつほど、力の 大きな ヘリが いるのです。

ヘリコプターが空中で止まるとき、上向きの力(揚力)と、下向きの重さがつり合っています。揚力が、機体・燃料・荷物を合わせた重さを上回ると、上昇します[2]。

揚力の元は、回る羽根が空気を下に押し出し、その反動で自分が上に押されることです。ヘリは羽根の角度を変えて、この力を調整します。羽根の回る仕組みの詳しい話は、竹とんぼを扱った別のメモに任せます。

吊った荷物の重さも、ヘリが支える重さに足されます。機体の下に吊るしたからといって、荷物の重さが減ったり消えたりはしません。だから重い荷物を運ぶ機体は、羽根が大きく、力が大きくなります。

ホバリングは、揚力と重力の上下のつり合いで成り立つ。揚力を機体重量より大きくすれば、機体は垂直に上昇する[2]。揚力の元は、回転翼が空気を下方に送り出し、その反作用で上向きの力を受けることで、ヘリはブレードの角度(ピッチ)を変えてこれを調整する。回転翼の原理そのものは別の記事に譲る。

荷を機外に吊る場合、支える重量は「機体+燃料+吊り荷」になる。吊ると荷が軽くなるわけではない。だからMi-26のように、離陸重量56tを支えるだけの直径32mのローターと出力が要る[1]。

3. にもつは、おなかの 下の フックで はこぶ

3. 機体の腹の下に荷物を吊る「カーゴフック」

3. カーゴフック ── 機体下面に付けて外部吊り下げを行う

ヘリの おなかの 下には、「カーゴフック」という かぎが ついて います。にもつを ひっかけて、ぶらさげて はこびます[3]。

CH-47(チヌーク)という ヘリは、おなかに フックが 3つ あります[5]。まえと うしろに 大きな ローターが 1つずつ あって、たがいに ぎゃくむきに まわります[4]。

ヘリコプターの外に荷物を吊る道具が、カーゴフックです。機体の腹の下に付いていて、飛んでいる間、外部の荷物を運べます[3]。主なフックは、胴体の下面に直接取り付けられます。

付ける場所も考えられています。ある資料には、機体の重心の真下あたりに置くことで、吊り荷が飛行に与える悪い影響を減らす考え方がある、と説明されています[3]。

CH-47 チヌークは、前後に1つずつローターを持つタンデム方式で、腹側に3つの外部カーゴフックがあります[4][5]。2つのローターが逆に回るので、尾部の小さな反トルク用ローターがいらず、出力を揚力と推進に回せる、と説明されます[5]。

カーゴフックは、機体下面に懸架し、飛行中の外部吊り下げ輸送を可能にする装置だ。主フックは胴体下面に直接取り付ける[3]。設置位置は重心直下または回転系の直下と説明され、吊り荷が飛行に及ぼす悪影響を減らすためとされる。

CH-47Fはタンデム(前後2つ)ローター方式で、Boeingは有用荷重27,700lb(12,565kg)、最大速度302km/hと公表する。ただし有用荷重は燃料なども含む値で、吊り荷だけの数字ではない[4]。腹側に3つの外部カーゴフックを持ち、CH-47Dでは最大約26,000lb(約12,000kg)を機外に吊れると記される[5]。逆回転の2ローターにより尾部の反トルクローターが不要になり、出力のすべてを揚力と推進に使える点が特徴とされる[5]。

4. にもつだけを はこぶ、空とぶ クレーン

4. 荷物を積む部屋のない「空飛ぶクレーン」

4. S-64 スカイクレーン ── 外部吊り下げ専用に設計された機体

アメリカの S-64 スカイクレーンは、にもつを のせる へやが ありません。ぶらさげて はこぶ ために つくられた、「空とぶ クレーン」です[6]。

大きな はねは 6まいで、ちょっけいは 22メートルぐらいです[6]。

山火事を けす ときは、1まんリットルぐらいの タンクを つけたり、みずを つぎたして もらったり できます。45びょうぐらいで、いっぱいに できると いわれます[6]。

シコルスキー S-64 スカイクレーンは、貨物室を持たず、外部吊り下げ専用に作られた機体です。空飛ぶクレーンと呼ばれています[6]。

積める荷物(ペイロード)は約20,000ポンド(約9,100kg)、羽根は6枚で直径は約22mです。1962年5月9日に初めて飛びました[6]。

消火用には、約10,000Lの固定タンクを付けることがあります。約45秒でタンクを満たせる、と紹介されています[6]。荷物を積み込む手間をなくして、吊ることだけに特化した形です。

S-64 スカイクレーンは、貨物室を持たず、外部吊り下げを前提に作られた「空飛ぶクレーン」である。ペイロード約20,000lb(9,100kg)、6枚ブレードのメインローター(直径21.95m)、初飛行は1962年5月9日とされる[6]。

消火任務では約10,000Lの固定タンクを装備でき、約45秒で満水にできるという[6]。

5. ぶらさげた にもつが ゆれたら、どうする?

5. 吊った荷物が揺れ出したら、手放すという選択

5. 吊り荷の振れ ── 速度が上がるほど強く、ときに切り離す

ぶらさげた にもつは、ぶらんこの ように ゆれる ことが あります。大きくて かるくて、かたちが ふぞろいな にもつは、あるはやさで ゆれはじめる ことが ある、と 書かれて います[7]。

だから、さいしょは ゆっくり すすみます。それでも ゆれが とまらない ときは、じめんに おろします。ひとが あぶなくない ように 気を つけて、にもつを はなす ことも あります[7]。

ヘリは「はこぶ」だけでなく、「はなす」と きめる ことも あるのです。

吊った荷物は、飛んでいる間、機体と違って自由に動きます。英国民間航空局(CAA)の資料には、フックが1つだけの場合、荷物はねじれたり、風の抵抗が大きい向きになったり、回ったり、振り子のように揺れたりしうる、とあります[7]。

この影響は、速く飛ぶほど強くなります。フック1つのヘリは、本来出せる速度を出せないことも多い、という説明です[7]。また、大きくて軽く、形が不規則な荷物は、ある速度で揺れ始めることがあります。そのため、最初はゆっくり加速します。

それでも荷物が落ち着かないときは、地面に降ろすか、地上の人の安全に配慮したうえで、すばやく切り離します[7]。運んでいた荷物を手放すのが、いちばん安全な選択になる場合があるのです。

CAA CAP 426(2021年)は、フック1点で吊る荷は、飛行中に自由にねじれ、抵抗の大きい向きに落ち着いたり、鉛直軸まわりに回転したり、振り子運動を始めたりしうると述べる。影響は機速が上がるほど強くなり、1点吊りのヘリは本来の速度を出せないことが多い[7]。

大容積で低密度、形が不規則な荷は、ある臨界速度で揺れ始めることがあるため、最初の加速はゆっくり行う。荷が安定しないときは、地面に降ろすか、地上の人の安全に配慮したうえで速やかに切り離す(ジェティソン)[7]。切り離し装置自体の仕様は、今回確認した範囲の資料にはない。

6. あつい 日や たかい ところでは、力が おちる

6. 暑い日、高い場所では、持ち上げる力が落ちる

6. 高温・高い気圧高度・多湿は性能を下げる ── 最大能力は固定値ではない

おなじ ヘリでも、いつも おなじ おもさを もちあげられる わけでは ありません。とても あつい 日、たかい 山の 上、しめった 日は、ヘリの 力が 大きく おちる ことが あると されて います[7]。

パイロットは、力が たりないと 思ったら、しごとを やめます[7]。ですから、「この ヘリは 20トン」という 数字は、いつでも 使える 数字では ないのです。

ヘリコプターの性能は、周りの空気の状態で変わります。CAAの資料は、高温、高い気圧高度、多湿は、どれもヘリの性能を大きく下げうる、と述べています[7]。パイロットは、十分な性能が残っていないと判断したら、作業を中止します。

だから、カタログに載っている「積める重さ」は、いつでも使える固定の数字ではありません。Mi-26 の20トンも、CH-47 の約12トンも、S-64 の約9トンも、条件しだいで小さくなる数字として読む必要があります。

CAP 426は、高温・高い気圧高度・多湿がヘリの性能を大きく下げうると述べ、パイロットは十分な性能が残っていないと判断したら作業を中止するとする[7]。このため、Mi-26の積載約20t[1]、CH-47Dの機外吊り約12t[5]、S-64のペイロード約9,100kg[6]といった数字は、機体の仕様として紹介される値で、種類もそれぞれ異なる(積載量、ペイロード、機外吊り下げ量)。カタログ上の能力値は機種ごとの条件で決まり、実際に運べる重さは環境や任務で変わる。条件ごとの具体的な数字は、今回の資料には出てこない。

7. やまの てっとうと、ヘリコプターの 意外な しごと

7. 山の送電線工事で、ヘリが運んでいるもの

7. 出口 ── 山の送電線工事は「何を吊るか」の工夫

山の 中に、電線を ひっぱる てっとうを たてる ときも、ヘリが つかわれます。でも、ヘリは 重い 電線を そのまま はこぶのでは ありません。かるい ナイロンの ロープを まず はって、そのあとに、ワイヤー、電線と、じゅんばんに 入れかえて いきます[8]。

やって みよう:ペットボトルに 水を はんぶん 入れて、ふたを しっかり しめます。ふたに ひもを つけて、ひもの 上を もち、まわりに ひとや ものが ない ところで、まえと うしろに ゆっくり うごかして みましょう。うごかす はやさを かえると、ゆれかたは どう かわるでしょう。

日本の山岳地の送電線工事では、電線そのものは重くて運びにくいので、ヘリで運べる軽いナイロンロープを鉄塔の間に張ります。そのあと、順にワイヤーロープ、電線へと入れ替えていきます。関西電力送配電の例では、約12kmに30基の鉄塔があり、工事は4か月かかっています[8]。ヘリは、軽いものを運ぶことで重い仕事を助けていたのです。

やってみよう:ペットボトルに水を半分入れ、ふたをしっかり閉めて、ふたにひもを結びます。ひもの上を持ち、周りに人や物がない場所で、手を前後にゆっくり動かしてみてください。動かす速さを変えると、水の入ったボトルの揺れ方がどう変わるかを観察できます。吊った荷物の動きの、ごく小さな再現です。

近くに山の送電線があれば、鉄塔を見上げてみるのもよいでしょう。

関西電力送配電の工事例では、電線を直接ヘリで運ぶのではなく、ヘリで運べる軽いナイロンロープを鉄塔間に張り、順にワイヤーロープ、電線へ交換していく。約12kmに鉄塔30基、工事期間は4か月とされる。吊り上げ能力の数字は同ページにはない[8]。「吊り上げ能力の大きさ」だけでなく、「何を吊るか」を選ぶ工夫が、山の工事を支えている。

やってみよう:ペットボトルに水を半分入れて蓋をしっかり閉め、蓋にひもを結ぶ。ひもの上を持ち、周りに人や物がない場所で、手を前後にゆっくり動かし、次に速さを変える。吊り荷が振り子のように動く様子を観察できる。

資料を読むなら、送電線工事の紹介ページが日本語で読みやすい[8]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:機体の数字は、メーカー公式ページと百科事典の記述を使った。吊り荷の運用は、英国民間航空局(CAA)の資料を使った。日本の工事の例は、電力会社の公式ページを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. "Mil Mi-26" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Mil_Mi-26 (Mi-26の重さ・ローターの大きさ・積載量・世界記録について)
  2. ホームメイト「ヘリコプターの仕組み」。 https://www.homemate-research-heliport.com/useful/17560_facil_041/ (空中停止が揚力と重力のつり合いで成り立つことについて)
  3. "Cargo hook (helicopter)" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cargo_hook_(helicopter) (カーゴフックの位置と役割について)
  4. Boeing「H-47 Chinook」。 http://www.boeing.com/defense/military-rotorcraft/h-47-chinook (CH-47Fの有用荷重・タンデムローター・最大速度について)
  5. "Boeing CH-47 Chinook" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_CH-47_Chinook (CH-47のフック3つ・逆回転ローター・機外吊り下げ量について)
  6. "Sikorsky S-64 Skycrane" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Sikorsky_S-64_Skycrane (S-64の設計・ペイロード・消火タンクについて)
  7. 英国民間航空局(CAA)"CAP 426 Helicopter external sling load operations"(2021)。 https://www.caa.co.uk/publication/download/12326 (吊り荷の振れ・切り離し・高温高地の影響について)
  8. 関西電力送配電「ヘリコプターを利用した送電線の新設工事」。 https://www.kansai-td.co.jp/supply/initiatives/mission/aerial-06.html (山岳地の送電線工事で運ぶものの工夫について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。