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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

こおりは、どうして まわりの ねつを うばうの?

氷は温度が上がらないまま熱を吸う ── ブラックの実験と「潜熱」

ブラックの実験から考える融解熱と潜熱 ── 0℃の氷が吸う熱

分野:自然

あついひに、のみものへ こおりを いれると、すぐ ひえます。でも、こおりの おんどは 0ど のままで、ほとんど かわりません。

あたたまらないのに、ねつを どんどん すいこむ。どういう ことでしょう。むかしの ひとの じっけんと、かんたんな けいさんで、その わけが わかります。

冷たい飲み物に氷を入れると、すぐに冷えます。ところが、とけている最中の氷そのものは、0℃のまま温度が上がりません。周りの熱をどんどん吸っているのに、温まらないのです。

この熱はどこへ行くのでしょうか。1761年ごろのジョゼフ・ブラックの実験と、教科書に載る数値をもとに、氷1gがどれだけの熱を吸うのかが分かります[1]。

0℃の氷1kgが同じ0℃の水になるとき、約333.55kJの熱を吸うが、温度は変わらない[1]。この熱は、同じ質量の水を約80℃温める熱に相当する(計算値)。

温度計に出ない熱とは何か。1761年ごろのブラックの推論と実験、分子の引き合いによる説明、数値の丸め方を、出典を分けて整理すると、「潜熱」という語の意味が分かる。

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1. こおりを いれると、どうして ひえるの?

1. 氷を入れると冷えるのは、なぜか

1. 問題の設定 ── 氷が「冷たさ」を出しているのではない

こおりが つめたいから、のみものが ひえる。そう おもいがちです。でも ものが ひえるのは、ねつが ほかへ にげる ときです。

のみものの ねつが こおりに うつり、こおりは その ねつで とけて いきます。こおりが つめたさを 出すのでは なく、ねつを うばって いると かんがえると、すじが とおります。

ここで ふしぎなのは、とけて いる さいちゅうの こおりが、0ど の まま あたたまらない ことです[1]。ねつは どこへ きえたのでしょう。

氷が飲み物を冷やすとき、氷が「冷たさ」を出しているわけではありません。飲み物から氷へ熱が流れ、氷がその熱を受けとっている、と考えると筋が通ります[4]。

不思議なのは、その熱を受けとった氷が、とけている間は0℃のまま温まらないことです[1]。熱を吸っても温度が変わらないなら、その熱はどこへ行っているのでしょうか。

「氷が熱を奪う」という日常の説明は、この後に紹介する資料から筋道を立てて導いたものです。飲み物を冷やす現象そのものを直接取り上げた資料は、今回は使っていません。

氷が飲み物を冷やす現象は、氷が冷たさを出すのではなく、周りの熱が氷に流れ込み、融解に使われるものとして説明できる。これは、一定温度の相変化で熱が出入りするという潜熱の定義[4]と、融点では加えた熱がすべて固体から液体への変化に使われるという記述[1]からの推論であり、日常例そのものを直接扱った出典は本稿では使っていない。

問いは次のとおり。融けている間、氷(水との混合物)の温度は上がらない。では、流れ込んだ熱はどこへ行くのか。

2. むかしの ひとが、こおりと みずを くらべた

2. 1761年ごろ、ブラックが氷と水を同じ部屋に置いた

2. ブラックの推論と実験(1761年ごろ)

この ふしぎに 気づいた ひとが、スコットランドの かがくしゃ、ジョゼフ・ブラックです。1761ねんごろのことと つたえられて います[2]。

ブラックは、おなじ りょうの みずと こおりを、おなじ へやに おいて、あたたまり かたを くらべました。みずは 30ぷんで 7ど(かしの おんど)あがりました。こおりが おなじ おんどに なるまでには、10じかん 30ぷん かかったと いわれます[3]。

10じかん 30ぷんは 630ぷん。30ぷんの 21ばいです。こおりは、とけながら、ずっと ねつを もらい つづけて いたのです。

スコットランドの化学者ジョゼフ・ブラックは、1761年ごろ、融点の氷に熱を加えても温度が上がらず、氷と水の混ざったものの中で、水の量が増えるだけだと考えました[2]。

その考えを支えた実験が、次のように伝えられています。薄いガラスの球に、氷と、33°F(華氏)の水を、それぞれ5オンスずつ入れて、同じ部屋に置きます。水は30分で7°F上がって40°Fになりました。氷が同じ40°Fになるまでには、10時間30分かかったといいます[3]。

30分と10時間30分(630分)を比べると、氷のほうが約21倍の時間がかかっています(630÷30の計算)。

ブラック(スコットランドの化学者)は1761年に、融点の氷に熱を加えても氷と水の混合物の温度は上がらず、水の量がふえるだけだと推論し、その熱は氷の粒子と結びついて「潜んだ(latent)」ものになると考えた[2]。なお「潜熱」の語を導入した年は、資料により1750〜1762年ごろとゆれるため、年は断定しない。

実験の記述は次のとおり。直径4インチの薄いガラス球に純水5オンスを入れ、一方は氷、他方は33°Fの水とし、同じ部屋に置く。水は30分で7°F上がって40°Fになり、氷が同じ40°Fになるまでには10時間30分かかった[3]。所要時間の比は630÷30=21倍(計算値)。

3. ねつは、なにに つかわれて いるの?

3. 熱の行き先は、水分子どうしの「引き合い」

3. 融解中の熱の行き先 ── 分子間の引力と位置エネルギー

つぎは、ねつが どこへ いくのかです。こおりの なかでは、みずの ちいさな つぶが、たがいに ひきあって、きまった ならびに なって います。

ねつが はいると、その ひきあう ちからを ゆるめて、つぶが はなれやすく なります。ねつは、つぶを はやく うごかす ためではなく、ならびを くずす ために つかわれると、せつめいされて います。だから おんどは あがりません[1]。

たとえば、ゴムひもで つながった にんぎょうを ひっぱる ばあい。ひっぱる ちからは ひもを のばすのに つかわれて、にんぎょうの はやさは かわりません。ただし ほんとうは、つぶは とけても つながりを のこしながら くみかわると いわれます。

氷の中では、水の分子が引き合って、決まった並びをつくっています。熱が加わると、その分子どうしの引き合いに打ち勝つために熱が使われ、分子は離れやすくなります。分子の動きの激しさ(温度)は変わらず、位置エネルギーのほうが増える、と説明されています[1]。

たとえば、ゴムひもでつないだ人形を引っぱるとき、加えた力は、人形を速く動かすよりもひもを伸ばすのに使われます。熱が「引き合いをゆるめる」ことに使われるという見方を、ひもで言いかえたものです。ただし本物の水では、引き合いは融けてもすべてなくなるわけではなく、つなぎ替わりながら残ると説明されています。

融解中に加えた熱は、分子の運動の激しさ(温度)を上げるのではなく、分子間力に打ち勝って液体状態にするために使われる。液体の分子は固体よりも弱い分子間力を受け、位置エネルギーが高くなる[1]。

氷の中の水分子は、水素結合でつながった規則的な並びをつくり、その結合が強いため、融かすには大きな熱を要すると説明される。ただし水素結合は、融けた水でもすべてなくなるわけではなく、組み替わりながら残る。ここでは「引き合いをゆるめる」という程度の記述にとどめる。

モルあたりでは約6.01kJ/mol(水1molは約18g)で、1gに直すと約0.334kJになる[5]。

4. こおり 1g で、みずを なんど あたためられる?

4. 氷1gの熱は、水1gを約80℃温める熱

4. 融解熱と比熱の比較 ── 334÷4.184≒80

0ど の こおり 1グラムを 0ど の みずに かえる ねつは、やく 334ジュールです[1]。ジュールは ねつの おおきさを あらわす たんいです。

いっぽう、みず 1グラムを 1ど あたためる ねつは、やく 4.2ジュールです[6]。334を 4.2で わると、やく 80 に なります。

つまり、0ど の こおり 1グラムが とける ときに すう ねつは、おなじ 1グラムの みずを、やく 80ど あたためる ねつと おなじ くらいです。みずが 80ど に なるのでは なく、こおりは 0ど の みずに なるだけです。

0℃の氷1gが0℃の水になるときに吸う熱(融解熱)は、約334Jです。教材では334J/gや80cal/gに丸めることが多く、実測値は約333.55J/g(約79.7cal/g)です[1][7]。

一方、水1gを1℃温めるのに必要な熱(比熱)は、約4.184Jです(20℃のとき)[6]。334÷4.184を計算すると約79.8になり、氷が融けるときの熱は、同じ質量の水を約80℃温める熱に相当することになります。

この「80℃」は換算した数字です。氷が融けても、水は0℃のままです。熱は温度を上げるためでなく、状態を変えるために使われました。

0℃の氷1kgを0℃の水にするには、圧力に依らず広い範囲で約333.55kJの熱を吸収し、温度は変わらない[1]。日本語版の資料には333.6kJ/kgとある[7]。教材では約334J/g、80cal/gと丸めることが多いが、80cal/gは丸め値で、実測は約79.7cal/g[1]。数値は資料により丸め方が異なる。

液体の水の比熱は、20℃で約4.184J/(g·K)[6]。334÷4.184≒79.8より、融解熱は同質量の水を約80℃温める熱量に相当する(換算値)。ただし、これは水が80℃になることを意味しない。融解の間、系の温度は0℃のままである。

5. 「せんねつ」という なまえ

5. 温度計に出ない熱を「潜熱」と呼ぶ

5. 潜熱と顕熱 ── 用語の整理

ブラックは、こおりに はいる ねつを、「かくれた ねつ」と かんがえました。おんど計に でない ねつだからです。この ねつを、いまは「せんねつ」と よびます[4]。

ブラックの ことばでは、こおりに はいる たくさんの ねつは、こおりを えきたいに する はたらきだけを して、おんど計で はかれる ねつを ふやさない、と いう ことです[3]。

おんど計に うつらないから、ないのでは ありません。1グラムで みずを 80ど あたためる ほどの ねつが、かくれて いました。

ブラックは、融けていく氷に入る大量の熱は、氷を液体にする以外の働きをせず、温度計で測れる熱を増やさない、と結論しました[3]。

一定の温度のまま、状態が変わるときに出入りする熱を、現在は潜熱と呼んでいます[4]。温度計にはあらわれず、氷や水の中に潜んでいるように見えるから、「潜」の字がついたと考えられます(この語源は、ここで使った資料の記述からの見方です)。

氷が周りの熱を奪うのは、冷たさを出しているからではなく、熱を吸って融けるからでした。温度計に出ない熱にも、はっきりした大きさがあります。

ブラックの結論は、融けていく氷に入る大量の熱は、それを流動的にする以外の効果をもたらさず、温度計で測れる熱(顕熱)を増やさない、というものだった[3]。原文の英語は「sensible heat」で、感じ取れる熱の意味に当たる。

潜熱は、一定温度の過程(融解や凝縮などの一次相転移)で物体や系が吸収・放出するエネルギーとして定義される[4]。融けている間、加えた熱はすべて相変化に使われ、温度は上がらない[1]。

「潜熱」の語の導入年には、約1750〜1762年と資料によるゆれがあり、本稿ではブラックの推論の年(1761年)にとどめている。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

おなじ りょうの みずを ふたつの コップに いれます。ひとつには こおりを いれて、もうひとつには いれません。しばらく おいて、コップの そとがわを さわって くらべます。こおりが のこって いる あいだ、ひえかたが どう ちがうか、みて みましょう。

こおりを くちに いれないように ちゅういしましょう。

もっと しりたく なったら

「せんねつ」や「ゆうかいねつ」を、りかの ほんや としょかんで しらべて みましょう。

今日できること

同じ量の水を2つのコップに入れ、1つだけに氷を入れます。しばらく置いて、コップの外側にさわって冷たさを比べます。氷が残っているあいだ、冷え方にどんな差が出るか見てみましょう。氷が小さくなるにつれて、どう変わるかも観察できます。

もっと知りたくなったら

図書館の理科の本で「潜熱」「融解熱」を引いてみましょう。水が水蒸気になるときにも熱が出入りするか、あるなら氷の融解熱と比べてどちらが大きいか、調べる問いになりそうです。

資料を読むなら

ブラックの実験の記述は、出典[3]の原文ページで確認できる。数値の照合には、理科年表や高校化学の教科書を使うと、333.55と334という丸め方の違いも確かめられる。

調べる問い

水が水蒸気になるときにも潜熱の出入りがあるとされる。その大きさは氷の融解熱の何倍か。融解熱と比べると、分子の引き合いについて何が言えるか。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数値の照合は二次資料を中心に行い、理科年表や教科書での確認は今後の課題として残している。

  1. Wikipedia, "Enthalpy of fusion" https://en.wikipedia.org/wiki/Enthalpy_of_fusion (融解熱の値・融解中の温度・分子の説明)
  2. Wikipedia, "Joseph Black" https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Black (1761年のブラックの推論)
  3. LibreTexts, "Original Writings of Joseph Black on the Melting of Ice" https://chem.libretexts.org/ (氷と水の温まり方の実験・結論)
  4. Wikipedia, "Latent heat" https://en.wikipedia.org/wiki/Latent_heat (潜熱の定義)
  5. LibreTexts, "ChemPRIME 10.10 Enthalpy of Fusion and Enthalpy of Vaporization" https://chem.libretexts.org/ (モルあたりの融解熱)
  6. Wikipedia, "Properties of water" https://en.wikipedia.org/wiki/Properties_of_water (水の比熱)
  7. Wikipedia日本語版「融解熱」 https://ja.wikipedia.org/wiki/融解熱 (日本語での融解熱の値)

なおした ところ

更新履歴

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