1. 「がいらいしゅ」って なに?
1. 外来種とは、どういう生きものか
1. 定義 ── 外来種・国内由来の外来種・侵略的外来種
「がいらいしゅ」とは、 もともと その 場しょに いなかったのに、 人が はこんで きた 生きものの ことです[3]。
ここで だいじな ことが 2つ あります。
1つめ。人が はこんだ ものだけを さします。
鳥が じぶんの 力で とんで きた。 たねが 風で とんで きた。
これは がいらいしゅでは ありません。
2つめ。外国から 来た ものだけでは ありません。
たとえば カブトムシ。
もともとは 本州より 南に すんで いました。
人が 北海道に もって いくと、 そこでは がいらいしゅに なります[3]。
同じ 日本の 中でも、そう なるのです。
環境省は、外来種をこう説明しています。
もともとその地域にいなかったのに、 人間の活動によって他の地域から入ってきた生物
ここに、大事な条件が2つ入っています。
条件1:人間の活動によって
自分の力で移動してきた生きものは、外来種ではありません。
渡り鳥が飛んでくる。種が風や海流で運ばれる。 こういう移動は、生きものが昔からやってきたことです。
外来種の定義に入るのは、人が運んだものだけ。 だから外来種の問題は、生きものの問題である前に、人の行動の問題です。
条件2:外国から、とは限らない
意外に思うかもしれませんが、日本の中の移動でも外来種になります。
環境省はカブトムシを例に挙げています。 本来は本州以南にいる生きものですが、 人の手で北海道に持ちこまれれば、そこでは外来種です。 これを国内由来の外来種と呼びます[3]。
すべての外来種が問題なのではない
ここも誤解されやすいところです。
わたしたちが毎日食べているものを思い浮かべてください。 小麦、じゃがいも、トマト、とうもろこし。 日本にもともとあった植物ではありません。
問題になるのは、外来種のうち 地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの。 これを侵略的外来種といいます[3]。
外来種をめぐる議論は、言葉の定義でつまずくことが多いので、 先に環境省の定義を確認しておきます。
| 用語 | 定義[3] |
|---|---|
| 外来種 | もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物 |
| 国内由来の外来種 | 日本国内のある地域から、もともといなかった地域に持ちこまれたもの (本来は本州以南にいる生物が北海道に入った場合など) |
| 侵略的外来種 | 外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの |
定義から読み取れること
この3つの定義には、議論の前提になる情報が入っています。
- 自然分散は外来種ではない。渡り鳥や海流による種子の移動は含まれません。 判定の基準は「人が運んだかどうか」であって、移動距離ではない
- 国境は基準ではない。国内の移動でも、生物地理的な分布域を越えれば外来種になります。 日本のように島が連なる地域では、この点が特に効いてきます
- 外来種と侵略的外来種は別。前者は「どこから来たか」の分類で、 後者は「どんな影響を与えるか」の評価です。 由来と評価を混同すると議論が噛み合わなくなります
外来種=悪ではない
農作物や家畜の多くは外来種です。 セイヨウミツバチのように、産業に不可欠な外来種もあります。
外来種対策が対象にするのは、 侵略性が確認されている、あるいは疑われる種です。 「外国から来た生きものだから排除する」という発想ではありません。
この区別は、次の章で見る法律の作り方にも表れています。
2. 島に つれて こられた マングース
2. 奄美大島のマングース ── 31年の駆除
2. 事例研究 ── 奄美大島のフイリマングース根絶
あまみおおしまには、 そこにしか いない 生きものが たくさん います。
アマミノクロウサギ。 耳の 小さい、くろい ウサギです。
ケナガネズミ。 しっぽの 先が 白い、大きな ネズミです。
マングースは、この 生きものたちを 食べました[1]。
30ぴきだった マングースは、 21年で 1万びきくらいに ふえました[1]。
そこで、人が つかまえる ことに しました。
わなを 島じゅうに おきました。 いちばん 多い ときで 3万こです[4]。
カメラも 360だい おきました[4]。
においを かぎわける いぬも はたらきました[4]。
「マングースバスターズ」と いう 人たちが、 月よう日から 金よう日まで、 ほとんど まいにち 山に 入りました[4]。
さいごの 1ぴきを つかまえたのは 2018年の 4月です[1]。
でも、そこで おわりでは ありません。
「もう いない」と 言うために、 そこから 6年 さがしつづけました[2]。
そして 2024年、 「もう いません」と はっぴょう しました[1]。
奄美大島には、そこにしかいない生きものがたくさんいます。 アマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミイシカワガエル、オットンガエル。
マングースは、こうした生きものを食べました。 そして絶滅のおそれを深刻にしたと環境省は説明しています[1]。
数字で見る
| 年 | できごと[1][2] |
|---|---|
| 1979年ごろ | 沖縄島から30頭程度が持ちこまれ、放される |
| 1993年 | 地元の市町村が、有害鳥獣として捕獲を始める |
| 2000年 | 推定1万頭。環境省と鹿児島県が防除事業を開始 |
| 2018年4月 | 最後の1頭を捕獲 |
| 2018年4月〜2024年9月 | 「本当にいないか」を6年間かけて確かめる |
| 2024年9月3日 | 根絶を宣言 |
「いない」と言うのは、なぜ難しいのか
ここが、この話のいちばん面白いところです。
国立環境研究所の記事に、こういう一文があります。
「見つからないこと」と「いないこと」は必ずしも一致しません[4]
わなにかからなかった。それは「いない」証拠でしょうか。
わなが少なかっただけかもしれません。 探し方が下手だっただけかもしれません。
だから、最後の1頭を捕まえたあとも探し続ける必要がありました。
どれだけの手が要ったか
そして、統計のモデルを2種類使って「もういない確率」を計算しました。 結果は99.7パーセントと98.9パーセントです[1]。
100パーセントとは言っていないのがポイントです。 いないことは、原理的に証明しきれません。
生きものは戻ってきた
いい知らせもあります。
マングースが減るにつれて、 いなくなっていたアマミノクロウサギ、在来のネズミ類、鳥類、カエル類が はっきりと回復のきざしを見せたと報告されています[2]。
31年かかりましたが、間に合ったのです。
この事例は、外来種対策のコスト構造を数字で示してくれます。
経過
| 年 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 1979年ごろ | 沖縄島から30頭程度を導入。名瀬市朝仁赤崎周辺に放獣。目的はハブ対策 | [1] |
| 1993年 | 地元市町村が有害鳥獣として捕獲を開始 | [1] |
| 2000年 | 推定1万頭に。環境省(当時 環境庁)と鹿児島県が防除事業を開始 | [1] |
| 2018年4月 | 最後の1頭を捕獲 | [1] |
| 2018年4月〜2024年9月 | わな・探索犬・自動カメラによるモニタリングを6年間継続 | [2] |
| 2024年9月3日 | 根絶を宣言 | [1] |
「不在の証明」という問題
この事業の技術的な核心は、捕獲ではなく判定にあります。
「見つからないこと」と「いないこと」は必ずしも一致しません[4]
捕獲数がゼロになったとき、考えられる可能性は2つあります。
- 本当に個体がいない
- 個体はいるが、検出できていない(密度が低い、わなを避ける、活動域が調査範囲外、など)
この2つは、観測結果だけでは区別できません。 そこで環境省は、根絶を確率として評価しました。
100パーセントと言っていない点に注目してください。 「いない」という命題は、原理的に完全な証明ができません。 複数のモデルで確率を出し、十分に高いことを示す。 これが実務上の答えでした。
投入された資源
- 最大3万個のわな、360台の自動撮影カメラ、探索犬[4]
- 専従チーム「奄美マングースバスターズ」最大40名、 島内3チーム(大和・龍郷・住用)体制。月1回のミーティング、 月曜から金曜までほぼ毎日の入山[4]
- 環境省主催の防除事業検討会を年1〜2回開催し、駆除状況と解析データを共有[4]
- 捕獲総数はおよそ3万2千匹、捕獲開始(1993年)から根絶宣言までを 31年とする報道があります[5]。 この2つの数値は環境省の報道発表では確認できず、報道による数値です
回復
マングースの減少と分布の縮小・分断化が進むにつれ、 高密度生息域から姿を消していたアマミノクロウサギ、在来ネズミ類、鳥類、カエル類が、 顕著な回復傾向を示したと報告されています[2]。
環境省は、奄美大島ほどの規模の島で長期間定着したマングースを根絶した例は 世界的に前例がないとしています[1]。
この事例が示すこと
対比を並べると、構造がはっきりします。
| 入れるとき | 戻すとき | |
|---|---|---|
| 関わった数 | 30頭程度[1] | およそ3万2千匹の捕獲(報道[5]) |
| かかった期間 | 1回 | 31年(報道[5]) |
| 体制 | ─ | 専従最大40名、わな最大3万個、カメラ360台、探索犬[4] |
| 結果の確からしさ | ─ | 99.7パーセント=言い切れない[1] |
そして、これは根絶に至った事例です。 環境省が「世界的に前例がない」と述べているとおり[1]、 ここまで到達できる例は多くありません。
3. 「にがしては だめ」と いう きまり
3. 外来生物法 ── 何が禁止されているのか
3. 外来生物法の設計 ── 規制と例外
日本には、外来の 生きものに ついての きまりが あります[6]。
とくに こまる 生きものは 「とくてい外来生物」と きめられます[6]。
きめられた 生きものは、
- そとに にがしては だめ
- 外国から 入れては だめ
- あげたり もらったり しては だめ
けんきゅうの ためなど、 とくべつに ゆるして もらえる ことも あります。
ばつには、おもい ものと かるい ものが あります[7]。
ペットとして かって いた だけの ときより、 そとに にがした ときの ほうが おもい ばつに なります[7]。
にがした 生きものが そこに すみついて、 ふえる ことが あるからです。
ここで、アメリカザリガニの 話を します。
2023年から、アメリカザリガニにも きまりが できました[8]。
でも、いま かって いる ザリガニは、 そのまま かって いて いいのです[8]。
だめなのは、 そとに にがす こと、 うる こと、 あたらしく かう ことです[8]。
なぜ、いま かって いる ザリガニは そのまま かって いて いいのでしょう。
「きまりが きびしいから」と 言って、 みんなが 池に にがして しまったら、 もっと ひどく なるからです。
日本には、外来種のための法律があります。 正式には「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」。 長いので、ふつう外来生物法と呼びます[6]。
特定外来生物に指定されると
被害を及ぼす、または及ぼすおそれのある外来生物が 特定外来生物に指定されます[6]。
指定されると、輸入、放出、飼養、保管、運搬、譲渡といった扱いが 規制されます[6]。 研究や展示などのために、許可を受けて飼える場合もあります。 具体的に何ができるかは、種と目的によって変わります。 実際に飼ったり運んだりする前に、環境省のページで確認してください。
罰則は、行為によって2つの段階に分かれています。 下の表は、環境省のページに載っている一覧から 4つを抜き出したものです[7]。
| 行為 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 無許可で野外に放つ・植える・まく | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可で輸入する(特定外来生物) | 3年以下 または 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可で販売・配布する | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可で飼う(ペットとして) | 1年以下 もしくは 100万円以下 | 5千万円以下 |
いちばん下の行に注目してください。
ペットとして無許可で飼っていた場合は1年以下。 でも、それを野外に放てば3年以下になります[7]。
手元に置いておくことと、外に出すことでは、扱いが違うのです。
アメリカザリガニの、変わった扱い
2023年6月1日から、アカミミガメ(ミドリガメ)と アメリカザリガニにも規制が始まりました[8]。
ただし、ふつうの特定外来生物とは扱いが違います。 条件付特定外来生物という枠です[6]。
| 扱い[8] | |
|---|---|
| いま飼っている個体 | そのまま飼ってよい |
| 野外への放出 | 許可なしには禁止 |
| 販売・購入・輸入・頒布等 | 許可なしには禁止 |
なぜ、飼うのは許されているのか
一見すると、規制がゆるく見えます。でも、理由があります。
アカミミガメもアメリカザリガニも、すでに広く飼われています。
もし「飼うのも禁止」としたらどうなるか。 飼い主が処分に困り、野外に放す例が増えるおそれがあります。
規制の目的は、野外の個体を減らすことです。 その目的に照らして、飼育の継続は認める設計になっています。
日本の外来種対策の中心にあるのが、 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)です[6]。
目的
特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、 生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、 国民生活の安定向上に資すること[6]
守る対象が3つ並んでいる点に注目してください。 生態系・人の生命身体・農林水産業。 この法律は、自然保護だけの法律ではありません。
規制の構造
特定外来生物は、 「生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの」 から指定されます[6]。
規制される行為は、輸入・放出・飼養・保管・運搬・譲渡など[6]。 罰則は行為によって2段階に分かれています[7]。
| 行為 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 無許可の放出(野外に放つ・植える・まく) | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可の輸入(特定外来生物) | 3年以下 または 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可の販売・配布 | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可の飼養(販売・配布目的) | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 偽り・不正による飼養許可の取得 | 3年以下 もしくは 300万円以下 | 1億円以下 |
| 無許可の飼養(ペット等) | 1年以下 もしくは 100万円以下 | 5千万円以下 |
| 無許可の輸入(未判定外来生物) | 1年以下 もしくは 100万円以下 | 5千万円以下 |
放出だけが突出して重いわけではありません。 無許可の輸入・販売・配布や、販売目的の飼養も同じ区分です。
一方で、ペットとして無許可で飼っていた場合は1段階軽くなっています。 特定外来生物を無許可で飼うこと自体は違法ですが、 放出・輸入・販売とは扱いが分けられている、という事実は押さえておく価値があります。
なお、この区分がどういう考え方で決められたのかについて、 この記事では出典を確認できていません。理由は書かないでおきます。
条件付特定外来生物という設計
2023年6月1日から、アカミミガメとアメリカザリガニが 条件付特定外来生物になりました[8]。
これは、特定外来生物に指定したうえで 規制の一部を当分の間、適用除外とする枠組みです[6]。
この設計が意味するもの
規制の目的は、規制すること自体ではなく、野外の個体数を減らすことです。
この2種はすでに広く飼育されています。 飼育まで一律に禁止すれば、 飼育者が処分に困り、野外への遺棄が増えるおそれがあります。
そこで、
- 新規の供給を止める(販売・購入・輸入・頒布の禁止)
- 野外への流出を止める(放出の禁止)
- いま手元にある個体は、飼い続けてもらう(適用除外)
という設計になりました。 規制の強さではなく、実際の行動がどう変わるかで組み立てられているわけです。
規制の強さではなく、 それによって人の行動が実際にどう変わるかで組み立てられている、 という点が特徴です。
リストという道具
法律の規制対象とは別に、環境省と農林水産省は 生態系被害防止外来種リストを2015年3月26日に公表しています。 掲載は計429種類(動物229種類、植物200種類)[9]。
法律で規制するのは、そのうちの一部です。 規制と、注意喚起は別の道具として使い分けられています。
4. わたしたちに できる 3つの こと
4. 「入れない・捨てない・拡げない」
4. 三原則 ── 予防に重心を置く理由
がいらいしゅの もんだいを おこさない ために、 3つの きまりが あります[3]。
かんきょうしょうの ページに、こう 書いて あります[3]。
入れない わるい えいきょうを あたえる かもしれない 生きものを、 もともと いない ところへ 入れない
すてない かって いる 生きものを ちゃんと せわして、すてない
ひろげない もう そとに いる 生きものを、ほかの ところへ ひろげない
3つとも、「する」ことでは なく 「しない」ことです。
むずかしい ことでは ありません。
かった 生きものを、さいごまで せわする。
いちばん だいじなのは、これだけです。
さいごに、あまみおおしまの ことを もう いちど 思いだして ください。
マングースが 島に 来たのは 1979年ごろ。
つかまえは じめたのが 1993年。
「もう いません」と 言えたのは 2024年です[1]。
外来種の問題を起こさないために、環境省は3つの原則を示しています。
以下は、環境省のページからそのまま引きます[3]。
入れない ~悪影響を及ぼすおそれのある外来種を自然分布域から非分布域へ「入れない」
捨てない ~飼養・栽培している外来種を適切に管理し、「捨てない」(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)
拡げない ~既に野外にいる外来種を他地域に「拡げない」(増やさないことを含む)
3つとも「しない」こと
気づいたでしょうか。3つとも否定形です。
何かをするのではなく、何かをしない。
駆除のような大がかりな行動は、ふつうの人にはできません。 でも「しない」なら、誰にでもできます。
なぜ予防が中心なのか
2章の数字を思い出してください。
入り口と出口で、必要になるものがまるで違います。
だから対策の重心は、「起きてから直す」ではなく「起こさない」に置かれています。
具体的には
- 飼うと決めたら、最後まで飼う。 寿命や大きくなったときの体の大きさを調べてから飼い始める
- 捕まえた生きものを、別の場所に放さない。 1章のとおり、同じ日本の中でも、もともといなかった場所に移せば外来種になります[3]
- 釣りに使った生きエサを、現場に捨てない
どれも「拡げない」にあたる行動です。
環境省は、外来種問題を起こさないための姿勢を 3つの標語にまとめています[3]。
以下は、環境省のページからの引用です[3]。
入れない ~悪影響を及ぼすおそれのある外来種を自然分布域から非分布域へ「入れない」
捨てない ~飼養・栽培している外来種を適切に管理し、「捨てない」(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)
拡げない ~既に野外にいる外来種を他地域に「拡げない」(増やさないことを含む)
三原則の構造
この3つは、侵入の段階に対応しています。
| 段階 | 対応する原則 | コスト |
|---|---|---|
| まだ国内・地域内にいない | 入れない | 最小 |
| 飼育下にはいる | 捨てない | 小 |
| 野外に定着した | 拡げない | 大 |
| 広域に定着した | (根絶・管理) | 極大 |
段階が進むほど、必要な体制と期間は大きくなります。 奄美の事例は、いちばん下の段階ではないところで、 専従40名と31年を要した例でした。
三原則がすべて否定形で書かれているのは、 こうした構造に対応したものと読めます。
個人ができること
- 終生飼養:飼う前に寿命と成長後の大きさを調べる。 「捨てない」は、飼い始める前の判断で決まります[3]
- 採集個体を移動させない:国内由来の外来種という定義を思い出してください。 同じ日本の中でも、もともといなかった地域へ移せば外来種になります[3]
- 情報を確認する:規制対象種は追加・変更されます。 採集や飼育の前に、環境省のページで最新の指定状況を確認する
制度は動き続けている
外来種対策は完成した制度ではありません。 環境省・農林水産省・国土交通省は 外来種被害防止行動計画を策定しており、 第2版が2025年3月28日付で公表されています[10]。
規制対象種も、条件付特定外来生物のような枠組みも、 現実に合わせて更新されています。 採集や飼育の前には、そのつど最新の指定状況を確認してください。
5. じぶんでも しらべて みる
5. 自分でも調べてみたくなったら
5. 自分で確かめる
近くの 川や 池に 行って、 どんな 生きものが いるか 見て みましょう。
- ザリガニを さがす。 まっ赤な ザリガニは アメリカザリガニです。 日本には もともと 1しゅるいしか いませんでした。
- カメを さがす。 耳の ところが 赤い カメは、アカミミガメです。 アメリカから 来ました。
- たんぽぽを 見る。 外から 来た たんぽぽと、 日本の たんぽぽが あると 言われて います。 花の 下の ところを 見くらべて みましょう。 (見た目だけでは わからない ものも あるそうです。)
見つけても、ほかの 場しょへ もって いかないで ください。
それが、いちばん だいじな ことです。
外来種は、身のまわりにたくさんいます。
- 近所の川や池をのぞく。 アメリカザリガニ、アカミミガメ、ブルーギル、オオクチバス。 どれも外来種です
- タンポポを見比べる。 花の下の部分(総苞外片)がそりかえっているかどうかが、ひとつの目安とされます。 ただし交雑したものもあり、見た目だけで決めつけないほうがよいようです
- 公園の草を見る。 セイタカアワダチソウ、オオブタクサ、ヒメジョオン。 見慣れた草の多くが外来種です
- スーパーで考える。 日本にもともとあった植物から作られた食べものが、いくつあるか探してみてください
気をつけること
見つけた生きものを、別の場所に移さないでください。 よかれと思って「逃がしてあげる」のが、いちばん危険です。
特定外来生物は、許可なく生きたまま運ぶことが規制されています。 ただし、条件付特定外来生物(アカミミガメ・アメリカザリガニ)は 規制の一部が適用除外になっています[6]。
種によって扱いが違うので、持ち帰る前に環境省のページで確認してください。
関連する記事
- 都会のヒキガエルは、どこから来るのか (街の中で、生きものがどうつながっているかの話)
- 干潟はなぜ大事なのか (失った自然を戻すことの難しさ)
観察する
- 近くの水辺で種を記録する:在来種と外来種を分けて数える。 場所と日付を残しておくと、翌年との比較ができます
- タンポポの総苞外片を見る:そりかえっているものとそうでないものを数え、 都市部と郊外で比率を比べてみる。 なお交雑個体があるため、形態だけで種を確定するのは難しいとされます
- 指定状況を調べる:見つけた種が特定外来生物か、 条件付特定外来生物か、生態系被害防止外来種リストのどのカテゴリか
- 身のまわりの外来種を数える:食卓、庭、通学路。 「外来種=悪」でないことが、実感として分かります
調べる入口
- 環境省「日本の外来種対策」 ── 法律、指定種一覧、リストの入口
- 環境省「奄美大島における特定外来生物フイリマングースの根絶の宣言について」
- 地域の博物館・自然史系の展示(在来種の標本は、比較の基準になります)
考えてみると面白いこと
- 「いないことを証明できない」という制約は、ほかのどんな場面に出てくるか
- 規制を強くすると、かえって望まない行動を招くことがある。ほかに例はあるか
- もともとの分布は、いつの時点を基準にすべきか。 氷期・間氷期で生きものは大きく移動しています
- すでに定着し、生態系に組みこまれた外来種は、どう扱うべきか
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。 文章や図を無断で転載してはいません。 用語の定義など、短く引用した部分は、どこから引いたかを示しています。 リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。
- 環境省 報道発表「奄美大島における特定外来生物フイリマングースの根絶の宣言について」(令和6年9月3日) https://www.env.go.jp/press/press_03661.html (宣言日、1979年頃に沖縄島から30頭程度が名瀬市朝仁赤崎周辺に放獣されたこと、2000年に推定1万頭となったこと、2000年から環境省・鹿児島県が防除事業を行ったこと、2018年4月に最後の1頭を捕獲したこと、HBMで99.7%・REAで98.9%という根絶確率、アマミノクロウサギ・ケナガネズミ・アマミハナサキガエル・オットンガエル・アマミイシカワガエルへの影響、世界的に前例がないという評価)
- 日本自然保護協会「奄美のマングース根絶と外来哺乳類対策」 https://www.nacsj.or.jp/magazine/43488/ (2000年度からの防除事業、2018年4月のオス1頭の捕獲以降6年間のモニタリング継続、アマミノクロウサギ・在来ネズミ類・鳥類・カエル類の顕著な回復傾向)
- 環境省「侵略的な外来種」(日本の外来種対策) https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/invasive.html (外来種・国内由来の外来種・侵略的外来種の定義、外来種被害予防三原則「入れない・捨てない・拡げない」のそれぞれの文言、カブトムシの例)
- 国立環境研究所「奄美大島マングース根絶の舞台裏 ── 外来種駆除現場で生物多様性研究者は何ができるか(前編)」(2024年12月2日) https://www.nies.go.jp/kokkanken_view/deep/column-20241202.html (「見つからないこと」と「いないこと」は必ずしも一致しないという指摘、最大3万個のわなと360台の自動撮影カメラ、探索犬、奄美マングースバスターズ最大40名・3チーム体制・月曜から金曜までほぼ毎日の入山、環境省主催の防除事業検討会)
- 南海日日新聞「マングース、奄美で『根絶』 環境省が宣言、3万2千匹捕獲 31年かけ達成『世界的成果』」 記事ページ (捕獲総数およそ3万2千匹、31年という期間。捕獲総数と期間は環境省の報道発表では確認できなかったため、報道による数値として扱っています)
- 環境省「どんな法律なの?」(外来生物法の概要) https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/outline.html (法律の正式名称と目的の条文的な記述、特定外来生物の定義、輸入・放出・飼養・保管・運搬・譲渡が規制されること、条件付特定外来生物が「規制の一部を当分の間、適用除外とする」枠組みであること、令和5年6月1日からアカミミガメとアメリカザリガニが対象になったこと)
- 環境省「罰則について」(外来生物法) https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/bassoku.html (野外に放ったり植えたりまいたりした場合の罰則が、個人は3年以下もしくは300万円以下、法人は1億円以下であること)
- 環境省「条件付特定外来生物アカミミガメ・アメリカザリガニの規制について」 https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/regulation/jokentsuki.html (2023年6月1日からの規制開始、一般家庭で現在飼育している個体は引き続き飼えること、野外への放出・輸入・販売・購入・頒布等が許可なしには禁止されること)
- 環境省 報道発表「『我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)』の公表について」(2015年3月26日) https://www.env.go.jp/press/100775.html (環境省及び農林水産省が作成したこと、掲載が計429種類・動物229種類・植物200種類であること)
- 環境省・農林水産省・国土交通省「外来種被害防止行動計画 第2版 ── ネイチャーポジティブの実現に向けた外来種対策の実践」(令和7年3月28日) https://www.env.go.jp/content/000301745.pdf (外来種対策が3省庁の行動計画として更新され続けていること、第2版の日付)
第5章に挙げた観察の例(アメリカザリガニやアカミミガメが外来種であること、 タンポポの総苞外片による見分け方、身のまわりの植物や作物に外来種が多いこと)は、 生物と外来種対策の一般によく知られている内容として書いています。 個別の出典は示していません。 観察の入口として挙げたもので、種の同定の手引きではありません。
第3章に書いた罰則や規制の内容は、 記事を書いた時点(2026年9月)で環境省のページに掲載されていたものです。 規制対象種も規制の内容も変わります。 実際に採集・飼育・移動を行う前には、必ず最新の情報を確認してください。
マングースが持ちこまれた目的はハブ対策でしたが、 その対策として実際にどれだけ効果があったかについては、 この記事では出典を確認できていません。 そのため、効果の有無については書いていません。
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。 誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、 その理由をこの欄に残します。