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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あなの あいた カードで、おりものの もようが できるの?

穴あきカードで柄を織る ── ジャカード機は、どうやって糸を選ぶのか

ジャカード機の紋紙と針の選択 ── 穴による経糸の制御と、計算機への系譜

分野:技術

むかし、カードを 24,000まい つかって、ひとりの かおを きぬで おった ひとが いました。おりものの もようを、あなの あいた カードが きめたのです。

あなの あいた カードが、どうして いとを えらべるのでしょう。この きじを よむと、その しくみと、コンピューターとの つながりが わかります。

1839年ごろに、発明者ジャカードの肖像を絹で織った作品があります。使われたのは、穴をあけた厚紙のカード24,000枚だったと伝えられています。

穴あきのカードが、どうやって何千本もの糸から動かす糸を選ぶのでしょうか。この記事を読むと、穴と針の関係、先にあった発明、そしてのちの計算機との意外なつながりが分かります。

ジャカードの肖像を絹で織った作品(1839年)には、24,000枚のパンチカードが必要だったとされる[5]。柄を決めるのは、織り手の手ではなく、穴の並びである。

紋紙の穴が針を選び、その針につながる経糸だけが持ち上がる。この記事を読むと、その機構、先行した発明、解析機関やパンチカード式の統計処理との関係が分かる。

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1. おりものは、どうやって できるの?

1. 布は縦糸と横糸でできている

1. 経糸と緯糸 ── 柄は「どの経糸を上げるか」で決まる

おりものは、たての いと と、よこの いとで できて います。たての いとを たていと、よこの いとを よこいとと いいます。

よこいとを 1ぽん とおす たびに、たていとを 上げたり、下げたり します。上げた いとの 下を、よこいとが くぐります。

どの たていとを 上げるかで、うえから 見える もようが かわります。もようの おおい おりものは、この えらびかたが とても たいへんです。

布は、縦に張った経糸と、横に通す緯糸でできています。緯糸を1本通すたびに、経糸の一部を上げ、残りを下げて、すき間をつくります。このすき間を開口といい、緯糸はそこを通ります。

どの経糸を上げるかによって、表に見える色や模様が変わります。細かい絵柄では、緯糸1本ごとに、上げる経糸の組み合わせがちがってきます。それを人の手で毎回選ぶのは、気の遠くなる作業です。

織物は、縦方向の経糸と横方向の緯糸を交差させて作る。緯糸を1本通すごとに、経糸の一部を上げて開口をつくり、その間に緯糸を通す。柄は、各段で「どの経糸を上げるか」の組み合わせで決まる。

複雑な絵柄では、この組み合わせが段ごとに変わるため、選択を自動化する装置が求められた。ジャカード機は、その選択を紋紙に穴として記録する方式である[1]。

2. カードの あなは、なにを して いるの?

2. 1枚のカードが、緯糸1本ぶんの設計図になる

2. 紋紙1枚は緯糸1本 ── 穴は「上げる」の印

ジャカードきでは、よこいと 1ぽんぶんの もようを、カード 1まいが うけもちます。カードには、たていとごとに ばしょが きまって います。

その たていとを 上げたい ところには、あなを あけます。あなの ない ところは、上げません。あなが 「上げてね」の しるしです。

カードを じゅんばんに つなげて そうちに セットすると、おりながら つぎつぎに よみとられて いきます。

ただし、あなが いとを とおす わけでは ありません。あなが えらぶのは、いとでは なくて、はりです。

ジャカード機では、緯糸1本ぶんの柄を、カード(紋紙)1枚が受け持ちます。カードの上では、位置ごとにどの経糸に対応するかが決まっています。

上げたい経糸に対応する場所には穴をあけ、上げない場所はあけません。こうして作ったカードを、柄の順番にひもでつなぎ、装置にセットします[1]。

穴が「糸を通す」のではなく、穴は「針を選ぶ」ために使われます。次の章で、その動きを見てみましょう。

ジャカード機では、意匠図の緯糸の本数だけ紋紙を用意し、各緯糸について、経糸が上になる位置に対応する紋紙上の点に穴をあける。この紋紙を順につないで装置にセットする[1]。英語版Wikipediaも、新しいカードが1列(1 pick)に相当すると説明しており、両者は一致する[2]。

なお、1枚のカードに何本の経糸が対応するかは機種で異なるため、この記事では数字を挙げない。

3. あなは、どうやって はりを えらぶの?

3. 穴を通った針は動かず、穴のない針は押し戻される

3. 横針・縦針・ナイフ ── 穴の有無による開口の選択

カードの うしろには、たくさんの はりが ならんで います。カードが おされると、あなの ない ところの はりは、おしもどされます。

あなの ある ところの はりは、あなを とおりぬけて、うごきません。

そのあと、ナイフのような ぶひんが 上がります。うごかなかった はりだけが ひっかかって、いっしょに 上がります。はりに つながった たていとが、上がるのです。

くしに さした だんごを、あなの あいた いたの うしろから おす ようすに にて います。あなの ところの だんごだけが とびだします。ただし ほんとうは、だんごではなく、はりが うごきます。

カードの向こうには、横針が並んでいます。カードを押しつけると、穴のない部分の横針は押し戻され、後ろに下がります。押し戻された針につながる縦針は傾き、フックが外れます。

次にナイフが持ち上がると、穴があいていたために傾かなかった縦針だけが引っかかって上がります。その縦針につながる経糸が上がり、目的の開口ができます[1]。

英語版Wikipediaも、穴のある所は棒が通って動かず、穴のない所は押されて動くと説明しています[2]。穴なら上げる、穴がなければ上げない。これだけの規則で、糸を1本ずつ選んでいるのです。

穴のない部分の横針が後退すると、対応する縦針が傾いてフックが後退する。ナイフを持ち上げると、穴があって傾かなかった縦針だけが上昇し、目的の開口が得られる[1]。穴=上げる、穴なし=上げない、の二値で各経糸の位置が決まる。

この説明は、Wikipediaの記述(穴のある位置では棒が通って不動、穴のない位置では棒が押される)と方向が一致する[2]。ただし機構の英語一次資料(特許や当時の解説)は今回参照しておらず、二次資料どうしの突き合わせである点に注意したい。

4. ジャカードさんが、ひとりで つくったの?

4. 先に工夫を重ねた人たちがいた

4. ジャカード機より前に、3人が織機を改良した

ジャカードさんは、1804ねんに とっきょを とりました。でも、そのまえにも、おなじ ような くふうを した ひとたちが います。

1725ねんには、フランスの ブションさんが、あなの あいた かみを ロールのように して つかいました。1728ねんには ファルコンさんが、あなの あいた カードを くさりのように つなぎました。

ファルコンさんの おりきは、カードで うごく きかいの さいしょと いわれます。ただ、カードを はりに あてる しごとは、たすけてくれる ひとが して いました[3]。

いくつもの くふうが バトンのように つながって、ジャカードきが できたと いえます。

ジャカードは1804年にこの機械の特許を取りました。ただし、それより前に、フランス人の発明が積み重なっています[2]。1725年のバジル・ブションは穴のあいた紙のロールを使い、1728年のジャン=バティスト・ファルコン、そしてジャック・ド・ヴォーカンソン(Wikipediaでは1740年)が続きます。

ロンドンの科学博物館は、ファルコンの織機を、あらゆる種類の機械のなかでパンチカードで制御された最初のものと紹介しています。穴あきカードを鎖のようにつないだのですが、カードを針に当てる作業は助手が手で行っていました[3]。

ジャカードは、この方式を1804年に改良したとされます。一人の天才というより、工夫のリレーの最後の走者、という見方もできそうです。

ジャカード機は、1804年にジョゼフ・マリー・ジャカードが特許を得た。先行する発明として、バジル・ブション(1725年)、ジャン=バティスト・ファルコン(1728年)、ジャック・ド・ヴォーカンソン(Wikipediaでは1740年。他の資料では1745年とするものもある)が挙げられる[2]。

Science Museum Groupは、ファルコンの織機を「あらゆる種類の機械のうちパンチカードで制御された最初のもの」とし、ブションの穴あき紙ロール(1725年)に続くと説明する。ただしカードを針に当てる作業は助手が行った。ジャカードは1804年にこの方式を改良した[3]。自動化の度合いの違いが、先行例との差である。

5. おりものは、どれくらい はやく なったの?

5. 24,000枚のカードと、作業の速さ

5. 生産性と肖像画 ── 「20倍以上」と24,000枚の読み方

ジャカードきは、ひとりで みまもれる のが とくちょうでした。かざりぬのが、これまでの 20ばい いじょう はやく おれたと いう せつめいが あります[4]。

いちばん はじめに 話した きぬの かおの おりものは、1839ねんの さくひんで、カードを 24,000まい つかいました[5]。カード 1まいが よこいと 1ぽんぶんなら、よこいとを おおよそ 24,000ぽん とおした けいさんです。

ジャカード機の織機は1人で見守れたため、飾り布が従来の織機の20倍以上の速さで作れた、と科学史の解説は見積もっています[4]。ただしこれは、その解説の見積もりです。

冒頭の絹の肖像は1839年の作品で、24,000枚のカードが必要でした。ロンドンの科学博物館が所蔵しています[5]。カード1枚が緯糸1本ぶんなら、緯糸を約24,000本通した計算です。

穴を書きこんだカードを枚数分そろえるだけで大仕事ですが、一度作れば、同じ柄を何度でも織れます。

Science History Instituteの記事は、ジャカードの織機が1人で監視できることから、装飾布が従来の織機より20倍以上速く作れたとする[4]。これは同記事の見積もりであり、断定はしない。

ジャカードの肖像を絹で織った作品(1839年)は24,000枚のパンチカードを必要とし、ロンドンの科学博物館に所蔵される[5]。1枚が緯糸1本に対応するという前提(章2)に立てば、約24,000本の緯糸の段に相当する。一つのカードの穴の数は未確認のため、算出しない。

6. コンピューターと、どう つながるの?

6. 織機から計算機へ ── バベッジ、エイダ、ホレリス

6. 解析機関とパンチカード ── 影響関係はどこまで言えるか

イギリスの バベッジさんは、ジャカードきの カードを 見て、かんがえました。「これを つかえば、もっと ずっと ちからの ある きかいが つくれるかも しれない」。

そうして かんがえた のが、かいせききかんという、けいさんの きかいです[4]。

エイダ・ラブレスさんは、1843ねんに 書いた ろんぶんで、「ジャカードきが 花や 葉を おるように、この きかいは すうじの もようを おる」と 書きました[6]。

ホレリスさんも、じょうほうを カードの あなに かきこんで、1890ねんの アメリカの こくせいちょうさで つかいました[2]。ただ、ジャカードさんの でしだったとは、しりょうに 書かれて いません。

イギリスのバベッジは、ジャカードのパンチカードを見て、「まったく新しい、はるかに大きな力をもつ機関」の見込みがあると考え、解析機関を構想したとされます[4]。

エイダ・ラブレスは1843年の論文(注釈)で、解析機関は、ジャカード織機が花や葉を織るように代数のパターンを織る、と書きました[6]。糸の模様と数式の模様を重ねた、ふしぎな言い方です。

のちにハーマン・ホレリスは、情報を記録するパンチカードを1890年の米国の国勢調査のために一歩進めて使いました。のちのIBMにつながる会社を興したとされます[2]。ただ、ホレリスがジャカードの直接の弟子だったとは、資料に書かれていません。

バベッジは、ジャカードのパンチカードが「まったく新しい、はるかに大きな力を持つ機関」の見込みを示すと見て、解析機関を構想した。解析機関はあらゆる計算ができるものとされた[4]。

エイダ・ラブレスは1843年8月にTaylor's Scientific Memoirsに載った論文の注釈で、解析機関は、ジャカード織機が花や葉を織るのと同じように、代数的なパターンを織ると書いた[6]。ジャカード機のカードが「どの糸を上げるか」を記録したのと同様に、解析機関は「どの演算を行うか」を記録する、という類比である。

ハーマン・ホレリスは、情報を記録するパンチカードを1890年の米国の国勢調査のために一歩進めて使い、のちのIBMにつながる会社を興したとされる[2]。ただしホレリスがジャカード機から直接学んだとは、今回の資料に書かれておらず、因果は強く言えない。

「おりもの」から もっと しりたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちで できること

ほうがんし(ます目の かみ)を 1まい よういします。たての 1れつが、たていと 1ぽんです。よこの 1ぎょうが、よこいと 1ぽんです。

ぬりたい ところを えんぴつで ぬります。ぬった ところが 「あな」、つまり 「上げる いと」です。1ぎょうずつ ぬって いくと、もようが うかびます。

おでかけで できること

おりものの まちや はくぶつかんで、おりきの けんがくが できるか、まず おうちの ひとと こうしきの ホームページを 見て みましょう。

今日できること

方眼紙を1枚用意します。縦の1列が経糸1本、横の1行が緯糸1本のつもりです。上げたい所を鉛筆で塗りつぶすと、それが「穴」です。1行ずつ塗ると、模様の絵が出てきます。

塗るのと塗らないのを1と0にたとえると、コンピューターの記録と似ていることにも気づけます。

出かけてできること

織物の産地や博物館に、織機やカードの展示があるか、公式サイトで確かめてから出かけましょう。

公式情報

下の出典の欄にある、Science Museum GroupやComputer History Museumの資料は、写真つきで読めます。

今日できること

方眼紙で、縦を経糸、横を緯糸の段に見立て、塗った所を「穴=上げる」として柄を描いてみる。1段ごとに何を塗るかを書き出すと、紋紙の考え方が体験できる。

出かけてできること

織物の産地の資料館や科学系の博物館で、織機やカードの展示があるか、事前に公式サイトで確かめる。

公式情報・資料

Science Museum Groupの資料[3]、Computer History Museumのブログ[5]、Bodleian Librariesの記事[6]は英語だが、写真や引用で原点に近づける。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

仕組みの説明は日本語・英語の二次資料の突き合わせ、先行発明と影響は各機関の解説による。

  1. 世界大百科事典「ジャカード」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89-3181669 (紋紙と針の仕組み)
  2. Wikipedia "Jacquard machine" https://en.wikipedia.org/wiki/Jacquard_machine (仕組みの突き合わせ、先行発明、ホレリス)
  3. Science Museum Group "Model of Falcon's loom" https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co44927/model-of-falcons-loom (ファルコンの織機)
  4. Science History Institute "The French Connection" https://www.sciencehistory.org/stories/magazine/the-french-connection/ (20倍以上、バベッジ)
  5. Computer History Museum "Artifact Adopted: Preserving the Legend of J. M. Jacquard" https://computerhistory.org/blog/artifact-adopted-preserving-the-legend-of-j-m-jacquard/ (24,000枚の肖像)
  6. Bodleian Libraries "Ada Lovelace and the Analytical Engine" https://blogs.bodleian.ox.ac.uk/adalovelace/2018/07/26/ada-lovelace-and-the-analytical-engine/ (エイダ・ラブレスの論文)

なおした ところ

更新履歴

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