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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きえた メールを もどしたのは、古い テープでした ── 今も つかわれる わけ

消えたメールを救ったのは、古いテープだった ── 磁気テープが今も使われる理由

磁気テープはなぜ今も現役なのか ── Gmail復旧から30〜40TBカートリッジまで

分野:技術

2011年、Gmailの メールが ある日 とつぜん きえて しまいました。もとに もどした のは、なんと 古い「テープ」でした。

テープと いえば、むかしの ものに 見えます。どうして 今も、メールの ような 大切な ものを まもって いるのでしょうか。

この メモを 読むと、テープの 中の しくみと、今の テープが どれくらい 大きく なったのか、そして 今も のこって いる わけが 分かります。

2011年2月、Gmailの一部のメールが消えました。それを元に戻すために使われたのは、コンピューターの世界で最も古い部類に入る記録方法の一つ、磁気テープでした。

1951年に登場した技術が、なぜ今も大切なデータを守っているのでしょうか。

このメモを読むと、テープに記録する仕組み、2025年の1巻30〜40テラバイトという大きさ、そしてテープが今も残る理由と、その弱点が分かります。

2011年2月、Gmailの一部の利用者のメールが、ソフトウェア更新の不具合で消えた。復旧に使われたのは、オフラインで保管されていた磁気テープのバックアップだった。

磁気テープの商用コンピューター向け装置は1951年に登場している。それがなぜ、2025年にも1巻30〜40TBの新規格を出しながら、長期保存の現場に残っているのか。

このメモを読むと、記録の原理、容量の伸び、実験室での580TB、そして残っている理由と弱点が分かる。

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1. きえた メールは、どうやって もどったの?

1. 消えたメールは、どうやって元に戻ったのか

1. 消えたGmailは、なぜテープから戻せたのか(2011年)

2011年2月、Gmailを つくって いる 会社の プログラムを あたらしく した とき、まちがいが おきました。その ため、一ぶの 人の メールが きえて しまいました。その わりあいは ぜんたいの 0.02パーセント と いわれて います[1]。

会社は、その メールを「テープ」に とって おいた コピーから もとに もどしました。ふだんは インターネットに つながって いない ところに おいて あったので、まちがいの えいきょうを うけなかったのです[1]。

ただし、すぐには もどりません。会社の ひとは「数時間 かかった」と せつめい しました[1]。ふだんの 早い やり方に くらべると、テープは ゆっくりです。

2011年2月、Gmailでソフトウェアを更新したときの不具合により、一部の利用者のメールが消えてしまいました。割合は全体の約0.02%と報じられています。人数は資料によって3万〜4万とばらつきがあるため、ここでは割合で書きます[1]。

Googleが元に戻すのに使ったのが、オフラインで保管していたテープのバックアップです。テープは電源やネットワークにつながっていないので、ソフトウェアの不具合の影響を受けません[1]。

ただし、復元は一瞬ではありません。Googleの担当者は、別のデータセンターに切り替える方法ならミリ秒で済むのに、テープでは数時間かかったと説明しています[1]。速さと引き換えに、間違いの影響を受けない場所に置いてあった、ということです。

消えたメールを戻したのは、最新の仕組みではなく、テープだった。2011年2月、Gmailでソフトウェア更新の不具合が起き、一部の利用者(約0.02%)のメールが消えた。人数は資料により約3万〜4万と一致しないため、割合で示す。Googleはこれを、オフラインのテープバックアップから復旧した[1]。

なぜテープだったのか。テープはオンラインでないため、こうしたソフトウェアの不具合から守られる、という説明がなされている[1]。ただし、代わりに時間がかかる。同社の担当者は、テープからの復元には、別のデータセンターへ切り替える場合のミリ秒ではなく、数時間を要したと述べた[1]。

この「ソフトウェアの不具合から守られやすい一方、復元には時間がかかる」という特徴が、この後の章にも関係する。

2. テープの 中で、なにが ならんで いるの?

2. テープの表面では、何が並んでいるのか

2. 磁性体の向きによる記録 ── バリウムフェライト

テープは、うすくて 長い フィルムです。おもてに、とても 小さな 磁石じしゃくの つぶが ぬって あります。この つぶを 磁性体じせいたいと よびます。

この 小さな 磁石じしゃくは、右向きか 左向きの どちらかに そろえられます。その ならび方が、0と 1の 合図に なって、データが のこります[2]。

たとえば、たくさんの 小さな 磁石じしゃくを 一れつに ならべ、「右、右、左」と むきを かえて いく ところを 思いうかべて ください。むきの ならびが、そのまま 合図に なります。ただし 本当の テープでは、つぶは 目に 見えない ほど 小さいのです。

つぶが 小さくて、じりょくが 強いほど、たくさん 入ります[2]。

磁気テープは、フィルム状のテープの表面に磁性体を塗ったものです。磁性体の粒をS極とN極のどちらかに磁化し、その並び方でデータを記録します[2]。

たとえば、小さな方位磁石を一列に並べて、赤い側を右に向けるか左に向けるかで「0」と「1」を表す様子を想像してみてください。テープでは、その磁石の役目を目に見えない粒が果たしています。

性能を決めるのは、磁性体の磁力の強さと、粒の小ささだとされています[2]。粒が小さいほど、同じ面積にたくさんの向きを並べられるためです。現在のテープに使われているバリウムフェライトという磁性体は、富士フイルムが2011年に世界で初めて実用化しました[2]。

細長いテープの表面で、データはどう書かれているのか。磁気テープは、テープ表面の磁性体をS極とN極に磁化し、その配列でデータを記録する。テープの性能は、磁性体の磁力の強さと粒の小ささに左右される[2]。

バリウムフェライト磁性体は、富士フイルムが2011年に世界初で実用化した。以後のデータテープに使われ続け、高容量化に貢献しているとされる[2]。粒が小さく磁力が強ければ、同じ面積に、より小さな単位で向きを刻める。この「粒を小さくし、なおかつ磁力を保つ」という要求が、この後に出てくる容量競争の中心にある。

3. 1まきで 30〜40テラバイトの テープ

3. 1951年の装置から、1巻30〜40テラバイトの今へ

3. UNISERVOからLTO-10へ ── 2025年、テープはどこまで大きくなったか

コンピューターで つかう テープの そうちは、1951年に 生まれました。それまでの「パンチカード」という 紙の カードに かわって、データを とりこむ ために つかわれました[3]。

それから 74年。2025年に、「LTO-10」と いう テープの きまりが 発表されました。1つの テープに、30テラバイトか 40テラバイトが 入ります[4]。

写真1まいが 3メガバイトなら、30テラバイトは 1000万まい ぶんです。この 数字は、計算で 出した めやすです。ちいさな カセットの 中に、それだけの 写真が 入る ことに なります。

コンピューターのためのテープ装置は、1951年にUNIVAC I用の「UNISERVO」として登場しました。パンチカードに代わる入出力装置で、1インチあたり128ビットを記録しました[3]。

2025年、LTOプログラムはLTO-10の仕様を公開しました。カートリッジは2種類あり、圧縮しない状態で30テラバイトと40テラバイトを記録できます。圧縮すると75テラバイトと100テラバイトです。40テラバイト版は、1世代前のLTO-9より122%増えたと説明されています[4]。

1枚3メガバイトの写真を想定した計算では、40テラバイトは約1300万枚にあたります。なお、ここで書いたテラバイトは、圧縮しない状態の数字です。

その一方、書きこむ速さは圧縮なしで最大毎秒400メガバイトとされています[4]。この速さで40テラバイトを書き続けると、単純計算で約28時間かかります。速さより「たくさんしまえること」がテープの得意分野だと分かります。

テープは、最初はどれほど小さな容量から出発したのか。商用コンピューター向けの最初のテープ装置とされるUNISERVOは、1951年にUNIVAC I用に登場した。パンチカードに代わる入出力装置で、記録密度は1インチあたり128ビットだった[3]。

そこから2025年の姿を見てみよう。この年に仕様が公開されたLTO-10は、30TBと40TB(いずれも非圧縮)の2種類のカートリッジを持つ。2.5:1の圧縮を想定した場合はそれぞれ75TB・100TBとなる。40TB版はLTO-9の18TBに対し122%増、つまり約2.2倍である[4]。

この大きさを実感するために、写真に置きかえてみる。1枚3MBの写真を仮定すると、40TBは約1300万枚に相当する(40,000,000÷3≒13,300,000)。単位には注意したい。TBは非圧縮値、圧縮後の値は括弧内の75TB・100TBで、両者は混ぜて比べられない。

では、その大容量を書きこむ速さはどうか。転送速度は非圧縮で最大400MB/sとされる[4]。これで40TBを書き切るとすれば、40,000,000MB÷400MB/s=100,000秒、約27.8時間かかる。あくまで最大速度での単純計算だが、速度より容量を優先した媒体であることが数字にも表れている。なお、LTO-10カートリッジの出荷開始時期は、本稿で使った資料からは確認できていない。

4. 実験室じっけんしつでは、580テラバイトの テープが できた

4. 実験室で生まれた580テラバイト ── 粒を小さく、道すじを細く

4. 580TBの実証(2020年)── ストロンチウムフェライトと新しいサーボ

2020年12月、IBMと ふじフイルムは、実験室じっけんしつで 1まきに 580テラバイト 入る テープを つくって 見せました。お店で うって いる ものでは ありません。ただ、そのころ うって いた テープの 約やく50ばいに あたると 発表されました[5]。

ひみつは 2つ あります。ひとつは、つぶを もっと 小さく した こと。もうひとつは、データを ならべる すじを ほそく した ことです[5][6]。

すじの はばは 56ナノメートルまで ほそく なりました。この テープの 長さは 1,255メートルで、25メートルプールを 50こ ならべた 長さです。ほそい すじを 読みまちがえないように、あたらしい しくみが 必要ひつように なりました[6]。

2020年12月、IBMと富士フイルムは、1巻あたり580テラバイトの容量を持つテープを実験室で実現したと発表しました。当時の製品と比べて約50倍で、記録密度は1平方インチあたり317ギガビットです。あくまで実証実験の値で、製品として売られているものではありません[5]。

鍵は二つでした。一つは粒の小型化です。富士フイルムは、それまでのバリウムフェライトより粒の体積を60%以下にしたストロンチウムフェライトを用いました。既存の塗布設備を応用できるため、量産化も視野にあると当時発表しています[5]。

もう一つは、データを並べる道すじ(トラック)を細くしたことです。幅は56.2ナノメートルまで細くなりました。ヘッドがそのすじを外れずに追いかけるため、新しいサーボ技術も必要になりました。テープの長さは1,255メートルで、25メートルのプールを50個並べた長さにあたります[6]。

市販品の30〜40TBは、限界ではないらしい。2020年12月、IBMと富士フイルムは、ストロンチウムフェライト磁性体を用いて記録密度317Gbpsi(1平方インチあたり317ギガビット)を実現し、1巻580TB相当のテープを実証した。従来製品の約50倍にあたる。実験室での成果で、製品ではない点に注意が要る[5]。

どうやって容量を増やしたのか。まず粒子体積が、従来のバリウムフェライトの60%以下に微細化された。既存の塗布設備を応用できるため、量産化が視野にあるとされた(2020年時点の発表)[5]。

次にトラックである。トラック幅は56.2nmまで狭まり、ヘッドが狭いトラックを追従するための新しいサーボ技術が必要だった。テープ長は1,255mで、25mプール50個分の長さに相当する(1,255÷25≒50.2)[6]。粒を小さくし、トラックを細くし、それを追いかける制御技術を組み合わせて容量を稼ぐ、という設計になっている。

5. 古い はずの テープが のこる わけは?

5. 古いはずのテープが残る理由 ── 強みと弱み

5. なぜ今も残るのか ── エアギャップと1エクサバイトの保管

テープが のこって いる わけの ひとつは、「つながって いない」ことです。IBMは、テープを、しまって おく だけで、ネットから 手が とどかない ものと 説明せつめいして います[7]。

かぎを かけて しまった 日記は、あとから だれかに らくがきされません。それと にた かんがえ方です。ただし 本当は、日記を 取り出すのに 時間が かかるように、テープも 取り出すのに 時間が かかります[1]。

もうひとつは、たくさん おいて おけて、ながい あいだ もつと 言われて いる ことです。ヨーロッパの 研究所けんきゅうじょ CERNは、2025年12月に、しまって いる データが 1エクサバイトに なったと 発表しました。1エクサバイトは、100万テラバイトです。その 多くを テープに おいて います[8]。

ただし これは テープを つくる 会社の 説明せつめいです。「ぜったいに あんぜん」と いう ことでは ありません。

テープが残る理由の一つは、ネットワークにつながっていない状態で保管できることです。IBMは、テープを物理的な「エアギャップ」でデータを守る手段と説明し、LTOプログラムもオフライン保管でサイバー攻撃への備えになるとしています[7][4]。これはメーカー側の説明で、絶対に安全という意味ではありません。

逆に、弱みは遅さです。Gmailの例のように、必要になってから取り出すのに時間がかかります[1]。だから、毎日は使わないデータの保管が主な役割になります。

もう一つの理由は、大量のデータを安く長く置けることです。素粒子物理の研究所CERNは、2025年12月に保存データが1エクサバイト(100万テラバイト)に達したと発表しました。その多くを磁気テープに置いており、理由として低コスト、高い信頼性、数十年単位の保存が挙げられています。担当者は、この量は今後10年で保存する量の約10%にすぎないとも述べました[8]。

古い技術のはずのテープが、なぜ今も選ばれるのか。第一の理由は、オフラインで保管できることだ。IBMはテープを「オフライン・バイ・デザイン」の物理的なエアギャップでデータを守る手段と位置づけ、LTOプログラムもオフライン保管でサイバー攻撃への備えになるとする[7][4]。いずれもメーカー側の説明であり、絶対的な安全を意味するものではない。

その代償が遅さで、Gmailの事例でも復元に数時間を要した[1]。この特性から、テープはあまり取り出さないデータを長く置く場所に向いている、と考えられる。

では、実際にどれほどの量がテープに置かれているのか。CERNは2025年12月、保存データが1エクサバイト(=100万テラバイト)に達したと発表した。その多くを磁気テープにアーカイブしており、理由は低コスト、高信頼、数十年単位の保持とされる。担当者は、この量は今後10年で保存する量の約10%にすぎないと述べた[8]。「全部がテープ」ではなく「多く」である点を区別しておく。

6. じぶんでも さがして みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。おうちの 人と、大切な 写真を 1まい えらんで、どの きかいに 入って いるか、ほかの ばしょにも あるかを たしかめて みましょう。ちがう ばしょにも あれば、テープが まもって いる のと にた かんがえ方です。

もっと 知りたく なったら、大人と いっしょに CERNや ふじフイルムの ホームページを 見て みて ください。

やってみよう。家族と、大事な写真を一枚選び、どの機器に入っているか、別の場所にもあるかを確かめてみましょう。テープがオフラインで果たす「元の場所とは別に置く」という役目が、身近な形で見えてきます。

資料を読むなら、CERNの1エクサバイトの発表[8]と、富士フイルムのバリウムフェライトの説明[2]が手がかりになります。

身近な確認として、大事な写真を一枚選び、どの機器に入っているか、別の場所にもあるかを家族と確かめてみるとよい。別の場所に置く意味が実感できる。

読み比べたい資料:CERNの1エクサバイト発表[8]、富士フイルムのバリウムフェライト解説[2]、LTOプログラムのLTO-10ページ[4]、IBMのテープメディア解説[7]。後者の2つはメーカー側の主張である点を踏まえて読みたい。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:メーカーや研究機関の公式ページ、技術系メディアの記事を使った。何に使ったかを、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Data Center Knowledge「Google Turns to Tape to Rescue Lost Gmail」。 https://www.datacenterknowledge.com/hyperscalers/google-turns-to-tape-to-rescue-lost-gmail (2011年のGmail障害と、テープからの復元に数時間かかったことについて)
  2. 富士フイルム「バリウムフェライト磁性体」。 https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/data-management/datastorage/bariumferrite (磁性体による記録の仕組みと、バリウムフェライトの実用化について)
  3. Computer History Museum「1951: Tape unit developed for data storage」。 https://www.computerhistory.org/storageengine/tape-unit-developed-for-data-storage/ (1951年のUNISERVOについて)
  4. LTO Program「LTO-10」。 https://www.lto.org/lto-10/ (LTO-10の容量・転送速度・オフライン保管の説明について)
  5. Impress PC Watch「富士フイルムとIBM、580TBのテープ」(2020年12月)。 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1299553.html (580TBの実証と粒子の微細化について)
  6. Blocks & Files「IBM and Fujifilm 580TB tape capacity record」(2020年12月)。 https://blocksandfiles.com/2020/12/16/ibm-and-fujifilm-580tb-tape-capacity-record/ (トラック幅、テープ長、新しいサーボ技術について)
  7. IBM 日本「テープメディア」。 https://www.ibm.com/jp-ja/it-infrastructure/storage/tape/media (エアギャップという説明について)
  8. Converge Digest「CERN reaches 1 exabyte of stored data」(CERNの発表の転載)。 https://convergedigest.com/?p=107770 (CERNの保存データ1エクサバイトとテープの利用について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生むけの文章を、問いとつなぎのある書き方に直した(事実・数字・出典は変えていない)。

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