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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ふねの ルールを きめる IMOは、ふねを じかに とりしまらない?

IMOは船を直接取り締まらない ── 世界の船が同じルールで動く仕組み

IMO(国際海事機関)は船を直接取り締まらない ── 条約を作る場と、実行する旗国の二段構え

分野:技術

せかい中の ふねの ルールを きめて いる IMOには、ふねを じかに とりしまる ちからが ありません。ところが、せかい中の ふねは、おおむね おなじ ルールで うごいて います。

どうして、そんな ことが できるのでしょうか。だれが ルールを つくり、だれが まもらせて いるのかが わかります。

世界の船のルールを決めているIMO(国際海事機関)には、実は条約を取り締まる権限がありません[6]。それなのに、世界の船はおおむね同じルールで動いています。たとえば2020年には、船の燃料に含まれる硫黄分の上限が3.5%から0.50%に引き下げられました。

どうしてそれが成り立つのでしょうか。ルールを作る場と、それを守らせる国の役割分担が分かります。

IMOは「条約を取り締まる権限をもたない」と自ら説明している[6]。それでも、海運に関する国際ルールの多くはIMOの場で作られ、各国に受け入れられて動いている。

この二段構えの理由と、ルールが更新され海の環境を変えた例(燃料油の硫黄分規制)が分かる。

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1. ふねは、なぜ おなじ ルールで うごくの?

1. 国境のない海で、なぜ世界の船が同じルールを使えるのか

1. 世界貿易の大半を担う海運に、なぜ共通ルールが必要なのか

ひろい 海の まんなかでは、国ざかいの 線は 目に 見えません。そこを、せかい中の ふねが はしって います。

IMOによると、せかいの 貿易ぼうえきで うごく 荷物の おもさの 8わり いじょうは、ふねで はこばれます[10]。

国ごとに ルールが ばらばらだと、ふねは 港に 入る たびに こまって しまいます。だから、みんなで おなじ 約束やくそくを つくる 場が いるのです。

広い海の真ん中には、国境の線が目に見えるわけではありません。その海を、世界中の貨物船が行き来しています。

IMOは、海上輸送が世界の貿易量の80%超を運んでいると説明しています[10]。

船が国ごとにばらばらのルールに従わなければならないとしたら、港に着くたびに設備や手続きを変えることになってしまいます。そこで、各国が共通の約束を作る場として、国連の専門機関であるIMOがあります[1]。IMOが担当するのは、船の安全・保安と、船による海や大気の汚染の防止です。

では、そのIMOとは、どんな組織なのでしょうか。

IMOは、海上輸送が量で世界貿易の80%超を担うと説明している[10]。

船が港ごとに別の基準で検査されれば、貿易の流れ自体が滞る。そこで、船の安全・保安と、船による海洋・大気汚染の防止を担う国連の専門機関としてIMOがある[1]。

ただし、名前から連想される「海の警察」のような組織ではない。その実像から見ていく。

2. IMOは、ふねを とりしまる けいさつなの?

2. IMOは「海の警察」ではなかった

2. 取り締まる権限をもたないIMO ── 176か国と約300人の事務局

IMOは ふねを とりしまる けいさつでは ありません。IMO じしんには、じょうやくを まもらせる けんげんが ないと、IMOが 書いて います[6]。

では、なにを して いるのでしょう。スポーツで いえば、ルールブックを つくる かいぎです。ルールを きめる のは、IMOに 入って いる 176の 国です。IMOの ホームページに ある、2026年10月ごろの かずです[4]。

IMOの ほんぶは ロンドンに あり、やく 300人の じむきょくの 人が、はなしあいを ささえて います[5]。

ただし、たとえは たとえです。ほんとうの IMOは、国どうしの 約束やくそくを あつかう ところです。

IMOの公式ページには、「IMO自身には、条約を取り締まる権限はない」という趣旨の説明があります[6]。罰則を決めて船に科す組織ではないのです。

ルールを決めるのは、加盟国どうし

IMOには、176の加盟国と3つの準加盟があります(公式ページの数。2026年10月時点)。ほかに、68の政府間機関がオブザーバーとして、98の国際NGOが協議資格をもって話し合いに加わっています[4]。

全加盟国で作る総会は、2年に1回開かれます。理事会は34か国で、52か国に増やす改正が採択されています[5]。事務局は事務局長と約300人の職員で、ロンドンにあります[5]。

つまりIMOは、各国の代表が集まり、船のルールを話し合って形にする場です。事務局は、その話し合いを支える役にあたります。

ところで、約束を作る組織は、いったいどうやって生まれたのでしょうか。

IMOは、条約を取り締まる権限をもたないことを、公式ページで明記している[6]。したがって罰則を科す主体は、IMOではない。

組織の構成は、全加盟国の総会(2年に1回開催)、理事会、事務局から成る。理事会は現在34か国(10+10+14の3区分)で、52か国に増やす改正が採択済みだ。国立国会図書館の紹介にある理事国数40は旧い情報で、最新の公式ページでは34である[5]。事務局は事務局長と約300人の国際職員で、ロンドンにある。

加盟は176か国と3つの準加盟、オブザーバーは68の政府間機関、協議資格をもつ国際NGOは98団体(公式ページ、2026年10月時点)で、数は変わりうる[4]。

では、各国の約束で動く組織は、自分自身をどう成立させたのか。次にその経緯を見る。

3. IMOを つくる ためにも、やくそくが いったの?

3. IMO自身も「約束」で生まれ、日本が発効を支えた

3. IMO設立条約の発効条件 ── 21か国・100万総トンと日本の加盟

じつは、IMOを つくる ことじたいも、国どうしの 約束やくそくでした。1948年に、スイスの ジュネーブで その 条約じょうやくが きまりました[2]。

でも、きまった だけでは、はじまりません。21の 国が 受けいれる ことが ひつようで、そのうち 7つは、大きな ふねを たくさん もつ 国でした[3]。

日本は 1958年3月に 入り、それが じょうやくの はたらきだしに つながったと いわれます[3]。IMOの さいしょの かいぎは、その つぎの 年、1959年でした[2]。

はじめの 名前は IMCOでした。1982年に、いまの IMOに かわりました[2]。

IMOを作る条約は、1948年にジュネーブの国際会議で採択されました。ところが、採択されただけでは動き出しません。効力をもつには、21か国の受け入れが必要で、そのうち7か国は、船の総トン数が100万トン以上の国という条件でした[3]。

条約が発効したのは1958年、最初の会合は翌1959年です[2]。日本は1958年3月に加盟し、その加盟が発効につながったとされます。以後、理事国を務めています[3]。ただし、日本が最後の1か国だったという意味ではありません。

当初の名前は政府間海事協議機関(IMCO)で、1982年にIMOへ改名されました[2]。

こうして生まれたIMOでは、条約をどう実行に移すのでしょうか。

IMOの設立条約は1948年にジュネーブの国際会議で採択されたが、効力をもつには条件があった。21か国の受け入れが必要で、そのうち7か国は船の総トン数が100万トン以上でなければならない[3]。海運の力をもつ国を巻きこまなければ、共通ルールの意味が薄いからだろう(この理由は資料に明記されたものではなく、筆者の推測だ)。

条約は1958年に発効し、翌1959年に最初の会合が開かれた。日本は1958年3月に加盟し、その加盟が発効につながったとされる。以後、理事国を務める。ただし、これは国立国会図書館などの紹介に基づく記述で、日本が条件を満たす最後の1か国だったと断定はできない[3]。

当初の名称は政府間海事協議機関(IMCO)で、1982年にIMOへ改称した[2]。ここで問題になるのは、組織が生まれた後だ。条約を作ったあと、それを実際に守らせるのはだれなのか。

4. ルールを まもらせるのは、だれ?

4. 約束を実行するのは、船が登録された国

4. 旗国による実行と、STCW条約という例外

ルールを まもらせるのは、IMOでは ありません。ふねが 登録とうろくされて いる 国、「きっこく」(はたの 国)が します。

国どうしの 約束やくそくは、それぞれの 国が じっこうします[6]。クラスで いえば、きまった ルールを、それぞれの はんが 自分たちで まもる ような ものです。

ただし、れいがいも あります。ふねで はたらく 人の くんれんと しかくを きめた じょうやくでは、それぞれの 国の やりかたを IMOが しらべる ことが できます[6]。

条約の実行は各国政府が担い、とくに船が登録されている国、つまり旗国が自国の船に主な責任を負います[6]。IMOは、いわば全体の共通ルールを作り、実行は各国に任せているのです。

これは、サッカーのルールブックを決める会議と、試合ごとの審判の関係に少し似ています。ただし、IMOの条約は国どうしの約束なので、たとえの通りに、IMOが各国の船を直接取り締まるわけではありません。

例外として、船員の訓練と資格を定めたSTCW条約では、各国の手続きをIMOが審査できます[6]。

とはいえ、決めたルールは永遠に同じままでよいのでしょうか。

条約の実行は各国政府が担い、船が登録された国、すなわち旗国が自国の船に主な責任を負う[6]。罰則を科す主体はIMOではない、というのが資料から読み取れる要点である。

この二段構えには、例外が1つある。船員の訓練・資格に関するSTCW条約では、各国の手続きをIMOが審査できる[6]。

ところで、実行を各国に任せる仕組みは、ルールの更新を遅らせないか。それを防ぐ工夫が、SOLAS条約にある。

5. ルールは、どうやって あたらしく なるの?

5. 「反対が少なければ有効」── 条約を更新する工夫

5. SOLAS条約と黙示の受諾手続 ── 改正を自動で有効にする仕組み

ふねの 安全あんぜんに ついて きめた 大事な 条約じょうやくに、SOLASと いう ものが あります。さいしょの ものは 1914年で、いまの ものは 1974年に できました[7]。

この いまの ものには、あたらしい しくみが 入りました。決めた ルールを かえる とき、「はんたい」する 国が おおすぎなければ、きめた 日から じどうで ゆうこうに なります[7]。

ひとつ ひとつの 国に 「さんせい」と 言って もらう のを まつ より、ずっと はやく かえられます。

船の人命の安全を守るSOLAS条約は、最初の版が1914年にできました。その後、1929年・1948年・1960年を経て、現行の1974年版(1980年5月25日発効)に至っています[7]。

1974年版は、「黙示の受諾手続」を取り入れました。異議を出した国が所定の数や船腹量に達しなければ、改正が決まった期日に自動で有効になる、という仕組みです[7]。

全部の国から「賛成」の返事が集まるのを待つと、改正に長い時間がかかります。異議が少なければ進む形にすることで、新しい技術や必要に合わせて、ルールを更新しやすくしているのです。この理由づけは筆者の読み取りで、条文にそう書かれているわけではありません。

それでは、更新されたルールは、海の景色を実際に変えたのでしょうか。

SOLAS条約は最初の版が1914年で、1929年・1948年・1960年版を経て、現行は1974年版(1980年5月25日発効)だ。1974年版の特徴は、異議を出した国が所定の数・船腹量に達しなければ改正が所定の日に自動で有効になる「黙示の受諾」手続を取り入れたことにある[7]。

通常の条約改正は、各国の個別の受け入れ手続を待つため時間がかかる。そこで、異議が一定の水準に達しない限り効力が生じる形にして、更新の速度を上げたと読める(効果の程度は資料に明記がなく、筆者の読み取りだ)。

では、このように更新されるルールの1つが、実際に海や空気をどう変えたのか。

6. ルールで、船の けむりは どう かわったの?

6. 燃料の硫黄分が7分の1に ── ルールが海を変えた例

6. MARPOL条約と2020年の硫黄規制 ── 3.5%から0.50%へ

ふねが 出す けむりや、汚染おせんを ふせぐ ための 条約じょうやくも あります。MARPOLと いいます[8]。

2020年1月1日から、ふねの 燃料ねんりょうに ふくまれる 硫黄いおうの おおさの 上げんが、それまでの 3.5%から 0.50%に さがりました[9]。およそ 7分の 1です。

これは、とくべつな きまりが ない ふつうの 海いきの ばあいです。とくに きびしい 海いきは、さらに きびしくなって います[9]。

船が起こす汚染を防ぐMARPOL条約は、1973年11月2日にIMOで採択されました。1978年の議定書と合わせて、1983年10月2日に発効しています。現在は6つの付属書があり、油・有害な液体・汚水・ごみ・大気汚染などを扱います[8]。

この付属書VIの改正で、2020年1月1日から、排出規制海域の外を航行する船の燃料油の硫黄分が、それまでの3.5%から0.50%(質量比)に引き下げられました[9]。0.50÷3.5≒0.14なので、上限は約7分の1です。排出規制海域では、さらに厳しい基準が使われます[9]。

これは燃料に含まれる硫黄分の上限であり、実際に船が出す排気が7分の1になった、という意味ではありません。

IMOが各国に実行を任せたまま、世界の船の燃料のルールが一斉に変わりました。その流れを、最後に整理しておきます。

船による汚染を防ぐMARPOL条約は、1973年11月2日にIMOで採択され、1978年の議定書と合わせて1983年10月2日に発効した。現在は6つの付属書で、油・有害液体・汚水・ごみ・大気汚染などを扱う[8]。

付属書VIの改正により、2020年1月1日から、排出規制海域の外を航行する船の燃料油の硫黄分上限は、3.5%から0.50%(質量比)に下がった。0.50÷3.5≒0.14なので、約7分の1である。排出規制海域ではさらに厳しい基準が適用される[9]。

この数値は燃料の硫黄分の上限であって、排気中の硫黄酸化物がその割合だけ減ったことを直接意味しない。

この例は、冒頭の問いへの答えを示している。IMOが条約を作り、旗国が実行しても、世界の海を走る船の燃料規制を、ある日付で一斉に変えられる。

7. じぶんで しらべて みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 出口 ── 手元の品物と、一次資料の読みどころ

うちの 中の もので、「〇〇 せい」と 書いて ある ものを さがして みましょう。いくつか 見つけたら、ちきゅうぎや 地図ちょうで、その 国を さがします。

その 国から 日本まで、海を わたって きた ものも あるかも しれません。ふねで きたか どうかは、ラベルだけでは わかりません。

もっと しりたく なったら、「ふねの 燃料ねんりょうの 硫黄いおう」と、おうちの 人と しらべて みましょう。

今日できること

家の中の品物から、ラベルに「〇〇製」と書かれたものを探してみましょう。地球儀や地図帳で、その国の場所を指で押さえて、日本までの海をたどります。船で来たかどうかはラベルだけでは分かりませんが、海をまたいで来た道を想像する入り口になります。

調べるなら

「燃料の硫黄分が7分の1になったあと、海の空気はどう変わったのか」は、本文の資料だけでは答えが出ない、続きの問いです。IMOの公式サイトは英語ですが、MARPOLのページなどで一次資料にあたれます。日本語では、国土交通省などの海事の解説も探せます。

家にある品物の原産国表示を調べ、地図で海上の経路を考えてみる。船積みの方法までは表示から分からないので、推測にとどめる。

さらに踏みこむなら、次の問いが残る。2020年の硫黄規制のあと、大気や海の環境がどう変わったか。この点は、今回の資料では扱っていない。IMOの公式サイトや各国の海事当局の資料、査読論文などで調べるとよい。

IMOの公式ページは英語が中心で、このメモの出典はそれらを基にしている。数値や加盟国数は更新されるので、最新の公式ページで確認してほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:IMOの公式ページ、国立国会図書館のリサーチ・ナビを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. IMO "About IMO". https://www.imo.org/en/About/Pages/Default.aspx (IMOの役割)
  2. IMO "History of IMO". https://www.imo.org/en/About/HistoryOfIMO/Pages/Default.aspx (設立の経緯・名称の変更)
  3. 国立国会図書館 リサーチ・ナビ「IMO」。https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/politics/imo (発効条件・日本の加盟)
  4. IMO "Membership". https://www.imo.org/en/About/Membership/Pages/Default.aspx (加盟国などの数)
  5. IMO "Structure". https://www.imo.org/en/About/Pages/Structure.aspx (総会・理事会・事務局)
  6. IMO "Conventions". https://www.imo.org/en/About/Conventions/Pages/Default.aspx (取り締まる権限がないこと・旗国・STCW)
  7. IMO "SOLAS". https://www.imo.org/en/About/Conventions/Pages/International-Convention-for-the-Safety-of-Life-at-Sea-(SOLAS),-1974.aspx (SOLASの改版・黙示の受諾手続)
  8. IMO "MARPOL". https://www.imo.org/en/about/Conventions/Pages/International-Convention-for-the-Prevention-of-Pollution-from-Ships-(MARPOL).aspx (MARPOLの採択・発効)
  9. IMO "IMO 2020 sulphur limit". https://www.imo.org/en/MediaCentre/HotTopics/Pages/Sulphur-2020.aspx (硫黄分上限の引き下げ)
  10. IMO "What's New 1140". https://www.imo.org/en/MediaCentre/Pages/WhatsNew-1140.aspx (海上輸送の割合)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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