1. さわった あと、どんな じゅんばんで うごくの?
1. 触ってから動くまでの順番
1. 信号が先、運動が後 ── 約0.1秒の差
ゆびで さわると、はっぱは すぐに とじます。ひとの めには、いっしゅんの できごとに みえます。
でも、なかでは じゅんばんが あります。さわった ところから、しらせが でます。その しらせが、はっぱの つけねに とどきます。およそ 0.1秒 あとに、はっぱが うごきます[3]。
0.1秒は、まばたきよりも みじかい じかんです。この あいだに、なにが おきて いるのでしょう。
一瞬の中にある順番
オジギソウの葉が閉じる動きは、目で見ると一瞬です。しかし、基礎生物学研究所などの研究グループの発表によると、触れたり傷つけたりした場所から出たカルシウムイオンの信号と電気信号が、葉のつけ根のふくらみ(葉枕)に届いたわずか約0.1秒後に、葉の動きが始まります[3]。
ここで注意したいのは、0.1秒は「触った瞬間から」ではなく、「信号が葉枕に届いてから」の時間だという点です。触ってから動くまでには、信号が葉枕へ届くまでの時間が先にあります。
高速撮影で見えたこと
高速撮影による観察では、カルシウムの増加は葉の動きよりも最大0.15秒ほど先に起きていました[4]。「先にしらせ、あとに動き」という順番が、映像で確かめられたことになります。
2. うごく ばしょは、どこ?
2. 葉のつけ根のふくらみが葉を動かす
2. 運動器官としての葉枕
うごく ばしょは、はっぱの つけねに ある、ふくらんだ ぶぶんです。ようちんと いいます[1]。
ようちんは、うごく ために とくべつに できて いる ところです。
ようちんの なかでは、したがわの さいぼうだけが、ちいさく なります[1]。これが、はっぱが とじる きっかけです。
3. さいぼうが ちいさく なるのは、なぜ?
3. 水が出ていって、細胞がしぼむ
3. K⁺・Cl⁻の流出と水の移動
さいぼうが ちいさく なる わけは、なかの 水が でて いくからです。
ようちんの したがわの さいぼうから、水が そとへ でます[2]。すると、さいぼうの なかから おす ちからが よわく なり、したがわが ちぢみます。
それで、ようちんが まがり、はっぱが とじます。
水が出ていく順番
PMCに載った解説論文(総説)によると、葉枕の下側の運動細胞からカリウムイオンと塩化物イオンが細胞の外へ出ます。すると、その浸透圧のはたらきで、水も細胞の外へ出ていきます。細胞の膨圧が急に下がり、葉枕が曲がって葉が動く、と説明されています[2]。
水は葉のほうへ吸い上げられるのではなく、細胞の外へ出ていきます。葉枕の上側では逆に体積が増える、とも述べられています[2]。
ゴム風船のたとえ
水をいっぱいに入れた風船は、張りがあってふくらんでいます。中の水が抜けると、風船はしぼんで柔らかくなります。これは、葉枕の下側の細胞からイオンと水が出て、膨圧が下がる様子を表したたとえです。ただし細胞には固い壁があるので、風船と同じように大きく縮むわけではありません。
4. しらせは、どのくらいの はやさで ながれる?
4. 触った場所から、葉のつけ根まで
4. 信号伝播の速度(mm/s)
さわった ところから、はっぱの つけねまで、しらせは どうやって とどくのでしょう。
けんきゅうでは、カルシウムと でんきの しらせが ながれる ようすが しらべられました[3]。はやさは、1びょうで 1ミリメートルから 6ミリメートルほどです[4]。
1びょうで 6ミリメートルは、1えん玉の はば(20ミリメートル)の、3ぶんの 1くらいです。はやく みえるのは、みちのりが みじかい からです。
信号の正体
触れたり傷つけたりした場所では、細胞の中のカルシウムイオンが増え、電気の信号(活動電位)が生まれます。この二つが一緒に葉の中を進み、葉枕に届くと、さきほどの水の移動が始まります[3]。
秒速数ミリメートル
Nature Communications誌の論文では、傷で起きたカルシウム信号は、小葉の葉脈で秒速約1.3ミリメートル、小葉柄では秒速約3〜6ミリメートルで進みました。触った刺激では、小葉柄で秒速約5.9ミリメートルでした[4]。
秒速6ミリメートルは、1秒で1円玉の直径(20ミリメートル)の約3分の1です。「一瞬」に見えるのは、葉の上を進む距離がそれほど長くないからだと考えられます。この論文には動物の神経と比べる記述はないので、ここでは比べません。
Nature Communications誌(2022年)では、傷害で誘導されたCa²⁺信号は小葉の葉脈を約1.31±0.17 mm/s、小葉柄では約3〜6 mm/sで伝播し、触刺激ではCa²⁺信号と活動電位が小葉柄上を約5.87±0.75 mm/sで伝わった[4]。
刺激の種類と部位によって速さが異なる点に注意が要る。1つの葉での距離が短いため、伝播時間は0.数秒〜数秒程度のオーダーに収まると見積もれる。
5. なんの ために とじるの?
5. 動くと何が得なのか ── バッタの実験
5. 虫害防御としての機能
はっぱを とじる ことには、なにか いみが あるのでしょうか。これは、ながい あいだ なぞでした[5]。
2022ねんの けんきゅうでは、はっぱの うごきを とめた オジギソウを つくり、バッタに たべさせました。すると、うごかない はっぱは、うごく はっぱの およそ 2ばいも たべられました[4]。
うごく はっぱを たべて いた バッタは、たべるのを やめて、べつの ところへ いきました[4]。
ただし、これは ひとつの けんきゅうです。とじる ことの いみが、ほかにも あるかは わかって いません。
長く謎だった理由
オジギソウの葉の動きが何の役に立つのかは、長く謎でした。埼玉大学と基礎生物学研究所などの研究で、草を食べる昆虫から身を守る役割があることが示されました[5]。
動かない葉は2倍食べられた
実験では、ランタンイオン(La³⁺)で葉の動きを止めた葉を、バッタに食べさせました。葉の重さは38.0%減り、対照の葉の18.9%の約2倍でした(38.0÷18.9≒2.0)[4]。動く葉と動かない葉を並べると、バッタは動かない葉をより多く食べました。葉が動くと、バッタは食べるのをやめて移動したと報告されています[4]。
この結果は、動きが虫よけに役立つことを示しますが、動く目的がそれだけだとは述べていません。
6. とじた あとは、どう なるの?
6. 閉じた葉はもとに戻る ── 残っていること
6. 可逆性と、残る問い
とじた はっぱは、そのまま かたまる わけでは ありません。でて いった 水や ものが、また さいぼうに もどります[2]。すると、ぱんぱんの ちからが もどり、はっぱが ひらきます。
この もどりかたの くわしい しくみは、まだ わからない ことも あります。ようちんの さいぼうの つくりと 水の ながれの かんけいも、しらべが つづいて います[6]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
オジギソウを みる ことが できたら、もちぬしや しせつの ひとに きいて、いいよと いわれたら、はっぱの さきに、そっと ゆびを ふれて みましょう。とじる じゅんばんを、めで おいます。とじてから ひらくまで、どのくらい かかるかを、とけいで はかっても いいです。
なんども つよく さわると、はっぱが いたみます。ゆびで ふれるのは、すこしだけに しましょう。
今日できること:オジギソウを見られる機会があり、持ち主や施設の人に触ってよいと言われたら、葉の先にそっと指を触れ、閉じる順番を目で追ってみましょう。閉じてから開くまでの時間を、時計で測ってみるのもよいです。何度も強く触ると葉がいたむので、少しだけにしてください。
公式情報:日本植物生理学会「みんなのひろば」では、オジギソウの仕組みを日本語で読めます。基礎生物学研究所と埼玉大学のプレスリリースは、研究の背景を日本語で説明しています。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本植物生理学会の解説、基礎生物学研究所・埼玉大学の発表、総説、Nature Communications誌の論文を使った。何に使ったかは各項目の最後に書いている。
- 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「おじぎ草の仕組み」。https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=0821&key=0821&target=number (葉枕と膨圧、下側の細胞)
- Mechanical Signaling in the Sensitive Plant Mimosa pudica L., Plants(総説)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7284940/ (イオンと水の移動、元に戻ること)
- 基礎生物学研究所 プレスリリース(2022年)。https://www.nibb.ac.jp/press/2022/11/14.html (信号から約0.1秒後の運動)
- Calcium-mediated rapid movements defend against herbivorous insects in Mimosa pudica, Nature Communications(2022年)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9663552/ (信号の速さ、バッタの食害試験)
- 埼玉大学 プレスリリース(2022年)。https://www.saitama-u.ac.jp/topics_archives/2022/2022-1028-1130-16.html (動きの役割が長く謎だったこと)
- つくばサイエンスニュース(2023年)。https://www.tsukuba-sci.com/ (葉枕の細胞の構造の報道。記事は同サイト内)
なおした ところ
更新履歴
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