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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

アサガオの つるは、どうして ぼうに まきつけるの?

アサガオのつるが巻きつくには、重力を感じる細胞がいる ── 南半球でも同じ向きに巻く理由

アサガオの巻きつきと重力感知細胞 ── 回旋運動、しだれ変異体、内皮(Kitazawa et al. 2005)

分野:生きもの

アサガオの つるは、ぼうを みつけると、くるくる まきつきます。ところが、じめんの したの ほうを むいて しまう「しだれアサガオ」は、ぼうが あっても まきつけません。

まきつくには、「どちらが うえか」を かんじる ちからが いるのです。どういう ことか、この メモで わかります。

アサガオのつるは、支柱があれば巻きつきます。ところが、茎が重力に反応しないアサガオの変異体「しだれアサガオ」は、つる先の回る動きも、支柱への巻きつきもできないと報告されています。重力を感じる細胞と、つるの動きを調べた研究を紹介します。

巻きつきと、重力を感じることに、どんな関係があるのでしょうか。巻く向きを地球の自転のせいにする説明が合わない理由とあわせて、この二つのつながりが分かります。

アサガオのつるは支柱に巻きつくが、茎が重力に反応しない変異体(しだれアサガオ)は、回旋運動も巻きつき反応もできないことが、2005年のPNAS論文で報告された[3]。

では、巻きつきと重力感知はどうつながるのか。巻く向きが地球の自転では説明できないこと、重力を感じる細胞(内皮)の役割、回旋運動を説明するモデルの位置づけが分かる。

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1. まく むきは、ちきゅうの せいなの?

1. 巻く向きは、地球の自転のせい?

1. 巻く向きと自転 ── 南半球でも同じ

アサガオは いつも おなじ むきに まきます。「ちきゅうが まわって いるからかな」と おもう ひとも いるでしょう。

でも、みなみの くにの オーストラリアの アサガオも、にほんと おなじ まきかたを すると いわれます[1]。おなじ ばしょに、はんたいむきに まく しょくぶつも はえて います。

むきは、たねの なかの いでんで きまって いるようです。

アサガオは、いつも同じ向きに巻きます。北半球だから、地球の自転の向きに合わせて巻くのだろう、と考えたくなります。

ところが、日本植物生理学会のQ&Aによると、同じ地域には、自転と同じ向きに巻く植物も、反対向きに巻く植物も生えています。オーストラリアのアサガオも、日本のアサガオと同じ巻き方をするそうです[1]。自転のせいではなさそうです。

向きが遺伝で決まることは確かだとされています。ただ、その遺伝子がどんなはたらきをするのかは、この回答の時点では研究が進んでいませんでした[1]。なお、アサガオの巻き方は今は「右巻き」と呼ばれます。ネジと同じ数え方です[2]。

向きの謎はいったん置いて、巻きつくための「からだのしくみ」に目を向けます。

巻く向きを北半球という理由で説明できるかというと、そうではない。同一地域に、自転と同じ向きに巻く植物も反対向きに巻く植物も生育し、オーストラリアのアサガオも日本のものと同じ巻き方をする、と日本植物生理学会のQ&Aは述べる[1]。したがって向きは種ごとの性質とみるのが自然で、同Q&Aは遺伝が原因であることは確かだとしている。

ただし、向きを決める遺伝子が作るタンパク質が何をするかは、回答の時点では明らかでなかった。現在の知見は未確認であり、「いまも全く分からない」とは言えない[1]。

向きの由来が不明でも、巻きつくには何が必要かは、別の角度から調べられている。なお、アサガオの巻き方は現在「右巻き」(ネジと同じ数え方)と呼ばれる[2]。以前の「左巻き」との違いは呼称の変更で、詳しくは出口で紹介する。

2. つるの さきは、なにを して いるの?

2. ぼうに届く前、つるの先は空中で何をしているのか

2. 回旋運動 ── 茎の先端の周期的な円運動

ぼうに さわる まえから、つるの さきは ゆっくり ぐるぐる まわって います。ぼうを さがして いるように みえます。

アサガオでは なく、シロイヌナズナという ちがう しょくぶつを はかった けんきゅうでは、ひとまわりに 2じかんくらい かかりました。まわる はばは 2センチくらいです[3]。

では、この ぐるぐるは、なにを たよりに おきて いるのでしょう。

巻きつくとき、つるはいきなり支柱を抱くのではありません。支柱に触れるずっと前から、茎の先端は空中でゆっくりと円や楕円を描くように動いています。この動きは回旋運動と呼ばれます。

北澤らの2005年の論文では、野生型のシロイヌナズナの花茎で、振れ幅が約20mm、周期が約120分(1周が約2時間)と測られました[3]。アサガオの値ではなく、条件によって変わる測定値なので、あくまで目安です。

2時間かけて、小さな円を描いている計算になります。では、この回る動きは、どんな手がかりで起きるのでしょうか。

巻きつきの前に起きているのが回旋運動(circumnutation)である。茎の先端が、周期的に円または楕円の軌跡を描く動きで、Kitazawaらの論文では野生型シロイヌナズナの花茎(inflorescence)の振幅が約20 mm、周期が約120分と報告された[3]。アサガオの値ではなく、測定条件に依存する目安である。

約2時間で1周する計算で、数分で目に見えるほど速い動きではない。この動きは支柱に触れる前から続くので、接触が引き金とは限らない。では何が動きを起こし、支えているのか。論文は、重力への反応と結びつけて検討している。

3. しだれアサガオは、なぜ まきつけないの?

3. しだれアサガオは、なぜ巻けないのか

3. しだれ変異体 ── 回旋運動も巻きつきもできない

くきが うえに のびない「しだれアサガオ」が います。くきは、ちきゅうの ひっぱる ちからに、はんのうしません。

ふしぎなのは、ねの ほうです。ねは ふつうに、したへ のびます[3]。

この しだれアサガオは、ぐるぐる まわる うごきも、まきつく うごきも、できませんでした。まきつくには、くきが「うえ」を かんじる ことが、ひつようらしいのです。

たとえば、めを とじても、からだが かたむいたら わかりますね。くきにも、そんな しくみが ある ようです。ただし、ひとと くきの しくみは ちがいます。

茎が重力に反応せず、上に伸びない変異体が「しだれ(weeping)アサガオ」です。おもしろいのは、根の重力への反応は正常なことです[3]。

この論文では、しだれアサガオは回旋運動も、支柱への巻きつき反応も、どちらもできなかったと報告されています[3]。

では、茎のどこで重力を感じているのでしょうか。論文は、茎の内皮(ないひ)と呼ばれる細胞が重力を感じていて、この細胞が回旋運動と巻きつきに欠かせない、と結論しています。しだれ変異は、SCARECROW(スケアクロウ)という遺伝子のはたらきが失われたことから起きると報告されています[3][4]。

巻きつく力は、茎の中にある「重力センサー」とセットになっているのです。

しだれ(weeping)変異体は、茎が重力に反応せず(負の重力屈性を欠く)、一方で根の重力屈性は正常である。そして回旋運動だけでなく、巻きつき反応も欠く[3]。

ここで重要なのは、茎だけが欠けている点である。根が正常なので、重力を感じる能力そのものが全身で失われたわけではなく、茎の特定の細胞の問題と推定できる。論文は、茎の重力感知細胞(内皮)が、回旋運動と巻きつきの両方に不可欠だと結論した。しだれ変異の異常は、SCARECROW(PnSCR)遺伝子の機能欠損に由来する[3][4]。

巻きつきは、接触だけでなく、重力感知とも結びついた現象といえる。ただし「内皮が重力を感じる」と「内皮が巻く向きを決める」は別の主張で、向きの決定は論文の主題ではない。

4. ぐるぐるは、どうして おきるの?

4. 回る動きは、どう説明されているのか

4. 回旋運動のモデル ── 二つの振動子

くわしい ことは、まだ ぜんぶは わかって いません。

ひとつの せつめいは、こうです。くきが かたむくと、ちきゅうの ちからで、かたむきを なおそうと します。なおしすぎて、こんどは はんたいに かたむきます。これを くりかえして、ぐるぐる なる、という かんがえです[3]。

ただし、これは かんがえの ひとつで、きまった こたえでは ありません。

回旋運動の起こり方には、ヨンソン(Johnsson)の二振動子モデルという考え方があります。論文では、重力への反応が、外から動かされる「フィードバックの振動」として働き、植物が体内にもっているリズムと組み合わさって動きが生まれる、と参照されています[3]。

傾いた茎が重力の向きに直そうとして行きすぎ、反対側にまた直す。その繰り返しが円の動きになる、というイメージです。

これは確定した説明ではなく、検討されているモデルの一つです。論文も、重力への反応が回旋運動を動かしている直接の証拠は、まだないと述べています[3]。

回旋運動のしくみとして、論文はJohnssonの二振動子モデルを参照している。重力への反応が、外から駆動されるフィードバック振動として働き、体内の固有の(intrinsic)振動と組み合わさる、という考え方である[3]。

傾いた茎が傾きを戻そうとして行きすぎ、逆側へ戻す過程が繰り返されれば、先端は円を描く。しだれ変異体が回旋運動をしないことは、この「重力反応が動きを駆動する」という見方と整合する。ただし、これは仮説モデルであり、確定した説明として読むべきではない。論文自身も、重力反応が回旋運動を駆動する直接の証拠はまだないと述べている[3]。

5. もっと しりたく なったら

5. 自分でも調べてみたくなったら

5. 資料への案内

うちの ネジを、ゆびで なぞって みましょう。ネジに そって すすむとき、みぎまわりなら「みぎまき」です[2]。ペットボトルの ふたや、ビンの ふたも みて みます。

つるが まきつく むきと、ネジの むきを、くらべて かんがえて みましょう。

家にあるネジやビンのふたの「ねじれの向き」を調べてみましょう。ネジに沿って進むとき右回りなら右巻きです[2]。見比べると、「向き」が呼び方の決まりで決まることが分かります。

巻きつきの全体像や、呼び名の変わった経緯は、同じサイトの別のメモ「vine-twining-mechanism」(つる植物はどう巻きつくのか)でも扱っています。

原典に当たるなら、[3]の論文はPMCで全文が読めます。英語ですが、図と要旨から拾えます。

原典は北澤らのPNAS論文(2005)で、PMCに全文がある[3]。回旋運動の測定方法、しだれ変異体の表現型、内皮とSCARECROWの関係が読みどころである。

巻く向きの呼称と、向きが自転と無関係であることは、日本植物生理学会のQ&A[1][2]に、短くまとまっている。呼称は以前、上から見て「左巻き」だったが、約40年前に木原均らが横から見る方法への変更を提唱した[2]。同じ巻き方の別の呼び名である。呼称変更と接触への反応は、同サイトの「つる植物はどう巻きつくのか」(vine-twining-mechanism)にもある。

次に調べるなら、巻く向きを決める遺伝子がどんなはたらきをするのかを追ってみたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

論文はDOIや保管庫のページ、学会の回答は公開されているページを挙げた。内容を確認できたものだけを載せている。

  1. 日本植物生理学会 みんなのひろば Q&A(アサガオの巻き方向と自転) https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2296 (自転と無関係・遺伝)
  2. 日本植物生理学会 みんなのひろば Q&A(巻き方の呼称) https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2740 (右巻きの定義)
  3. Kitazawa et al. 2005 PNAS "Shoot circumnutation and winding movements require gravisensing cells" https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1310508 (回旋運動の数値・しだれ変異体・内皮・モデル)
  4. ナショナルバイオリソースプロジェクト 文献情報 https://rrc.nbrp.jp/references/728?lang=ja (PnSCR遺伝子の書誌の確認)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

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