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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

1キログラムは、どうして 「ちいさな 数」で きまるように なったの?

プランクが「苦しまぎれ」に持ちこんだ定数が、いまの1キログラムを決めている

プランク定数hと1キログラムの再定義 ── 黒体放射の「苦しまぎれ」から2019年のSI改定まで

分野:技術

1キログラムは、2019年まで、パリに ある たった 1つの おもりで きめられて いました。いまは、おもりでは なく、とても ちいさな 「数」で きまって います。

その 数を もちこんだ プランクは、「しぶしぶ」だった と いわれます。どうして、しぶしぶの 考えが、キログラムを きめる ことに なったのでしょう。その わけが 分かります。

2019年5月19日まで、1キログラムは、パリにある1つの金属のおもり(国際キログラム原器)の質量そのものでした。翌日からは、おもりではなく、プランク定数hという数で決まっています。

この数を物理学に持ちこんだプランク本人は、「しぶしぶの革命家」とも呼ばれます。苦しまぎれに置いた数が、なぜ100年あまり後に、1キログラムを決める役目を持ったのでしょうか。その道すじが分かります。光の粒を疑ったミリカンも、実験でhを測りました。

2019年5月19日まで、キログラムは、パリの国際度量衡局(BIPM)に保管された白金イリジウム合金の原器の質量そのもので定義されていた[6]。翌20日、プランク定数を h = 6.626 070 15×10−34 J·s と厳密に定める新定義が施行された[7]。

この h を導入したプランクは、自分の手続きを「苦しまぎれ(act of desperation)」と評される立場にいた[1]。なぜ、しぶしぶ持ちこまれた定数が、質量の単位の定義に使えるのか。1900年の導入、光の粒をめぐる疑い、E = mc² との組み合わせ、原子を数える測定までの道すじが分かる。光の粒を疑ったミリカンも、実験で h を測った。

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1. おもりが 1つだけ、って ふしぎ

1. 世界の「1キログラム」は、1つのおもりだった

1. 質量の単位は、130年のあいだ1つの人工物だった

1889年から 2019年まで、せかいの キログラムは、パリに ある 1つの おもりで きまって いました。まるい つつの かたちで、たかさも 太さも 39ミリです[6]。

ほかの くにの おもりは、これと くらべて ならべて きました。けれど、おもりは 空気の 中に あります。よごれが つくなど して、すこしずつ かわって しまいます。

100年 ぐらいの あいだの ずれは、1億おく分の 5キログラム。指紋しもん 1つぶんの おもさだと しょうかい されて います[7]。ふえたのか へったのかは、わかって いません。

では、おもりを やめて、なにで キログラムを きめれば いいのでしょう。その 手がかりは、1900年の ドイツに ありました。

1889年から2019年5月19日まで、キログラムはパリの国際度量衡局に置かれた「国際キログラム原器」の質量そのもので決まっていました。白金とイリジウムの合金でできた円筒で、直径も高さも39ミリです[6]。長さ、時間、電流などの7つの基本単位のうち、最後まで人工物で決められていたのがキログラムでした。

各国の原器や複製品は、この原器と見比べて質量を合わせます。ところが、表面の汚れなどで質量が少しずつ変わります。産総研は、約100年間の変動を「1億分の5キログラム、指紋1個分の重さ」と紹介しています[7]。増えたのか減ったのかは、資料の上では分かっていません[6]。

人工物の重さが基準である以上、基準そのものが変わるのを避けるのは難しいのです。では、物の重さを「自然の決まり」で決められないか。その手がかりは、意外にも、熱い物体の光を説明しようとした1900年のドイツの研究の中にありました。

キログラムは1889年から2019年まで、BIPMに保管された白金イリジウム合金の円筒(直径・高さとも39 mm)の質量で定義された。7つのSI基本単位のうち、最後まで人工物に頼っていた単位である[6]。

この方式の弱点は、基準そのものが物体であることだ。原器や複製品は表面の汚染などで質量が変わり、安定性は50 µg(1億分の5)程度が限界とされた。産総研は、約100年間の変動を「1億分の5 kg、指紋1個分の重さ」と紹介している。ただし、原器が減ったのか増えたのかは不明で、「減った」とは断定できない[6][7]。

基準が物体である限り、基準自身のゆらぎを別の基準で確かめるのは難しい。そこで、物体ではなく物理定数でキログラムを決める案が現れた。その定数が、1900年に「実験に合わせるため」に導入された h である。

2. プランクは、なぜ 「しぶしぶ」だったの?

2. 実験に合う式のために、エネルギーを「つぶ」に分けた

2. 黒体放射の式を合わせるために、hは持ちこまれた

1900年、ドイツの プランクは、あつい ものが 出す 光の きまりを 考えて いました。ところが、それまでの 式は、あたらしい じっけんの けっかと 合いません[1]。

プランクは、いままで 自分でも 使うのを さけて いた 数え方を、思いきって 使いました。エネルギーを ひとつづきの ものでは なく、「つぶ」に 分けて 数えたのです。つぶの 大きさは、光の ふるえの 数に、ある きまった 数 h を かけた もの。これが E = hν です[1]。

けれど、プランク本人は、この 考えを ほんきで しんじて いたわけでは ありません。ドイツの マックス・プランクきょうかいは、これを 「苦しまぎれの 手」と 書いて います。アメリカ物理学会の 記事には、「しぶしぶの かくめいか」と ありました[1][2]。

では、この 「つぶ」の 考えを、本気で ためした 人は だれだったのでしょう。

1900年ごろ、プランクは熱い物体が出す光の強さの式を探していました。ところが、当時の式は、新しい実験のデータとずれていました。彼はそこで、以前は退けていたボルツマンの数え方を採り、放射のエネルギーを「振動数×定数h」の大きさの単位に分けて数えることにしました。これがE=hνという式です[1]。

ここで大事なのは、この手が「筋の通った確信」から出たものではないことです。マックス・プランク協会は、この行動を「苦しまぎれの手」と表現します。アメリカ物理学会の記事も、プランクを「しぶしぶの革命家」と評しています[1][2]。

日付は資料で少し違います。同協会は1900年10月19日の放射法則を述べ、アメリカ物理学会の記事は、同年12月14日までに第一原理から式を導いたと書き、10月の式を「幸運な推測」と呼んでいます[1][2]。ここでは、この2つを分けて紹介するにとどめます。

数え方を変えただけの式が、その後どうなったのか。次は、「光そのものが粒だ」とまで踏みこんだ人と、それを疑いながら測った人の話です。

1900年ごろ、黒体放射の式が新しい実験データとヴィーンの式で合わなくなった。プランクは、実験に合う式を導くために、以前は退けていたボルツマンの統計的な数え方を採り、放射エネルギーを「振動数×定数h」の整数倍の単位に分けた(E = hν)。h は今日「作用量子」と呼ばれ、エネルギーではなく定数である点に注意が要る[1]。

この手続きは、積極的な仮説というより「苦しまぎれ(act of desperation)」だった。APSの記事も、この人を「しぶしぶの革命家」と評する[1][2]。したがって、「プランクは量子を確信していた」とは書けない。

年月日にも二層ある。MPGは1900年10月19日の放射法則に言及し、APSは12月14日までに第一原理から導出したと述べて、10月の式を「幸運な推測」とする[1][2]。10月19日は式の提示、12月14日は導出であって、混同しない。日付は二次資料にもとづく。

では、このエネルギーの分け方は、振動子のやりとりの中だけの約束なのか、それとも光の運ばれ方そのものの性質なのか。この違いを突いたのがアインシュタインであり、その式を疑いながら実験で確かめたのがミリカンである。

3. 光の つぶを うたがった 人が、hを はかった

3. 光の粒を疑った実験家が、hを測った

3. 光電効果 ── 仮説を疑った実験が、hを0.5%の精度で求めた

1905年、アインシュタインは、プランクより さらに ふみこみました。「光 そのものが、つぶに なって はこばれて くる」と 考えたのです。プランクは 光を 出し入れする ところで とびとびだと 考えましたが、アインシュタインは 光の はこばれ方 じたいが とびとびだと 考えました。この 考えで、光が 金ぞくに あたると 電子が とび出す ふしぎを、うまく せつめい しました[3]。

この 仕事で、アインシュタインは 1921年に ノーベルしょうを もらいます。ぶつりがくの しょうです。そうたいせいりろんの 仕事では ありません[3]。

でも、この 考えは、すぐには しんじられませんでした。アメリカの ミリカンも、その ひとりです。ミリカンは 1916年、「この 式が ほんとうに 合うのか」を、しんぼう強い じっけんで しらべました。金ぞくの 表面を、まっさらに するために、まどの ない 真空の 中で けずる 道具まで つくりました。

けっかは、アインシュタインの 式の とおりでした。そこから、h を 0.5パーセントほどの ちがいで、もとめました[4]。それでも ミリカンは、光の つぶという 考えを 「大たんで、むぼうとさえ いえる」と 書いて います。式は 正しい。でも 考えは しんじきれない。そんな 気持ちの まま、h は 世に 出たのです。

1905年、アインシュタインは、光そのものがエネルギーの粒として運ばれるという考えを出しました。粒のエネルギーは振動数に比例し、その比例の形はプランクの式と同じです。プランクが、熱い物体の中の振動子のやりとりを「とびとび」と考えたのに対し、アインシュタインは光の運ばれ方そのものをとびとびと見た点が違います。この考えで、光を当てた金属から電子が飛び出す光電効果を説明しました。1921年のノーベル物理学賞は、この仕事に贈られたもので、相対性理論に対してではありません[3]。

ところが、この考えは当時の実験家にすぐには受け入れられませんでした。その代表がミリカンです。彼は1916年、光電効果で飛び出す電子の最大エネルギーが、アインシュタインの式に従うかを調べました。成功の鍵になったのは、金属の表面を真空の中で削って清浄にする、いわば「真空中の工作室」のような装置でした。

結果は、式のとおりでした。hは約0.5%の精度で求まり、6.57×10−27 erg·sという値が出ています[4]。それでもミリカンは、光の粒の考えを「大胆、無謀とさえ言える仮説」と書き、まだ確立にはほど遠いと見ていました。式は正しいと確かめたが、粒の考えまでは信じきれていない。こういう「疑いながらの測定」が、hの値を支えました。

ここまでで、hは「エネルギーの粒の大きさを決める数」として姿を現しました。では、この数は実際にどんな大きさなのでしょう。そして、なぜそれがおもりの代わりになるのでしょうか。

アインシュタインは1905年、光そのものが、振動数に比例するエネルギー(プランクの式)をもつ粒として運ばれると考え、光電効果を説明した。プランクは放射を出し入れする振動子のやりとりをとびとびと見たが、アインシュタインは光の運ばれ方自体をとびとびと見た。この点が、両者の違いである。1921年のノーベル物理学賞は、相対性理論ではなくこの仕事に対して贈られた[3]。

この仮説を、実験家のミリカンは疑っていた。そのうえで1916年、光電効果で飛び出す電子の最大エネルギーが式に従うかを検証した。金属表面を真空中で削って清浄にする装置が、成功の鍵だった。結果は式のとおりで、h は約0.5%の精度、6.57×10−27 erg·s と求まった[4]。

注意したいのは、この検証が光の粒の考えの支持とは別だったことだ。ミリカンは、その考えを「大胆、無謀とさえ言える仮説」と呼び、なお確立からは遠いと述べている。ミリカンは式が正しいことは確かめたが、光の粒説の支持者ではなかった[4]。h の値は、仮説を信じた人だけでなく、疑った人の測定にも支えられていたことになる。

では、この h はどのくらいの大きさの量で、なぜ質量の単位の定義に使えるのか。まず大きさから見る。

4. hって、どれくらい ちいさい 数?

4. 小数点の後ろにゼロが33個 ── hはどれほど小さいか

4. hの大きさと、原子1個の質量への手がかり

h は、およそ 0.000…662 と かかれる 数です。小数点の あとに、ゼロが 33こ ならびます[7]。

アメリカの NISTという ところは、「1ジュール秒の、1兆ちょうの 1兆ちょう倍の 10億おく分の 1の、およそ 0.6ばい」と せつめい して います[5]。ゼロを かぞえるだけで、くらくらします。

こんなに ちいさいのは、h が、目に 見えない ほど ちいさな 世界で はたらく 数 だからです。産総研さんそうけんは、h を 「ミクロな ものの ふるまいを せつめい する ための 数」と しょうかい し、そこから 原子 1つの おもさを 出せると 書いて います[7]。

原子 1つの おもさと、球の 中の 原子の 数が 分かれば、球ぜんたいの おもさを けいさん できます。でも、光の つぶの 数 h から、どうやって おもさを 出すのでしょう。

hの値は、約6.626×10−34ジュール秒です。小数で書くと、小数点の後ろにゼロが33個並び、そのあとに662…と続きます。10−34は0.6×10−33にあたるので、ゼロの数を1つ数え間違えやすい点に注意してください[7]。NISTは、これを「1ジュール秒の、1兆の1兆倍の10億分の1の、約0.6倍」と表現します[5]。

hは、エネルギーそのものではなく、「作用の量子」と呼ばれる定数です[1]。産総研は、hを「ミクロな物質の振る舞いを説明するための物理定数」と紹介し、この定数から原子1個の質量を導けると書いています[7]。原子1個の質量が分かれば、たくさんの原子の質量として1キログラムを表せます。

大事なのは、hが「見えない世界の決まり」と「私たちが量るキログラム」をつなぐ橋になり得る、という点です。その橋の仕組みが、次の章の式です。

h は約6.626×10−34 J·s で、小数点以下に0が33個並んだあと662…と続く。10−34は0.6×10−33なので、ゼロの数を数え間違えないようにしたい。NISTは「1ジュール秒の、1兆の1兆倍の10億分の1の約0.6倍」と表現する[7][5]。

h は「作用の量子」で、エネルギーではない[1]。産総研は h を「ミクロな物質の振る舞いを説明するための物理定数」とし、そこから原子1個あたりの質量を導けると説明する。そのため、多数の原子の質量として1 kgを表すことができる[7]。

h はミクロな量と日常の量をつなぐ入口になる。その入口を数式で使う道が、次章の E = mc² との組み合わせである。

5. ちいさな 数が、どうして おもさを きめるの?

5. 光の「ふるえの数」に、おもさを置きかえる

5. E = mc² と E = hν から、質量を振動数に置きかえる

ふしぎな 手を 使います。おもさ m の もの すべてが、エネルギーに かわったと 考えます。すると、その エネルギーと 同じ エネルギーを もつ 光の つぶを、考える ことが できます。この 光の ふるえの 数は、m と 光の はやさ、そして h で 決まります[6]。

光の はやさは、1983年から、ずれの ない 数と して 決められて います。だから、h も ずれの ない 数に 決めて しまえば、キログラムも ずれなく 決まります。

たとえば、こんな ことです。「1メートルの じょうぎを、まず 決めて、それを 使って ものの 長さを はかる」のと、ほとんど 同じ。おもりの 代わりに、「光の ふるえの 数」を ものさしに した、と 考えて ください。ただし、本当に 光で おもさを はかる わけでは ありません。決まりの 書きかえです。

質量をhで決められる理由は、2つの式の組み合わせです。E=mc²は、質量mにcの2乗をかけたものがエネルギーだと言います。E=hνは、光のエネルギーが振動数νにhをかけたものだと言います。この2つを等しいとおくと、質量mに等しいエネルギーの光の振動数は ν=mc²/h と書けます[6]。

光速cは1983年から不確かさのない定数です。だから、hを不確かさなしに決めれば、質量の単位を決められることになります。新しい定義は、「振動数 (299 792 458)²/(6.626…×10−34) ヘルツの光子のエネルギーと等価な質量」という言い方をします[6]。

ただし、これは定義の言い換えです。実際に光子を使って1キログラムを量るわけではありません。ものさしを「おもりの実物」から「定数の値」へ替えた、という意味です。では、その定数の値は、どうやって決めたのでしょうか。

E = mc² と E = hν を組み合わせると、質量 m に相当するエネルギーをもつ光子の振動数は ν = mc²/h になる。光速 c は1983年以降、不確かさのない定数である。そのため、h の値を不確かさなしに定めれば、キログラムの単位を決められる[6]。

新定義は「周波数が (299 792 458)²/(6.626···×10−34) Hz の光子のエネルギーと等価な質量」である[6]。1 kg で計算すると、この周波数は約1.36×1050 Hz になる(本稿での計算)。ただしこれは定義を言い換えた形であり、光子で質量を実測する方法ではない。

ここで、測った値と決めた値を分けて考える必要がある。h は、測定の結果が集まって値が決まった後、その値を「誤差なしの定義値」に固定する。固定の前に、その値を十分に精密に測れていなければならない。次章は、その測定である。

6. どうやって、hを はかったの?

6. 原子を数えて、電気で量る ── 2つの道でhを決めた

6. X線結晶密度法とキッブルバランス ── 2017年の測定から2019年の定義値へ

ひとつめは、「原子を かぞえる」ほうほうです。ほぼ 1キログラムの、ピカピカの まるい シリコンの 球を つくります。ふとさは、およそ 94ミリ。この 球に、原子が いくつ あるかを、球の 大きさや 原子の ならび方から けいさんします[7]。

その 数は、およそ 20兆ちょうの 1兆ちょう倍。産総研さんそうけんは、この 球の ふとさを、レーザーの 光で、2000ほどの ちがう 向きから はかりました。ずれは 0.6ナノメートル ほどです。

もうひとつは、電気で はかる ほうほうです。アメリカの NISTの 人たちは 1999年に、「おもさが 決まって いれば、h を はかれる。それなら はんたいにも できる」と 考えました[5]。

2017年 10月、日本・ドイツ・アメリカ・カナダ・フランスの 8つの はかりかたから、h の 数が 決まりました。産総研さんそうけんは、その うち 4つに かかわって います[7]。2019年 5月 20日、h は 「はかった 数」から 「決めた 数」に かわりました。

hを測る道は、主に2つありました。1つは、X線結晶密度法です。ほぼ1キログラム、直径約94ミリの、シリコン28を濃縮した単結晶の球を作り、体積と、結晶の1つの単位に含まれる8個の原子から、球に入る原子の数(約20兆の1兆倍個)を求めます。こうして原子1個の質量が分かり、hにつながります。産総研は、直径をレーザー干渉計で約0.6ナノメートルの精度、約2000方位から測りました[7]。

もう1つは、キッブルバランスという、電気の測定でhを決める装置です。NISTのモアとテイラーは1999年に、質量が正確に決まっていればhを測れる、それなら逆にすれば質量を決められる、という考えを述べています[5]。この装置の詳しい仕組みは、本稿では扱いません。

2017年10月、日本・ドイツ・アメリカ・カナダ・フランスの8つの測定結果から、hの値が決まりました。測定の精度は1億分の2.4で、原器の安定性の限界(1億分の5)を上回りました。産総研はそのうち4つの測定に関わっています[7]。

2019年5月20日、h=6.626 070 15×10−34ジュール秒を、誤差のない値とする新定義が始まりました。1889年以来、130年ぶりの改定です[7]。測った値が、決めた値に変わった日です。

h の決定には主に2つの方法が使われた。X線結晶密度法では、ほぼ1 kg(直径約94 mm)の28Si濃縮単結晶球の体積と、単位格子(8原子)の情報から、球に含まれる原子数(約20兆の1兆倍、すなわち約2×1025個)を求め、原子1個の質量を得る。産総研は、球の直径をレーザー干渉計で約0.6 nmの精度、約2000方位から測った。もう一つのキッブルバランスは電気的測定で h を決める方法で、NISTのMohrとTaylorは1999年、質量が定義済みなら h を測れるので、それを逆にすれば質量を決められると考えた[7][5]。

ここで、独立した測定を集めることが鍵になる。2017年10月のCODATA特別調整で、日・独・米・加・仏の8つの測定結果から h の値が決まった。測定の相対不確かさは1億分の2.4で、原器の安定性の限界(1億分の5)を上回る。産総研は、そのうち4つの測定に関わった[7]。

その結果、2019年5月20日に、h = 6.626 070 15×10−34 J·s を誤差なしの値とする新定義が施行された。1889年以来130年ぶりの改定である[7]。ここで、測った値と決めた値の区別が要る。測定の精度は1億分の2.4だが、定義後の h は、定義値であって測定値ではない。

プランクが「実験に合わせるため」に持ちこんだ h は、こうして、人工物に代わる基準の側に回った。本稿で使った資料に、原子の安定性などの量子力学の応用例は含まれていない。そこは各自で調べる余地として残る。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

家に ある ものを 集めて、ぜんぶで 1キログラムに いちばん 近く なる 組み合わせを さがして みましょう。はかりが あれば、1キログラムの おもさが 手で どのくらいか、おぼえられます。「ちいさな 数が おもさを きめる」ことを 思い出して みて ください。

出かけて できること

かがくかんや はくぶつかんに、はかる ことの てんじが あれば、のぞいて みましょう。

くわしく しりたい とき

産総研さんそうけんの ホームページに、キログラムの あたらしい きまりの せつめいが あります。この ページの さいごの 「しゅってん」から たどれます。

今日できること

家にあるはかりで、いくつかの物を量って、合計が1キログラムに近くなる組み合わせを探してみてください。指紋1個分(1億分の5キログラム)の違いが、どれほど小さいかも想像できます。

出かけてできること

科学館や博物館に、単位や計測の展示があれば、キログラムやメートルの決め方がどう説明されているかを見てみてください。

公式情報

産総研の計量標準総合センターの資料(日本語)が、新しい定義とその実現方法を説明しています。出典欄からたどれます。

今日できること

産総研の藤井賢一氏の解説と、倉本直樹氏のトークイベント資料(いずれも日本語)を読み比べると、原器の弱点と、hを使った定義の理由が、別の言い方でも説明されているのが分かる。同じ話でも、「何を強調するか」が違う点を探すのが手がかりになる。

公式情報

産総研の日本語資料(出典欄)には、シリコン球で原子を数える測定の写真や説明がある。球の直径をどう測ったのかを読むと、「原子を数える」ことの手ざわりがつかめる。なお、hが原子の性質にどう関わるかは、本稿の資料では踏みこんでいないため、量子力学の教科書や公的機関の解説で確かめてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

記事の事実の確認に使った資料。日付や数値は、各資料の記述にもとづく。

  1. Max-Planck-Gesellschaft, "Energy in packets – What did Planck discover?" https://www.mpg.de/19252749/what-did-max-planck-discover (プランクの導入の手続きと「苦しまぎれ」の表現)
  2. APS News, This Month in Physics History (2002年10月) https://www.aps.org/apsnews/2002/10/this-month-in-physics-history (しぶしぶの革命家、12月14日の導出)
  3. APS Physics, "Einstein and the photoelectric effect" (Physics 18, 15) https://physics.aps.org/articles/v18/15 (光の粒の考えと1921年のノーベル賞)
  4. APS Physics, Millikan's 1916 photoelectric work https://physics.aps.org/story/v3/st23 (hを約0.5%で求めた測定と、光の粒への疑い)
  5. NIST, "Kilogram: Mass and Planck's Constant" https://www.nist.gov/si-redefinition/kilogram-mass-and-plancks-constant (hの大きさの表現、キッブルバランスの発想)
  6. 藤井賢一(産総研)「プランク定数にもとづくキログラムの新しい定義とその実現方法」 https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/2_SI_キログラム.pdf (原器の定義、E=mc²とE=hνによる説明)
  7. 倉本直樹(産総研)トークイベント「さようならキログラム原器」(国立科学博物館、2019年6月2日) https://unit.aist.go.jp/riem/mass-std/トークイベント「さようならキログラム原器」.pdf (原器の変動、hの大きさ、シリコン球、2017年と2019年の経緯)

なおした ところ

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