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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ふくろは、せきゆから どうやって できるの?

プラスチックはどうやってできているのか ── ろうそくとポリ袋のちがいから

プラスチックの作り方 ── ナフサからエチレン、重合まで、鎖の長さで性質が変わる

分野:技術

つくえの うえに、ろうそくと、ポリエチレンの ふくろを ならべて みます。ろうそくは かたまりで、ふくろは うすくて のびます。ぜんぜん ちがう ものに 見えます。

ところが、ろうそくの ロウ(石油せきゆから つくる パラフィンワックス)と ポリエチレンは、どちらも 炭素たんそと 水素すいそだけで できた、くさりの ような つぶです。ちがうのは、くさりの ながさ。

ながい くさりを、せきゆから どうやって つくるのか。しらべて みました。

机の上に、ろうそくと、ポリエチレンでできた袋を並べてみます。ろうそくは固まりで、袋は薄くてよく伸びます。まるで別の物に見えます。

ところが、ろうそくのロウ(石油からつくるパラフィンワックス)とポリエチレンは、どちらも炭素と水素だけでできた鎖の形の分子です。ちがうのは、鎖の長さです。

では、その長い鎖を、石油からどうやってつくるのでしょうか。石油から袋になるまでを、資料でたどります。

机の上に、ろうそくと、ポリエチレンの袋を並べてみる。片方は固まり、片方は薄く伸びるフィルム。別の物質に見える。

ところが、ろうそくのロウ(石油由来のパラフィンワックス)とポリエチレンは、どちらも炭素と水素だけでできた鎖状の分子だ。違いは鎖の長さにある。では、その長い鎖を、石油からどうつくるのか。原油の蒸留、ナフサの熱分解、エチレンの重合、鎖の長さと枝分かれによる性質の変化、そして発見の経緯を、業界団体・学会・科学史の資料を突き合わせてたどる。環境問題はマイクロプラスチックはどこから来るのかのメモで扱ったので、ここでは作り方に絞る。

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1. ろうそくと ふくろは、なにが ちがうの?

1. ろうそくと袋は、鎖の長さがちがう

1. パラフィンワックスとポリエチレン ── 同じ種類の分子、ちがう長さ

ロウは、たんそが 20から 40 こ くらい つながった くさりです。ポリエチレンは、「エチレン」と いう ちいさな つぶが、千こ いじょうも つながって できます。

ロウが ちいさな つぶの みじかい くさりなら、ポリエチレンは、ずっと ながい ひもです。

ただし ほんとうは、ろうそくと ふくろは、おなじ ものでは ありません。おなじ しゅるいの つぶで、つながる ながさが ちがう、と いう ことです。

ロウの分子は、炭素が20〜40個ほどつながった鎖です[1]。ポリエチレンは、エチレンという小さな分子が、1千個以上つながってできます[2]。エチレン1個には炭素が2個あるので、ロウの炭素20〜40個は、エチレン10〜20個ぶんにあたります(この換算は自分で数えたものです)。ポリエチレンの千個以上と比べると、50倍から100倍以上の開きがあります。

分子の重さで比べても、ロウが約300〜550なのに対して、ふつうのポリエチレンは数万〜数十万とされます[1][3]。

ろうそくとポリ袋が、まったく同じ物というわけではありません。同じ種類の分子で、長さが大きくちがう、ということです。この長さが、性質をどう変えるのかは、5章で見ます。その前に、長い鎖の材料をどうやって手に入れるのかを追います。

パラフィンワックスは、炭素数が約20〜40、分子量が約300〜550で、直鎖状の炭化水素(ノルマルパラフィン)が主成分だ[1]。ポリエチレンも、炭素と水素だけの鎖だ。ただし、エチレン分子が1千個以上つながってできる[2]。

エチレン(C2H4)1個に炭素は2個あるので、ワックスの炭素20〜40個は、エチレン10〜20個ぶんに相当する(自分で数えた換算)。ポリエチレンの1千個以上とは、50〜100倍以上の差がある。分子量でも、通常のポリオレフィンは数万〜数十万とされ[3]、ワックスとは2〜3桁ほどの開きがある(自分の概算)。

「ろうそくとポリ袋は同じ物」とは言えない。同じ種類の分子で、長さが大きく違う、ということだ。なお、ろうそくには植物由来のロウのものもあり、ここで比べているのは石油由来のパラフィンワックスだけである。長さが性質をどう変えるかは5章で扱う。まず、長い鎖の材料が石油からどう作られるかを追う。

2. せきゆから、どうやって ざいりょうを とりだすの?

2. 石油を熱して、軽いものから分ける

2. 原油の蒸留とナフサ ── 石油のうち、化学の原料になる部分

せきゆは、ふくろの ざいりょうに そのまま なるのでは ありません。まず、あつく あたためて、かるい ものから じゅんに わけます。

わかれた ものの ひとつが「ナフサ」です。ガソリンに そっくりな、すきとおった えきたいです。これが、ふくろの もとの、そのまた もとに なります。

せきゆからは、ナフサだけを とりだす ことは できません。いろいろな ものが いちどに でてきます。

せきゆの おおくは、くるまや ひこうきの ねんりょうに なります。ふくろなどの プラスチックに なるのは、その ほんの いちぶです。

石油(原油)は、そのままではプラスチックの原料になりません。350℃以上に熱して蒸留塔に吹き込み、沸点のちがいを使って、LPガス・ナフサ・灯油・軽油・重油などに分けます[4]。

このうちナフサは、ガソリンに似た透明な液体で、沸点は約35〜180℃です[5]。ガソリンそのものではありませんが、軽い部分で、石油化学製品の原料になります。

ナフサだけを取り出すことはできません。原油からは、ガソリンだけ、灯油だけをつくることはできず、いろいろな製品が同時にできます。その割合は、原油の種類でも変わります[6]。

石油全体で見ると、プラスチックは多数派ではありません。国際エネルギー機関(IEA)の2018年の報告書では、世界の石油の需要のうち、約60%が輸送用の燃料でした[7]。次に大きいのが化学部門で、14%です(肥料なども含みます。プラスチックだけの数字ではありません)[7]。

プラスチックの原料は、原油そのものではない。原油を350℃以上に熱して常圧蒸留塔に吹き込み、沸点の違いを使って、LPガス、ナフサ、灯油、軽油、重油などの留分に粗く分ける[4]。このうちナフサは、ガソリンに似た透明な液体で、沸点は約35〜180℃。LPガスの次に軽い留分だ[5]。ガソリンそのものではなく、石油化学製品の原料として使われる部分である。

ナフサだけを狙って取り出すことはできない。原油からガソリンだけ、灯油だけをつくることはできず、複数の製品が同時にできる(連産品)。得られる割合は、軽質原油か重質原油かでも違ってくる[6]。

石油全体の使い道を見ると、プラスチックは少数派だ。IEAの2018年報告書では、輸送用燃料が世界の石油需要の約60%を占め、次に大きい化学部門が14%だった[7]。この14%は肥料なども含む化学部門全体の数字で、プラスチックだけの割合ではない。それでも、世界のプラスチック生産は2024年に約4億3千万トンに達し、うち化石由来が約9割とされる(Plastics Europeの集計)[8]。

3. ふくろの もとは、じつは ガス?

3. ナフサを一瞬で分解すると、気体のエチレンができる

3. ナフサ分解 ── 800℃台、ごく短い時間で、エチレンを得る

ナフサを、とても あつい くだの なかに とおすと、おおきな つぶが ばらばらに こわれて、ちいさな つぶが できます。もやして いるのでは ありません。ほんの いっしゅんで おわります。

できた ちいさな つぶの ひとつが「エチレン」です。エチレンは、においの うすい ガスです。ふくろの ざいりょうは、もとは、ガスだったのです。

つくった エチレンの ぜんぶが ポリエチレンに なる わけでは ありません。ナフサから とれる エチレンは、3わり くらいです。

ナフサを、非常に高温の分解炉の管に通すと、激しい熱分解が起きます。分子がばらばらになったり、結びつき直したりして、エチレン、プロピレン、ベンゼンなどの「石油化学基礎製品」ができます[9]。燃やすのではありません。高温の管の中で、熱によって分子を壊す反応です。

温度は800℃台で、1秒よりずっと短い時間で終わります。エチレンが得られる割合は、ナフサの3割前後です[10]。

エチレン(C2H4)は、常温では無色の気体で、沸点はマイナス103.7℃です。最大の用途はポリエチレンです[11]。ポリ袋の原料は、石油そのものではなく、気体の分子です。

エチレンからは、ポリエチレンのほかに、合成洗剤や合成繊維、ペットボトルなどの原料になるものもつくられます[14]。

ナフサを非常に高温の分解炉の管に通すと、激しい熱分解が起き、分子がばらばらになったり、他の分子と結合し直したりして、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの石油化学基礎製品ができる[9]。燃焼ではなく、高温の管の中で、熱によって分子を小さく壊す反応だ。

条件は資料で幅がある。コトバンクにまとまっている3つの事典では、温度は800〜850℃、時間は0.1〜0.3秒、エチレンの収率は25〜33%と、記述が少しずつ違う[10]。原料や装置で変わる数字なので、「800℃台、1秒未満、収率は3割前後」と幅をもたせて読むのが安全だ。

エチレン(C2H4)は、常温で無色の気体で、沸点は−103.7℃。ナフサの熱分解で得られる代表的な基礎製品であり、最大の用途はポリエチレンだ[11]。袋やバケツの原料は「石油そのもの」ではなく、気体の分子である。

エチレンの行き先はポリエチレンだけではない。エチレンオキサイドやエチレングリコールもつくられ、合成洗剤・合成繊維・ペットボトルなどの原料になる[14]。

4. ちいさな つぶを つなぐと、どうなるの?

4. エチレンを千個以上つなぐと、ポリエチレン

4. 重合 ── モノマーがつながってポリマーになる

エチレンの つぶを、たくさん つなげる ことを「重合じゅうごう」と いいます。かみの クリップを ひとつずつ もつと ばらばらですが、千こ つなげると、ながい くさりに なります。

ただし ほんとうは、クリップと ちがって、つぶ どうしは、めに 見えない ちからで しっかり くっついて います。

こうして できた ポリエチレンは、まるい ちいさな つぶに されて、こうじょうへ はこばれます。そこで あたためて とかし、つくる ものに あわせた やりかたで、ふくろや バケツの かたちに します。

「プラスチック」と いう ことばは、もともと「やわらかくて、かたちを つくりやすい」と いう いみでした。

分子をたくさんつなげる反応を重合といいます。できた大きな分子が重合体(ポリマー)で、材料になる小さな分子がモノマー(単量体)です[12]。エチレンがモノマー、ポリエチレンがポリマーです。「ポリ」は、ギリシャ語で「たくさん」という意味です[2]。

たとえるなら、紙のクリップです。1個ずつなら手のひらでばらばらですが、千個つなげば長いひもになります。ただし本当は、分子どうしはクリップのように引っかけているのではなく、化学の結びつき(共有結合)でつながっています。

数千個以上の原子でできた大きな分子を、高分子(ポリマー)と呼びます[13]。同じ原料でも、数万個つなげた高分子と、1個ずつの小さな分子では、性質が変わります[13]。

工場でできたポリエチレンは、ペレットと呼ばれる丸い粒にされて運ばれます。成形工場では、製品に合わせた方法で形をつくります。射出成形は、粒を加熱して溶かし、金型に流し込み、冷やして固める方法で、その一つです[14]。「プラスチック」という語は、もとは「やわらかく形をつくりやすい」という意味だったそうです[15]。

化学反応で分子を多数つなげることを重合といい、できた大きな分子を重合体(ポリマー)、原料の小さな分子を単量体(モノマー)と呼ぶ[12]。エチレンがモノマーで、その重合体がポリエチレンだ。ポリエチレンは、エチレン分子1千個以上がつながってできる。「ポリ」はギリシャ語で「たくさん」の意味である[2]。なお、つながる数は製品でさまざまで、1千個は下限の目安にすぎない。

数千個以上の原子でできた大きな分子が、高分子(ポリマー)と呼ばれる[13]。同じ原料でも、数万個つなげた高分子と、個々の低分子とでは性質が変わる[13]。紙のクリップにたとえれば、1個ずつはばらばらでも、千個つなげば長いひもになる。ただし本当は、分子どうしはクリップのように引っかけてあるのではなく、共有結合でつながっている。

ここで言葉を分けておく。ポリマーは分子1本の話で、プラスチックは、ポリマーの集まりに添加剤などを加えた材料だ。工場でできたポリエチレンは、ペレットと呼ばれる丸い粒にされて運ばれる。成形工場ではペレットを加熱して溶かし、金型に流し込んで冷やし固める(射出成形はその一つ)[14]。「プラスチック」の語は、もともと「やわらかく形を作りやすい」という意味の言葉だった[15]。熱でやわらかくなる性質を使った作り方と、名前がつながっている。

5. ながい ひもは、どうして じょうぶ?

5. 「長いひも」は疑われた ── 鎖の長さと強さ

5. 高分子説とシュタウディンガー ── 鎖の長さと強度

いま、ながい くさりの ような つぶが あると 知られて います。でも、100ねんほど まえは、そうでは ありませんでした。ドイツの シュタウディンガーは、ゴムは ながい くさりだ、と かんがえました。まわりの おおくの ひとは、ちいさな つぶが あつまって いるだけだ、と かんがえて いました。うたがう ひとが おおかったのです。

ながい くさりは、おたがいに からまります。みじかい けいとの くずは ひっぱると すぐ ほどけますが、ながい けいとは なかなか ほどけません。ただし ほんとうは、くさりは 目に 見えなくて、からまりかたは けいとほど かんたんでは ありません。

だから、みじかい くさりの ロウは かたまりに なり、ながい くさりの ポリエチレンは、うすい ふくろにも なる ほど のびると かんがえられます。

1千個以上もつながった長い分子がある、という考えは、100年ほど前には当たり前ではありませんでした。ドイツのシュタウディンガーは、1920年代に、ゴムなどは小さな分子が結びついた、とても大きな分子だと主張しました。当時の考えでは、どんな化合物も小さな分子で、それが集まってゴムのような性質を見せる、とされていました[16]。疑いの目が強かったのです。

シュタウディンガーがノーベル化学賞を受けたのは1953年、その仕事から約30年後でした[16]。

分子の長さは、強さにも関係します。ある長さ以上では、長いほど強さが少しずつ上がり、ある長さより短いと、強さが急に落ちる、とプラスチック業界の解説にあります。長い鎖はからみ合いが増え、短い鎖が多いと、壊れ始める場所(鎖の端)が増えるためです[17]。長ければ長いほど強い、というわけではなく、ある長さを超えると伸びは緩やかになります。

短い毛糸の切れ端は、丸めて引くとすぐほどけます。長い毛糸は、なかなかほどけません。そのイメージに近いのですが、本当は、分子の鎖は見えないので、からみ方は毛糸ほど単純ではありません。

鎖の短いロウが固まりのまま、1千個以上つながったポリエチレンが、薄い袋にできるのも、この長さの差が一つの理由だと考えられます。

1千個以上もつながった長いひも状の分子、という発想は、100年前には定説ではなかった。ドイツのシュタウディンガーは、1920年代に、ゴムなどは小さな分子が共有結合でつながった、分子量の大きな分子だと主張した。当時の定説は、化合物は低分子であり、それが「会合」してゴムのような性質を見せる、というものだった[16]。疑いが強かった。彼がノーベル化学賞を受けたのは1953年、その仕事から約30年後である[16]。

では、鎖の長さは性質をどう変えるのか。プラスチック業界の解説サイト(プラベース)によれば、ある分子量以上では、分子量が高いほど強度は徐々に上がるが、ある分子量以下では強度が急に落ちる。分子量が高いと、分子どうしのからみ合いが増える。低分子量の成分が多いと、破壊の起点になる分子の末端が増える[17]。「長いほど強い」と単純化はできず、ある長さを超えると強度の伸びは緩やかになる[17]。

毛糸にたとえると、短い切れ端は丸めて引くとほどけ、長い毛糸はほどけにくい。ただし本当は、分子の鎖は目に見えず、からみ方は毛糸ほど単純ではない。

この説明は業界の解説記事にもとづく。ロウ(分子量約300〜550)が固まりのまま、ポリエチレン(数万〜数十万)が薄い袋になる違いを考える手がかりになる。

6. おなじ ふくろでも、やわらかい ものと かたい ものが あるのは?

6. ポリエチレンが偶然できた実験と、鎖の枝分かれ

6. 高圧法の偶然の発見と、枝分かれ・ツィーグラー触媒

1933ねん、イギリスの かいしゃで、ギブソンさんと フォーセットさんが、エチレンに おおきな ちからを かけて、はんのうさせる じっけんを して いました。あとで 見ると、ようきの なかに、しろい ロウのような かたまりが できて いました。これが ポリエチレンの はじまりです。おもいがけない できごとでした。

そのあと、ふたたび つくれるように なるまで、2ねんほど かかりました。

この つくりかたで できた ポリエチレンは、くさりに えだが たくさん あります。えだが おおいと、ふんわり やわらかく、すくないと、ぎっしりして かたく なります。

1953ねんに、ドイツの ツィーグラーが、たかい あつりょくや ねつを つかわずに、すっと のびた くさりの ポリエチレンを つくる ほうほうを 見つけました。

1933年3月27日、イギリスのICI社(ノースウィッチ)で、ギブソンとフォーセットは、エチレンを約1,900気圧・170℃で反応させる実験をしていました。圧力が下がり、容器の中に、白いロウのような固体ができていました[18]。1,900気圧は、1平方センチメートルに約2トンの重さがかかる計算です(自分の計算)。

この発見は偶然でした。容器から漏れたごく少量の酸素が、反応のきっかけになったといわれます。酸素がまったくないと、反応が起きないとする記述もあります[18]。しかも、すぐに製品にはなりませんでした。ICIが装置を改良して実験を見直し、再現に成功したのは1935年後半です。100トン/年の設備が動き始めたのは1939年です[18]。ちなみに2025年の日本の低密度ポリエチレンの生産量は約120万トンです[21]。工場1つと日本全体の1年分という、単純には比べられない組み合わせですが、あえて並べると約1万2千倍にあたります。

この高圧の方法でできるポリエチレンは、分子に枝分かれが多く、低密度でやわらかいタイプです(低密度ポリエチレン)。枝分かれが少ないタイプは、高密度でかたくて丈夫です(高密度ポリエチレン)[20]。

1953年、ドイツのツィーグラーは、アルミニウムを含む化合物を触媒にすると、高圧・高温を使わずにポリエチレンがつくれることを見つけました。できたのは、枝分かれの多いICIのものとちがい、よく整った長い直鎖状の分子でした[19]。翌1954年、イタリアのナッタが同じ発想でポリプロピレンの規則正しい構造をつくり、2人は1963年にノーベル化学賞を受けました[19]。

触媒は、反応を助けるけれど、それ自体は使い切られない物質です。

1933年3月27日、英国ICI社(ノースウィッチ)のギブソンとフォーセットは、エチレンを約1,900気圧・170℃で反応させる実験中に、予想外の圧力低下と、白いロウ状の固体に気づいた[18]。1,900気圧は大気圧の1900倍で、1平方センチメートルあたり約2トンの力に相当する(自分の計算)。反応の開始に、容器から漏れた微量の酸素が関わったとされる。IChemEの記事は、酸素がまったくないと反応しないと述べる[18]。最初の実験の原料が純粋なエチレンだけだったのかは、資料で書き方が分かれる。

「偶然の発見」だが、すぐには製品にならなかった。1935年後半にICIが装置を改良したうえで実験を見直し、再現に成功した。100トン/年の設備が本格稼働したのは1939年だ[18]。2025年の日本の低密度ポリエチレンの生産量は約120万トン(JPCA掲載の経産省統計)で[21]、工場1つと日本1年分という単純には比べられない組み合わせで、統計は改訂もあるが、あえて年100トンの1工場と並べると約1万2千倍の差になる。

高圧法でできるのは、枝分かれの多い低密度ポリエチレン(LDPE)だ。これに対して、分岐が少なく密度が高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)で、かたく丈夫とされる。境目の密度は資料により0.93〜0.94g/cm3前後と幅がある[20]。

1953年、ツィーグラーは、アルミニウムの有機化合物を触媒にすれば、高圧・高温を使わずにポリエチレンがつくれることを見つけた。できたのは、ICIの高圧法とちがい、よく整った長い直鎖状の分子だった。翌1954年にナッタが同じ発想でポリプロピレンの規則正しい構造をつくり、2人は1963年にノーベル化学賞を受けた[19]。触媒とは、反応を助けるが、それ自体は使い切られない物質だ。1953年は、シュタウディンガーがノーベル賞を受けた年でもある。長い鎖の存在が認められた年に、鎖の形を整える方法が見つかっていたことになる。

7. くさりの よこに つく ものが かわると?

7. 横についているものが変わると、別のプラスチックになる

7. 側鎖の違い ── ポリプロピレン、塩ビ、ポリスチレンと、別の作り方のPET

つなぐ つぶの かたちが すこし ちがうと、できる くさりも ちがいます。くさりの よこに、なにも つかない もの、ちいさな ものが つく もの、しおの なかまが つく もの、まるい わっかが つく もの、と いろいろです。

そのため、レジぶくろ、ストロー、CDの ケースなど、ちがう せいしつの プラスチックが うまれます。

「えんかビニル」は、せきゆと「しお」の りょうほうから できて います。しおを でんきで わけて、「えんそ」という ものを とりだします。

ペットボトルの「PET」は、ポリエチレンとは べつの プラスチックです。なまえが にて いるだけです。

エチレン、プロピレン、塩化ビニル、スチレンは、どれも炭素どうしの二重結合をもちます。この二重結合が開いて、次々につながります(付加重合)。できるポリマーは、鎖の横につくものがちがいます。ポリエチレンは何もつかない鎖、ポリプロピレンはメチル基、ポリ塩化ビニルは塩素、ポリスチレンはベンゼン環がつきます[22]。

ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレンは、まとめて「4大汎用プラスチック」と呼ばれます。用途は、ポリエチレンがレジ袋・ラップ・バケツ、ポリスチレンがCDケース・食品トレイ、ポリプロピレンがストロー・医療器具・自動車部品などです[2]。

塩化ビニルは、原料がエチレンと塩素です。塩素は、輸入した工業用の塩を電気で分解してつくります[23]。塩素の重さの割合は、原子量から計算すると約57%で、半分以上です(自分の計算)。ただし、骨格の炭素と水素は、エチレン、つまり石油から来ています。石油と塩の両方から生まれるのです。

ペットボトルのPET樹脂は、ポリエチレンとは別のプラスチックです。エチレンからつくるエチレングリコールと、テレフタル酸を、高温・高真空で反応させてつくり、約1/3が酸素です[24]。名前が似ているだけで、別の材料です。

エチレン、プロピレン、塩化ビニル、スチレンは、いずれも炭素間の二重結合をもち、それが開いて連なる(付加重合)。できるポリマーの違いは、鎖の横につく原子団にある。ポリエチレンは何もつかない骨格、ポリプロピレンはメチル基、ポリ塩化ビニルは塩素、ポリスチレンはベンゼン環である[22]。ただしこれは大づかみな説明で、性質は結晶のなりやすさなどにも左右される。

ポリエチレン・ポリ塩化ビニル・ポリスチレン・ポリプロピレンは「4大汎用プラスチック」と呼ばれる。ポリエチレンはレジ袋・ラップ・バケツ、ポリスチレンはCDケース・食品トレイ、ポリプロピレンはストロー・医療器具・自動車部品などに使われる[2]。

塩ビの粗原料はエチレンと塩素で、塩素は輸入した工業塩を電気分解してつくる[23]。繰り返し単位C2H3Cl(分子量62.50)のうち、塩素(原子量35.45)は約57%を占める(自分の計算)。半分以上が塩素由来ということになる。ただし骨格の炭素と水素はエチレン、つまり石油由来なので、「塩でできている」とは言えず、石油と塩の両方が原料だ。添加剤を加えれば、硬さや透明度を変えられる[25]。

ペットボトルのPET樹脂は、ポリエチレン(PE)とは別の材料だ。エチレンからつくるエチレングリコール[14]と、テレフタル酸を、高温・高真空下で反応させてつくり、約1/3が酸素で占められる[24]。分子式C10H8O4で計算しても酸素は約33%で、資料と合う(自分の検算)。名前の頭文字が近いだけで、混同しやすい。

8. みずに うかべて みよう

8. 水に浮かべて、樹脂のちがいを確かめる

8. 水に浮かべる ── 樹脂の密度を確かめる、資料を読み比べる

いえに ある プラスチックの ものを、みずに うかべて みましょう。ポリエチレンや ポリプロピレンは みずに うきます。ペットボトルの ざいりょうや えんかビニルは しずみます。

ペットボトルの キャップや ストローなど、ちいさくて、きらずに そのまま みずに はいる ものを えらびます。うらや ふたの うらに、「PE」「PP」などの もじが かいて ある ことが あります。かいて いない ものも おおいので、もじが かいて ある ものだけを つかいます。

もじが かいて あったら、「うくかな、しずむかな」と よそうして から、みずに いれます。あわが ついて いたら、ゆびで とって から、ようすを みます。ただし、からっぽの おおきな ようきは、なかに くうきが はいって いるので、なんの ざいりょうでも うきます。

安全のために

ハサミや カッターで きって ためすのは しません。ひは つかいません。みずを つかった あとは、ゆかを ふいて おきます。

水に浮くのはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)、沈むのはポリスチレン(PS)・PET・塩化ビニル・ナイロンなどです。ペットボトル(PET)は比重1.38で沈みます[26]。比重1.38は、同じ体積の水の1.38倍の重さ、という意味です。

家にあるプラスチック製品の裏やふたに、「PE」「PP」のような表示がついているものがあります。ない製品も多いので、見つかったものだけで十分です。その中から、ペットボトルのキャップやストローのように、切らなくてもそのまま水に入る小さなものを選び、浮くか沈むかと、表示を見比べると、自分で確かめられます。

中が空洞の容器や、発泡した素材は、樹脂の種類に関係なく浮きます[26]。空気の入った大きな容器ではなく、中身の詰まった小さなものを選び、ついた泡は指で取ってから見ます。

安全のために

ハサミやカッターで切って試すことはしません。火を使って見分けるのは危ないので、しません。

水に浮くのはポリプロピレンとポリエチレンで、沈むのはポリスチレン・PET・塩化ビニル・ナイロンなどだ。ペットボトル(PET)は比重1.38で沈み、荷造りバンドやフィルムケースは浮く[26]。名前の似たポリエチレンとPETが、水の中では浮くものと沈むものに分かれる。

家にある製品の、裏やふたの表示(PE、PPなど)と、切らずにそのまま水に入る小さなもの(キャップ、ストローなど)が浮くか沈むかを見比べる。表示のない製品も多い。中空の容器や発泡素材は、樹脂の種類に関係なく浮くので[26]、中身の詰まった小さなものを選び、泡は取ってから見る。

資料を読むなら、コトバンクの「ナフサ分解」で、3つの事典の数字がどう違うかを見比べる[10]。1933年の実験の経緯はIChemEの記事[18]、「長いひも」を疑われた話はScience History Instituteのシュタウディンガーの伝記[16]で読める。

安全のために

切断して試すことはしない。火を使う見分け方は危険なので勧めない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモは、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 日本精蝋「パラフィンワックス」。 https://www.seiro.co.jp/product/list/detail?id=438 (炭素数約20〜40・分子量約300〜550・直鎖状炭化水素が主成分)
  2. プラスチック循環利用協会「プラスチックのはてな プラスチックの種類」。 https://www.pwmi.jp/library/library-104/ (ポリエチレンは千個以上のエチレンがつながる/「ポリ」の意味/4大汎用プラスチックと用途)
  3. 三洋化成工業「低分子量ポリオレフィン」。 https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/262 (通常のポリオレフィンの分子量が数万〜数十万であること)
  4. 石油連盟「製油所の精製工程」。 https://www.paj.gr.jp/statis/faq/67 (原油を350℃以上に熱して蒸留し、留分に分けること)
  5. 石油連盟「ナフサとは」。 https://www.paj.gr.jp/statis/faq/74 (ナフサの性質と沸点)
  6. 石油連盟「連産品とは」。 https://www.paj.gr.jp/statis/faq/65 (原油から特定の製品だけを取り出せないこと)
  7. IEA “The Future of Petrochemicals” (2018). https://www.iea.org/reports/the-future-of-petrochemicals (輸送用燃料が石油需要の約60%、化学部門が14%。2018年報告書の数字)
  8. Plastics Europe “Plastics – the fast Facts 2025”. https://plasticseurope.org/knowledge-hub/plastics-the-fast-facts-2025/ (世界のプラスチック生産量430.9百万トン(2024年)と化石由来の割合)
  9. 石油化学工業協会「石油化学製品はこうしてつくる ナフサ分解工場」。 https://www.jpca.or.jp/studies/junior/tour02.html (ナフサの熱分解でエチレンなどの基礎製品ができること)
  10. コトバンク「ナフサ分解」(化学辞典・日本大百科全書・世界大百科事典)。 https://kotobank.jp/word/%E3%81%AA%E3%81%B5%E3%81%95%E5%88%86%E8%A7%A3-3161984 (分解の温度・時間・エチレン収率の幅。辞典ごとに数字が少しずつちがう)
  11. クラサスケミカル「エチレン」。 https://www.crasus.co.jp/products/olefins/ethylene.html (エチレンの状態・沸点、ナフサ熱分解で得られること、最大の用途)
  12. 石油化学工業協会「石油化学ものしり辞典」。 https://www.jpca.or.jp/studies/junior/dic.html (重合・重合体・単量体の意味)
  13. 高分子学会「『高分子』って何だろう?②」。 https://www.spsj.or.jp/mj/news/news_detail_31.html (高分子の定義、同じ原料でも大きさで性質が変わること)
  14. 石油化学工業協会「石油化学製品はこうしてつくる 石油化学誘導品工場」。 https://www.jpca.or.jp/studies/junior/tour03.html (ペレット、エチレンからできる誘導品、成形の流れ)
  15. Science History Institute “History and Future of Plastics”. https://www.sciencehistory.org/education/classroom-activities/role-playing-games/case-of-plastics/history-and-future-of-plastics/ (「プラスチック」という語のもとの意味)
  16. Science History Institute “Hermann Staudinger”. https://www.sciencehistory.org/education/scientific-biographies/hermann-staudinger/ (高分子説と当時の定説、ノーベル賞の年)
  17. プラベース「プラスチックの強度⑦ 分子量と強度および成形性」。 https://plabase.com/news/5985 (分子量と強度の関係、からみ合い)
  18. The Chemical Engineer (IChemE) “Plastic Fantastic”. https://www.thechemicalengineer.com/features/cewctw-dermot-manning-and-colleagues-at-ici-plastic-fantastic/ (1933年の発見の状況、1935年の再現、1939年の設備)
  19. Science History Institute “Karl Ziegler and Giulio Natta”. https://www.sciencehistory.org/education/scientific-biographies/karl-ziegler-and-giulio-natta/ (触媒による低圧の方法、ポリプロピレン、1963年ノーベル化学賞)
  20. MONOist「ポリエチレンの基礎知識」。 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2409/13/news185.html (低密度・高密度ポリエチレンと枝分かれ)
  21. 石油化学工業協会「石油化学製品の生産」。 https://www.jpca.or.jp/statistics/annual/seisan.html (日本の2025年のポリエチレンなどの生産量)
  22. 化学のグルメ「付加重合・共重合」。 https://kimika.net/y2addition.html (二重結合が開いてつながる付加重合、横につく原子団のちがい)
  23. 塩ビ工業・環境協会「塩ビ工業の概観」。 https://www.vec.gr.jp/enbi/enbi1_1.html (塩ビの原料がエチレンと塩素であること)
  24. PETボトルリサイクル推進協議会「PET樹脂の特性」。 https://www.petbottle-rec.gr.jp/more/characteristic.html (PET樹脂の原料、酸素が約1/3を占めること)
  25. プラスチック循環利用協会「ポリ塩化ビニルってどんなプラスチック?」。 https://www.pwmi.jp/library/library-1558/ (添加剤で硬さや透明度を変えられること)
  26. ニックス「教えて!ニックス プラスチックの見分け方」。 https://nixx.co.jp/oshiete-nixx/240108/ (水に浮く樹脂・沈む樹脂、PETの比重)

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