1. 「ガタン ゴトン」は、どこから 聞こえて いたの?
1. 「ガタンゴトン」は、レールの継ぎ目の音でもあった
1. 定尺25mのレールと継目板 ── 「ガタンゴトン」の出どころ
でんしゃが 走る ときの 「ガタン、ゴトン」という 音は、車輪が レールの つなぎめを 通る ときに 出る 音の ひとつです[3]。ほかの ばしょでも、音は 出ます。
日本の レールは、1本が 25メートルの ものが ふつうです[2]。レールと レールの あいだには、すき間を あけて あります。そして、つなぎめの 板で 両がわから はさんで、ボルトで とめて いました[2][3]。
そこを 車輪が 通ると、音と ゆれが 出ます[3]。
どうして、わざわざ すき間を あけて おくのでしょう。まず、レールが どれぐらい のびるのかを 見て みます。
「ガタンゴトン」という音は、車輪がレールの継ぎ目を通るときに出る音の一つです(ポイントを通るときなど、継ぎ目以外でも音は出ます)[3]。継ぎ目では、向かい合うレールの間にすき間をあけ、継目板という板でレールを両側から挟んで、ボルトで締めています[2][3]。そのすき間の凹凸を車輪が越えるので、音と衝撃が出ました[3]。
日本では、レール1本の長さは25mが標準で、これを定尺といいます。ただし、30kgレールは20mです[2]。継ぎ目の間隔は、レールの温度変化による伸び縮みを考えて決められています[2]。
わざわざすき間をあける理由は、レールが温度で伸び縮みするからです。どれくらい動くのか、計算してみます。
2. レールは、あつく なると どれぐらい のびるの?
2. 25mのレールは、暖まると何ミリ伸びるのか
2. 線膨張係数から求める伸び量 ── 25mで約9mm
鉄は、あたためると のびて、ひやすと ちぢみます。
25メートルの レールでは、レールの おんどが 10どから 40どに 上がると、9ミリぐらい のびます[1]。1円玉の はんぶんより ちいさい ながさですから、ほんの すこしです。
でも、レールが すき間なく ならんで いたら、のびた ぶんだけ、となりの レールを おす ことに なります。だから むかしは、すき間を あけて、のびる ぶんの にげ場に して いました。
金属は、温度が上がると伸びます。伸びる量は、次の式で求められます[4]。
伸び=線膨張係数×元の長さ×温度差
鋼の線膨張係数は、約1.2×10⁻⁵(1℃あたり)です。25m(25,000mm)のレールが30℃分暖まると、25,000×0.000012×30=9.0mmになります。鉄道の計算では1.14×10⁻⁵を使う例もあり、その場合は約8.6mmです[4]。係数は材料や資料で少し違うので、「約9mm」と覚えておくのがよさそうです。
ここでいう温度は、気温ではなくレール自身の温度です。25mで約9mmなら、同じ計算で200mのレールがまったく自由に伸びると、約72mm(約7cm)になります。ちょうど8倍だからです。
では、昔の線路は、この伸びをどうしていたのでしょうか。
金属の熱膨張の伸び量は、「線膨張係数×元の長さ×温度差」で求まる[4]。鋼の線膨張係数は約1.2×10⁻⁵(1/℃)で、25m(25,000mm)のレールが30℃分、つまり10℃から40℃になると、25,000×0.000012×30=9.0mmになる。鉄道の計算に1.14×10⁻⁵を使う例もあり、その場合は約8.6mmだ[4]。係数は材料や資料で幅があるため、「約9mm」としておく。これは鉄道コムが引く「10℃と40℃で約9mm」とも合う[1]。
この温度は気温ではなく、レール温度だ[1]。同じ式で、200mのレールが自由に伸びられたと仮定すると、25mの8倍で約72mmになる。これは仮定の計算で、実際のロングレールはこう動かない(第5章)。
昔のレールは、この伸びを継ぎ目で処理していた。その設計値を次に見る。
3. すき間は、どれぐらい あけて あったの?
3. すき間の幅は、季節で変わるように作られていた
3. 遊間の設計値 ── 40℃で約1mm、0℃で約13mm
すき間は、いつも おなじ はばでは ありません。あつい ときは せまく、さむい ときは 広く なります。
ふつうの 25メートルの レールでは、40どで 1ミリ、0どで 13ミリぐらいに なるように して いる、と いわれます[5]。
ちがいは 12ミリぐらい。前の ところで 計算した のびと、だいたい おなじです。レールが のびると、すき間が せまく なる。ちぢむと、また 広がる。そう なって いたのです。
4. すき間を なくした、ながい レールって なに?
4. 継ぎ目を溶接して、200m以上のレールにする
4. ロングレール ── 溶接で200m以上にした理由と、東海道新幹線での本格採用
いまは、すき間を なくして、うんと ながく した レールが あります。200メートルか、それより ながい ものを、ロングレールと いいます[2]。
25メートルや 50メートルの レールを、こうじょうで つなぎ合わせて、200メートルぐらいに します。そのあと、線路の そばで、さらに つなぎます[6]。
つなぎめが へると、音や ゆれが へって、のりごこちが よく なります[2][6]。レールも いたみにくく、なおす 手間も へります[6]。
日本では、1964ねんに ひらいた 東海道しんかんせんで、ほんかくてきに つかわれました。そのあと、ふつうの でんしゃの 線路にも ひろがりました[7]。
でも、すき間が なくなったら、のびる ぶんは、どこへ いくのでしょう。
レールを溶接でつないで、200m以上にしたものを、ロングレールといいます[2]。25mや50mのレールを、工場や現場の基地で溶接して200mほどにし(一次)、線路のそばでさらに溶接して、決まった長さまで延ばします(二次)[6]。
ねらいは、継ぎ目をなくすことです。継ぎ目を列車が通るたびに衝撃が生まれ、レールなどの部品に負担がかかります。継ぎ目が少ないと、騒音や振動が減って乗り心地がよくなり、部品への負担が減って保守の費用も下がります[2][6]。
日本では、1964年開業の東海道新幹線でロングレールが本格的に採用され、その後、在来線や私鉄の幹線にも広がりました。いまは、すべての新幹線で使われています[7][3]。
ただし、すき間がなければ、さっきの約72mmの伸びは行き場がありません。
ロングレールは、レールを溶接して200m以上にしたもの[2]。作り方は3段階で、25mまたは50mのレールを工場や仮設基地で溶接して約200mにし(一次)、線路脇でさらに所定の長さまでつなぎ(二次)、敷設後に両端を既設のレールか伸縮継目と接合する(三次)[6]。
目的は、継目部の衝撃をなくすことだ。継目を列車が通るたびに衝撃が出て、レールをはじめとする軌道部材に負荷がかかる。継目が少ないと、騒音・振動が減って乗り心地が上がり、保守費の削減にもなる[6][2]。
日本では、東海道新幹線(1964年開業)で本格的に採用され、その後、在来線や私鉄の幹線にも導入が進んだ。「日本初」とまでは、この材料からは言えない。現在は、日本のすべての新幹線でロングレールが使われている[7][3]。
継目を消せば、第2章の伸びは行き場を失う。その行き先が次の章だ。
5. のびられない レールは、どうなるの?
5. 伸びを逃がさず、力として抱え込んでいる
5. 不動区間の軸力 ── 60kレールで1℃あたり約1.86トン相当
ながい レールの まんなかの ぶぶんは、まくらぎに つよく とめて あります[7]。のびたくても、のびられません。
すると、レールの 中に、ちからが たまって いきます[4]。
ちぢめた ばねを、はこに ぎゅっと おさえこんで おく ような ものです。おさえて いる あいだ、ばねは ずっと おしかえす ちからを もって います。ただし ほんとうは、レールは おんどが 上がる ほど、たまる ちからも ふえて いきます。
60キロの レールを 計算すると、おんどが 1ど 上がる ごとに、1.86トンの おもさぐらいの ちからです[4]。1.86トンは、じどうしゃ 1だいぶんぐらいの おもさです。
レールを ボルトで しめつけた ときの おんどから、40ど 上がると、74トンぐらいの おもさに あたります。
ロングレールの中央部は、「不動区間」といって、枕木にしっかり締めつけられています。両端の可動区間は、温度によって定尺レールより大きく伸び縮みしますが、ここでは伸び縮みできません[7]。
伸びようとしても動けないとき、レールの中には力がたまります。この力を軸力といいます。60kgレールでは、軸力は温度差1℃あたり、約1.86トン相当と計算されます[4]。
この「トン」は、重さ相当の力という意味です。1℃あたり1.86トンを、締めたときの温度から40℃分上がった場合にあてはめると、約74トン相当です(1.86×40=74.4)[4]。ふつうの乗用車を1.5トンと考えると、約50台分の重さに近い力です。
ばねをちぢめて箱に押さえ込むと、ばねは押し返す力をもち続けます。ロングレールも、伸びを逃がさずに、力として抱え込んでいるわけです。ただし本当は、ばねは手でちぢめる量が決まっていますが、レールの力は温度が上がるほど増えていきます。
ロングレールの中央部は不動区間で、枕木に固く締結される。端部の可動区間は、温度変化によって定尺レールより大きく伸縮する[7]。不動区間では、伸びようとしても動けないため、温度に比例する軸力がレール内にたまる[4]。
軸力は P=E・A・β・Δt で求まる。E は鋼のヤング率(2.1×10⁶ kgf/cm²)、A はレールの断面積(60kレールで77.5cm²)、β は線膨張係数(この式では1.14×10⁻⁵)、Δt は温度差だ[4]。2.1×10⁶×77.5×1.14×10⁻⁵=約1,855kgf、つまり1℃あたり約1.86トン相当になる。保線の簡易式でも、60kレールは P=1.86Δt とされる[4]。
「トン」は重さ相当の力(tf)で、1℃で186トンではない点に注意したい。締結したときの温度から40℃上がった場合は、1.86×40=約74トン相当になる(自分で計算)。これは二次資料の簡易式による値で、実際の軸力は締結の状態などで変わる。
継目のすき間を消した分、伸びようとする力は、軸力としてレールの内部にたまる、と整理できる。
6. あつすぎる 日に、レールは どうなるの?
6. 猛暑の座屈と、レール温度の目安
6. 座屈と破断 ── レール温度60℃を上限に、50℃前後で点検する
あつい 日は、太陽で あたためられて、レールの おんどは 気おんより 高く なります[8]。
ちからが つよく なりすぎると、レールが よこに ぐにゃっと ゆがむ ことが あります。これを 「ざくつ」と いいます[5]。ぎゃくに、とても さむい 日には、レールが きれて しまう じこが おきる ことも あります[5]。
ふせぐ ために、まくらぎで しっかり とめる、まくらぎの まわりに 石を たくさん しく、レールの おんどを みはる、などを して います[5]。
レールの おんどが 50どぐらいに なると、てんけんを はじめる 会社が あります[8]。
レールの温度は、日ざしを受けるので、気温より高くなります。一般的なレールの設計上の上限は60℃で、在来線も新幹線も同じです。運転上の点検の目安は、複数の会社が50℃前後としていて、小田急電鉄は45℃以上になると、保線の係員が列車に乗って点検すると公表しています[8]。50℃や60℃は気温ではなく、レール温度です。会社や線区によって基準は違います。
ロングレールの管理が十分でないと、猛暑にはレールが横にゆがむ座屈が起き、極寒にはレールが切れる破断の事故が起こりうる、と説明されています[5]。前の章の力は、温度が上がると押し合う向きに、下がると引っぱる向きに、それぞれ増えると考えられます。
防ぐカギとされるのは、枕木への締結力、枕木のまわりのバラスト(敷石)の量、レール温度の管理です[5]。すき間をなくした代わりに、こうした管理が必要になったといえます。
7. ながい レールにも、すき間は のこって いるの?
7. 両端に集めたすき間と、いまも続く工夫
7. 伸縮継目 ── すき間は消えたのでなく、端に集められた
ながい レールの りょうはしには、すき間の ある とくべつな つなぎめが あります。「のびちぢみ つなぎめ」といいます[7]。
はしの ぶぶんは、25メートルの レールより おおきく のびちぢみ します[7]。この つなぎめは、レールが ななめに かさなって いて、車輪が のる レールが すこしずつ かわります。だから 音や ゆれが 出にくく なります[3]。
すき間は、ぜんぶ なくなったのでは ありません。はしっこに あつまった、と 見る こともできます。これは、このメモの 見かたです。
この つなぎめは、お金が かかります。そこで、小さな 鉄道会社でも つかえる、やすい つくりかたが けんきゅうされて います。いままでの 5分の 1 より すくない お金で つくれる、と されて います[9]。
ロングレールの端の可動区間には、ふつうの継ぎ目でなく、伸縮継目が使われます。温度変化によるレールの伸縮を処理するための装置です[7]。継ぎ目の部分のレールは斜めになっていて、車輪が乗るレールが段階的に切り替わるので、通過するときの音や衝撃が出にくくなります[3]。
25mおきに散らばっていたすき間が、ロングレールでは両端の伸縮継目に集められた、と見ることもできます。これは資料の言葉ではなく、このメモでの整理です。
ただし伸縮継目は、費用がかかります。鉄道総研は、地域鉄道でも使えるように、大きなすき間を許して溶接がいらず、いまの伸縮継目の構造の5分の1以下の費用で施工できるとされる構造を開発しました[9]。すき間の役目の見直しは、いまも続いています。
伸縮継目は、温度変化によるレールの伸縮を処理する目的で、ロングレール端部に設ける継目装置だ[7]。継目部のレールが斜めに重なり、車輪が転がるレールが段階的に切り替わる形で、通過時の音や衝撃が出にくい[3]。
25mごとに分散していたすき間が、ロングレールでは端部の伸縮継目に集約された、と整理できる。ただしこれは資料の記述をつないだ解釈で、そう書いた資料があるわけではない。
伸縮継目は費用が高く、地域鉄道には負担になる。鉄道総研は、大きなレール継目のすき間を許容し、溶接が不要で、現行の伸縮継目構造の1/5以下のコストで施工できるとされる代替構造を開発した[9]。継目のすき間をどう扱うかは、現在の研究課題でもある。
8. えきの ホームで、音を きいて みよう
8. 駅のホームで、通る電車の音に耳をすます
8. 出口 ── 音の差を手がかりに、資料に当たる
おうちの 人と いっしょに、駅の ホームへ 行って みましょう。かならず、黄色い 線より 内がわに いて、線路には 入りません。手も 体も 出しません。
でんしゃが 通る とき、「ガタン、ゴトン」と 大きく 聞こえる 場所と、すーっと しずかな 場所が あるでしょうか。おなじ 場所でも、でんしゃに よって ちがうかも しれません。
音の ちがいは、つなぎめの せいかも しれませんし、ほかの わけかも しれません。どんな 音が したか、おぼえて おいて、おうちの 人と はなして みましょう。
駅のホームで、通過する電車の音を聞いてみましょう。ホームの黄色い線の内側から、立ち止まって聞きます。線路には入らず、身を乗り出しません。
耳で確かめたいのは、「ガタンゴトン」がはっきり聞こえる場所と、聞こえにくい場所があるか、ということです。継ぎ目の音かもしれませんが、車両や速さの違いかもしれません。決めつけずに、どんな音がどこで聞こえたかを、メモしておくだけで十分です。
もっと調べたいなら、鉄道総研の「地域鉄道用ロングレール構造の開発」のページが、伸縮継目の悩みを短く書いています[9]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:鉄道会社・鉄道総研・業界団体の解説、百科事典、保線の計算解説、報道記事を突き合わせた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 鉄道コム コラム記事(Business Insider Japan の記事を引いている)。 https://www.tetsudo.com/column/1177/ (25mのレールで10℃と40℃のとき約9mm伸び縮みすることについて)
- 日本民営鉄道協会 鉄道用語事典「レール」。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16489.html (定尺、継目板、ロングレールの定義について)
- マネーポストWEB 記事(JR東日本の解説をもとにしたもの)。 https://www.moneypost.jp/1127742/、 https://www.moneypost.jp/1127742/2/ (継ぎ目の音の理由、伸縮継目の構造、新幹線でのロングレールについて)
- 保線ブログ大学「みんな嫌い!線路の計算問題」。 https://track-mainte.com/calculation/ (伸び量の式、線膨張係数、軸力の式と1℃あたりの値について)
- 「軌条」Wikipedia。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8C%E6%9D%A1 (継ぎ目のすき間の設計値、座屈・破断の事故とその対策について)
- 鉄道総合技術研究所 山本隆一「日本におけるレールの溶接」(日本溶接協会)。 https://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_8/sec_1/1-1.pdf (ロングレールの溶接の段階と、継目をなくす目的について)
- 「ロングレール」Wikipedia。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB (不動区間と可動区間、伸縮継目、日本での採用の経緯について)
- 乗りものニュース 記事(Business Insider Japan の記事を引いている。レール温度の上限と点検の目安)。 https://trafficnews.jp/post/56246 (レール温度の上限60℃と、各社の点検の目安について)
- 鉄道総合技術研究所「地域鉄道用ロングレール構造の開発」。 https://www.rtri.or.jp/rd/division/rd45/rd4510/rd45100115.html (費用を抑えた伸縮継目の代わりになる構造の研究について)
なおした ところ
更新履歴
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