1. からの ランドセルは、どのくらい おもいの?
1. 空のランドセルを持ち上げてみる
1. 本体の重さ ── 空でも1.2〜1.4kgという数字
ランドセルを もちあげると、なにも はいって いなくても、ずしっと します。
こうぎょうかいの せつめいを しんぶんが しょうかいして いて、ふつうの ランドセルの おもさは、じんこうひかくで 1.2キロぐらい、てんねんの かわで 1.4キロぐらいと いわれます[4]。1リットルの ぎゅうにゅうパック 1ぽんより、すこし おもい くらいです。
ただし、かるい ランドセルも あります。これは「ふつうは この くらい」という めやすです。
では、どうして こんなに じょうぶに つくって あるのでしょう。まず、おもしろい しけんから みて みます。
空のランドセルを持ち上げると、意外にずっしりしています。工業会の説明として北海道新聞が紹介しているところでは、本体の重さは、人工皮革のもので約1.2kg、天然の革のもので約1.4kgが一般的だそうです[4]。1リットル入りの牛乳パックが約1kgですから、それより少し重い、という感覚です。
もちろん、これは「一般的な値」で、もっと軽いモデルもあります。それでも、軽くはない数字です。
なぜ、そこまでしっかりつくるのでしょうか。手がかりになる、ちょっと乱暴な試験があります。
ランドセル本体の重さについて、工業会側の説明(北海道新聞が紹介)は、昭和後半ごろからほとんど変わっておらず、人工皮革で約1.2kg、天然革で約1.4kgが一般的というものだ[4]。ただし、これは一般的な値であり、軽量をうたうモデルも存在する。空でも1kgを超えるのは、素材と構造の両方に理由がありそうだ。
本体が空でこの重さなら、中身が入ったときは何に耐えなければならないのか。この問いに対して、工業会は具体的な試験の結果を発表している。
2. タブレットを おとして みたら、どうなったの?
2. 120cmから落とす試験 ── タブレットは無事だったか
2. 落下試験 ── 3kgの荷物とタブレット、120cmからコンクリートへ
ランドセルの なかに、3キロの にもつと タブレットを いれて、120センチの たかさから、コンクリートの うえに おとす しけんが あります。おとす ところは、かどです[5]。
ナイロンや ポリエステルの リュックは、3かいめに おとした あとで、タブレットの がめんが いたみました。ランドセルは、タブレットが こわれなかったと いう ことです。
この しけんは、ランドセルの こうぎょうかいが おこなった ものです。じょうぶに つくる わけを かんがえる ヒントに なります。
その じょうぶさは、どんな かたちから きて いるのでしょうか。
工業会は、ランドセルの中に3kgの荷物とタブレットを入れ、120cmの高さから、角の面を下にしてコンクリートへ落とす試験を行いました。その結果、タブレットが壊れなかったのは、比べたバッグの中でランドセルだけでした。ナイロンやポリエステルのリュックでは、3回目の落下のあとに、画面に傷みが出たそうです[5]。
ただし、これは工業会自身が行った試験で、比べた条件も限られています。「ランドセルが最強」と言える根拠にはなりません。それでも、ふたと箱の形で中身を守るという考え方が、ある程度、働いていることを想像させる結果です。
では、その形は、そもそもどう決まってきたのでしょうか。
工業会が発表した落下試験では、3kgの内容物とタブレットを入れ、120cmの高さから角面を下にしてコンクリート面へ自由落下させた。唯一、タブレットが破損しなかったのがランドセルで、ナイロン・ポリエステルのリュックは3回目の落下後に画面へ損傷が出たという[5]。
ただし、試験は工業会自身のもので、比較した条件も限られる。「ランドセルが最も丈夫」と一般化はできない。ここから言えるのは、この条件下で、箱型で硬い形の荷物入れが、中身への衝撃を減らしうるという範囲にとどまる。
その形は、どこから来たのか。次に、形の由来と、工業会が定めている条件を見る。
3. どうして はこの かたちで、ふたが おおきいの?
3. 背のうから箱型へ ── ふたを含む「形の基準」
3. ランドセルはどう箱型になり、今の認定基準ができたのか
ランドセルの なまえは、むかしの ぐんたいの せなかの にもつぶくろ「はいのう」と かかわって います。オランダごで「ランセル」と よばれて いたのが、ランドセルの もとだと いわれます[2]。
いまの ランドセルは、たてに ながい はこの かたちです。うえから おおきな ふたが かぶさります。ランドセルの こうぎょうかいは、この ふたが ぜんたいの 3ぶんの 2いじょうを おおう ことを、にんていの きじゅんに して います[1]。
なぜ ふたが おおきいのか。その りゆうを はっきり かいた しりょうは、みつかって いません。だから、この ページでは、りゆうを きめつけません。
ふたの ないぶは、どうなって いるのでしょう。
ランドセルの名前は、オランダ語の「ランセル」(軍隊用の背のうのこと)に由来するとされます。1885年(明治18年)に、学習院が「学用品は自分の手で持ってくる」という考えのもと、軍隊用の背のうを採用したのが始まりです[2]。
その後、工業会の年表では、1887年に伊藤博文が箱型の通学かばんを贈ったことで、今の形に近づいたとされます。学習院型として、形や寸法がそろえられていったのは、1897年ごろと書かれています[2]。
今の工業会の認定基準では、素材は皮革か人工皮革で、形は縦型・箱型、ふた(かぶせ)が全体の3分の2以上を覆うものとされています[1]。これは法律ではなく、工業会が決めている基準です。
なぜふたがそこまで大きいのか。その理由をはっきり書いた資料は、今回は見つかりませんでした。基準と形の事実だけを見て、理由は決めつけないでおきます。
では、箱の中は、どんな造りになっているのでしょうか。
ランドセルの名称は、オランダ語で「ランセル」と呼ばれた軍隊用の背のうに由来するとされる。1885年(明治18年)、学習院が「学用品は自分の手で持ってくる」という理念で軍隊用の背のうを採用したのが出発点で、工業会の年表は、その後1887年の伊藤博文による箱型通学かばんの献上、1890年の黒革への決定、1897年の「学習院型」の完成を記す[2]。年号はこの年表による。
昭和に入ると素材と寸法が変わる。年表には、1947年にブリキ製、1953年に牛革のランドセルが出回ったこと、1964年にクラレが合成皮革クラリーノの生産を始めたこと、1977年に標準寸法が決まったことが載っている[3]。素材が広がったことが、現在「皮革または人工皮革」という基準につながっていると考えられる。
現在の工業会の認定基準は、素材が皮革または人工皮革、形状がかぶせ部が全体の2/3以上を覆う縦型・箱型、6年間の通常使用での無償修理対応の保証、という内容だ[1]。これは法律ではなく、工業会の基準である。
なぜかぶせがそこまで大きいのか。工業会・メーカーの一次資料で理由を明言した箇所は見つからなかった。基準の事実と構造の説明にとどめる。
では、箱の内側は、どう補強されているのか。
4. はこの なかには、なにが はいって いるの?
4. 見えない補強 ── メーカーの一例から
4. 芯材と補強 ── 耐荷重80kgとされる設計の一例
ランドセルの そとがわは かわでも、なかには かたい しんが はいって います。
ある メーカーは、いたみやすい ところに、じゅしや ワイヤーを つかったり、ぬのを ふたえに まいたり して いると せつめいして います[6]。
その メーカーは、「80キロまで たえる」と ためして、はっぴょうして います。これは 1しゃの はっぴょうで、すべての ランドセルが そうと いう わけでは ありません。
もうひとつ、かたに かかる おもさの ことも あります。こうぎょうかいは、かたの ベルトが したの ほうで とまって いるので、おもさが ちらばりやすいと せつめいして います[5]。
ランドセルの外側は革や人工皮革ですが、その内側には硬い芯材が入っています。あるメーカーは、傷みやすい部分を樹脂やワイヤー、二重巻きで補強していると公表しています。また、芯材を3面が一体になったコの字型で2重にして、耐荷重は最大80kgを計測したそうです[6]。
これは1社の公表で、すべてのランドセルに共通する仕様ではありません。それでも、「6年間もつ」ことを目指すうえで、どこに力を入れているのかが見えます。
肩ベルトについては、工業会が、腰の近くの下のほうで固定されているため圧が分散しやすい、と説明しています[5]。ただし、これは工業会側の説明です。
基準では、6年間の通常使用で無償修理に対応することも求められています[1]。丈夫さは、「壊れにくい」と「壊れたら直す」の両方で支えられているようです。
ところで、この補強とは別に、ふたにも重さは関わっているのでしょうか。
メーカー公表資料の一例では、傷みやすい部分を樹脂・ワイヤー・二重巻きで補強し、芯材を3面1体のコの字型の2重構造にして、耐荷重は最大80kgを計測したとされる[6]。1社の主張であり、全製品に共通する仕様ではない。宣伝に読まれないよう、ここでは「設計の考え方の一例」として扱う。
肩ベルトについて、工業会は、腰付近の下底部で固定される構造のため圧が分散しやすく、子どもの負担が少ないと説明している[5]。この評価は工業会側の説明である。
丈夫さは、構造だけでなく、6年間の通常使用での無償修理という基準の保証[1]でも支えられている。
構造の話はここまでにして、次は「空でもずっしり」の内訳に戻る。ふたは重さに関わるのか。
5. ふたを とったら、かるく なるの?
5. ふたのない通学かばんは約750g ── 重さとふた
5. ふたがあると重くなるのか ── ふたなし型(約750g)と比べる
ふつうの ランドセルの ふたは、まえを ぜんぶ おおって、したの かなぐに つながって います[7]。
ふたを なくして、ファスナーで しめる、ちがう しゅるいの つうがくかばんも あります。その かばんは 750グラムぐらいで、ふつうの ランドセルの 1.2キロより かるいです[7]。
だからと いって、ふただけが おもさの げんいんとは かぎりません。ざいりょうや、なかの しんも かんけい します。
ランドセルが おもく かんじる のは、ほんたいの せいでしょうか。それとも なかみの せいでしょうか。
一般的なランドセルのふた(かぶせ)は前面をすべて覆い、底面にある金具につなぐ形をしています。これに対して、ふたをなくしてファスナー式にした別の種類の通学かばんは、約750gという紹介があります[7]。
ランドセルの一般的な本体は1.2〜1.4kgですから、ふたがない型のほうが軽いことになります。ふたのつくりが重さに関わる、と説明されています。
ただし、ふただけが重さの原因とは言えません。素材や芯材も関わりますし、この2つは別の種類の商品で、単純な比較はできません。
本体の重さが昭和後半から大きく変わっていないなら、「重い」と感じる理由は、ほかにもありそうです。次の章では、教科書の変化に目を向けます。
一般的なランドセルのかぶせは前面をすべて覆い、底面の金具に固定する構造だ。かぶせをなくしファスナー式にした別種の通学かばんは約750gと紹介されており、かぶせを含む構造が重さに関わると説明されている[7]。
ただし、かぶせだけが重さの原因とは言えない。素材、芯材、金具、背あてなども関わりうる。約750g(ふたなし型)と約1.2〜1.4kg(一般的なランドセル)の差は、別の商品同士の比較であり、差の全部をかぶせの重さと読むことはできない。
本体の重さが昭和後半から大きく変わっていないのだとすれば、重さの実感に関わる要素は、本体以外にもありうる。次に、教科書の変化を見る。
6. きょうかしょは、なにが かわったの?
6. 教科書は重く大きくなったのか ── ページ数・大きさと国の事務連絡
6. 教科書は重く大きくなったのか ── ページ数・判型の変化と、文部科学省の配慮要請
ランドセルの ほんたいの おもさは、あまり かわって いないと いわれます。きょうかしょは、ページの かずや おおきさが かわりました。
きょうかしょの ぜんぶの ページの かずは、2005ねんどより 2020ねんどの ほうが、1.75ばいに ふえたと いわれます[4]。
むかしは ちいさい B5ばんが ほとんどでしたが、いまは おおきい ばんが ふえて います。ただ、それで にもつが どれだけ おもく なったかは、この しりょうだけでは わかりません。
2018ねんに、もんぶかがくしょうは、がっこうに おねがいを だしました。おもい にもつが、からだの せいちょうに えいきょうしないように、うちで つかわない きょうかしょは、つくえに おいて かえっても いい がっこうの れいが しょうかいされて います[8]。
ランドセル本体の重さは、昭和後半からほとんど変わっていないと説明されています。一方、教科書のページ数や大きさは、ずいぶん変わりました。
教科書協会のデータによると、2005年度は、教科書の96%がB5判でした。それが2020年度には、大判のAB判が40%、A4判が20%、B5判が39%になっています。全教科のページ数は、加盟16社の平均で8520ページ。2005年度の1.75倍だそうです[4]。
国も、この問題に気づいています。文部科学省は2018年9月6日に、「児童生徒の携行品に係る配慮について」という事務連絡を出しました。荷物が重すぎると、体の健やかな発達に影響が出かねないという心配があると述べ、家庭学習で使わない教材を、机の中に置いて帰ることを認めている学校の例を紹介しています[8]。これは各学校の判断で、全国一律に義務づけたものではありません。
ランドセルが丈夫なことと、荷物が重いことは、別々の問いのようです。
本体の重さが昭和後半から大きく変わっていないと説明される一方、教科書は変化している。教科書協会のデータでは、2005年度はB5判が教科書の96%を占めていたのに対し、2020年度は大判のAB判が40%、A4判が20%、B5判が39%となり、全教科の総ページ数は加盟16社平均で8520ページ、2005年度の1.75倍に達した[4]。1.7倍とする表記もある。
こうした携行品の重さは、国も課題として扱っている。文部科学省は2018年9月6日の事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」で、過重な携行が身体の健やかな発達に影響しかねないという懸念を示し、工夫例として、家庭学習で使う予定のない教材を机の中などに置いて帰ることを認める学校の例を挙げた[8]。各学校の判断に委ねる内容で、全国一律に置き勉を義務づけたものではない。
これらを合わせると、ランドセルの丈夫さは「6年間の通学に耐える構造と修理保証」の話、荷物の重さは「教科書などの携行品」の話として、別々に整理できる。ただし、教科書のページ数だけでは、荷物全体の重さがどれだけ変わったかまでは分からない。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
おうちの ひとと いっしょに、キッチンの はかりで、じぶんの かばんの おもさを はかって みましょう。からの ときと、きょうかしょを いれた ときを くらべます。ランドセルが なくても、ほかの かばんで できます。
そのあと、おもさが おなじ ところに かかって いるか、かたに かけて かんじて みましょう。むりの ない ぎりぎりまで にもつを いれないで ください。
おでかけで できること
ランドセルを つかって いる ひとの ふたが、どこまで おりて いるか、ちかくで みて みましょう。みる だけに して、さわる ときは ひとの ものに ことわって からです。
こうしきの じょうほう
ランドセルの こうぎょうかいや、もんぶかがくしょうの ページも、おうちの ひとと いっしょに よんで みましょう。
今日できること
台所のはかりで、自分のかばんの重さを量ってみましょう。空のとき、今日の時間割の教科書を入れたとき、そのときの重さを比べます。ランドセルでなくても、ふだん使うかばんで構いません。無理のない範囲で、重すぎる荷物は持ち上げないようにしてください。
重さが分かったら、どこにいちばん重さがあるのか、教科書のページ数や大きさも見比べてみましょう。教科書を大きさ順に重ねて、B5判とA4判の差を目で見るのもおもしろいと思います。
出かけてできること
通学中のランドセルを、少し離れたところから見て、ふたがどこまで覆っているかを観察してみましょう。人の持ち物なので、観察だけにして、触るときは断ってからにしてください。
公式情報
日本ランドセル工業会の認定基準のページや、文部科学省の事務連絡(PDF)を読むと、この記事で紹介した数字の元の言葉を確かめられます。
今日できること
自宅の秤で、通学かばんの空の状態と、その日の教科書を入れた状態の重さを量り、手元にある教科書のうち、判型が違うものがあれば、その重さを比べてみるとよい。無理のない範囲で行い、重すぎる荷物は持ち上げない。
出かけてできること
通学中のランドセルを離れて観察し、かぶせが本体のどこまで覆っているかを見る。人の持ち物なので、観察のみにとどめる。
公式情報
日本ランドセル工業会の認定基準と歴史年表、教科書協会の統計、文部科学省の事務連絡(2018年9月6日付)を直接読み、報道が引いた数字(本体約1.2〜1.4kg、教科書ページ数1.75倍)を原資料で確認してみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、工業会の公式ページ(基準・年表)、工業会の発表を報じた記事、メーカー1社の公表資料、文部科学省の事務連絡を突き合わせた。
- 日本ランドセル工業会 公式サイト https://www.randoseru.gr.jp/ (認定基準)
- 日本ランドセル工業会 歴史年表 https://www.randoseru.gr.jp/history/rekishi.html (由来と形の変遷)
- 日本ランドセル工業会 年表(昭和) https://www.randoseru.gr.jp/history/nenpyo.html (素材と標準寸法)
- 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/703374/ (本体の重さ、教科書ページ数)
- Impress Watch https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1426999.html (落下試験、肩ベルトの説明)
- セイバン 天使のはねランドセル資料(PDF) https://www.seiban.co.jp/cdn/shop/files/20250624__2026.pdf (補強の一例)
- HugKum https://hugkum.sho.jp/649170 (かぶせと重さ)
- 文部科学省 事務連絡(PDF) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/keikohin/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/1408967_001_1.pdf (携行品への配慮)
なおした ところ
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