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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ジェットコースターは、エンジンが ないのに どうして はしれるの?

ジェットコースターはなぜエンジンなしで最後まで走れるのか ── 最初の山に蓄えられた高さ

ジェットコースターの走行と位置エネルギー ── チェーンリフト、エネルギーの損失、1884年の重力鉄道

分野:技術

ジェットコースターに のって、うしろの ほうを 見て みると、エンジンの おとが しません。のぼる ときの カタカタ という おとだけが ひびきます。

それなのに、あの ながい コースを さいごまで はしりぬけます。どうしてなのでしょう。ひみつは、さいしょの 高い 山に あります。

ジェットコースターの車両を後ろから見ても、エンジンらしいものは見つかりません。ふつうの車両には、自分で走るための動力がないからです[1]。

それでも、あの長いコースを最後まで走りきります。手がかりは、最初の山の高さにあります。高さがどう速さに変わるのか、なぜ最初の山がいちばん高いのか、100年以上前の元祖はどんな乗り物だったのかを見ていきます。

従来型のジェットコースターの車両は、基本的に動力を持たない。走行に使うエネルギーは、最初にチェーンで持ち上げられた高さに蓄えられた位置エネルギーである[1]。

この記事では、日本機械学会の解説と教材を突き合わせて、高さと速さの関係を計算で確かめる。あわせて、最初の山が最も高くなる理由、1884年に米国コニーアイランドで開業した重力鉄道の実像、リニアモーターなどで加速する発射式という例外を整理する。

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1. カタカタ のぼる とき、なにを して いるの?

1. 最初の山で、チェーンが引き上げる

1. チェーンリフト ── 位置エネルギーを蓄える工程

ジェットコースターは、はじめに 長い チェーンで、いちばん 高い 山の ちょうじょうまで ひっぱり上げられます[1]。カタカタ という おとは、その ときの おとです。

高い ところに 上がると、車には 「下へ おりる ちから」が ためられます。これを 「たかい ところに ある エネルギー」、むずかしい ことばで 「いちエネルギー」と いいます。おこづかいを ためる ちょきんの ような ものです。ただし ほんとうの おかねと ちがって、つかうと へって いきます。

ここから さきは、ちょきんを つかいながら 走る のです。

ジェットコースターには、基本的に動力がありません。動く力は、高いところにあるものが持っている位置エネルギーです。まず車両の下にチェーンを引っかけて、最初の山の頂上まで持ち上げ、位置エネルギーを蓄えます[1]。

のぼる途中に聞こえるカタカタという音は、このチェーンを使った引き上げの音として知られています。

頂上を越えると、チェーンははずれます。そこから先は、蓄えた力だけで走ります。おこづかいをためておいて、あとは少しずつ使っていくのに似ています。ただし、お金と違って、使う一方で増えることはありません。

ジェットコースターには基本的に動力が存在せず、位置エネルギーを運動エネルギーに変換して動く。そのためにまず、車両の下部をチェーンに引っかけて、最初の山の頂上まで引き上げ、位置エネルギーを蓄える[1]。

頂上で車両がチェーンから離れると、以後は外部から動力を受けずに走行する。エネルギーの供給は最初の1回だけで、そこから先は減る一方になる(3章)。

2. 高い ところから おりると、どうして はやいの?

2. 高さが速さに変わる

2. 位置エネルギーと運動エネルギーの変換

山の 上から 下へ おりると、車は どんどん はやく なります。上に あった 「いちエネルギー」が、うごく ちからに かわる からです。

はんたいに、つぎの 山を のぼる ときは、はやさが 少し へって、そのぶん 高さに もどります[1]。

自てんしゃで 坂を くだる ときも、ペダルを こがなくても どんどん はやく なりますね。おなじ ことです。

下り坂では、位置エネルギーが運動エネルギー、つまり動く勢いに変わります。上り坂では逆に、勢いが高さに戻ります[1]。

高さが最大のところで位置エネルギーが最大になり、コースの最低点で速さが最大になります[2]。

摩擦や空気抵抗がないとすると、高さ40mから下りたときの速さは、式から約28m/s、時速にすると約100kmと計算できます。これは理想の数字で、実際のコースターはこれより遅くなります。

自転車で下り坂をペダルなしで走ると速くなるのも、同じ仕組みです。

重力による位置エネルギーはPE=mgh、運動エネルギーはKE=1/2 mv²と表される[2]。下り坂ではPEがKEに、上り坂ではKEがPEに変わり、高さが最大の点でPEが最大、最低点で速さが最大になる[1]。

摩擦や空気抵抗を無視すると、mgh=1/2 mv²から質量が消えて、v=√(2gh)となる。高さ40mでは、2×9.8×40=784、√784=28.0 m/s(×3.6≒時速100.8km)と計算できる(筆者による計算)。これは理想値であり、実在する機種の速度ではない。実際は、次章の損失のため、これより遅くなる。

3. どうして さいしょの 山が いちばん 高いの?

3. 二つ目の山が低くなる理由

3. 損失と最初の山の高さ

コースターの 山を 見くらべると、たいてい さいしょの 山が いちばん 高く なって います。

車を うごかすと、車りんの まさつや、空気に ぶつかる ちからで、エネルギーが 少しずつ へって いきます[1]。だから 下って 上ったとき、おなじ 高さまでは 上がれません。

さいしょに たくさん ためておかないと、さいごまで とどかないのです。ただし、はっしゃしきの ように れいがいも あります(6しょう)。

車輪の摩擦や空気抵抗のせいで、エネルギーの一部がコースを走るあいだに失われていきます。そのため、下って上ったときに、同じ高さまでは上がれません[1]。

教材では、最初の山はいつも最も高いと説明されます。理由は、摩擦と空気抵抗が、走りはじめたときからずっと車両のエネルギーを奪っていくからです[2]。

途中に再び引き上げる仕組みがなければ、次の山を最初より高くすると、登りきれずに止まるおそれがあります。ただし、「必ず」という言い方は教材の一般論で、あとで見る発射式のような例外もあります。

下りと上りでエネルギーは相互に変換されるが、車輪の摩擦や空気抵抗による損失が生じるため、下って上ったとき、同じ高さまで上がることはできない[1]。

TeachEngineeringの教材は、最初の山が常に最高点になる理由として、摩擦と抗力が走行開始直後から車両のエネルギーを奪い続けることを挙げる[2]。この「常に」は教材の一般論で、発射式や途中で再加速する形式には当てはまらない(6章)。

損失が全体のどれくらいかを示す具体的な数字は、今回の資料には見当たらなかった。

4. さいしょの ジェットコースターは、どんな のりものだった?

4. 1884年、歩いて戻したコニーアイランドの元祖

4. Switchback Railway ── 1884年の重力鉄道と鉱山鉄道の系譜

いまから 140ねんいじょう まえの 1884ねん、アメリカの コニーアイランドという ばしょに、重力だけで 走る のりものが できました[3]。

はやさは、時そく 10キロメートル ぐらい。走るのと おなじくらいです[3]。

ゴールに ついたら、おきゃくさんが おりて、しゃりょうを おして もとの ほうへ もどした と つたえられて います[4]。

いまの コースターとは、ずいぶん ちがいます。

1884年6月16日、アメリカのコニーアイランドで、ラマーカス・トンプソンの考えた「グラビティ・プレジャー・スイッチバック鉄道」が開業しました。重力だけで走り、時速は約6マイル、つまり約10km。料金は5セントでした[3]。

長さは約600フィート(約183m)。往復するのではなく、終点で乗客が降りて、車両を折り返して戻したと伝えられています[4]。

トンプソンは、ペンシルベニア州の炭鉱で使われていた重力を利用した鉄道からヒントを得たとされます[5]。ヒントの元には諸説あるので、「とされる」と書いています。

1884年6月16日、LaMarcus Thompsonの「Gravity Pleasure Switchback Railway」がコニーアイランドで開業した。重力で走行し、速度は約6マイル毎時(約9.7km/h)、料金は5セントで、1日の利益は600ドルとされる[3]。世界初ではなく、米国初の商業用の遊園地コースターとして扱われる。

全長は600フィート(約183m)で、往復乗車ではなく、乗客が降りて車両を折り返した[4]。

着想の元は、廃坑後の炭鉱車を旅客輸送に転用した鉱山鉄道(ペンシルベニア州マウチチャンク)とされる[5]。着想の元は諸説あるため、断定はしない。この鉄道の運行の詳細(石炭輸送の終了時期や上りの動力など)は、資料により記述が異なるため、本記事では扱わない。

5. とまる ときは どうする? でんきが きえたら?

5. 止めるしくみと、停電したときの走り方

5. ブレーキ板とフィン ── 慣性で安全な場所まで

とまる ときは、のりばの ブレーキの いたが、車の 下に ついた いたを ぎゅっと はさんで とめます[1]。

もし でんきが きえても、あわてなくて だいじょうぶ と いわれます。さかさまの ところで とめず、あんぜんに おりられる ところまで、いきおいで 走らせる のが ふつう だと、メーカーは いって います[6]。

さいしょの 山で ためた 高さの ちからが あるからです。

停止するときは、乗り場に設置されたブレーキ板が、車両の下にあるフィンという板をつかんで止めます[1]。走っている途中は、動力ではなく重力と慣性に任せているので、ブレーキも、ホームなど決まった場所で使う仕組みです。

ループの途中などで停電したらどうなるのでしょう。乗りものニュースが紹介するメーカーの説明では、逆さの場所では止めず、安全に避難できる場所まで慣性で走らせるのが一般的だそうです[6]。最初の山で蓄えた位置エネルギーがあるので、電気が止まっても走り続けられる、という考え方です。

停止時は、ホームに設置されたブレーキ板が車両下部のフィンを挟んで停車させる[1]。走行中は動力ではなく重力と慣性による運動であり、ブレーキは主に決まった位置で作動する。

乗りものニュースが紹介するメーカー(サンセイテクノロジーズ)の説明では、ループ部などで停電した場合、逆さの場所では停止させず、安全に避難誘導できる場所まで慣性で走らせるのが一般的とされる[6]。最高地点の位置エネルギーで走行を続けられるという理屈であり、機種ごとの運用は各社の資料による。

6. いまの コースターは、みんな エンジンが ないの?

6. 「エンジンがない」は従来型の話

6. 発射式 ── 外から加速する形式という例外

ここまでの はなしは、チェーンで 引き上げる むかしながらの コースターの ことです。

さいきんは、はっしゃの ときや 走って いる とちゅうで、じしゃくの ちからや 空気の ちからで、いきおいを つける コースターも あります[1]。

これは、山の 高さだけで 走る のとは ちがう しくみです。

だから、「エンジンが ない」のは、むかしながらの コースターの はなしです。

ここまでの話は、チェーンで引き上げて重力で走る、従来型の話です。近年は、発車時や走行中にリニアモーターや圧縮空気で加速するものもあります[1]。

辞典類も、従来は発車後の急な坂を一気に降りる勢いで走行していたが、現代ではリニアモーターで加速する形式も登場していると説明しています[7]。

こうした形式では、最初の山を最も高くする必要は、必ずしもありません。「エンジンがなくても走れる」は、あくまで従来型の話です。

日本機械学会の解説によれば、最近では発車時や走行中にリニアモーターや圧縮空気で加速する機種もある[1]。コトバンクが引く辞典類も、従来は発車後に急な坂を一気に降下する勢いで走行していたが、現代ではリニアモーターで加速する形式も登場したとする[7]。

したがって、「動力がなく、最初の山が最も高い」という説明が当てはまるのは、チェーンリフト式の従来型である。発射式は外部から加速するため、最初の山を最高点にしなくてもよい。3章でTeachEngineeringの一般論に添えた但し書きはこのためである。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

ほんを かさねて、下じきで 坂を つくります。ビー玉を 上から ころがして、ゆかで とまる ところまで はかります。ほんを 1さつ ふやすと、どうなるでしょう。おうちの ひとと いっしょに、ビー玉を ゆかに おとさないよう、きを つけて やって みましょう。

出かけてできること

ゆうえんちで、コースターの 山の 高さを 見くらべて みましょう。いちばん 高いのは、はじめの 山でしょうか。

こうしきの 情報じょうほう

ゆうえんちの ホームページや、としょかんの りかの ほんに、くわしい しくみが のって います。

今日できること

本を重ねて、下敷きで坂を作ります。ビー玉を転がして、床で止まるまでの距離を測ります。本を1冊増やして高さを変えると、距離はどう変わるでしょうか。ビー玉が床に散らばらないよう、広い場所で、大人と一緒に試してください。

出かけてできること

遊園地に行ったら、山の高さを見比べます。最初の山はいちばん高いでしょうか。ブレーキが働く場所も探してみましょう。

公式情報

日本機械学会の解説や、遊園地・メーカーの公式ページ、図書館の科学の本に、しくみの説明があります。

今日できること

本と下敷きで坂を作り、ビー玉を転がして止まるまでの距離を測る。坂の高さを変えて、距離の変化から位置エネルギーの大きさを考える。摩擦の異なる床(フローリングとカーペットなど)で比べてもよい。ビー玉が散らばらないよう、広い場所で行う。

出かけてできること

遊園地では、山の高さの順、最初の山との比較、ブレーキの位置を観察する。チェーンリフト式か発射式かを見分けるのもよい。

公式情報

日本機械学会のメカライフの記事を読み、2章の計算(v=√(2gh))を、高さを変えて自分の手で追ってみるのもよい。遊園地や図書館の科学の本も手がかりになる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

仕組みは日本機械学会の解説と米国の教材を突き合わせた。歴史は遊園地関連の資料による。停電と発射式の説明は、報道記事と辞典類の要約に依る部分があり、原文全体は照合していない。

  1. 日本機械学会誌 2010年3月号 メカライフ「ジェットコースタ編」 https://www.jsme.or.jp/mechalife/jp/student/mechaland/1003.pdf (動力がないこと・チェーン・損失・ブレーキ・発射式)
  2. TeachEngineering: Physics of Roller Coasters https://www.teachengineering.org/lessons/duk_rollercoaster_music_less (式・最初の山が最も高い理由)
  3. ASCE Civil Engineering Almanac https://asce.org/publications-and-news/civil-engineering-source/article/2021/06/16/civil-engineering-almanac--first-amusement-park-roller-coaster-in-the-us (1884年の開業・速度・料金)
  4. Coney Island History Project: La Marcus Thompson https://www.coneyislandhistory.org/node/1873 (長さ・戻し方)
  5. Switchback Gravity Railroad https://switchbackgravityrr.org/sbridest.htm (着想の元とされる炭鉱の鉄道の話)
  6. 乗りものニュース「ジェットコースター さかさまの時に停電したらどうなるの?」 https://trafficnews.jp/post/111888 (停電時の走り方)
  7. コトバンク「ジェットコースター」 https://kotobank.jp/word/じぇっとこーすたー-3155216 (発射式)

なおした ところ

更新履歴

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